Tous les chapitres de : Chapitre 51 - Chapitre 60

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051 世界線の終わりを見る

「ふつつか者ですが、末永くご寵愛くださいまし……」 どうしてそうなる!?  俺は精霊術士としての力が借りたいと話したはずなんだけど?「えっと、ご寵愛……でしょうか?」「わたくしを欲しておられるのでしょう? わたくしはピンときてしまいましたの。眠れる恋愛感情が叩き起こされてしまいました。美の女神イリア様の使徒として、貴方様の愛に応えるべきだと……」 完全に誤解なんだけど。  そういや俺は戦場とか前線とかアタッカーだとか省略していた。いやだけど、誤解を生むような文脈だったか?「愛は別に……」「わたくし、これでも皇国一の美貌だと評判ですのよ? スタイルだって見てくださいな?」 言ってフィオナはガウンを脱ぎ、ナイトウェアのボタンを二つばかり外す。 いけないと思いつつも、俺に眠る男気は目を逸らすことを許さない。リィナよりも確実に実りつつある双山に釘付けとなってしまう。「殿下、それはおしまいください。俺は精霊術士としての力が欲しいだけ。身体まで求めていませんから……」「ああ、身分差のことでしょうか? わたくし、お父様と話をしてきます。わたくしは自由なのでしょう? 必ずや了承を得てまいりますので、どうぞよろしくお願いいたしますわ」 フィオナはそういうと部屋を飛び出していった。 思い込みの激しさはリィナと同じかそれ以上。拗らせていた分、リィナよりもたちが悪いと思われる。「マズいな。俺は天命を遂げる前に、リィナに虐殺されるかもしれん……」 晩餐で会った皇王陛下は気の良い人柄だった。  今までフィオナが自由を願ってこなかっただけであり、娘の願いを叶える度量はあるように感じる。寧ろ、初めて娘が願望を伝えてきたのなら、容易に応えてしまいそうな気がしてしまう。「まっ、この世界線は続かない。仕切り直す世界線こそ、俺は頑張るべきだ」 ある意味において、俺はこの世界線の終わりを感じていた。  リィナとの蜜月だけでなく、新たに言い寄ってくるフィオナに対しても。 新しい世界線において、俺は
last updateDernière mise à jour : 2026-09-02
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052 錬金術士ミリア

 翌朝、メイドが俺を起こしに来てくれた。  どうやら皇王陛下たちと朝食を取るという話みたいだ。「俺は下位貴族なのに陛下と差し向かいで朝食ってか……」 メイドに連れられて会食の席へと向かう。億劫に感じるけれど断れないのだからしょうがない。それこそ俺は王国の下位貴族でしかないのだし。「朝からすまないな。どうしても話がしたかったのだ」 席に着くやイステリア皇王陛下が言った。 まあ、そうでしょうね。娘がどこの馬の骨かも分からぬ下位貴族と付き合いたいだなんて話をしたのであれば。「昨晩は非常に驚いた。娘がイリア様の使徒であるのは知っていると思う。美の女神イリア様は我が国に力を与えてくださる一柱なのだよ」 頷く俺に対し、陛下は尚も続ける。  ここまでは予想したままだ。何の問題も俺にはなかった。「まさか貴殿との婚約をイリア様が告げられていたとは……」「問題ありすぎぃぃ!!!」 おっと、いけない。思わず声を張っちまったぜ。  まさかフィオナが嘘を言って陛下を丸め込むだなんて予想すらしていない。「えっと陛下、その話は……」「イリア様は仰ったのですわ! 世界を救う勇者様と番になること。それがイステリア皇国の反映に繋がるのだと!」 フィオナは俺に意見させないつもりらしい。あくまで天命であるとして、この難題の結末を操ろうとしている。「アークライト殿下との婚約はいい話であったのだがな。天命ならば王国も分かってくれるだろう。古来よりイリア様の命は絶対なのだ。新たな婚約者はルカ・シエラ・アルフィスとする」 ああ、勝手に話が進んじゃったよ。 非常に由々しき問題だな。俺はこのあとミリアに会うだけじゃなく、リィナと共に帰路を過ごさねばならないというのに。「皇王陛下、考え直すなんてことは……?」「ルカよ、別に恐縮する必要はない。女神イリア様の神託であれば従うだけなのだ。イステリア皇国に女神様の加護あれ!」 駄目だこりゃ……。  俺如きが口出しできる状況じゃない。
last updateDernière mise à jour : 2026-09-03
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053 この世界線にさよならを

