しかも、どの原稿にも日付とともに【K-07】という署名が記されていた。照美はみるみるうちに顔面から血の気が引いていく。思わず机の縁を強く握りしめ、彼女は声を荒らげた。「だから何よ!あなた、特許でも取ってあるとでも言うの?特許もないくせに、いくら騒いだって無駄でしょう」けれど、照美を心底動揺させたのは、そのあとの宥里の行動だった。すべてのスキャンデータが画面に映し出された直後、続いて学術誌の誌面が表示された。それを目にした瞬間、照美の脳裏には一つの言葉しか浮かばなかった。終わった、と。宥里は一同の前に立ち、静かでありながらも射抜くような眼差しで場を見渡し、口を開いた。「この論文は、四年前に私が『精密計測とセンシング技術』という学術誌に発表したものです。国内での知名度は決して高くなく、紙媒体版はすでに廃刊になっていますが、ウェブ版は今も閲覧できます」画面に映し出された発行日を見て、一同は息を呑む。たしかに四年前の日付だった。そして何より彼らを驚かせたのは、その論文の著者名が「K-07」となっていたことだ。「K-07って……まさか、センター長のこと?」誰かがぽつりと漏らした。その瞬間、会議室はかつてないほどのざわめきに包まれた。無理もない。それほどまでに衝撃的な事実だったのだ。「つまり、宇野さんのプロジェクトは、センター長が四年前に発表した理論を盗用したものだった、ということですか?」「しかも再現しきれず、肝心な部分を端折って、危うく大失敗するところだったと」「問題は、センター長がいなければ、所内の誰一人としてこのデータの問題点に気づかなかったということですよ」「そこが問題なんですか?問題は、宇野さんが盗用したってことですよ。研究所の中核研究員なのに!」その一言を境に、研究員たちの間に堰を切ったように怒りの声が上がった。「わ、私は……私は……」照美はよろめき、飛び交う非難の声に圧倒され、今にも倒れそうになった。幸い、背後にいた和孝がとっさに彼女を支えた。だが、憐れみと痛ましさの入り混じった和孝の眼差しを目にした瞬間、照美の中で最後の糸がぷつりと切れた。「そうよ!参考にしただけで何が悪いの!自分がK-07だと主張すれば、それで通用するとでも思ってるの?だったら私だってK-07よ!
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