つくづく思う。嫌いな相手と口を利くのは、これほどまでに気分が悪くなるものなのだと。それに何より、二人はすでに離婚協議書にサインを済ませ、離婚届の手続きも先生に頼んでいるところだった。それなのにこの男は、まだ彼女が「ただの当てつけ」と思い込み、当然のように命令口調で話しかけてくる。「何か勘違いしてない?あなたは今、どんな立場から私に命令しているつもりなの?」宥里は眉を上げ、冷ややかな目で知輝を見据えた。その眉間に浮かぶ苛立ちは、かつての知輝のそれとまったく同じだった。知輝の瞳がかすかに揺れた。宥里がこんな表情を見せたのは、これが初めてだった。「俺はお前の夫で、お前の息子の父親だ。それ以外に、俺がどんな立場だと言うんだ?」宥里が「その立場も、もうすぐなくなるけど」と言おうとしたその時、病室のドアが勢いよく開き、彩葉が血相を変えて、まっすぐ宥里のほうへと飛びかかってきた。誰もが反応する間もなく、彩葉の両手はすでに宥里の襟元を掴んでいた。「この役立たず!あなた、陽太のこと、どうやって面倒見てたのよ!入院までさせて!」真っ先に我に返った知輝が、慌てて彩葉の手を宥里の襟元から引き剥がし、力ずくで彼女を引っ張った。「彩葉、何をしてるんだ!」だが彩葉は知輝には目もくれず、なおも宥里を睨みつけたまま、鋭く詰め寄った。「あなた、母親としての自覚あるの!ないなら出ていってよ!本当に後悔してる。あの時、あなたを陽太の母親に選んだこと!」「……何を言ってるの?」「彩葉!黙りなさい!」富美子は体面も何もかまわず、暴走する彩葉を引き剥がした。「あなた、正気なの?ここは病院よ!」「びょ……病院!」彩葉はそこでようやく我に返った。「陽太、大事な陽太!」彩葉は富美子の拘束を振りほどき、陽太のもとへと駆け寄った。青白い小さな顔と、苦しげな表情を見た途端、涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。ちょうどそのとき、陽太が目を覚ました。陽太が目を覚ましたのを見て、皆が一斉に周りへ集まった。彩葉は陽太に一番近い位置に座り込む。「陽太、目が覚めたのね、どこか痛いところない?うちの陽太、可哀想に……陽太……」「叔母ちゃん、うるさいよ。叔母ちゃんの声で起きちゃったじゃないか」陽太は不満げに小さな顔をしかめ、開口一番、文句を口にした
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