爆発の煙が洞窟から完全に消えるまでには、しばらく時間がかかった。焦げた金属と薬品の刺激臭が湿った岩肌へまとわりつき、床にはフィオルが投げた右腕の破片が散らばっている。白い人工骨らしき欠片、細い金属線、ひしゃげた関節部品。その中心に座ったフィオルは、自分の腕が一つなくなっていることなど大した問題ではないように、左手だけで破片を一つずつ拾い集めていた。爆発を起こした本人が一番落ち着いているという異様な光景に、イセラは湾曲刀へ添えていた指をいつまでも離さず、ネフィリアも少年の細かな動きを観察するように紫紺の瞳を細めていた。「敵意はないみたいだな」リュゼルが低く言うと、イセラは鼻を鳴らした。「敵意がないまま人を吹き飛ばす奴のほうが面倒だ」「それは否定できない」フィオルは会話を聞いているのかいないのか、床から拾った金属片を光に透かしている。欠けた部品を使えるものと使えないものへ分けているらしく、使えないと判断したものは自分の横へ無造作に積んだ。その肩口から肘へ続く接合線には薄い赤色の液体が滲み、少しずつ腕を伝って腰の布を濡らしている。血だけではないと本人は言っていたが、人間の出血によく似ている以上、リュゼルには放置する気になれなかった。「フィオル、その腕を見せて」「腕?」少年は自分の右側を見てから、そこに腕がないことを思い出したように目を瞬いた。「肘のほうだ。液が漏れてる」「ああ。まだ閉じてないからね」「止める」リュゼルが背嚢から布と薬草を取り出すと、フィオルは不思議そうに首を傾げた。拒否する様子はないものの、自分へ何かをしてもらう理由が理解できていない顔だった。「どうして?」「どうしてって、壊れてるから」「直せばいいよ」「だから、今その前に漏れてるものを止めるんだ」「あとで部品をつける時に全部開けるよ?」「それでもだ」リュゼルはフィオルの前へ片膝をついた。接続部分へ近づくと、金属と人工骨の隙間に人間の筋肉へ似た淡い赤色の組織が見える。完全な機械ではない。生きた組織と錬金術の素材をつなぎ合わせて造られているらしい。触れる前に一度フィオルへ視線を上げた。「触るぞ」「うん」許可を得てから周囲の汚れを布で拭う。赤い液体の一部は血で間違いないらしく、温度もある。フィオルはリュゼルが傷口を洗っている間も眉一つ動かさず、むしろ何をしているのか
Terakhir Diperbarui : 2026-08-27 Baca selengkapnya