 ミリアへの用事を済ませた俺は皇城をあとにして、街へと戻っていた。 とはいえ、リィナがどこに泊まったのか分からない。俺たちは宿を決めるよりも早く、皇城へと来ていたのだから。「ここはリィナの幸運に期待しようか……」 俺は彷徨くだけだ。  下手に捜すのは悪手。俺の悲運を信じるのなら、捜すつもりはなく彷徨くだけで良い。それだけでリィナが俺の元へとやって来るはずだ。「ルカ!?」 ほらな?  リィナの幸運に敵うものなんて存在しないのだ。彼女は愛する俺を求め、一秒でも早く会いたいと捜していたはず。「ちょうど殴りたいなって思ってたのよ!」「ほらな!?」 どうやら、今もリィナは昨晩のことを根に持っているらしい。でも、俺に当たられてもなぁ。あれはリィナの戦略ミスだろうに。「それでルカ、昨晩は何もなかったのでしょうね?」「当たり前だろう? 俺は会食をしてミリアと会っただけだ」 婚約話をする必要はない。発表があるとして王国に確認を取ったあとだろうし。「そうなのね! やっぱルカは一途で良い男だわ」 リィナはご満悦だ。  もし仮にこの世界線が終わりを告げるとしても、やはり彼女には笑顔でいて欲しい。苦しむのは俺だけでいいのだから。「リィナ、王国へ帰ろう」「ええ、食べ物とかも買い足しといた。失礼な皇国から早く出たいわ」 トンボ返りに近いのだが、俺たちは帰路に就く。 一つの思い出すら必要ない。  何しろ、この世界線はもう直ぐ終焉を迎えるのだから。  ◇ ◇ ◇  約十日間の旅程。俺たちは再びシルヴェスタ王国へと戻っていた。 当然のこと、毎晩トライした俺たちなのだが、反抗期である俺の息子は命令に背いたままだ。「とりあえず、ルカは王様に魔将軍の討伐を報告すべきね。それだけで騎士団長くらいは任命されてもおかしくないし」「まあ、そうだな。世界線が変わる前に済ませておくべきか……」
last updateDernière mise à jour : 2026-09-04
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054 新しい世界

「ディヴィニタス・アルマ――」 そう口にした瞬間、視界が真っ暗になった。加えて頭が痛い。流れ込む情報を処理できないのか、俺の頭は破裂する寸前のように感じられている。 刹那に視界が回復。しかし、今もまだ頭が酷く痛むままだ。まるで、あの悪夢を見た朝のように。「世界線は移行したのか……?」 今まで女神が側にいる状態でしか、あの呪文を使ったことがない。従って成功したのかどうか分からないままである。 眼前にはリィナとシリウスがいた。どうやら世界線は同じ場所から始まるらしい。「リィナ……?」「殿下、気安く未婚の女性に声をかけないでくださいまし」 殿下との呼び声にドキリとする。だが、それにより世界線の移行は確認できた。 俺はもうルカ・シエラ・アルフィスではない。シリウスの運命を背負っているはずだ。 透かさずステータスを呼び出す。以前の結果からも名前は変わっていないと思う。しかしながら、前回はネルヴァが手助けしてくれたのだから、今回はどうなっているのか不明である。 【名前】ルカ・シエラ・シルヴェスタ 【年齢】15歳 【ジョブ】賢者 【加護】シエラの加護・ネルヴァの加護・マルシェの加護  洗礼名は同じであるらしい。  しかし、叡智の女神マルシェ様の加護がある。どうやら俺はシリウスの運命を乗っ取ることができたようだ。「ああ、すまん。こんなところで何をしていた?」 とりあえず、シリウスの記憶に沿って話をする。  酷い頭痛の代償として、王族に相応しい立ち振る舞いがそこには記されていたんだ。「殿下の魔将軍討伐報告に付き合ったところですわ。ボケてらっしゃるのではないですか?」 リィナの口調がまるで違う。それは恐らく移行前の感情が引き継がれてしまったからだろう。 そんな俺も徐々に記憶の整理ができていた。  偽りの記憶。シリウスが過ごした十五年間の記憶が俺の中にある。 それによるとリィナを戦線に投入するため、俺は侯爵領まで彼女を迎
last updateDernière mise à jour : 2026-09-05
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055 リィナと……

