聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています

聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています

last update最終更新日 : 2026-08-14
作家:  坂森大我たった今更新されました
言語: Japanese
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概要

異世界ファンタジー

ハッピーエンド

泣ける

ゲーム

ヒーロー

終末世界

転生

ルカ・アルフィスは不思議な夢を見た。 ゲームという世界があり、それをプレイする過程が流れ続ける夢。途中までは興味を惹いていたのだが、唐突に自分が登場し夢は悪夢へと変貌する。 なぜなら、夢に出てきたルカはリィナというキャラクターのために死んでしまうのだ。 夢のルカはリィナに一目惚れをし、リィナもまたルカが好きだと言った。だが、リィナは病に冒され死を待つだけの身体。ところが、ルカには彼女を救う術があった。 リィナが息絶える場面。ゲーム内の選択は一つしかなかった。 リィナの身代わりとしてルカが死ぬという選択しか。ルカは唯一持っていた他者の運命を奪うスキルの行使にてリィナを救ってしまう。

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第1話

001 奇妙な夢

「ルカ! 早く起きねぇか! 畑に行く時間だぞ!」

 今日も今日とて父上の怒鳴り声がする。

 まだ日が昇り始めたばかりだというのに、日課である農作業の時間が来てしまったらしい。

 俺はルカ・アルフィス。悲運の女神シエラの加護を受けた稀少な人間であり、一応は子爵家の長男でもあった。けれども、貧乏貴族であって、朝っぱらから畑仕事を強いられる毎日を過ごしている。

「アルクはもう起きてるぞ! 早く起きねぇか!」

 父上、分かってますから。

 何なら、起こされるよりも前に目覚めてるって。何しろ、明け方に見た悪夢によって俺は飛び起きていたのだから。

 酷く頭が痛む。妙に現実的な夢を見たせいだろう。目が覚めた瞬間から、夢に見た世界の情報が俺の頭に流れ込んでいたんだ。

「エクシリア英雄伝? ゲームとか聞いたこともない単語なのに、俺はそれを理解しているよな?」

 ゲームという単語はエクシリア世界に存在しない。だけど、俺は夢に見ただけで、ゲームが存在する世界の情報を明確に理解していた。

 誰かがプレイしていたんだ。エクシリア世界を模倣したようなゲーム。エクシリア英雄伝というアクションRPGの全貌を俺に見せていたと思う。

「夢の最後はオマケシナリオだった……」

 本編のクリア後にオマケシナリオがプレイできた。それは物語の冒頭に繋がるプロローグ部分だったんだ。

「夢はこれから先の未来を示しているのか? 予知夢ってやつ?」

 本編の主人公は弟のアルクだが、オマケシナリオで操作するのはルカ・アルフィス。どうしてか、そのキャラクターは珍しい銀髪をした容姿だけでなく、声や名前までもが俺と同じであった。

 そもそも世界観や俺の実家まで同じ。エクシリア英雄伝がこの先の未来だという妄想を俺は否定できずにいる。

「なら、リィナって少女は誰なんだ?」

 オマケシナリオにおいて、ルカこと俺は侯爵令嬢リィナを連れ出していた。

 聖女である彼女を主人公アルクと引き合わせるため、俺は北部にある侯爵領まで彼女を迎えに行ったんだ。

「リィナは俺のことが好きだった……?」

 頭が混乱する。

 本編において弟のアルクと侯爵令嬢リィナは結ばれていたんだ。ところが、オマケシナリオというプロローグにて、確かにリィナは俺のことが好きだと言った。

「ルカもリィナのことが好き?」

 夢から覚めた今もリィナに対する感情が残っている。明らかに一目惚れであり、オマケシナリオによると俺たちは両想いらしい。

「だけど、俺たちは結ばれない運命ってこと? いや、それよりも……」

 本編のオープニングでは元気一杯に登場したリィナだが、実をいうと魔力循環不全という不治の病に冒されていたようだ。プロローグにいたリィナはもう幾ばくも生きられないような感じだった。

