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All Chapters of PLAYER: Chapter 11 - Chapter 20

46 Chapters

11

「ページの移動はフリックで出来るのか」 半透明の板状の画面に直接触れることは叶わないのだが、項目をタップするとページ自体は切り替わるらしい。先程までは表示されていなかったシステム環境の設定画面。歯車のアイコンをタップすることで表示されたその画面は、ゲーム画面でよく見るような項目が幾つか存在しているようだ。試しに画面という文字をタップしてみると、明るさとコントラストを調整出来るページが開く。「ってか、この設定って一体どこに反映されるんだよ」 適当に弄ってみると、目の前に表示されているメニュー画面の明るさや濃度に変化が起こることが確認できた。どうやらこの設定は、メニュー画面に対して働きかけるものらしい。確かに、環境の変化による光量の変化で、このメニュー画面自体が見えにくくなる可能性はあるだろう。そう考えると、このようにコンフィグ設定を変更出来るのはある意味親切なのかも知れない。 その他にはサウンドや言語など、ゲームを快適にプレイするために設定する項目が幾つか存在していることに気が付いた。「ん? コントローラー?」 その中で気になったのはコントーラーという項目。開いてみるとキー配置の設定が可能のようで、設定出来る項目を説明した文字の下部にコンシューマーゲーム機を操作するためのコントローラーのイラストが描かれていることに気が付く。「なんで、コントローラー?」 ただ不思議なのは、この項目はどこで使うのかということだろう。「プレイヤーが直接ゲームに参加するってのに、操作モードなんて必要無いんじゃね?」 何のための設定なのかが分からず頭を捻るが、やはりこれがなぜ存在しているのかという答えは得られそうに無い。きっと設定のミスに違い無い。そう結論付けると、他に確認すべき項目があるかをチェックしていく。「特に……めぼしいものは無さそうだな」 コンフィグ設定が終わったところで、指で画面を掴み左右にフリック。表示されていた画面が切り替わり、一番始めに表示されていたシンプルなメニュー画面へと瞬時に戻る。「ふーん」 改めてこの画面を見ると、どうやら表示されている項目は本当に必要最小限のものだけらしい。上からアイコンと名前、今日の日付、経験値と続き、大分長い空白の下にメールのアイコンとプレゼントボックスが存在している。「名前はやっぱり、この変な数字になっちまうのか」
last updateLast Updated : 2026-08-19
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12

「こんな状況になってもゲームのこと考えてるとか、どんだけだよ」 こんなおかしな状況なのに、少しでも現実とリンクする要素が見つかると、直ぐに思い出すのは今までの生活のことばかり。朝起きて、朝食と言えない食事を済ませ、焦りながら家を出る。 駅に着くまで急ぎ、改札を抜け目的のホームへ。 電車の到着時刻を確認してから、少しだけ取れる休憩時間。 問題が無ければ直ぐにでも到着する快速に飛び乗り、満員状態の車両の中で隣の人とのパーソナルスペースを必死に確保し揺られながら移動していく。 硝子の向こうに映るのは、見慣れた町の風景だ。 朝焼けに染まりはしているが、無機質で大きなコンクリートの塊は、まるで巨大な墓標の様で。このまま何も出来ずに一生を終えるのかと思うと、軽い絶望を覚えてしまう。 それでもあの場所で必死に生きてきたのは、死ぬ理由が見つけられなかったからだ。 自分が消えてしまうことが怖い。自分の人生が終わる時、一体どのような状況になっているのだろうと考えることが恐ろしい。だからこそ、そのことを考えないように必死にいろいろなことで誤魔化し、惰性で生きることを頑張っていた。 そんな生活の中で得る些細な楽しみの一つがゲームをすること。「結局、限定って引けたんかなぁ?」 記憶を失う直前までプレイしていた新規のゲームは、リリース前の段階からチェックをしていた期待作だった。 元々興味があったジャンルだったこともあるが、最も魅力的に見えたのはゲーム自体のコンセプトアートとキャラクターのビジュアルだ。今までとは違った体験をというキャッチコピーを掲げたそのゲームは、ファンタジー要素の強い中世ヨーロッパなどをベースにした世界観のオープンワールドのロールプレイイングとは異なり、現代とSFがおり混ざったような印象のあるサイバーパンクの舞台をベースにしているもので。物凄く好みにマッチしていてため、一瞬にして一目惚れをしてしまったものだ。 その中で生きるであろうキャラクターもアニメ調でありながら、スタイリッシュなデザインで、武器の多様さに応じてアクションなどのモーションが凝った作りになっていたことを鮮明に覚えている。 残念ながらテストプレイの応募には落選してしまったため、リリースしてから初めてプレイすることが出来たというのに、まさかチュートリアルが終わってこれからという所で中
last updateLast Updated : 2026-08-20
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13

