「ひぃっ……!!」 細くなっていくドアの隙間。 向こう側に広がる闇の中で蠢く何かが、こちらに向かって手を伸ばしている。その事に気が付き逃げるようにエレベーターの奥へと後ずさると、背中に弱い衝撃が走った。「そん……な……」『あそぼう……よ……』 それは、確実にこちらとの距離を詰めてくる。 もう逃げ場が無い。 そう感じた瞬間、自分でも驚くほど、素早く行動を開始していた。「絶対無理だっっっっっっ!?」 白い光が前方を照らす。ほんの小さな光の筋ではあるが、向けた懐中電灯の先に浮かび上がる【ソレ】のシルエット。「遊ぶなんて絶対に無理だからっっっ!!」 それは確かに【ヒト】の様な形をしていた。「だからこっち来んな!!!!」 ただ、【ソレ】は酷く曖昧で。「大体なんで、こんな時間に遊んでんだよ!!」 シルエットがヒトの形をしている以外、どうなっているのかが分からない。「時間を考えろ! 非常機だろ!?」 言いながら素早く操作盤へ駆け寄ると、閉じかけていた扉を急かすように同じボタンをひたすら叩き続ける。 「他の住人からも苦情が来てるんだからな!?」 そんなことを言ったって意味が無いのかもしれない。そう思ったとしても、手に持った懐中電灯を向け【ソレ】に向かってひたすら叫び続ける。「こっちは迷惑してんだよ!!」 一度怒鳴ると歯止めが効かない。追い込まれた鼠のように身構えながら、手にした懐中電灯を突き出して狂ったように吠える。「こんな風にからかって面白いか!? クソがっっっ!!」 できるだけ平静を装っても、どうしても隠せない怯えは気持ちを焦らせるばかり。 相手を挑発することは自身の危険に繋がる可能性が高いと分かっているのに、それでも限界まで引き上げられた恐怖心から、精一杯の虚勢で威嚇を続けないと己が保てない。「早く閉じろよ!! クソエレベーターがっっっっっ!!」 端から見るとこの光景は実に滑稽に見えることだろう。それでも本当に必死なのだ。声を張り上げ、ひたすらボタンを叩き、不安定に光を揺らしながら此方に来るなと訴える。「頼むから早くっっ!」 最後はもう神頼みに近かった。たった一枚の扉が閉まることが、何故こんなにも遅いと感じてしまうのだろう。 非常にゆっくりと閉まる鉄の扉が憎らしくて仕方が無い。 あと、数センチ。この隙間が完全に閉
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-15 Mehr lesen