追加調査を受け、研究所では琴葉と職員との接点について、さらに詳しい確認が進められていた。 調査担当者が照合しているのは、二人が接触した日時だけではない。 その前後の通信履歴。職員がデータを持ち出した時期。琴葉が情報を知り得たタイミング。そして、外部の情報提供者との接触記録。 修復されたログをもとに、それぞれの記録を重ねていくと、偶然とは言い切れない一致がいくつか浮かび上がった。 接触の直後に増えている通信。データが持ち出された時期と重なる、琴葉側の動き。 ただし、現時点で「琴葉が職員にデータを盗ませた」と断定できる証拠はなかった。 むしろ、調査によって見えてきたのは、別の可能性だった。 研究所の職員がデータを外部へ持ち出し、それを第三者に渡した。その人物と琴葉には仕事上の接点があり、琴葉もまた、何らかの情報を受け取っていた可能性がある。 情報が渡った経路は、まだすべて明らかになっていない。 調査担当者は資料をまとめ、会議室に集まった関係者へ報告した。「白石さんが情報の出どころを知らなかったとしても、何らかの情報を受け取っていた可能性はあります」 「受け取った情報が、持ち出されたデータと同じものだったということか?」 神代が確認すると、調査担当者は慎重に言葉を選んだ。「現時点では、そこまで断定できません。ただ、接触の時期や通信履歴を照合すると、無関係だと片づけることも難しい状況です」 神代は資料に目を落とした。 情報を盗み出した職員だけでなく、その先にも情報が渡っていた可能性がある。もし、その情報が入札に関わる形で利用されていたのなら、研究所内部の問題だけでは済まない。「……白石さんは、何を知っていたんでしょう」 澪は静かに尋ねた。 琴葉が情報を受け取っていたとしても、それだけで不正への関与が確定するわけではない。けれど何を知り、どこまで事情を理解していたのか。それを確かめなければ、次の判断には進めなかった。「そこを明らかにする必要がある。情報の出どころを知っていたのか、不正に取得されたものだと認識していたのか。それによっても、意味は変わってくる」 神代の言葉に、澪は短く頷いた。 琴葉を追い詰めたいわけではなかった。 ただ、知りたかった。 何が起きたのか。誰が何を知っていたのか。そして、どこから先が意図的な行為だったのか
Last Updated : 2026-10-15 Read more