「っ、先生!妹は…あさひは…」 「手術は成功いたしました。ただ、頭を強く打っていましたので、目が覚めるまでに数日はかかるかもしれません。それと、妹さんは事故の衝撃で右側のあばら骨を2本、右足の骨が折れていますので、しばらく入院していただくことになります。」 「っ、本当に、ありがとうございます…妹を助けていただいて…」 時刻は夜中の3時を回っていた。 集中治療室に行くと、痛々しい姿の妹がベッドで眠っている。 「どうして、こんな事になったのよ…」 夕也くん、愛華ちゃん、大和くんの3人を、兄貴が車で送ることになった。 「夕也くん。あさひの意識が戻ったら、すぐ連絡する。」 「お願いします…」 ―夕也視点― 事故から5日が経った。 あさひの意識はまだ戻っていない。 家族ではない俺は面会がまだ許されず、どうしようもない不安を抱えている。 仕事を終えて更衣室で着替えていると、電話が鳴った。 電話の相手は、そらお兄さんだ。 「もしもし!?」 「夕也くん!今あさひの意識が戻った!病院に来れるか!?」 「は、はい!すぐに向かいます!」 電話を切って足早に駐車場へ向かい、車に乗った。 1時間ほど車を走らせて、病院に着いた。 あさひの病室へ向かうと、険しい顔をしたそらお兄さんが病室の前に立っていた。 「お兄さんっ、あさひの意識は戻ったんですよね…!?」 「意識は完全に戻った、ただ…」 あさひの病室に入ると、あさひはベッドの角度を変えられ、ベッドに体を預けたまま上体を起こされていた。 「あさひ、よかった…助かって…」 「…そらにぃ、このお兄ちゃん、だあれ?」 「え…?」 おかしい。 普段のあさひはこんな話し方をしない。 そらお兄さんのことも、『そら兄ちゃん』と呼ぶのに、『そらにぃ』と呼んでいる。 まるで、子供のような話し方だ。 それに…どうして俺のことが分からないんだ。 「あさひ…?夕也だぞ?」 「?」 「夕也くん、1回出ようか。」 病室の外へ出て、そらお兄さんが話し始めた。 「あさひは…記憶障害を起こしてる。」 「記憶、障害…?」 「事故の影響で、あさひは18年分の記憶が抜けている。」 18年。 つまり、俺と付き合っている事も、俺と出会った事すらも、全て忘れてしまっているということだ。 「そんな…」 「す
Last Updated : 2026-07-27 Read more