All Chapters of 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!: Chapter 61 - Chapter 70

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第六十一話 魔導剣士ロイ、己を売る

 さあ、困ったことになった。 困った事態だが、金は稼がにゃいかんし、腹だって減る。 そんなわけで、軽い依頼をこなして、いつもの「蒼い三日月亭」でラムステーキなど食べていると、馴染みの人物が、扉を開けて入ってきた。「探したよ、ロイ氏ー! てか、噂通りのイケメンガール、キタコレ!」 なんで、俺の噂広まってんすか。 何となくクコを見ると、目をそらす。……犯人は、お前か。 しかし、イケメンガールキタコレと言われても、どう返したものか。「ありがとうございます。ところで、俺を探していたとのことですが?」 とりあえず、愛想は返しておこう。「うんうん。なーんか間が悪くて、いっつも君ら外出中なんだもん。でさ、ロイ氏。絵のモデルやってみない?」 モロオ邸応接室の、やたらシナを作ったメイドさんが想起される。「お断りします」「金貨で、これだけ出そう」 と、卿が指で提示したのは、かなりの額。「え? モデルするだけで、こんなもらえるんですか!?」「もちろん!」 ここで、ハッとなる。「……いかがわしい絵じゃ、ないでしょうね?」「ノンノンノンノン! 極めて健全! ちょーっと、ポーズには凝ってもらうけどね」 まあ、あのメイドさんぐらいのシナは作らされるということね。「……やっぱり、メイド服だったりしますか?」「もちろん!」 モロオさん、サムズアップ。「モロオ家特有の、あの?」「もちろん!!」 さらに、サムズアップ。 今、俺の両耳で、それぞれ天使と悪魔が囁いている。「……ぬ~! じゃあ、これでどうだ!」 額を上げるモロオさん。 悪魔が、勝った。 ◆ ◆ ◆「モロオさん、その、動かないというのも、しんどいですね……」「喋らないで。絵がおかしくなっちゃう」 注意され、無言になる。 いやはや。格好だけでも恥辱だが、長時間同じポーズを取り続けるのが、ここまでしんどいとは。「いやー、ロイ氏みたいな、イケメンメイドさんを描くのは、初めてだよ。僕、そっち系に目覚めちゃうな、これ。こういう感じの子、新しく雇おう」 彼は好き勝手に喋るが、動くなと言われてるので、言葉を返せない。 やれやれ。 ◆ ◆ ◆「フィニッシュ!」 筆を置く。「もう、動いていいよ。どう?」 イーゼルの向こうに回り込み、自分自身を見てみる。 ……美人だ。凛々しい美
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第六十二話 魔導剣士ロイ、南へ

「突然だが、諸君」 朝食に、おなじみのサンドイッチを取っている最中、不意に切り出した。「しばらく、南へ行かないか?」「ほんとに唐突っすね。南といっても、どんぐらい南っすか?」 サンが、五つ目のサンドイッチを飲み込み、問うてくる。よくまあ、朝からそれだけ入るな。「南方にパルピアという海洋国があってな、温暖で、風光明媚らしい。聞くところによると、近々、海神祭という祭りが開かれるとか」「それは、楽しそうですねえ。ロイさんの女性用水着姿を、目に納めるチャンスですしね!」 ほわわんとしているクコの脳天にチョップを入れる。まったく、人の苦労も考えないで……。「ここも、エーデルガルドほどではないが、寒さが厳しくなる。どうだろうか?」 決を採ると、満場一致で賛成。 「蒼い三日月亭」の女将さんたちを始めとして、普段お世話になっている人々に挨拶して回る。「いやはや。あの巻物に、こんな効き目が。驚きですな。南方の魔物の報告、期待してますぞ」「えー、行っちゃうのかい? せっかくロイ氏、女の子になったのになあ。あ、パティたん。ロイ氏の水着姿、スケッチしてきてよ!」「そうか、南方へ。無論、春には戻ってくるのだろう? そうしたら、またデエトしようではないか! 一足飛びに、結婚でもいいぞ!」 個性的なお三方へも、ご挨拶を済ませ、いざ南へ! ◆ ◆ ◆ パルピアへは、往路二週間ほどで着いた。 街は国の総力を上げて海神祭の準備を進めており、実に賑やか。街の雰囲気は、異界でいうバリやフィジーといった風情だ。 街へ入ると、歓迎の花輪を首にかけられ、ハグされる。 空も、海も、人柄も明るいな。「姉貴ー! ひと泳ぎしようぜー!」「その姉貴っての、慣れんなあ……。お前、水着持ってないだろう。それに、腹ごしらえをまずはしたい」「あ、たしかにお腹空きましたね」 パティが同意する。 さすがのパティも、この常夏の国ではアーマーを外しており、どうにも恥ずかしげだ。 途中の宿場町では色々食ってきたが、質素なものばかりだった。ここは、豪勢にパーッといきたい。「となれば……姉貴の、直感タイムっすね」「なるべく、期待に応えよう」 しばらく街を物色していると、とある店にピン! ときた。「ここ、どうだろう?」 「紅い珊瑚亭」。文字通り、軒
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第六十三話 魔導剣士ロイ、水着を選ぶ