 シリウスの運命を背負ってから、数日が経過していた。  世界が作り上げた記憶によると、俺は強者を各地から集めていたらしい。  リィナを所領から引っ張ってきたこともその一環であって、現在は他の使徒を捜索している途中みたいだ。「使徒は分かってんだけどな……」 勇者と賢者がリストから外れた今、一番必要なのは精霊術士であるフィオナ殿下だ。しかし、前世界線の最後で婚約者に納まったフィオナのことは問題視していない。 残りの使徒である錬金術士ミリア・ルシアン・マルカリオンと時空術士フィン・ニルス・クロノリアの二人だけが心配の種である。「いずれもイステリア皇国の使徒だもんな。フィンは何をしているんだろう? もう俺の命を狙うような真似はできないと思うけど……」 前世界線では痛い目に遭わされた。  かといって、もう恨みなんかない。世界線は明確に切り替わっているし、彼もまた改変を受けているのだから。 時空術士がいるいないで、要所の防衛力が変わる。彼の部隊は移動力が半端なく、直ぐさま駆けつけることができるのだ。「もう好き嫌いじゃねぇな。フィンをどうにかして取り込まないと」 問題は彼に加護を与えた女神様だ。  悠久の女神ニルスは今も俺の死を待ち侘びていることだろう。よって、俺に協力するとは思えない。「もうあの呪文は使えないよな……」 現状の俺は王子殿下だ。  もし仮にフィンに対してディヴィニタス・アルマを使うのであれば、イステリア皇国にある伯爵家の人間になってしまう。 完全に上書きされるのかどうかは不明だけど、現状の権力を失うのは愚策に違いない。「最悪の場合はフィオナだけか……」 錬金術士であるミリアは戦力として考えられない。最悪の場合は彼女抜きでも大丈夫だと思える。そうなると、イステリア皇国内にいる戦力はフィオナのみとなるのかもしれない。「現状は想定に近い。何も間違っちゃいないさ」 フィオナとの関係は変わらなかった。前世界線と同じく婚約者として収まっている。 ツンケンするリィナは彼女との関係に嫉妬している。俺が皇配としてイステリア皇国へ婿入りすることをリィナは良く思っていないのだ。「現状で婚約者だし、会いに行ってみるか……」 改ざんされた記憶によると婚約が決まったのは数日前らしい。ここも前世界線から繋がっているのだと思われる。しかし、面識はな
last updateDernière mise à jour : 2026-09-06
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056 大聖堂にて

 二人してクリステラ大聖堂へと到着。馬車を降りるや、俺は民衆から声をかけられていた。 前世界線では考えられない話だけど、改変された記憶によると俺は第二王子でありながら臣民の支持を得ているらしい。「やはり殿下は大人気ですね?」「茶化すな。俺は第二王子でしかない」 兄であるアークライトとは仲が良くない。  それはシリウスとの関係が引き継がれた感じ。俺には改ざんされた記憶しかなかったものの、その記憶によってアークライトの印象は最悪になっていた。 大聖堂へ入ると、直ぐさまグラハム教皇が迎えてくれる。お忍びだというのに、王族はどこまでも優遇されているな。「グラハム教皇、祈りに来ただけだ。特別な計らいは必要ない」「流石はルカ殿下です。女神様への祈りを欠かさないとは感服いたしました。殿下が三柱女神の加護を独占されたのも頷ける話です」「それ以上はいうな。俺の祈りに他意はない」 教皇は三つの加護を持つ俺が王太子になって欲しいのだろう。やたらと持ち上げてくるのは聖七神教会の威信を高める意味合いもあるはずだ。 俺は女神像の前へと跪き、祈りを捧げる。(マルシェ様でお願いします。マルシェ様で……) 頼むから面倒なことにならないでくれ。  今はまだ朝の十時。シエラは恐らく眠っているはずだ。「やあ、ルカ! 会いたかったよぉぉ!」 残念ながら、俺の願いなんか聞いちゃいねぇな。平然と現れたネルヴァに俺は薄い視線を向けている。「てめぇ、俺の祈りを聞いていたのか?」「聞いてたけど、僕はこの世界線を望んだ女神だよ? 現状の報告とか助言とか必要でしょ?」 まあ確かに。  会話したこともないマルシェ様より、ネルヴァの意見を聞くべきかもな。「なら現状はお前が考えた通りか?」 まずは現状の考察から。  俺としては考えていた以上のことは起こっていない。驚いたのは過去にリィナと許嫁関係であったことくらいか。「まあね。世界が矛盾を解消しようとするだけだから。適
last updateDernière mise à jour : 2026-09-07
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057 叡智の女神マルシェ