 しかし、悲運の女神シエラに魅入られていた俺ことルカには彼女を救う術があった。結果的に、それを行使した俺は酷い寝汗と共に目覚めることになったのだ。

 俺が困惑する原因は一つ。それは十五歳にして知らされた二年後の悲しき運命だった。

「俺はリィナのために死ぬのか――」

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001 奇妙な夢
「ルカ! 早く起きねぇか! 畑に行く時間だぞ!」 今日も今日とて父上の怒鳴り声がする。  まだ日が昇り始めたばかりだというのに、日課である農作業の時間が来てしまったらしい。 俺はルカ・アルフィス。悲運の女神シエラの加護を受けた稀少な人間であり、一応は子爵家の長男でもあった。けれども、貧乏貴族であって、朝っぱらから畑仕事を強いられる毎日を過ごしている。「アルクはもう起きてるぞ! 早く起きねぇか!」 父上、分かってますから。  何なら、起こされるよりも前に目覚めてるって。何しろ、明け方に見た悪夢によって俺は飛び起きていたのだから。 酷く頭が痛む。妙に現実的な夢を見たせいだろう。目が覚めた瞬間から、夢に見た世界の情報が俺の頭に流れ込んでいたんだ。「エクシリア英雄伝? ゲームとか聞いたこともない単語なのに、俺はそれを理解しているよな?」 ゲームという単語はエクシリア世界に存在しない。だけど、俺は夢に見ただけで、ゲームが存在する世界の情報を明確に理解していた。 誰かがプレイしていたんだ。エクシリア世界を模倣したようなゲーム。エクシリア英雄伝というアクションRPGの全貌を俺に見せていたと思う。「夢の最後はオマケシナリオだった……」 本編のクリア後にオマケシナリオがプレイできた。それは物語の冒頭に繋がるプロローグ部分だったんだ。「夢はこれから先の未来を示しているのか? 予知夢ってやつ?」 本編の主人公は弟のアルクだが、オマケシナリオで操作するのはルカ・アルフィス。どうしてか、そのキャラクターは珍しい銀髪をした容姿だけでなく、声や名前までもが俺と同じであった。 そもそも世界観や俺の実家まで同じ。エクシリア英雄伝がこの先の未来だという妄想を俺は否定できずにいる。「なら、リィナって少女は誰なんだ?」 オマケシナリオにおいて、ルカこと俺は侯爵令嬢リィナを連れ出していた。  聖女である彼女を主人公アルクと引き合わせるため、俺は北部にある侯爵領まで彼女を迎えに行ったんだ。「リィナは俺のことが好きだった……?」 頭が混乱する。  本編において弟のアルクと侯爵令嬢リィナは結ばれていたんだ。ところが、オマケシナリオというプロローグにて、確かにリィナは俺のことが好きだと言った。「ルカもリィナのことが好き?」 夢から覚めた今もリィナに対する感情が残っている
last update最終更新日 : 2026-08-03
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002 導かれる者
 悪夢だと思いたいが、気持ち悪いくらいに俺は夢の全貌を覚えている。 ゲームをプレイしていたわけでもないというのに、俺はあの世界の情報を隅々まで理解していたんだ。「俺はあと二年で死ぬ運命なのか?」 今し方の夢が未来を示しているのなら、あと二年で俺は死ぬ。会ったこともないリィナという女性の運命を背負ったがゆえに。「本編もそうだけど、やはり気になるのはオマケシナリオだ……」 父上が再び怒鳴りつけて来るような気もするが、俺は先ほどの悪夢を思い出してみた。  明け方に見た夢の最後にあったそのシーンを。 『ルカ、好きよ……』  リィナは確かに言った。虚ろな目をしていたけれど、俺を真っ直ぐに見つめながら彼女はそう告げたんだ。 『最後に私の気持ちを伝えられて良かった……』『リィナ、まだ死ぬと決まったわけじゃない』  長い夢の中で俺はアルクとリィナのカップリングを気に入っていた。だからこそ、リィナがルカを好きだと言ったとき、俺は混乱したんだ。 リィナの告白まで俺は現実と夢とのリンクに気付かなかった。だが、リィナの一言によって俺は自身がルカなのだと思い出し、ただの夢は悪夢へと転換されていく。 『言ったはずよ? 私の病気は治らない。騎士学校への推薦状を書いたわ。