『さっきも話したんだけど、今回のゲームのジャンルはホラーだよ。で、みんなにやってもらうのは、ゲーム開始時に通知されるミッションをクリアして、問題を解決していくことでーす!』 再びモニターに現れた可愛らしいキャラクターのアニメーション。今回はそのキャラクターが一枚の紙を見ているところから始まるようで、ミラの説明に併せてカメラが動き、手元の紙が大きく表示される。『ミッションの難易度はランダムだけど、クリアが不可能な条件は設定されないようになってるから、そこは安心してもらって良いぞ』 画面の中の紙に書かれている内容が画面いっぱいに表示されると、文字らしきものが読めるようになったのだが、この動画自体がチュートリアルのために作成されているせいか日本語として識別出来るような言語でないことに気が付き感じる落胆。これでは設定されている難易度の予測が付かないため、非常に残念だと感じてしまう。『基本的には何かを届けたり、お願いされたことをこなしたりって感じで、普段の生活にちょっとだけやることが増えるって感じで考えてもらえればOK』 参加者のことなど気にすること無く、説明はどんどん進んで行く。『偶に変な事件に遭遇することもあるかも知れないけど、それは条件を満たすことが出来れば必ず解決出来るようになっているぞ』 所々気になる言葉が混ざっているのは気のせいだろうか? 聞かされた内容で引っかかる所がある度そんな風に思うのだが、指定されているジャンルがホラーものという括りのため、その可能性もあるのかといったんは片付けてしまう。『ゲームを進めていく上で、参加者は実際に【生きている状態】で楽しんで貰うので、食事を抜いたり睡眠を取らなかったりすると体調はどんどん悪くなっていくよ』「ん?」 耳半分で聞きながらゲームのイメージを想像していたときに聞こえた予想外の一言。『病気や怪我というステータスに切り替わると行動が大幅に制限されちゃうから、健康管理もしっかり気をつなきゃってことだね!』 さも当たり前のようにさらりと言われたそれは、痛みや辛さもリアルに体験することになるのだと公言しているのと同じことである。『ゲームが開始されると、メニュー画面に心拍数をモニター出来るモードが追加されるから、常に自分の状態がどうなっているのかはチェックしておくことが大事でーす!』 空っぽだったメニ
last updateLast Updated : 2026-08-21
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1st stage:八番目の住人