「お客さんたチ、海を愉しむなラ、いいガイドつけるヨ!」「そうだな。街を歩いてみたが、ところどころ現地語がわからない。でも、ガイドなんて、そうすぐ見つかるものなのか?」「ヒカタ~! ガイドしてあげテ~!」 奥に呼びかける、店員。 「ハ~イ」という元気な声とともに、サンぐらいの歳の女の子が、奥から出てきた。「ヨロシクデス! ヒカタいいマス! アタシに任せれバ、街のことは楽しみ尽くせるヨ!」 やあ、店員さんとよく似ている。娘さんかな?「海、行くデスカ?」「そのつもりだが」「水着、持ってマス?」 そういえば、肝心なものを買っていなかった。「買ってなかったな」「じゃあ、買いにイキマショウ! オシャレな店、知ってマス!」 ポンと、手を打つヒカタ。 街を歩いていると、ヒカタも含めて、大半が黒髪褐色肌なのだが、色白でやたら髪色がカラフルな人間……それも女性が海や川を泳いでいるのを見かける。「ヒカタ、あのカラフルな人たちは?」「アレはマーメイド、ヨ! パルピアは、人間とマーメイドが、キョウゾンしてるノ!」 へー。女ばかりで、子作りをどうしてるのか気になるが、サンと同じぐらいの歳のヒカタに訊くのも、気が引けるな。「着いたヨ!」 こりゃ、なんとも……。見事に女物ばかりだな。 こうやって、ときどき自分の境遇を思い出させられるのが泣ける。「ロイさ~ん、チョ~ローライズのセパレートがありましたよー」「そうか、自分で好きなだけ着るといい」 変態親父チックな好色アイで、小さな布をびよんびよんさせているクコに、ピシャリと言い放つ。「え~? こういうのは、ロイさんみたいなイケメンガールが着てこそ、似合うんですよう~」 無視。クコは、「む~」と言いながら、あっちへ行ってしまった。「ロイ君。お姉ちゃんは、これにしようと思うの」 ナンシアが掲げているのは、青い紐なしチューブトップに、クリーム色のローライズホットパンツ。……正直、いつもの格好と大して変わらん。 だが、こういうときはこう言うもんだ!「ああ、すごく似合ってると思う!」「ほんとー!? じゃあ、これに本決め~!」 るんたったと、会計に向かう彼女。しかし、本来、こんなキャラだったんだな。猫……いや、狼被ってたのか。「姉貴~。これ、どうっすかね?」 サンが取り出したのは、黄色のセパレート
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第六十四話 魔導剣士ロイ、南海を満喫する