推薦は会ってからにしようと考えていたけれど、もう駄目みたい。既に大好きな貴方の顔もよく見えないのよ……』  本編の舞台である双国立騎士学校。そこは魔国との戦いにおいて指揮官を養成する場所であり、魔族との戦い方を学ぶ場所だ。 しかし、指揮官という立場から、上位貴族にしか入学資格がない。つまり子爵家の生まれであるアルクが入学するためには上位貴族の推薦状が必要だったんだ。 だからこそ、俺はアルクとリィナを引き合わせようと動いていた。本編の主人公であるアルクが騎士学校へと入学できるように。 『いや、リィナは死なないよ……』  リィナが患う魔力循環不全は不治の病だ。先天的疾患であり、生命維持に必要な魔力を臓器などに上手く循環させられない。やがて臓器は疲弊し、全ての機能を失う。魔力循環不全と診断された子供は長く生きられない運命にあった。 『もう一歩ですら進めないのに……?』  聖女でありながら元気一杯に細剣を振り回すリィナだが、序章ではこんなにも弱っていた。魔力循環不全はオマケシナリオにおいて彼女の身
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003  ルカの願い
「ルカ、いつまで寝ている! さっさと起きろ!」 長い時間、記憶を掘り返していた俺は再び父上に怒鳴られていた。  でも、寝ていたわけじゃない。ただ呆然としていただけだ。「あ、はい! もう起きました!」 返事をしたものの、今も思考は悪夢に囚われている。 他のことを考える余裕はない。何しろ十七歳で死ぬ未来を見てしまったのだ。どれだけ達観していたとしても、受け入れるのは難しいだろう。「ひょっとして悲運の女神が俺に見せた夢なのか?」 得られた結論はそんなところだ。  三歳の誕生日に俺は教会で洗礼を受けた。悲運の女神シエラの加護を持つことは判然としていたんだ。ディヴィニタス・アルマという固有スキルについては分からないが、恐らく二週間後に執り行われる祝福の儀で授かるのではないだろうか。「あの夢が俺の未来なら……」 エクシリア世界は七柱女神によって支えられている。女神たちは各々に加護を与え、稀に使徒を選んでは勇者や聖女といった世界を安寧に導くジョブを授けたりもした。「悲運の女神に魅入られた運命なんだろうか?」 あの夢の通りに死ぬのであれば、悲運といって間違いはない。加護を与えた女神様の名に恥じない人生であることだろう。「やべぇな。やっぱ俺は十七歳で死ぬのか? 彼女もいないってのに……」 流石に納得できない。ゲーム時間で十七歳。今より二年後、リィナという女性のために死んでしまうなんて、俺はそこまで聖人じゃないっての。「おい、ルカ! 早く起きろといってるだろ!?」 そんな折り、父ゾルカの怒鳴り声が聞こえた。  父上は滅茶苦茶怖いんだよ。子爵家の長男だってのに、朝から農作業や魔物狩りの手伝いをしなきゃいけない。悩む時間すら俺にはないみたいだ。「今行きます!」 とりあえず俺は夢が現実にならないように動いていくしかない。できればリィナという女性には近寄らないようにして。 あと二年しかない。幸運と考えるならば、あと二年もある。  とにかく十五歳を迎えた祝福の儀もあることだし、あの夢が現実かどうかも分かるはずだ。 きっと俺は十七歳のあとも生きられる。子爵家の長男という恵まれた環境のまま、美しい妻を娶って素晴らしい人生を送ることだろう。 悪夢にあった未来だけは絶対に回避してやるからな。  ◇ ◇ ◇  晴れて俺は祝福の儀を迎えることになった。 
last update最終更新日 : 2026-08-03
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004 邂逅
