Tous les chapitres de : Chapitre 31 - Chapitre 40

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031 リィナと王陛下

 私は謁見の間に呼ばれていました。 ルカが捕まってしまったというのに、遠縁でもあるからかシルヴェスタ陛下に呼び出されていたのです。「リィナの話は侯爵から聞いておるぞ。病状の方はどうだ?」 暢気なものです。私は王子たちと又従兄弟になるのですけれど、割と親身になってくれるので陛下のことは好きだったりします。 だけど、今はそんな場合じゃないの。ルカを捕まえちゃうってどういうことなの?「陛下、ご機嫌麗しゅう。私は元気ですわ。でも、それより私の相方が捕らえられてしまったのです。勇者を騙ったとかで……」「むぅ、聞いておる。何でもルカ・シエラ・アルフィスの名を騙ったそうだな?」「いや、捕まった彼こそがルカ・シエラ・アルフィスですから!」 不敬も考えず、私は訴えています。捕らえられた者こそが本物の勇者なのだと。「ルカという勇者には既に会ったぞ? 身分証も持っておったが?」「違うのです! ルカは王都に着いた折り、悪漢に襲われ身ぐるみ剥がされてしまったのです。それはもうスッポンポ……いえ、肌着すらない状態でして……」 説明って難しいわ。特に彼はブラブラさせてたし。どこまで話すべきなの?「勇者だというのに、悪漢に負けたのか?」「それには事情がありまして。普通ならば負けません。何しろルカは昨日王都を襲ったフライリザードを私の目の前で倒したのですから」「おお、その話なら知っておるぞ! 何でも真っ二つになって焼かれていたと報告を受けておる!」「それこそがルカの仕業です。ルカは勇者であり、炎の使い手ですから。包丁一本でフライリザードを一刀両断にしてしまったのですよ」「包丁で仕留めただとぅ!?」 何だか武勇伝を語るのって楽しい。まるで私が倒したみたい。  べべ、別に彼氏が褒められるのが嬉しいとか、そういうのじゃないし。 てか、まだ正式にお付き合いはしていないの。婆やが言うところの、一夜を共にしただけのワンナイトラバーズなのよ。「ふぅむ、衛兵が駆け付けたときには誰もいなかったと聞いた。しかし、その様子を見た住人たちは神がかった強さの裸人だと話していたな……」 ごめんなさい、ルカ。残念だけど、この話は否定できない。 的を射すぎているもの。貴方はプランプランのスッポンポンだったでしょ?「陛下、それがルカです。私も見まし……ていませんわ。何も見ていませんが、
last updateDernière mise à jour : 2026-08-16
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032 思わぬ降臨

 俺はようやく牢獄から解放され、王都クリステラの大聖堂へと来ていた。  聖七神教会の総本山であり、王城と見紛うほどの立派な建物である。「まるで罪人だな……」 牢屋からは出られたものの、俺は手枷をされたまま。一応は腰布が一枚与えられているが、当然のことフルチ……生まれたままの状態だ。 大聖堂へと入り、超巨大な七柱女神像の前へと進む。するとシルヴェスタ王が立派な法衣を身に纏った神職者へ声をかけた。「グラハム教皇、忙しいのにすまないな……」「ああいえ、私も勇者を授かった者の情報を得ております。髪型や顔立ち、背丈は魔道通話にて聞いたままですね」 どうやら司教様は自らの功績であるかのように、教皇様へと伝えていたらしい。  それなら、もう検査する必要なくね? 俺は間違いなくルカ・シエラ・アルフィスなのだし。「少年、とても落ち着いているな?」 教皇様はそんな風に言った。勇者なのは間違いないし、俺が動揺するはずもないっての。「全裸なのに……」「好きで全裸じゃねぇよ!!」 おっと、やべぇ。  教皇様だというのに、思わず声を荒らげてしまった。 取り繕う言葉を探していると、リィナが間に入ってくれる。俺が南部の無作法者であると弁明でもしてくれるのだろうか。「教皇様、ルカは地域の風習で裸族なだけです!」「ちがぁぁう!!」 何てことだ。  俺は今も裸族だと勘違いされていたのか。 ま、裸族でも構わないけど、早くしてくれないかな。「それでは始めよう。ルカとやら七柱女神像の前へ」 グラハム教皇様が俺を呼ぶ。 正直に手枷くらい外して欲しいところだが、今も俺は容疑者らしく勇者と判明するまでこのままみたいだ。 七柱女神像の前で跪き、俺は祈りを捧げている。すると、期待したわけではないのだが、いつものように俺は意識を失っていく。 気が付いたときには光輝く空間に。  俺は再び女神様との邂逅を果たすのかもしれない。「ルカ、大変だったね?」 現れたのはまたもネルヴァであった。ジョブを勇者としていたからか、武運の女神様が降臨されている。「お前の力で何とかできんのか? 大変とかいう問題じゃなかったっての」「僕たちは地上に直接介入できないからね。まあ、このあと待遇は改善するよ。君は世界に一人しかいない勇者なのだから」 どうもネルヴァは心配していなかった感じだ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-16
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033 悲運の女神、再び

