その朝、リュゼル・クレインの名は、王都の罪人台帳へ刻まれた。 大神殿前の広場には、夜明け前から人が集められていた。 商店の軒先にはまだ朝露が残り、石畳を渡る風には秋の冷たさが混じっている。白い階段の上へ立った神官が、封蝋の押された王国布告を広げた。 左右には槍を持つ兵士が並ぶ。 掲示板の中央へ、一枚の似顔絵が打ちつけられた。 青みがかった灰黒色の髪。淡い灰青色の瞳。目元にかかる長い前髪。 顔立ちはリュゼルに似ていた。 だが、描かれた目は不自然なほど暗く窪み、口元には人を妬むような歪みが加えられている。絵師が本人を見たのではない。渡された言葉から、反逆者らしい顔を作ったのだ。「リュゼル・クレイン。辺境生まれの孤児。《看取り人》の職能を持ち、聖印勇者一行に雑役として同行」 神官の声が、静かな広場へ響く。「同人は天葬奈落第六十二階層において、勇者セルヴァン・アルディオスへの嫉妬から命令へ背き、封印区域へ侵入した。制止を振り切って祭壇の剣を抜き、階層主を目覚めさせ、同行者四名を故意に危険へさらした」 集まった人々の間に、ざわめきが広がる。「勇者様に拾ってもらったくせに」「恩を仇で返したのか」「外れ職能が神器を欲しがったらしい」 囁きは、布告よりも速く形を変えた。 魔物の力へ魂を売った。 聖女へ襲いかかった。 初めから魔王軍の手先だった。 誰も見ていない奈落の出来事に、見てきたような言葉が足されていく。「同人は逃走の末、奈落深層へ転落。死亡したものと推定される。しかし、その罪が失われることはない。王国並びに大神殿は、リュゼル・クレインを反逆者と認定し、名誉、身分及び王国臣民としての権利を剥奪する」 死亡したものと推定される。 それは裁きを受ける者が、ここへ立つことはないという宣言でもあった。 違う、と声を上げる口は闇の底にある。 何を言っても届かない場所にいるからこそ、人々は安心して石を投げられた。 兵士が似顔絵の下へ、反逆者を示す黒い札を打ちつける。 槌の音が三度、乾いて響いた。 * 王都の南外れにある孤児院へ兵士たちが現れたのは、昼前だった。 古い煉瓦造りの建物には、焼いた豆と薄いスープの匂いが漂っている。庭では年長の子どもたちが洗濯物を干し、幼い子は欠けた木馬を奪い合っていた。 六人の武装した兵士が
Dernière mise à jour : 2026-07-27 Read More