 祈りを捧げた瞬間、俺の視界は真っ白になった。  聖堂にいたはずなのに、俺は目映い空間に紛れ込んでしまう。「ようこそ、我が使徒ルカ・アルフィス……」 どこからか俺を呼ぶ声。振り返ると、何もなかった空間に女性が現れていた。「誰だ……?」 面識もなければ、見かけたことすらない。深い青色をした髪の女性なんて知り合いにはいなかった。「私はシエラ。悲運の女神といえば分かるかしら?」 俺は息を呑んだ。眼前に現れた女性は俺を悩ませている原因なのだという。「お前が……悲運の女神?」「ずっと貴方の人生を見守っていました。成人されたということで顕現しておりますの。ささやかながら祝福を授けようと……」 否定したいところだが、この超常的な空間に加え、彼女は全身から青い輝きを放っている。俺の名を呼んだだけでなく、悲運の女神とのキーワードは俺にとって否定できないものだった。「祝福とかいらねぇよ。あんたがどれだけ悲運なのか知らんけど、俺にすり寄って来んなって……」「あら? その認識は違いましてよ? 悲運なのは貴方。私は悲劇が大好物なので、悲しき結末を迎える魂に加護を与えているだけですの」 えっと、マジか?  そのまま受け取ると、悲運の女神は別に悲運ではないらしい。俺こそが悲運の渦中にある人物そのものなのだという。「悲しき結末って?」「私の加護により成人できたでしょう? 貴方は人生のあらゆる場面で死ぬ可能性がありました。悲運の女神を長く続けておりますが、貴方ほど儚い人生は見たことがありませんわ。まるで暴風の中で灯る蝋燭のようですもの……」 いやいや、俺はどれだけ悲運だっての?  あらゆる場面とか聞いてない。十七歳でリィナの代わりに死ぬくらいしか俺は分かっていないのに。「俺は死ぬのか?」 はっきりと聞いておく。  彼女が女神であるのなら、俺が迎える結末を知っているだろうと。「私の使徒は概ね死を迎えます。運命には抗えないのですよ」 運命という重苦しい話に俺は嘆息していた。 抗えないというのなら、確かにその通りだろう。  ゲームにおける俺はリィナを死なせるわけにはならなかったし、選択肢すら用意されていなかったんだ。「あの夢はお前が見せたのか?」「何のことかしら? 私は貴方の悲運が気に入っただけ。より悲劇的な結末を迎えるように加護を与えております。私
last update最終更新日 : 2026-08-06
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005 悲運の女神シエラ
「イリアの使徒を呑み込めばいい」 予期せぬ話に俺は唖然としていた。  呑み込むとはゲームで見たあの呪文のことだろう。他人の運命を背負うというスキルの使用に違いない。「できるのか……?」「できるわ。私はこれでも強大な力を持っています。貴方に与えたスキルは誰も抗えない強力な効果を発揮するもの。子供をあやすよりも簡単ですわ」「いや、女神の使徒にも効くのかって話だ」 全てを知っているような俺にシエラは微笑む。余計な手間が省けたとでも考えているのかもしれない。「あら? 貴方が死を代行する聖女だって女神の使徒なのよ? 幸運の女神に魅入られた魂ですもの。だから美の女神の加護なんて余裕で呑み込んでしまうわ」 マジかよ……。  確かにリィナも女神の使徒なのだから、美の女神の使徒だって抗えないことだろう。「複数人を使徒としてもいいのか?」「いいえ、一人だけよ。選んだ使徒が失われるまで次の使徒は選定できない。現状のエクシリア世界には、ルカを含めて七人の使徒がいるだけね」 使徒が少ない理由が明らかとなっている。加えて悲運の女神の加護を受けるものが極めて少ないことも推し量れていた。「お前の使徒は直ぐに死ぬから世に認識されていないのか?」「それだけじゃありませんの。悲運な運命を持つ者は下民が多い。単に洗礼すら受けていないから分からないのですわ」「楽しむためだけに選ぶからだ。少しは世界のために選べよ……」「嫌ですの。世界の安寧を促すのは武運の女神ネルヴァと叡智の女神マルシェがいるもの。愚者の女神や幸運の女神もまた良き女神の柱だし」 悲運の女神シエラは、まるでそれ以外の女神が悪であるかのように話す。善の女神に対して、バランスを取っているみたいに。「ちくしょう。儚い人生だったぜ……」 頭を垂れて溜め息を吐く。  女神が出した結論なら現実になることだろう。俺はあと二年でリィナのために死ぬ運命みたいだ。 ふと伸びた前髪が視界を遮る。煩わしく感じた俺は大雑把に髪を掻き上げていた。  切なさを目一杯に浮かべた表情をしながら、あらぬ方を見ては哀愁を滲ませている。「…………」 どうしてか悲運の女神シエラは俺の顔をマジマジと見ている。加えて、なぜか頬を赤く染めて彼女は視線を外した。「えっと、まあ、そうね……。世界のためにか……」 ここで意外な反応があっ
last update最終更新日 : 2026-08-06
