「よう、マステル……」 間違いなく、こいつは魔将軍マステル。序章におけるボスであり、戦闘によりリィナを疲弊させた元凶である。マステルのせいで俺はディヴィニタス・アルマを使うしかなくなったのだ。 悲運の青のせいか、或いはリィナと旅をする状況がゲームと同じだからか。目的地は異なったというのに、俺たちの前に現れていた。「ほう、私をご存じなのですね? ならば、名を聞きましょうか」「別に馴れ合う気はねぇよ。どこかへ行ってくれないか?」 いずれ倒さねばならない敵であるけれど、今はタイミングが悪すぎる。 俺とリィナは旅を始めたばかり。まだ魔将軍と戦う準備ができていない。「そう言われましてもね。先ほど魔力波を垂れ流したのは貴方でしょうか? 現状からはまるで理解できませんが……」 そりゃそうだ。 烈火無双は勇者最大の剣技。レベル20程度でも、それなりの威力を発揮しただろう。 だからこそ、気付かれてしまったのだろうが、生憎と一日に一回しか烈火無双は使えない。「それで貴方は女神の使徒なのでしょうか?」 饒舌な野郎だな。確かに使徒だけど、素直に答えてやる必要はないはずだ。「どうだろ? てか、お前はどうして、こんなところにいた? まさか魔力を感じて魔国から飛んできたとかいうなよ?」「いやなに、勝利を収めたあと、どこを手に入れようかと物色していたのですよ。貴方たちに会ったのは偶然です」 偶然ね……。 俺には悲運の青が引き起こした必然の状況にしか思えん。どこまでも俺は悲運の星の下にあるのだから。「で、俺たちを殺すつもりか?」 戦えば命がない。こんな今も俺はリィナたちが逃げる算段を考えていたけれど、都合の良い選択肢などあるはずもなかった。(あの呪文じゃ無理だよな) ディヴィニタス・アルマは女神の加護だ。 魔族に利くとは思えないし、そもそも女神は魔神と同格じゃない。七柱女神の中でシエラが強い力を持っていたとしても、七柱で魔神と戦っているんだ。魔神の使徒たる魔将軍に利くはずもなかった。「どうしましょうか? 私は割と忙しいのですが、群れる羽虫を払うくらいの時間はございます。先ほどの魔力波も気になりますし……」 残念ながら戦闘は避けられない模様だ。 既にマステルは地上へと降り、大きな羽を折りたたんでいる。「リィナ、逃げろ……」
Dernière mise à jour : 2026-08-23 Read More