さあ、困ったことになった。 困った事態だが、金は稼がにゃいかんし、腹だって減る。 そんなわけで、軽い依頼をこなして、いつもの「蒼い三日月亭」でラムステーキなど食べていると、馴染みの人物が、扉を開けて入ってきた。「探したよ、ロイ氏ー! てか、噂通りのイケメンガール、キタコレ!」 なんで、俺の噂広まってんすか。 何となくクコを見ると、目をそらす。……犯人は、お前か。 しかし、イケメンガールキタコレと言われても、どう返したものか。「ありがとうございます。ところで、俺を探していたとのことですが?」 とりあえず、愛想は返しておこう。「うんうん。なーんか間が悪くて、いっつも君ら外出中なんだもん。でさ、ロイ氏。絵のモデルやってみない?」 モロオ邸応接室の、やたらシナを作ったメイドさんが想起される。「お断りします」「金貨で、これだけ出そう」 と、卿が指で提示したのは、かなりの額。「え? モデルするだけで、こんなもらえるんですか!?」「もちろん!」 ここで、ハッとなる。「……いかがわしい絵じゃ、ないでしょうね?」「ノンノンノンノン! 極めて健全! ちょーっと、ポーズには凝ってもらうけどね」 まあ、あのメイドさんぐらいのシナは作らされるということね。「……やっぱり、メイド服だったりしますか?」「もちろん!」 モロオさん、サムズアップ。「モロオ家特有の、あの?」「もちろん!!」 さらに、サムズアップ。 今、俺の両耳で、それぞれ天使と悪魔が囁いている。「……ぬ~! じゃあ、これでどうだ!」 額を上げるモロオさん。 悪魔が、勝った。 ◆ ◆ ◆「モロオさん、その、動かないというのも、しんどいですね……」「喋らないで。絵がおかしくなっちゃう」 注意され、無言になる。 いやはや。格好だけでも恥辱だが、長時間同じポーズを取り続けるのが、ここまでしんどいとは。「いやー、ロイ氏みたいな、イケメンメイドさんを描くのは、初めてだよ。僕、そっち系に目覚めちゃうな、これ。こういう感じの子、新しく雇おう」 彼は好き勝手に喋るが、動くなと言われてるので、言葉を返せない。 やれやれ。 ◆ ◆ ◆「フィニッシュ!」 筆を置く。「もう、動いていいよ。どう?」 イーゼルの向こうに回り込み、自分自身を見てみる。 ……美人だ。凛々しい美
Last Updated : 2026-07-22 Read more