「ところで、海神祭というのはどういう祭なんだ?」 せっかくガイドがいることだし、ふと気になったことを尋ねてみる。「ロード・カナロアという神サマを鎮める祭だヨ。ロード・カナロアは海の恵みと安全を守ってくれる神サマ。でも、百年に一度、とても荒ぶってしまうヨ。それを、マーメイドの七人の歌姫ガ歌で鎮める祭ナノ!」 へー。「なんですか、それは。邪し」 フランの脇腹に肘鉄を入れる。宗教戦争の火種を撒くんじゃないよ。「そういえば、あちこちに飾られているエイが、ひょっとして?」 街のそこら中に、作り物のマンタが、吊るされたり置かれたりしていて、気になってたんだ。「ソ! これが、ロード・カナロアサマのお姿ネ!」 フランの信仰するオルナウとは違って、土着の生き神ってところか。「おー! すっげー! 姉貴、バーブルよりさらに、水がきれいだぜ!」 感動するサンの視線を負うと、砂浜の向こうに、青い……いや、碧い海が広がっていた。 バーブルに行ったのは季節外れだったから、海水浴は楽しめなかったが、これは泳ぎがいがありそうだ。「ひゃっほー!」 先陣を切って、海に突進するマイシスター。元気だねえ。「ロイくん、ロイくん、あれやりましょ、あれ! やったな、こいつぅ~! ってやつ」 ああ、恋愛小説のお約束らしいな。「まあ、そのぐらい構わんが」「じゃあ……それ!」 わぷ。じゃあ、お約束で返そうじゃないの。「やったな、こいつぅ~!」 ばしゃあ! きゃっきゃと、はしゃぐナンシア。「あの、やめてください!」 突然何かと思えば、パティが男に絡まれていた。「すまん、ナンシア。行ってくる」 男とパティの間に割って入る。「ナンパか? 嫌がってるだろう、やめろ」「おほ、今度はオットコマエなネーチャンきたー。あんたでもいいぜ。ちょっと、あそ」 問答無用で、投げ飛ばす。水しぶきが上がり、男がげほげほと海水を吐き出す。「なにしやがんだ! 女だと思って、優しくしてりゃ!」 今、一番腹の立つセリフだな。「まだ絡むなら、金○蹴り飛ばすぞ。そのシュミがあるか?」 俺が本気であることを悟ったらしく、「ちくしょー! このアバズレがー!」と捨て台詞を残して、男は逃げていった。 まったく、女というのは気苦労が絶えないな。皆の気持ちが、わかるようになってきたよ。……ク
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第六十五話 魔導剣士ロイ、海神祭・本祭を観覧する

「お客サン、お客サン! 今日は、海神祭の本祭だヨ!」 テーブルで朝食のパンケーキなど食んでいると、奥から出てきたヒカタが、腕をぶんがぶんがと振りながら、さも嬉し楽しそうに言う。「本祭ってのは、どう違うんだ?」「歌姫サマたちが、歌うんダヨ! ノンキに朝ごはん食べてる場合じゃないヨ!」 キラキラした瞳を向けてくる。「そうは言うが、祭りを楽しむにも体力がいる。昨日、痛感した。というわけで、食い終わるまで待ってくれ」 もぐもぐ。「モー! いい場所なくなちゃってモ、知らないヨ!」 そんなに大盛況になるのか。食べるスピードを、少しアップしよう。 ◆ ◆ ◆「姉貴~、イカ焼き食いてえ!」「お前、まだ腹に入るのか。呆れたな」「そういうのはアトだヨ! はやク! はやク!」 ヒカタに急かされる。いやはや、どんだけ人が集まるんだ?「ときにヒカタ。海神祭にやたら詳しいようだが、ひょっとして、毎年やってたりするのか、これ?」「ソダヨ!」「ロード・カナロアが暴れるのは、百年に一回じゃなかったか?」 なんで、毎年やってるんだろう。「普段ノ海神祭は、ロード・カナロアサマに、カンシャを捧げる祭ダヨ! 今年は、ソレガ魂ヲ鎮めルお祭に、なルだけなんダ!」 へー。「お。ここが歌唱ステージか。すでに、結構人が多いな。「ヨカッタ! まだ空いてル! 割りと、前のほうデ見れるヨ!」 うはあ。これで空いてるのか。彼女が急かしたわけが、わかった。 今は、ステージの設営の仕上げのようだ。人間の女王と思しき女性が、貴賓席に鎮座してる。 人魚姫たちのライブだから、ステージは海中で、我々はぐるりとそれを囲んで見る形になる。「九時の鐘とともニ、女王サマとルティアサマから、開会のおコトバがアルヨ!」 今、何時頃だろう。「ルティア様というのは?」「歌姫七人のリーダーネ! トッテモ、ステキな方ヨ!」 へー。 そこへ、鐘の音が鳴り響く。 イルカに乗った海兵や、トライデントで武装したマーメイドらに囲まれた、ものものしい警備の中、七人の女性が姿を表す。「これより、海神祭、本祭を開催します。歌姫ルティア、みなに言葉を」「みなさん、ようこそお集まりくださいました! 歌姫のリーダーを努めさせていただくルティアです! 今年は、ロード・カナロア様に感謝と祈りと歌を捧げ、
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第六十六話 魔導剣士ロイ、海魔王と相対する