「…………………………ん」 くぐもった不快な音。先程からずっと、それが聞こえているような気がして煩わしい。「…………せ…………」 五月蠅い。 折角、気持ち良く寝ているというのに、この睡眠を邪魔してくるのは一体誰なのだろうか。「あ………、…………り……さ………」 早く居なくなって欲しいのに、声が立ち去る気配は一切感じられず感じた苛立ち。瞼が僅かに痙攣することの不快感を感じ唸り声を上げるが効果は無いようで。「あの!」 突然響く大きな音。弾かれたように顔を上げると、目の前には見知らぬ人が立っていた。「……なん……す……か……?」 ふわぁぁぁあ。大きな欠伸を零しながらうつ伏せていた身体を起こす。姿勢が変わったことで関節が悲鳴上げ、中途半端な覚醒で鈍る頭が思考を妨げ混乱する記憶。「これ」 学生なのだろうか。目の前に居る人物は随分と若い男性で、顔に幼さが残っていた。記憶を辿るがどうも彼の顔を見たかどうかを覚えていない。多分、初めましてなのだろう。そんな人物が、一体何の用だろうとかと考えていと、目の前の彼は何やら困ってたように此方の様子を気にしながらもこう告げる。「これ、建物の前に落ちてたんで」 そう言って差し出されたのは、年期の入った一つの財布である。「ここに住んでる誰かの落とし物かと思うんで、預けておいたほうが良いかなと思って」 言われて、なるほど。と頷のは当たり前かもしれない。「ああ。どうも」 少しずつ意識がはっきりしてくると、自分がどこに居るのかということが分かってきた。 小さく狭い部屋は、この建物を管理するために作られた場所で、住民が快適に暮らせるようにと管理する人間が使うためのものだ。もちろんここで生活するわけでは無いため、就業時間が来ればこの場所を離れる必要がある。そのため、必要なものしかなく、仮眠を取るにはこうして、無理な姿勢で意識を手放さなければいけなかった。「ここの住人ですか?」 自分が何のためにこの場所に居るのかという目的
last updateLast Updated : 2026-08-22
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1st stage:02

 期待を込めて押すボタン。ガチャの演出で排出されるレアリティは分かるため、祈るようにしてムービーを注視する。「げっ」 十ある枠の内、一つはレアリティが高いものが出ると確定はしているものの、キャラクターのランクが四段階あるため最高レアが出る確率はゼロが頭についてコンマ何パーセントのみ。画面に表示されてた色は最高より一つ下のランクだったため肩を落として溜息を吐く。「で、でも、まだ望みを捨ててはいけない!」 演出には、確率変動というものもある。レア度の色が一つ人の等級だったとしても、万が一の確率で上位に変換されることだってあるのだ。幸いにも映像はまだ完全に排出されるレア度が確定する前の状態。ムービーがまだ続いている以上、奇跡が起こる可能性だって残されている。「お願い、神様!」 人間というものは、実に都合の良い生き物で。普段は信じても居ない神様に、自らの希望を叶えて欲しいと必死に祈る。小さな機械の中だけに存在する偶像のキャラクターに思いを馳せ、一生残るかどうかも分からないデータを獲得するのに一喜一憂している様は、傍から見れば滑稽に映るに違い無い。「来い……来い、来い……」 それでも欲しいと思うのがオタク心で。ましてや一目惚れしたキャラクターなら物欲も尚更だ。「お願い、頼む……」 そして終わるアニメーション。「…………」 瞑っていた目を恐る恐る開きながら覗き込んだ画面に表示された十本の光の色はというと……。「…………くっそ!!」 残念ながら、奇跡は起こらなかったようだった。「あーっっっ! マジかよ!!」 欲しかったキャラクターが来ないと分かった瞬間、躊躇うこと無くスキップボタンを押す。直ぐに結果が分かり、既に所持しているキャラクターが重なったことに悔しさを覚え、一度携帯端末から視線を外し辺りを見回した。「あ」 そこで目にとまったのが、先程託されたばかりの財布である。「これ、誰の何だろう」 この財布を託した男は、ここの住人の物なのでは無いかと言っていた。「うーん」 でもそれは、あくまで彼の憶測でしかない。「一応、確認してみるか」 勝手に中身を見ることに躊躇いを感じ無かった訳では無い。それでも敢えて中を見ようと思ったのは単純に、持ち主が分かるなら連絡を。そうで無いのなら、帰る途中で交番に持って行こうと決めたからだった。「結構厚いけ
last updateLast Updated : 2026-08-23
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1st stage:03