 徐に浮かび上がる人影。若葉色に輝くそれは間違いなく叡智の女神マルシェ様だ。 しかし、何やら様子がおかしい。マルシェ様は真っ赤にした顔を背けている。「えっと、マルシェ様……?」「あっ、ひゃい!?」 声をかけると、彼女はビクンと飛び跳ねてみせる。 いやいや、俺はかなりビビってたんだけどな。ネルヴァ曰く、圧倒されるという女神様に。「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?」 視線すら合わせないマルシェ様に俺は微笑む。このままでは会話すらできない。ならば、俺から歩み寄るべきだろうと。「そそそ、そうですよね!? シリウスなんて痴れ者とルカ様が同じなわけありませんよね!? わたしは貴方様の下僕! 何なりとご命令くださいまし!!」 うん、ネルヴァは間違っていないようだ。  何しろ俺は既に圧倒されている。思いもしない方向からだけど。 てか、マルシェ様の腰が低すぎる。俺を慕う以前の問題じゃないか。「いや、俺は使徒ですし……」「使徒様! わたしにできることは何かございますでしょうか!?」 駄目だな、これは……。  本当に女神様はろくな人材がいない。数多あるという他の世界のように、最高神が一柱いたら良かったのにと思わず考えてしまう。「えっと、俺がすべきことって何かあります?」「滅相もございません! ルカ様のお手を煩わせるようなことは何もございませんです!」 えっと、シリウスは一体どうやってコミュニケーションを取ったのだろうな。これは俺の手に負えない女神様じゃねぇか。「シリウスには何を話されて……」「あのようなゲスに一時でも加護を与えていたなんて! ああ、申し訳ございません! 決して、わたしの本意ではなかったのでございます! わたしは初めから新緑の如き輝きを発する貴方様に惚れているのですから! お慕い申し上げます!」 どうやら俺に対する好感度が高すぎるせいかもしれない。シリウスは酷い言われようなのだから。「じゃあ、聞きますけど、リィナを助ける術はないの
last updateDernière mise à jour : 2026-09-08
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058 フィオナ皇女、再び

 シリウスの運命を奪ってから一ヶ月が経過していた。  書き加えられた記憶のおかげで、王子殿下という重責も何とかこなせている。 しかし、本日は少しばかり戸惑っていた。なぜなら、唐突に婚約者であるフィオナが王城を訪問したというのだから。「ルカ様、背筋を伸ばして。ほら、タイが歪んでます!」 どうしてかメイドではなく、リィナが着付けの世話をしてくれている。 現状は必要以上にジャポタイを締め付けられているところだ。嫉妬の炎を燃やしているのか、リィナは俺を窒息死させようとしているのかもしれん。「苦しいって。フィオナは婚約者なのだから会いにもくるだろう?」「分かってます。でも、分かってないかも。やはり私は殿下のこと……」 独占欲が強いのは知っている。 何しろ前世界線において、リィナは浮気など許さないと語っていたのだ。現状はリィナこそが浮気相手であり、俺を咎める理由など彼女にはなかったのだけど。「リィナ、俺も君を愛している。だが、俺はフィオナのフィアンセでもあるんだ。両国の関係もあるし、無下にはできないんだよ」「分かってます。私が健常でさえあればと考えてしまうだけですわ」 この世界線において、俺とリィナは口づけくらいしかしていない。改変された記憶には肉体関係の事実などなかった。恐らく前世界線における相棒の無能ぶりが反映されているのだろう。「リィナ、俺は君を愛している……」 侍女はいない。リィナと二人きりだ。  俺は愛を語ったあと、彼女にキスをした。 どれほど世界が変貌しようと俺の気持ちは同じ。その感情を確かめるように、彼女と唇を重ねるのだった。 ドレッシングルームを出たあと、俺はフィオナが待っているという貴賓室に。 流石にリィナはここまでだ。侍女ですらない彼女の入室は許可されていないのだから。 部屋に入ると、真正面にフィオナが座っていた。  やはり美の女神の使徒。ヒロイン感を過剰に撒き散らしているような佇まいである。「初めまして、ルカ殿下。わたくしはフィオナ・イリ
last updateDernière mise à jour : 2026-09-09
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059 一目惚れ