 敵は、魚の頭に鱗の生えたグロテスクな人型の魔物だ。それがまた、槍持って、グロい魚に乗っている。「あれはなんだ? シロン!?」「ハイッ! ディープ・ワンです! よく船を襲ったりしてます! シロンたちも、手を焼いてます! もうね、○しますよ。死は救済なんで」 最後に物騒なこと言ったぞ、このイルカ。 それはともかく、接敵だ。海兵隊と一緒になって、突撃! 得意の重武装が使えないパティは、辛そうだ。代わりに、あまり使う機会のない長槍が大活躍しているが。 実は、この状況がやりにくいのは、パティだけではない。というか、俺が負けず劣らず辛い。 奴らは、全身が海水で濡れている。そこに、こやつらへ雷王撃砕嘯を叩き込んでやるとする。 どうなるか? 電撃のエネルギーは、表面の海水を伝って海に流れてしまい、ただの無駄撃ちで終わる。 フェイバリット魔法が使えないとは、実にやりづらい。 とりあえず、賦術火炎刃で友軍を支援だ。 こいつの炎は、水中でも炎上し続けるスグレモノ。焼き魚を作りまくってやろうじゃないの。 人馬一体ならぬ、人イルカ一体となって、怪魚野郎どもを斬り伏せていく。 ほんとに、シロンのコントロールは上手いな。とても安定して戦える。 しかしこいつら、倒しても倒しても湧いてくるな。海中の連中はマーメイドに任せて、水上に出てきたのを、もぐら叩きだ! ◆ ◆ ◆ かなりの戦闘時間が経った。水上は、敵味方の死体で大変凄惨な有様となっている。 そこに、身長二メートルはあろうかという、ボス格っぽいディープ・ワンが、護衛を多数連れて浮上してきた。 手にした石版をなぞりながら、魔法の詠唱をするボス。すると、敵味方の死体が、黒い光 (矛盾した表現だが)となって石版に集まり、嫌な予感のするエネルギーを蓄えていく。 なんかな。なんか嫌な予感しかしないんだ。しかも、不思議と既視感を強く感じる。 ボスの詠唱しているのは、理学魔法……俺のような魔導書持ちが使うやつで、その内容の禍々しさから、間違いなく禁術・暗黒魔法。しかも、詠唱を必要とするということは、儀式魔法だ。大量の死体が、生贄として集まるのを待っていたのだろう。「散開! みんな散開しろォ! なにか、とてつもないやつを呼び出すつもりだッ!!」 
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第六十七話 魔導剣士ロイ、南海の大決戦をする

 さて、どうしたものか。 ……まずは、ディープ・ワンと、フォルネウスを切り離したい。「ヘイ、フグ野郎! シャックスをぶっ殺したのはこの俺よ! 黒い血しぶき上げて、ど派手に逝ったぜぇ!! こっちに来いよ! 派手に殺ろうぜぇ!」 左人差し指をおっ立てて、海兵隊と反対方向にシロンに向かってもらう。 黒いゴーグルを着けてるのでよくわからんが、「ギヌロ」というオノマトペを発する勢いで、こちらを睨むフォルネウス。「てめええかあああ!! コロス! ぶっ殺し尽くゥゥゥすッ!! ついてこい! ディープ・ワンども!!」 挑発には成功したが、速い! ディープ・ワンを連れて、こっちに向かってくるものの、海兵隊がディープ・ワンを背後から襲撃! ディープ・ワンも応戦体勢となり、フォルネウスとディープ・ワンの切り離しに成功する! サンキュー、隊長! 問題はフォルネウス。流線型と程遠い体型のくせに、速い速い。ここで追いつかれたら、なんのためにディープ・ワンと千切ったのかわからん。「シロン! 頼む!」「あいっ! 頑張りますっ!!」 よし! 少しずつ、本隊と引き離せている。 今のうちに、作戦を考えよう! とにかく、意外な展開の連続で、ノープランときてる。俺も頑張れ! 繰り返しになるが、全身を海水でコーティングしてるフォルネウスに電撃は効果が薄い。十八番の雷王撃砕嘯が使えないのはキツイ。 残る手は、火炎か、氷結か。……よし、無理やり再現の見様見真似だが、あれを試してみよう。「水精水上浮!!」 まずは、三次元の動きを封じさせてもらう! こいつは、沈めなくなる魔法だ。アドバンテージを奪わせてもらうぜ!「各自、フォルネウスを包囲! クコは後方待機! 全方位から攻撃!」 五方向から斬る・殴る・刺すすりゃ、誰かは当たるわけだが……。「させるかよォ! クソ○ッチどもぉぉぉッ!!」 津波を起こすフォルネウス! くそ! バランスが!「水精水上浮!!」 これで、沈まなくなる。とりあえず、海にドボンだけは避けよう。「小賢しいなァ! これならどうよォッ! 水抉穿槍撃!!」 今度は、水の槍が多数襲いかかってくる!「シロン、頼む!」「あいっ!」 見事な体捌きで、水槍を避けていく。頼も
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第六十八話 魔導剣士ロイ、女王のもてなしを受ける ―前編―