 視界が揺らいだかと思えば、新たな女神が眼前に現れていた。  懐かしくも感じる。祝福の儀で会って以来のシエラがそこにいたんだ。「よう、久しぶりじゃないか?」 俺の挨拶にシエラは頷く。  やや頬を染めているのは俺に魅入ってのことなんだろうか。「ルカ、会いたかったわ。できれば朝のお祈りはやめていただきたいのですけれど。じゃじゃ馬との密会は許せません」 天界に時間があるのか不明だが、本当にシエラは朝が弱いらしい。「お前が寝てただけだろ? それに会おうと思って祈ってるわけじゃない。ネルヴァと会ったのはたまたまだ」「あの子ってば本当に図々しいわ。本妻を差し置いて二度も会うなんて……」 本当に掴み所がない。使徒にはなったけれど、夫になったつもりはないっての。「てか、シエラは俺の悲運が気に入ってるんだよな?」 俺は聞いておかねばならない。  不幸すぎる俺に魅入っているだけ。青以外の色を見ていないはずなんだ。「どうして、そんなこと聞くの? 私はこれでも貴方を愛しているわ。深く澱む青の君を独占したいのです。愛しき青は全てを呑み込む。尊き青の私でさえも……」 女神ってのは愛を語らねばならない決まりでもあるってのか?  てか、シエラとはまともに話した記憶もないけれど、俺は彼女を魅了していたらしい。「私は今まで使徒を大切にしたことなどありません。けれど、ルカに祝福を与えたあの日から、日増しに想いが募っていく。こんな気持ちは初めてですわ。ルカは誰にも渡さないし、殺させはしない」 シエラ曰く、これまでの使徒とは異なり、俺は大切にされているらしい。  頬を染めていたシエラなのだが、急に表情を厳しくして言った。「ルカ、北へと向かいニルスの使徒を捜すのです」 ニルスとは悠久の女神様だ。追いかけろという理由は俺も分かっている。何しろネルヴァから聞いたばかり。悠久の女神ニルスは報復を受けることになる。「俺なら気にしてない。リィナのおかげで助かったし」「私が気にするのです!!」 大きな声で言われると、口を噤むしかない。 どうやら俺に魅入っているのは本当らしい。こんなにも声を荒らげているわけは俺を陥れようとした悠久の女神が許せないからだろう。「どうするつもりだよ? 出会ったとして、俺は悠久の女神の使徒に仕返しするつもりはないぞ?」「ルカ、貴方は矮小なる女
last updateDernière mise à jour : 2026-08-17
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034 愛を語る