「いや……まさか、な」 しかし、流石にそれはあり得ないと思い浮かんだ考えを即座に否定し、持っていた小さなかけらを机の上に置いた後、今度は広げた紙へと視線を移す。「ってか、ここに書かれている【気をつけろって】、どういうことなんだろう」 手の中に在る小さな四角。 幾重にも折り目が付けられた紙は、随分長い間この財布に入っていたのだろうか。折り目の部分が黒ずみ、脆くなってしまっているようだった。破れないように注意しながら、他に何か書かれていないかと調べてみるのだが、どの角度から見ても書かれている文字はこのたった一言だけ。「誰に向けて書いたものなんだか」 少なくとも、自分には関係ない話には違い無い。 幾ら調べてもこれ以上は何も得られないことに、無駄な時間を使うのはごめんだ。 そう思うと、この財布や中身に対しての興味も随分低くなっていく。兎に角、これについては住人が帰ってきたときに持ち主がなのかを聞いて確認し、該当者が居なければ交番に届けてこの話は終わりにしよう。そうすると決めてから、意味不明なメモに白い欠片を包み、財布を元の状態へと戻して隅に寄せる。「腹減ったなぁ」 再びやることが無くなり出来てしまった暇な時間。相変わらずモニターには変わったものは映らないし、外は酷い大雨が続いている。「何か食う物あったっけ?」 一度席を立ち壁に掛けてあった鞄の中を漁ると、数日前に買ったスナック菓子の袋が出てきた。「……これでも食うか」 今日買い足したばかりのペットボトルは、最近気に入って買っているメーカーの紅茶で。この二つを手にし席に戻ると、袋を開けて中身を口に放り込む。「……ん」 サクッ、サクッと噛み砕かれる度に鳴る小さな音。口の中に広がる不健康な味は、小腹を満たすには少し物足りないと感じるものだ。容赦なく水分を奪われたことに不快感を覚え封を切ったペットボトル。キャップを外して中身を口に含めば、じんわりと湿り気が広がっていく。スナック菓子の塩気と茶葉の渋み。その二つが絶妙にマッチすると、口の中の物は流れに乗るようにして喉を通り胃の中へと落ちていく。「んー……」 しかしまぁ、本当にやることが無いなと、改めて思い視線を移動させる。 窓口の向こう側にあるエントランスには無機質な金属のポストが住居数の数だけ並んでいた。「いーち、にー、さーん、しー……」 何
last updateLast Updated : 2026-08-24
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1st stage:04

「夢でも見てんのかなぁ?」 もしそうだとしたら、なんて最悪な夢なのだろう。そう思いながら自らの頬を軽く抓ってみる。「いっ……!?」 しかし、無常にも指が触れた箇所から感じたのは鈍い痛みで。「…………まさ……か……」 手を離しても継続して感じる感覚に、信じられないと己の両手を見て固まる。「うそ……だ」 夢ならば気味が悪いと思いながらもこの状況を笑って過ごすことが出来た。しかし、これが現実ともなれば真っ先に感じるのは恐怖という感情だ。 何か、おかしなことが起こっている。 直感的にそう感じ取ると、何もかもが気味が悪くて仕方が無い。 ジジッ……ジジジッ……。 頭上から聞こえる小さな音。 チカ……チカ、チカッ……。 不安定に点滅を繰り返す度、部屋の中が一瞬暗くなり辺りが見えにくくなる。「何か、嫌な感じ」 一刻も早くこの場所から離れてしまいたい。そんな風に思い始めた瞬間、机の上に置かれていた黒電話が、大きな音を立てて鳴り響いた。「っっ!?」 普段聞き慣れない独特のコール音は、非常に耳障りで五月蠅いと感じる金属の音だ。受話器を上げるまで鳴り止む気配が無く、ずっと聞いていると頭が痛い。 誰から掛かってきたのかも分からないそれを始めは無視するつもりだったのだが、余りにもしつこく鳴り響くため、結局耐えかねて受話器を手に取ってしまう。「……もしもし……?」 受話口から聞こえてくるであろう電話の向こう側に居る相手の声。黙って返答を待つのだが、相手がこちらの呼びかけに応じる気配は全く無い。「もしもし?」 もう一度送話口に向かって同じ言葉を繰り返し、再び待つ相手の返答。「…………」 しかし、先程と同じように、電話の向こう側から聞こえるのはホワイトノイズのみで、受話器を持つ相手の声が聞こえてくることが無く嫌な沈黙だけが続いている。「あの!」 悪戯なら止めて欲しい。ただでさえ不可解な状況に置かれているのだ。これ以上変なことが続くと気が狂ってしまいそうで恐ろしくて仕方が無い。「用がないんなら切りますよ!」 これ以上待っていても意味が無いのだろう。悪質な悪戯電話に不安と怒りを感じながらも受話器をたたきつけるようにして電話を切る。「……なん……なん、だよっ」 口から漏れる声は不安定に揺れ、思った以上に自分が動揺していることに気が付き驚いてしまう
last updateLast Updated : 2026-08-25
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1st stage:05