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006 リィナ・サンクティア
 私はリィナ・サンクティア。シルヴェスタ王国にあるサンクティア侯爵家の三女です。 生まれながらにして魔力循環不全という難病に冒されていますが、今のところ突発的な発作くらいしか問題はありません。とはいえ、その頻度は高くなっていまして、家族に心配をかけています。 本日は所領にある大聖堂へと赴いていました。というのも、十五歳を迎えた私は祝福の儀を受けることになっているからです。「はぁ、あと何年生きられるのかしら?」「お嬢様、きっと幸運の女神様が何かしら役に立つスキルを与えてくださいます! 幸運の女神様の加護を持つお嬢様が失われるなど考えられません!」 側付きメイドのマリーが勇気づけてくれるけれど、生憎と私には響かない。 何が幸運の女神よ。主治医の話では、あと数年しか私の身体はもたないらしい。  生命の源である魔力が上手く循環しない私の身体は少しずつ機能しなくなっており、やがて内蔵の全てが機能を失って死ぬみたい。不幸の女神ならばともかく、幸運だなんて皮肉としか思えないわ。「リィナ・サンクティア前へ」 私の順番が来てしまった。  本日を境に私は大人になる。成人する姿を両親に見てもらえるのは、まだ幸運なのかもね。二本の足で歩いて、自分の意志でもって祝福を受けられるのだから。 七柱の女神像に跪いて、私は祈りを捧げる。できることなら私はまだ生きていたいのだと。どうにかする手段があるのなら、助けて欲しいと。「えっ?」 次の瞬間、私は光輝く空間にいた。大聖堂の女神像前へ跪いていたはずなのに。 呆然としていると、私は声をかけられています。「成人おめでとう、リィナ」 誰もいなかったはずの空間に、美しい女性が浮かび上がっています。まるで理解できない私は、その声に思わず問いを返していました。「誰……?」 凡そ人だとは思えない。宙に浮いているだけでなく、全身から光を放つ女性が人であるはずがありません。「ワタクシは幸運の女神セラ。あらゆる幸運に恵まれた貴方を見守る者ですわ」 彼女は幸運の女神セラ様だと語ります。神々しい姿を見れば納得なんですけど、あらる幸運に恵まれたって、どの口で言っているのかしら?「私が幸運? 馬鹿にしていませんか? あと数年しか生きられない私は不幸です。貴方は不幸の女神に改名した方がいい」「あらあら、嫌われたものですね? まあ、仕方
last update最終更新日 : 2026-08-06
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007 代理
「生きられますよ……」 その言葉に、どれだけ救われたことでしょう。病状は重くなる一方でしたし、私はもう駄目だと考えていました。だからこそ、女神様の話は心の奥深いところにまで染み込んでいます。「魔力循環不全の治療法があるのですか?」 主治医から不治の病だと聞かされていました。しかし、超常的な存在である女神様には方法があるのかもしれない。生きられるとの話に私は希望を抱いています。「いえ、その病気は現状の人間が治癒できるものではありません」「いや、貴方様は生きられると仰ったではありませんか!?」 声を荒らげて聞いてしまう。たった今、聞いた話と矛盾する返答に。「生きられるとは治療を意味しません。女神は地上への直接介入を禁じられておりますから、ワタクシが治療法を授けたりできないのです。強いて言うならば、とある人物によって助けられるが正解でしょうかね」「助けられるって、どういう意味でしょう? それは誰なのです……?」 長い息を吐くセラ様。今さら嘘だなんて話はやめて欲しい。ぬか喜びとか、そんなの絶対に受け入れられないから。「どこから話しましょうか。ワタクシたち女神は世に生きる人間に加護を与え、一人だけ使徒とすることができます。貴方が生まれるよりも、ずっと前の話。ちょうどその頃、七柱女神の全員が使徒を失い、次なる使徒を選ぶ段階に入っていました。よってワタクシたちは集まって、不公平のないように魂を選び始めたのです」 まるで理解できない話が始まりました。私が生まれるよりも前に魂の選考会が行われたようです。「人気を博した魂は二つ。