 シエラの降臨が終わるや、俺は目覚めていた。  呆然としつつも、大聖堂に木霊するざわめきを聞いている。 それもそのはず、水晶には【勇者】の文字が浮かんでいたからだ。「おおぉぉっ……。まさに勇者……」 シルヴェスタ王の声が聞こえた。  ま、その点に関しては問題視してなかったし。ジョブを勇者にしていたのなら、表示されるのは勇者に決まっているのだ。「陛下、理解していただけましたか? ルカは間違いなく勇者なのです。私が運命を共にすることを誓った意味がお分かりでしょうか?」「うむ。リィナが伴侶に選んだ意味、とくと見させてもらった。儂は二人の仲を取り持つことにしよう。反対する者は全員ねじ伏せてやるから安心してくれ」「ありがとうございます。陛下のお墨付きであれば、堂々と交際できるというもの」 あれ? どうなってんの?  二人の仲を取り持つとか、堂々と交際とか……。「仲睦まじくな。一生涯の伴侶として認める。儚き色の人生を薔薇色に染め上げるのだぞ?」「もちろんです。私は一生涯をルカに尽くし、幸せになるつもりです!」「儂も嬉しく思う。まさか、あのリィナに恋人ができようとは……」 えっと、俺とリィナって付き合ってるの?  まだ出会ってから二日しか経っていないんだけど?「陛下、少しばかりお願いがございます。私とルカの夜については……」「ああ、心配しなくてもよい。秘密にしておこう。報告するつもりはないぞ」「感謝いたします。それなら心置きなく励むことができますわ!」 どうやら俺の知らないところで、昨晩の話が尾ヒレを付けまくっているらしい。 その原因は明らかにリィナであり、彼女は俺の弁明など少しも聞いていないのだ。加えて彼女の思い込みの強さを痛感させられる羽目になっている。「マズい……」 ここは誤解を解消しておかねばならない。  俺は愛のない行為をしたくない。リィナが本当に俺を好きになるまで付き合わないし、関係を持つつもりはないのだと。「王様、俺は……」「ルカとやら、リィナをよろしく頼む。リィナは遠縁でな。ずっと不憫に思っていたのだが、其方が運命までもを受け入れてくれて感謝しておる。身分差は気にするな。儂の名において交際を認める。誰にも口出しさせぬから、堂々と付き合いなさい」「ははは、はい、陛下! 有り難き幸せ!」 ヤバい。外堀どころか中央
last updateDernière mise à jour : 2026-08-17
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035 愛ゆえに

「リィナ、俺も愛している……」 これ以外の台詞などないだろう。 王様が交際の後ろ盾となった今、好きじゃないと言えるはずがないのだ。それこそ牢屋へと戻されるだけであり、そこで生涯を終えるだけであろう。「ルカ、一緒に世界を救いましょう! 私は残りの人生を貴方と世界のためだけに使う。七柱女神様に誓うわ」 七柱女神に誓うのなら、リィナは本気だ。  勢い任せな感じも否めないけれど、彼女は彼女なりに物事を整理しているはず。「ああ、分かった。俺はもう逃げない。フィオナに会っておこうと思ったけど、君が嫌がるのならやめるよ」 そもそも俺は男としての野望を達成できたのなら未練などないと考えていた。相手がリィナであるのなら、煩悩など残さずに逝けることだろう。 リィナは俺の手を取り、どうしてか目を瞑る。 えっと、なんだそれ?  ここにはグラハム教皇様だけでなく、王様や近衛兵の皆様もいらっしゃるというのに。「マジか……」 女神像の前で愛を誓った俺たち。  準備万端に聖典を開き、その時を待つ教皇様。更には俺たちの後見人のような立場となったシルヴェスタ王。加えて、拍手する瞬間を待ち構えている衛兵たちまで。 皆が一定の未来を予想し、俺の対応を注視していた。  どうあっても、俺はここで誓いのキスをしなければならないようだ。リィナが目を瞑った時点でそれは決定しているようなものなのだから。「リィナ……」 彼女の肩を抱き、俺はリィナと口づけを交わす。  思わず歯をぶつけそうになったけれど、リィナの柔らかい唇がそれを阻止してくれた。 その刹那、拍手が大聖堂に響き渡る。と同時に教皇様による祝福の祝詞が告げられていく。 このときから俺たちは公認の関係となった。  俺が彼氏であり、リィナが彼女。想像もできなかった未来に俺たちは生きていた。 とはいえ、運命は動いたようで相変わらずだ。二年間の至福の時を得ただけであり、時間的制約を課せられたそれは、真なる意味で幸福であるといえないもの。二人が共に過ごす人生は短く、二年しか与えられていないのだから。「王様、それでお願いがあるのです。私たち二人は世界救済という使命を持っています。だからこそ、お会いしたい人がおります」 祝福に対する感謝もなく、リィナが話を続けた。 俺は今も初めての口づけに舞い上がっていたけれど、彼女は時間
last updateDernière mise à jour : 2026-08-18
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036 シリウス第二王子殿下