「どうやら、わたくしは一目惚れしたようです……」 マジっすか。  以前にネルヴァが言ってたけど、俺はやはりモテるのかもしれん。皇国一の美貌と名高い姫君に一目惚れされてしまうなんて。「あ、ありがとうございます……」「ルカ様、どうか名を呼んでくださいまし。フィオナと口にしてくださいまし!」 身を乗り出すようにフィオナ。どうやら一目惚れは嘘でもないようで、彼女は真っ直ぐに俺を見ていた。「フィオナ……」「はい、わたくしはフィオナですわ! 貴方様の婚約者でございます!」 フィオナはテーブル越しに俺の手を握る。 えっと、視線を合わせづらいな。なぜなら、身を乗り出した彼女の胸元が大きく開いていたからだ。「落ち着いてください、フィオナ殿下……」「敬称は不要ですの! わたくしは貴方様の婚約者。誰よりもお慕い申し上げております。わたくしを呼ぶときには必ずフィオナとだけ口にしてくださいまし!」 敬称を付けられると悲しくなるとフィオナ。こんなにも愛される理由が分からないけれど、彼女は大真面目に語っている。「俺はまだフィオナについてよく分かっていない。だからその……」「胸のことでしたら故意ですの! まだ侍女にしか見られたことはございません!」 はだけた胸はわざとそうしているとのこと。 明らかに大きい。何がとは言わないけれど、滅茶苦茶に大きい。今すぐ国宝に指定すべきだと考えてしまうくらいに。 とても平常心でいられそうにない。前世界線において、俺はリィナの胸を見ていたけれど、フィオナのは破壊力がありすぎる。「ルカ様、わたくしを見てください!」 この姫様、積極的すぎね?  俺の相棒がノーライフじゃなければ、絶対に爆発しているところだぜ。 しかし、いつまでも視線を外しているのは悪いような気もする。  なんてか、男は度胸だ。フィオナを悲しませないためにも、はだけた胸元に俺は視線を向けるしかない。「ぅっ……!?」 嘘だろ?  マジなのか、相棒? それは久しぶりの感覚だった。  これまでピクリともしなかった俺の相棒が、あろうことかこの場面で目を覚ましている。 これまでの体たらくを相殺するかのように力強く、ズボンを突き破る勢いで隆起していたんだ。 まるで聖なる丘に突き立てられた聖剣。錆び付いた俺の愛剣はそのポテンシャルをようやく発揮している。「マ
last updateDernière mise à jour : 2026-09-10
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060 一致する思惑

 俺は結婚することになってしまった。 リィナが聞けば卒倒しそうな気もするけれど、それは彼女のためでもある。  どうせ時間の問題でもあるし、前倒しにして悪くなる現状は一つとしてなかった。「それでフィオナ、俺は君に頼みたいことがある」 結婚の約束をしたことだし、少しくらい要求しても構わないだろう。  戦場に出て欲しい。たった一人の後継者であることは知っているけれど。「分かっておりますわ。ルカ様のことは全て承知しておりますの。元より、戦いは覚悟しております」 前世界線で伝えたからだろうか。彼女は戦場に身を置くことを覚悟しているらしい。「ベッド上での仁義なき戦いについては……」「ちがぁぁぁう!!」 どうやら美の女神の成分が出てしまったようだ。やはり本質はシエラが語ったままなのかもしれない。「俺は君が戦場で戦うことを望んでいる。イリア様に聞いていないか? エクシリア世界は考えているよりもずっと、終末へと進んでいるのだと」「本気なのでしょうか? 大戦への参加が許可されるとは思えません……」 まあ、そう考えるわな。  俺が知る世界線でもアークライトの死が背景にあったのだ。しかし、裏を返せば、フィオナの強い意志が反映されるということでもある。 周囲を黙らせるほどの決意をフィオナが露わにしたのであれば、きっと叶う未来だと俺は考えていた。「許可されるよ。それは君次第だ……」「わたくし次第?」「俺は四月から双国立騎士学校へと入る。女神の使徒として世界を救うんだ。誰が止めたとしても、それだけは譲れない」 彼女も使徒であるのなら使命に気付いているはず。皇女殿下だからと、逃げられる道ではないのだと。「貴方様は王子殿下なのですよ? 王家の務めはアークライト殿下が成されるはず」「表向きの話じゃない。俺は王家とか関係なく、救世主として選ばれた。戦える加護を持つというのに、安全な王城で庇護されているなんて嫌だ」 俺の話はそのままフィオナにも当て嵌まる。立場と使命のどちらを取るかで、存在場所が明確になるってこと。「精霊術士が共にいたのなら本当に助かる。もし君が戦わないというのなら、俺は死を覚悟しなければならなくなるだろう」「脅しですか? それに君とかいわないでください……」 要求を投げかけるだけでは駆け引きとはいえないんだ。  よそよそしい呼ばれ方が
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