王都への道は、二度目だった。 一度目は、一年前の春だった。馬車の窓から城壁を見て、圧倒された。 今回は、ゴードンと二人で馬車に乗りながら、エリナは窓の外ではなく、膝の上の書類を見ていた。 最終報告の骨格の最新版。学院の確認書の写し。王都のデータをまとめたアルバ殿下の側近からの資料。ベルダンの記録書。 全部を、頭の中でもう一度確認した。 「緊張していますか?」「少し」「一度目と比べて、どうですか?」「一度目は、もっと怖かった。でも、もっとシンプルだった」「今は?」「怖さは減った。でも、複雑になった」「複雑、というのは?」「考えることが多い。一度目は、陛下に会うことだけを考えていた。今回は、フィオナとアルバ殿下に会って、最終報告の場の段取りを確認して、宮廷の空気を自分で感じてくることが必要だ」「それが複雑さの原因ですか」「一つではない、ということが複雑なのかもしれません」 王都に着いたのは、昼過ぎだった。 城門を通る時、一度目を思い出した。書記官が「アッシュフォード」という名前に反応した。兵士たちがざわめいた。 今回は、書類を見せると、すぐに通してもらえた。 「以前より早いですね」「顔が売れた、ということかもしれません」「それは、良いことです」 良いことかどうか、エリナにはまだわからなかった。でも、悪くはないと思った。 フィオナと会ったのは、王都の中心部から少し外れた、小さな茶店だった。 フィオナが先に来ていた。 エリナが入ると、フィオナが立ち上がった。 久しぶりに、直接会った。 手紙では何ヶ月もやり取りしていたが、顔を見るのは、王都に来た時に別れて以来だった。 フィオナは、少し痩せていた。 でも、目の鋭さは変わっていなかった。 「来た」「来た」 短い挨拶。 でも、その二文字に、何ヶ月分かが入っていた
Last Updated : 2026-09-06 Read more