「姉貴~。女王サマのパーティーに行こうぜ~」「郵便の手配をしてからな」 現在、パティと一緒に、急ピッチでベイシック卿への手紙を書き進めている。 パティはイラスト担当だが、元から丸っこいやつだったので、そう実物と変わらないデキになるだろう。 「ベイシック卿に報告する」「女王様の歓待にも応じる」 「両方」やらなくっちゃあいけないってのが、「冒険者」の辛いところだな。「ロイさん出来ました!」「サンキュー! こっちもフィニッシュだ! みんなは、一番早い馬車を手分けして手配してくれ!」「わかりましたわ!」 フランを筆頭に、皆が外へ出ていく。「おつかれ-」 手紙を書き終えたので、パティと、手のひらをぺしっと打ち合う。「いえ、ボク大したことは」「しかしなんだな、この状態の俺だと平気なんだな」「あ、そうですね……。やっぱり、女性だというのが重要なんでしょうか」 複雑な心境だな。「ロイくん、ルンドンベアまで六日で行ける馬車が見つかったよ!」 おっと、戻ってきたパティから吉報が。「でかした! 素性は信用できるのか?」「馬車ギルドのAクラス証持ってた!」「よし、そいつに依頼だ!」 さっそく、フォルネウスのゴーグルとヘッドフォン、そして手紙を預ける。 卿への要求は、シャックスの報酬と同じだから、嫌とは言うまい。「さて、女王サマの歓待に応じる用意ができたぞ」「ロイさん、まさかその出で立ちで出席なさるつもるじゃありませんよね?」「え……?」 フランが、ジト目で見つめてくる。「やーっておしまい!」「ほいほいさー!」 しゅびっと、敬礼するサン。 フランの号令の下、身ぐるみ剥がされる俺でした。あーれー。 ◆ ◆ ◆「ほんとに、この格好で出席するのか……?」「当たり前でしょう」 フラン師匠の有無を言わせぬ言葉に。とほほ。「お初にお目にかかります。『スティング・ホーネット』のリーダー、ロイ・ホーネットでございます」 階段を上がり、女王様の眼前で、黒いパーティードレスに身を包み、カーテシーをする。いつの間に、こんなの用意してたんだ、こやつら。 以下五名、観劇の際に用いたドレスで、女王に礼をする。「いや、しかし。女ばかり六人のチームとは、女性を尊ぶパルピアとしては、愉快な限りよ。着席せい」 齢三十半ばと思われ
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第六十九話 魔導剣士ロイ、女王のもてなしを受ける ―後編―