 リィナと話し合っていると、扉がノックされた。 どうやら式典が終わったようで、既にアークライト第一王子殿下はクリステラの大通りにて行われるパレードに向かわれたらしい。 まあそれで俺たちはシリウス第二王子殿下が待つ部屋へと通されている。「やあリィナ、久しぶり。元気そうでなによりだよ」 やはり王家の面々とリィナは面識があるみたいだ。  俺もシリウスを知っていることから、シリウスが俺を知らないだけという相関図になるな。「殿下、お久しぶりです。私にはまだ二年ほど時間が残っております」 リィナの返答に眉根を寄せるシリウス。明確に期間を述べたリィナが信じられなかったのかもしれない。「二年? 女神様に聞いたのか?」「女神様というか、ここにいるルカにです。彼はある程度先の未来を知っていますから」 ここで俺の紹介をしてくれる。  子爵家の長男であること、更には悲運の女神に魅入られていることまで。「従者かと思ったけど、君がルカ・シエラ・アルフィスだったか」 シリウスもまた俺の話を聞いたのかもしれない。  叡智の女神マルシェ様は善の女神なので、悪口ではないと思いたいところだ。「ルカです。俺は悲運の女神に魅入られてしまいまして、下位貴族だというのに戦う羽目になりました」「卑下しなくて良い。マルシェ様は君を評価している。イレギュラーについても聞いた。というより、私は君に嫉妬しているんだ。マルシェ様は私よりも君が欲しかったと口にしていたから」 それってマジなのかよ。確かに手を挙げたという話は聞いたけど。 しかし、代替となる魂が他にいたから叡智の女神マルシェ様はすんなりと手を引いたんじゃないのか?「知らないですよ。俺が産まれる前の話ですから……」「その通りだけどな。消去法で選ばれたのが気にくわないだけだ」 シリウスはゲーム内と同じかもしれない。  陰湿な感じ。出会い頭にリィナを口説いていたことを除けば同じなのではと思う。「謝れば良いのですか?」「それには及ばないが、それなりの実力を見せてもらいたいところだね。ちょうど兄上が戦場へと向かった。兄上の下で戦い戦果を奪うくらいして欲しいものだ」 どうやら、この王子殿下は俺が騎士学校へと入学しようとしていることを知らないのかもしれない。或いは入学を阻止しようとしているのかもな。「残念ですが、それは難し
last updateDernière mise à jour : 2026-08-18
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037 二人目の英雄

「殿下、私の病気を治してください。賢者ならば知恵があると聞きました」 切実な思いであったことだろう。  ゲーム世界にあった最低な選択肢を彼女は知らない。だからこそ藁をも掴むように賢者へと縋る。 シリウスが知るはずもないのに。アークライトが迎える結末すら知らない彼に、選択肢が一つしかない病を治せるわけがなかった。「リィナ、現状で魔力循環不全は不治の病だ。しかし、人類は間違いなく前進している。一昔前は五歳と生きられなかった病気。今や薬が開発され、延命することが可能になっている」「だけど、私はあと二年も生きられないのです!」 リィナは訴えた。残された時間が少ないこと。どうあっても生きたいのだと。 要するにリィナは俺の覚悟を受け入れていない。最後の最後、俺が身代わりとなる話を彼女は今も拒絶しているようだ。「二年? このルカが君の運命を背負うんじゃないのか?」「そんなの嫌! 私は愛する人を身代わりにしてまで生き続けたくないの!」 相手は王子殿下だというのに、リィナは声を張った。 まいったな。  滅茶苦茶に心を揺さぶるじゃないか。俺のいない未来に価値を見出していないなんて。「なるほど、そういうことか……。ルカ、君は果報者だな? 私は今までリィナが不憫でならなかった。病気のせいで婚姻も決まらず、ただ年を重ねる彼女に。けれど、リィナはふて腐れることなく、真っ直ぐ揺らぐことなく生きてきた。とても芯の強い女性なんだ。どうか最後まで彼女に寄り添ってくれ……」 シリウスは俺に犠牲を強いなかった。  リィナの本心を聞いたからであろうが、それでも彼は俺が持つ力を知っていたというのに。「もちろん。俺は最後の覚悟も決めています」「そんなの嫌って言ってるでしょ!?」 リィナの意見など聞く必要がない。  俺はあの呪文を口にするだけで構わないのだから。 しかし、問題もある。ゲームでは唱えるだけだったディヴィニタス・アルマは基本的にジョブを含む運命全体を背負ってしまうのだ。 確か勇者のジョブを奪った際に、ネルヴァはシエラが上手くやったと話していた。  従って、儚い運命だけを背負うことができる。シエラの協力さえあれば。「ルカ、君は強い男だな? 感心したよ。流石は四柱の女神に魅入られるだけはある。君の使命感と生き様には感服するしかない」 何だかシリウスの好感度
last updateDernière mise à jour : 2026-08-19
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038 初めて愛し合う