「時計だけが壊れてるだけなら安心も出来たのに……」 ここに始めから置かれている設備に対しての不具合なら、未だ理解は出来た。それでも、この不具合は自らも持ち物に対しても同じように発生している事象なのだ。こうなってくると、今まで体験したことも無い怪異の存在を、嫌でも意識しないといけなくなってくる。「…………マジで、勘弁、してくれよぉぉ」 別に、怖い話が苦手な訳では無い。マンガでも映画でも、面白そうだと思えば楽しむくらいには平気で見る事が出来るし、ゲームに至っては、割と好んでプレイをすることも多い。しかし、それはあくまでもフィクションであることを楽しめるからという理由がある。ネット上の活発な巨大掲示板で語られるようなリアルな体験に自分が巻き込まれるなんてこと、今まで考えたことは無い。「まぁ、心霊体験が出来れば楽しそうだなぁって思ったことも、確かにあるけどさぁ……」 だが、それは今では無いし、起こるとしても誰かと連絡が取れる状態で起こって欲しかったというのが正直なことろ。「どう、しよう」 手元の携帯端末は、まだ【午前零時四十四分】を表示したまま。「あそこで聞いてみようかな」 友人からの連絡が来ないため、外の状況が全く分からない。こうなってくると、本格的に助けを求める先が警察とかになってくるのだろうが、目立ったトラブルが起こったわけでも、自分自身が襲われている訳でもないのだから、まともに相手にしてもらえる可能性は限りなく低いだろう。 そこで思いついたのが、ネット上の巨大掲示板の存在だ。「あそこなら、こういったことに詳しい人も居るだろうしな!」 今までは安全圏から展開を見守るだけだった。 時には茶化し、時には同情し。そこで繰り広げられるコンテンツは、嘘か誠か分からない曖昧なエンターテインメントなのだ。その真意を確かめるつもりはなかったし、ましてや自分がそちら側に回る事なんて一度も考えたことも無かったのだが、今自分が置かれている状況にアドバイスが貰える可能性が最も高い場所はあそこだけ。「煽られたら嫌だけど」 ただ、あの場所の特性も理解はしている。基本的に疑って掛かることの方が多く、真面目に相談したとしても、大抵は適当に煽られ茶化されてしまう。四の五の言っている場合ではない。「とりあえず、スレ立てだけでもしないと……」 ホーム画面に配置してあるブラ
last updateLast Updated : 2026-08-26
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1st stage:06