「最近はロコモコ人気で牛肉に押されつつあるが、パルピアでは豚のほうが伝統的食材での。こうして、吉事に振る舞われる」「なるほど。これは良い味わいです」 なんだろうな。やはり土着。現地で親しまれてきた味を感じる。特に、このポイなんかそうだ。ほかではちょっとお目にかかれない。珍しい体験ができたなあ。 「紅い珊瑚亭」の食事も良いが、こういうのも、まさにオツ。 ここで、酒をいただく。……カクテルではなく、ココナッツそのものの酒だ!「お気に召したかな?」「はい。どれも、ラドネスブルグでは味わうことのないもので……。大変美味しいです」 続いて出てきたのは、緑色のペースト。「こ、これは……」 フランが固まってるが、こちらは構わずいただく。 ……なにかの葉を蒸したものと、タコやイカ。それをココナッツミルクで和えている。 見た目のわりに、コリコリしてて美味い。酒が進むな、これは。 躊躇していたフランも、美味そうに食べる我々を見て意を決したか、えいやっ! と口に運び、その美味を理解したようだ。「陛下、こちらはなんという料理ですか?」 まさしく、食いついたフラン。「スクイッド・ルアウという。ルアウ……タロイモの葉を蒸して、柔らかくしたものだな。それにタコやイカの細かく切ったのを入れ、ココナツミルクで和えたものだ。見た目の割に美味かろう?」「こほ……はい。正直、最初躊躇しましたが、食べ物は見た目で判断してはいけないと理解いたしました」 フランさん、すっかり気に入ったようだな。 次に出てきたのは、何かの葉包み。「それは、一枚目の葉だけを除いて、全部食べてくれ」 中には、更に葉包みが。鶏肉に豚肉、後は、カツオか? これを、先ほどのルアウ……こちらはペースト化してないが、それで包んでいる。 シンプルに、肉の三重奏が美味い。しかし、このルアウというのはいい香りがするな。「それは、ラウラウという。外国人にも食べやすいと思うぞ」「はい。実に美味しいです。城下町の新興料理もいいですが、伝統食も良いものですね」「そうだろう、そうだろう。私は、この味が失われつつあるのが、悲しくてな」 少し、座がしんみりする。「いや、これは失敬。盛り下げてしまったな。まだまだ、料理は続くぞ」 こうして我々はパルピアの伝統料理を堪能していく。どれも美味い。たしかに
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第七十話 魔導剣士ロイ、盲点をつかれる

「お久しぶりです、ベイシック卿」 ルンドンベアに帰ると、さっそくベイシック邸訪問。 急いできたところに、茶の潤いが染み渡る。「久しいですな。さっそく、用件を切り出すとしましょう、アハ=イシュケでの来たる学会で、皆さんに、シャックス、フォルネウス両者について、発表の補助をしていただきたいのです」「なるほど。確かに、もっとも詳しく話せるのは、我々です。で、日程と報酬ですが」 アハ=イシュケは、学術で有名な国家だ。 茶を口に含む。「明後日にでも、到着できればと」 茶を吹く。 オイオイ。オイオイオイオイオイオイ。 早馬飛ばしても、三日はかかる距離だぞ。「ごほっ。失礼しました。その、あまりにも無茶なスケジューリングでは……?」 メイドさんが、しぶきを拭ってくれる。「ああ、みなさんは、南方を旅していたからご存じないのですな。テレポーターが設置されましてな」「テレポーター」 つい、オウム返ししてしまう。「相互の都市を、一瞬で行き来できるというスグレモノです。利用料は馬車よりかかりますが」「それはすごい話ですね」 相互に、一瞬で相手の喉元に大量の兵を送れるのだ。相当な信頼と覚悟がないと、できない行為。 アハ=イシュケには、イーゲン陛下の孫が嫁いでいるという。また、アハ=イシュケからも、第三王子に王女が嫁いでいたはずだ。 互いに人質を取っているようなものだが、外交というのは、情ではなく、打算の上にあるもの。切ない話だが。「日程の件で忘れそうになりましたが、冒険者としては、先立つものが入り用でして」「これでいかがですかな?」 ベイシック卿が、額を告げる。テレポーターとやらの費用は持っていただけるとのことで、可もなく、不可もなくといったところ。 一同も異存なさそうなので、引き受けることにした。 ◆ ◆ ◆「姉貴ー、どこ行くんだよ」 青い三日月亭で、出かける用意をしていると、サンに問われた。「師匠のところだ。この体、なんとかならんかとな」 すっかり肉付きの良くなった、尻を叩く。「あ! じゃあ、オレも一緒に行くっす!」「ゆっくり休んでて、いいんだぞ?「水臭いこと、言わないでくれっすよー」「じゃあ、行くか」 そんなこんなで食堂を通ると、一行にも見つかり、なぜか六人で行くことになってしまった。 ◆ ◆ ◆「師匠、ロイです」
last updateLast Updated : 2026-07-23
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