一つは黄色の魂であり、もう一方は深い青をしていました」 私は頷くだけ。天界で女神様たちがしていたことなど想像もできないままです。「黄に輝く魂こそ、リィナです。貴方には武運の女神ネルヴァとワタクシが手を挙げました。黄色の輝きは幸運に恵まれた証しですが、ネルヴァは勇者としての素質を見出したようです」 ポンコツな私の身体でしたが、どうしてか二柱の女神様が私を使徒にしようとしたみたい。幸運の実感はなかったというのに、私の魂は黄色に輝いていたといいます。「そして深い青には愚者の女神ルシアンと悠久の女神ニルス、美の女神イリアと叡智の女神マルシェが手を挙げました。深い青の輝きを放つその魂は、明確に悲運の色をしていたというのに……」 色につい
last update最終更新日 : 2026-08-06
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008 悲運の女神に魅入られし者
「リィナの運命はシエラの使徒が請け負い、代行して死ぬことになります」 唖然としてセラ様を見つめます。  世界の守護者たる女神様たちが出した答えとは到底思えなかったからです。「私はそんなの嫌だ……」「リィナ、使命を甘く考えるのではありません。現状で考えられる最善がそれなのです。魔族が攻勢を強めている昨今、救世主の一角を務める聖女として、ある程度は切り捨てていくしかないのですから」 個々よりも世界が大事。確かに北にある国の幾つかが魔国に滅ぼされたと聞いています。女神様たちは犠牲を知りながらも、世界を安寧に導く決断をしたみたい。「その人が私の運命を引き受けてくれる未来はもう決まっているのですか?」 きっと無念でならないことでしょう。平穏無事に過ごしていたある日、急に死を告げられるなんてあんまりです。 深い青をした人。悲運の女神様に魅入られる色をした人。今なら納得です。私より不幸な人は確実に存在したのだと。「貴方たちの魂は産まれる前より紐付けされております。もう十五年も繋がったまま。よって想定以上の安定を見せており、高確率で到来する未来となるでしょう。何より三柱の女神が願うこと。ワタクシたちの意志を少なからず世界は受け取っており、既に人間がどう行動しようとも避けられない事象となっております」「避けられない事象ってなに? 他人のために死ぬだなんて、受け入れられるはずがないわ。どうして、その人は引き受けてしまうのです?」 私の問いに、セラ様は少しばかり考え込む。その様子から、彼女も明確な回答を持っていないのかもしれない。 しかし、少しの時間が経過したあと、セラ様はその理由を口にしています。「愛でしょうかね……」 愛? 私のことが好きなの? それって誰? 問わずにいられない。この先に私のことを好きになるかもしれない人のことを。愛ゆえに死を選ぶ人間が何者であるのかを。「誰なのでしょうか?」 きっと身近な人。私の運命を知っている人だわ。でもなければ、身代わりになどならないし、好きになんてなってくれないもの。 再度の問いかけには直ぐに返答がある。  誤魔化すことなく、その名が告げられていました。「アルフィス子爵家の長男ルカ・アルフィス――」 どうやら私の予想は外れていました。 同じシルヴェスタ王国内の貴族ではありましたけれど、アルフィス子爵
last update最終更新日 : 2026-08-06
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009 幸運の女神の使徒として
「リィナは運命を受け入れ、聖女として頑張りなさい。魔神は複数の使徒を世に放っています。魔国の侵略に屈してはなりませんよ」 どうやら本格的に大陸の北端から魔族が侵攻してくるらしい。  私は告げられていました。私の使命や加護を与えられた意味について。「魔神……ですか?」「この宇宙という超常的な空間には数多の世界があり、概ね神と魔神が覇権を争っております。人は神の子であり、魔族は魔神の子。立場的な正義ではありますが、戦う宿命にあるのですよ」 セラ様は言う。神の子である私たちは魔に屈してはならないのだと。「女神様たちは一人しか使徒を選べないのでしょう? 魔神は何人も選べるとか強すぎませんか?」 素朴な疑問を口にする。  