A棟のガラス戸。それを押し開ける。ホールはほとんど誰もいない。掲示板の前に数人の学生がたむろしている。教授が一人、小脇に大量のコピーを抱えて急ぎ足で横切る。ここの静けさは違う。より重く、より濃い。白い壁が蛍光灯の冷たい光を反射し、すべてが非現実的に感じられる。覚めることのできない夢の中のように。私はトイレへと向かう。座って、息を整え、鏡で自分の顔を見て、私はまだ私だと、何も変わっていないと、他の日々を乗り越えてきたように今日も乗り越えられると、自分に言い聞かせるために。トイレのドアが軋む。漂白剤と安物の石鹸の匂いが喉を突く。普段は私を安心させる馴染みのある匂い。清潔、秩序、普通であることを示す匂い。でも今日は、何もかもが普通じゃない。洗面台の前で立ち止まる。陶器の縁に本を置き、鏡に目を上げる。私の反射が私を見つめ返す。完全には自分だと認識できない。目の下の隈は昨日より深く、肌はより青白く、唇はより乾いている。髪は艶がなく、こめかみを引っ張るように急いで一つに結んだポニーテール。疲れて見える。疲れている以上だ。消耗している。空っぽだ。そして、それを見つける。私の後ろの壁、石鹸ディスペンサーの上に、黒いマジックで書かれた落書き。丸みを帯びた、ほとんど子供っぽい文字。その言葉の暴力性とは不釣り合いなほどに。雌狼エロイーズ、犬の子を孕む私は凍りつく。ティッシュペーパーを持っていた手が、途中で止まる。心臓が一瞬止まり、それから再び動き出す。より強く、より速く。握りこぶしのように肋骨を叩きながら。雌狼。犬の子を孕む。言葉が目の前で踊り、ぼやけ、再び鮮明になる。一度、二度、三度と読む。それが本当に存在するのか、疲れ果てた私の想像の産物ではないのかを確かめるかのように。
Terakhir Diperbarui : 2026-08-01 Baca selengkapnya