「誰か、居ませんか?」 流石に無人ということは無いだろう。そんな期待を込めて中を覗くのに、一向に返事が返ってくる気配は感じられない。「あのー……」 仕方なく建物の中へと足を踏み入れ、真っ暗な室内を照らして回る。「誰か……」 入って直ぐのカウンター。そこには書きかけの書類が作業途中のまま広げられている。「…………」 中には個人情報を記載しているものもあり、覗き込めば簡単に閲覧可能な状態になっていることがとても不用心だと感じてしまう。 奥の机にあるのはノートパソコンだろうか。中途半端に開いた状態になっており、先程まで作業をしていたような気配がある。「あっ!」 そこで気が付いたのは、このパソコンから光が漏れているということだった。「電気だ!!」 ここに至るまで、灯りの存在を確認出来たのは初めに居た建物以外一つも無かった。そんな中で見つけた小さな光。懐中電灯のか細いそれと大差は無かったのだが、それでも明るさがあることで感じられたのは安心感である。「ネットが繋がっていれば、誰かと連絡が取れるかも!」 カウンターの向こう側。本来ならば許可が無ければ立ち入ることが出来ない空間へと足を踏み入れるのを躊躇わなかった訳では無い。それでも今は緊急事態なのだと。そう自らに言い聞かせ、小さな声で断りを入れながらまっすぐにノートパソコンが置かれている机の元へと向かう。「ブラウザが開きっぱなしになってる!」 偶然にも、画面上に表示されているのは最も有名なサーチエンジンのホーム画面だった。検索窓に巨大掲示板のタイトルを打ち込みエンターキーを押し暫し待つ。「…………」 場所が変わっているのだから、契約している回線自体はあの建物とは異なるものだ。これなら問題なく繋がるに違い無い。そんな風に考えながら真っ白になったページを見ていたのだが、暫く回転を続けたカーソルがポインタの形に切り替わった瞬間、最も見たくない文字が表示され、再び絶望に襲われてしまう。「そん……な……」 真っ白に染まったブラウザ。その中央にあるものは、【インターネット接続がありません】というメッセージだ。「うそだろ!?」 それを認めたくなくて更新ボタンを押すのだが、何度ページを読み込んでも表示される言葉が変わることは無い。「回線が不安定だからなのか!?」 コントロールパネルからネットワークプ
last updateLast Updated : 2026-08-31
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1st stage:07

「もう、誰でも良いから誰かに会いたい……」 最後に人と会ったのは、昼に落とし物の財布を渡した男性に話しかけられたのが最後。それ以降は人間どころか、生き物の姿すら見た記憶が無い。ここまでくると流石に恐怖の方が上回り、自身を取り巻く異質な空気にすら過剰反応を示すようになってしまう。 残念なことに、灯りがあるのはこの建物と交番だけ。 外部との連絡が一切取れず何処にも人の気配が無い様子はまるで、ホラーゲームの中に閉じ込められたようで。もしかしたら二度と出られないんじゃ無いかという考えが益々強くなり、悔しくも泣きたくなってしまった。「ゲーム……」 何となくそう呟いた時だ。 ジリリリリーンッッ!! 突然、部屋中に鳴り響く耳障りなベルの音。「ひぃっ!!」 その音は、この部屋に始めから置かれていた黒電話から聞こえてくるもので、余りにの大きさに驚き、咄嗟に身を屈めてその場に蹲る。「今度は何だよ!!」 ホラーゲームの展開でよくあるパターンとでも言いたいのだろうか。狙ったかのようなタイミングで響くそれが切れる気配は今のところ感じられない。それどころか、益々大きくなっていくような気がして頭が痛くなってくる。「やめろぉぉっっっ!!」 今までは画面の向こう側でしか耳にしたことの無いその音が、直ぐ目の前で鳴るという恐怖。効果として使用されている音は主に、不安を煽る為の材料として使われることが多いため、この後に何が起こるのかと気が気でならない。早く音を消したいと両手で耳を塞いでいるのだが、それでも消えてくれないこの金属音を消すためにはどうすれば良いのだろう。電話を壊すことを真っ先に考えたが、それに触れる事すら嫌だと感じ、暫くは何も出来ず、電話を見ないようにしながら部屋の隅で様子を伺うことにする。「やめろよぉぉ……」 耐えていればいつかは終わる。そう信じたかったのかも知れない。「誰も居ないんだってっ!!」 居留守だろうが何だろうが、この際関係ない。そんな気持ちから届くはずも無い怒号を電話に向かって吐き続ける。「誰も居ないって言ってるだろっ!!」 諦めること無く何度も、何度も。同じ言葉を繰り返し電話へと叫ぶのに、叫べば叫ぶほど小さな部屋が金属の音に侵されていくようで気が狂いそうだ。最終的には意味の無い言葉を吐きながら、目を瞑ってひたすら音が止むのを待ち続けている状
last updateLast Updated : 2026-09-01
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