こんな今も私はルカという男性について考えていたのですが、私が彼に報いる方法は魔族と戦うことしかない。従って、必ず勝利しなければなりません。「実をいうと、エクシリア世界は状況が異なっております。基本的に世界は神と呼ばれる最高神により照らし出され、その陰に潜む者が魔神です。しかしながら、エクシリア世界には最高神が存在しない。下級神である女神だけで平穏を維持している。ただし、バランスを取るために、七柱の女神が守護することになりました」 どうもエクシリア世界は上位の神がいない状態のよう。従って、三柱から始まって七柱まで増強されるようになったのだとか。「魔神と七柱の女神で同等なのです。今までもこれからもワタクシたちは魔神に対抗していかねばなりません」 使命は理解しました。最低な運命でさえも。  長い息を吐きながら、私は幸運の女神セラ様に頷いている。「さあ、リィナは強く生きてください。これから、貴方は…………」 話の途中でセラ様は固まってしまう。  大きく目を見開いて、どうしてか呆然と頭を振っている。「どうされたのです?」 最初から何も理解していない私ですけれど、本当に女神様のお考えは分かりません。 一体何に驚いているのか。どういったことで動揺しているのか。  幸運の女神セラ様はようやくと口を開いたかと思えば、小さく告げるのでした。「協定が破られた……」 協定って、さっきの話にあった三柱女神による約束事のことかしら?  そうだとすれば、女神様たちの問題かもしれません。「協定でしょうか?」「先ほど言いましたね。ワタクシは
last update最終更新日 : 2026-08-06
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010 目指すべき道
 俺は屋敷に戻っていた。  今もまだ上機嫌な父上に対して、俺は浮かない表情のままだ。 何しろ、俺は弟アルクの運命を奪ってしまった。現状がどうなっているのかも分からず、少しも頭が回らない。「ガハハ! ルカはきっと素晴らしいジョブを授かると思っていた! まさか悲運の女神シエラ様から勇者を授かるとか司教も驚いておったな!」 夕食の席でも父上は浮かれたままである。本来ならアルクが授かるジョブだとは知らずに暢気なものだ。「兄様は凄いです! やはり一般ジョブとは異なりましたね!」 アルクもまた脳天気だとしか言えん。自身のジョブを兄に奪われたというのに、さも俺が初めから勇者であったかのように喜んでいる。「ルカ、ママも嬉しいわ。でも、勇者なのだから使命があることかと思います。成人したとはいえ、悲しく感じますね」 いやいや、既に旅に出る前提みたいだけど、俺は何も聞いちゃいないっての。  てか、シエラは俺に何を求めてんだ? せめて勇者の目的くらい教えてくれたら良いってのに。「魔国との大戦……?」 俺はふとゲームの知識を思い出していた。 勇者に目的があるとすれば、それしかない。主人公アルクは騎士学校へと入り、強者の友好度を上げた。彼らを味方につけ、魔国と戦うのだ。「おお、ルカよ! そのような未来を告げられたのか!? やはり勇者は世界を救うのだな?」「ああいや、そういった未来もあるのかなと……」 やべぇな。俺は可愛い彼女とイチャつきたいだけなのに。  仲間を集めて世界を救うとか、大仰な運命を背負うことになるなんて。「幸いにも我が家には跡継ぎとなるアルクがいる。ルカ、存分に戦え。お前はその功績により子爵よりも、ずっと上の地位を得られることだろう。儂はそれを楽しみにしている」 あっ、これは駄目なやつだ。 既に俺の退路はなくなったらしい。勇者認定によって、アルクがアルフィス子爵を継ぐというのなら、俺はただのルカでしかない。ジョブが勇者であるのだから、父上は自分の力で未来を切り開けというつもりか。「いや、勇者だからといって子爵家では騎士学校に入れませんし……」 ゲームにおいてリィナと出会ったアルクは騎士学校へと入る。リィナが持参した推薦状のおかげで。 双国立騎士学校は同盟国であるイステリア皇国との共同出資で設立されている。そこは魔族との戦争に際して士官
last update最終更新日 : 2026-08-06
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