 超贅沢な晩餐をいただいたあと、俺とリィナは宛がわれた部屋に来ていた。 ヤバいくらいに豪華。昨日泊まった宿も高級宿に違いないだろうが、比較にならない調度品が並んでいる。「やっぱ、同じ部屋なんだな……」「ルカ、今日はダブルベッドだから、昨日より激しくしても……」「俺は何もしてないって言ってんだろ!?」 どうしても俺の話だけは聞いてくれない。リィナは今も大人の階段を駆け上がったと考えているようだ。「ルカ、陛下の配慮を無駄にしちゃいけない。私は残された時間の中で子供が欲しいと考えているの」「えええっ!?」 いやいや、ちょっと飛躍しすぎじゃね?  てか、まだ寝返りを打ったときに左手が少し触れただけなんだけどさ。「子供……?」「だってそうでしょ? このままでは私たちはどちらかが死ぬ。そのとき代わりとなる愛の結晶が欲しい。もし仮に私が死んだとしても、私の子供に愛を注いで欲しいのよ」 マジっすか。  まあでも、言わんとすることは理解した。 何かを残す。  それは人として生まれた意義。長い歴史の中で、人々はそうやって繋がり続けていたのだから。「俺の子に愛を注いでくれるのか?」「私はその未来が好きじゃないな。ルカが私の子を愛でるだけよ」 この話が折り合うことはないだろう。 俺は無理矢理にでも代行するつもりだが、幾ら言いきかせようとリィナはそれを受け入れないはずだ。「産まれてくる子供は幸せになれるだろうか?」 俺の懸念はそれだけだ。 確実に両親のどちらかがいない。また魔国との大戦を控えている。ともすれば、二人ともが死ぬことまで考えられるのだ。リセット再プレイのゲームではないのだし、安易に子供をもうけるなんてできないと思う。「大丈夫。サンクティア家は上位貴族よ? 私の家族は絶対に愛を注いでくれるわ。どちらかが必ず生き残ること。それを目標にしましょう」 リィナはとても前向きな話をする。後ろ向きな俺とは違いすぎる。  彼女は子供の存在を俺たちが生きる目的とし、世界を救うための原動力にするつもりだ。「悪くないな。ま、二代連続で悲運の女神に魅入られないよう祈るとしようか」 リィナに毒されたかな。俺はまだ見ぬ子供の未来を憂えすぎていたのかもしれない。 幸せは個人が掴むもの。俺だってスラム生活をして分かったんだ。とても恵まれた生活をしていたこ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-20
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039 役に立たない

