「あ……まあ……新婚と言えば……そう……かな」 麻奈は、一旦止めた手をもう一度伸ばして湯呑みを取った。ぐいとそれをあおる。「やだ、照れちゃって」 片田が麻奈の肩をぽんと叩いた。「いいわねえ。一番楽しい時期よ」 佐田が煎餅をパキッと割る。片方をガジガジと齧りながら笑い声を上げた。「ねえねえ、旦那さん、どんな人?」「……え?……」 麻奈は佐田を見た。佐田はにこにこして煎餅を齧る。「イケメン?」「……あ……」 麻奈はうつむいた。「……あの……まあ……そう……かな……」「やだ、ちょっと、聞いた? イケメンですってよ」 片田が嬉しそうに笑い声を上げる。「どこで出会ったの?」「……え……?」 どう答えたらいいのかわからず、麻奈は曖昧に笑ってみせる。……あの日。始まりの日。蒼生が私を狙ってジムへやって来た。忘れられない人に私が似てたから。身代わりの人形にするつもりで。それだけの理由で。「……別に……普通です……。どこにでもある感じの……」……そうだったらよかったのに。 麻奈は唇を噛みしめる。……なんてことのない、普通の、どこにでもあるような出会いだったらよかった。「あら、イケメンなのに?」 佐田は煎餅を一枚食べ終え、手を伸ばしてもう一枚掴み取った。「なんかドラマチックなことはなかったの?」「……ないです。なんにも」 首を振ってうつむいた麻奈に、進藤が笑いかけた。「そんなのなくなっていいの。出会えたことがドラマなんだから」「……え?」 顔を上げた麻奈にはかまわず、進藤は煎餅を一枚つまんだ。半分に割ることもせず、それにかぶりつく。 ザクザクと楽しげな音を立てて煎餅を噛み砕きながら、進藤はうなずいた。「出会って結婚したんでしょ? それで充分」 佐田は笑い出した。「確かに。普通は結婚しないもんね。出会って、挨拶して、それっきりとか」「そうそう、それが普通」 片田もうなずく。「うちだって全然何にもなかったわよ。コンパで会
Huling Na-update : 2026-09-30 Magbasa pa