「おい、てめぇ! この期に及んで日和ってんじゃねぇぞ!」 懸命に呼びかけるも、我が愛刀は錆び付いたままだ。 どうなってんだよ。  昨日は隣で眠るリィナに我慢できなかったというのに。「ルカ? ひょっとして、その状態は……」 流石にリィナも理解したらしい。  この辺りは婆やの洗脳教育があってのことかも。どう考えても力ない俺の相棒は、その実力を発揮できないと見透かされている。「私……魅力ない?」 そんな悲しそうな顔をすんなって!  俺は滅茶苦茶に興奮しているというのに、どうしてか愛剣がウンともスンともいわないんだよ!「本当に綺麗だ。でも、美しすぎるのかもしれない。俺の相棒が耐えられる許容範囲をリィナは軽く越えてしまっているんだ。ちょっと今日は無理かも……」 力なく頭を垂れる俺をリィナは優しく撫でてくれた。  どれだけ情けないのだろう。好きな女性が待っているというのに、どうして俺は……。「困ったわねぇ。その辺りは婆やに聞きそびれてたし」「いや、何とかする! 毎日トライさせてくれ! リィナの美しさに慣れてきたら、俺の相棒もきっと……。たぶん恥ずかしがり屋なんだよ!」 何とか取り繕う俺にリィナは笑みを浮かべている。  ベッドに裸の男女。やることは一つしかないってのに、俺たちは何もできなかった。「そういえば錬金術士に会うのよね? 精力剤とか錬成してもらおうよ。できるだけ早く産みたいし……」 聞いてるか、相棒?  てめぇは精力剤でドーピングしたら何とかなるってのか? 絶対に復活しろ。  これは命令だ! 二度とリィナに気を遣わせてんじゃねぇぞ、コラ!「ピクリともしねぇ……」「まま、出会って二日だし。もう少しゆっくりと歩みましょうか?」「てか、リィナは全然落ち着いてるのな?」 まともに視線を向けられない俺に対し、リィナはマジマジと相棒を見ている。  度胸は女性の方があるのかもしれん。いざというとき頼りになるのは女性なのかもな。「そりゃ、二日で三回目だし……。ずっと放り出してるもの」 そういやそうかも。俺が裸族だと勘違いするくらい俺は素っ裸だったな。  じゃあ、俺も三回くらい見たのなら、慣れてくるってことか。「リィナ、期待しつつ気長に待ってくれ! 俺の愛は不変だ。これまでも、今も、この先の未来もリィナだけだから」 力説する俺
last updateDernière mise à jour : 2026-08-21
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040 悲運がもたらせるもの

 翌朝、部屋まで配膳された朝食を取ったあと、俺たちはシリウスの紹介状を手に王城を飛び出している。 どうしてかリィナは俺の腕に絡みつくようにして歩いていた。  お城をあとにしてから、ずっとそうしている。柔らかいものが腕に当たって、めちゃくちゃ気になるんだけどな。「リィナ、胸が……」「こういうの好きなんでしょ? 婆やに教わったのよ。男は胸を押し付けるだけで言うことを聞くって」 まぁた婆やの入れ知恵なのか……。  さりとて、間違いじゃない。柔らかい双子山のためならば男は何だってするだろう。まして大好きな恋人のお山であれば。「その内に元気づくはずよ。時間がないのだから、積極的に攻めていくの。相棒さんに回復してもらわなきゃ、私が困るわ」「面目ない……」 とはいえ、俺にとってもご褒美だ。  今もまだ眠りから目覚めそうな気配すらないけれど、脳内の興奮度は最大値を示している。 このあと俺たちは装備や携帯食料を買って、隣国へ旅立つための馬車を手配していた。「マジか。荷馬車じゃないのかよ……」「当たり前でしょ? 私は侯爵家の一員ですもの。荷馬車になんか乗れません!」 やっぱ住む世界が違うのな。  俺は銀貨二枚を惜しんでいたというのに、イステリア皇国まで金貨十枚を支払うとか太っ腹すぎるぜ。 まあでも、その価値はある。既に動き出しているというのに、少しも跳ね回る感じがない。「しかし、女性の御者とか珍しいな?」「割といるよ? 女性の一人旅とか男性の御者じゃ、ちょっとって場合にね。冒険者上がりの御者だから、魔物が現れても安心だし」 恐らく通常よりも高くつくのだろうな。流石に金貨十枚とか移動で使う金額じゃないし。「それに……夜のこともあるでしょ?」 リィナが上目遣いに言った。 それが狙いだったのか。  確かに男性の御者だと覗き見たり、乱入してくる場合まで考えられる。白銀に輝くリィナの裸体は俺だけのものなのに。「そそそ、そうだな。よよ、夜のこと
last updateDernière mise à jour : 2026-08-22
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