All Chapters of 奴隷商異世界を往く 〜奴隷商人の娘に転生したんだけど、奴隷達に慕われ過ぎちゃったので人材派遣で一旗揚げようと思います!~: Chapter 31 - Chapter 40

78 Chapters

第30話 カウンセリングをするマリア

  新しい奴隷としてルーチェを冒険者ギルドから引き取ってきてから、一週間。彼女は未だ塞ぎ込んだままで、あたしは心療内科の先生を切実に求めているところだよ。臨床心理士でもいい。居ないと思うけどね! 彼女の元所属パーティーに掛けられていた違約金は冒険者ギルドが立て替えていたので、あたしはその立て替え金を冒険者ギルドに返納するという形で、ルーチェの身柄を引き取った。 その額なんと大金貨五枚。金貨にして五百枚という大金だった。とてもじゃないけど、依頼に失敗した人間が払える額じゃない。まあ、あたしは払えたけどね(ドヤッ)。 コツコツ貯めてて良かったね。というより、こういう時のために資金を貯めていたんだから、本来の用途通りに使えたってことよ。だから後悔なんてしません。 ルーチェとは、あの時は会って少し話をしただけだった。 あたしはお父さんやギルマスさんにしたのと同じ説明を彼女にして、それと当面は働かなくても良い事を伝えて、あたしの奴隷として保護することに合意してもらった。 なんというか無気力で、ちゃんと考えて判断したの?って心配にもなったけど、『あたしは絶対に無体なことはしないから』と言ったところで頷いてくれたので、まあ良しとした。「お嬢様。そろそろお時間です」 メイド奴隷のバネッサが、予め頼んでおいた時間を教えてくれる。もう最近の日課になっているんだけど、今日もルーチェのカウンセリングの時間だ。 とは言っても、専門知識なんて何も無いからね。ただお喋りをして、彼女に語り掛けて、彼女が語りたい事を聴いてあげるだけ。 他人と触れ合うこと、時間を掛けて気持ちを上向けてあげること以外に、出来ることなんてないんだよなぁ。「ありがとバネッサ。お茶はいつも通り、ルーチェのお部屋に持って来てね」「かしこまりました、お嬢様」 奴隷を引き取って一週間。この間はずっと午後のお勉強の時間を、彼女と過ごしている。今日も今日とて、彼女に宛てがわれたお部屋へと、お喋
last updateLast Updated : 2026-09-03
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第31話 真相を聞き出したマリア

 「……依頼の内容には、問題は無かった。けど、最初のオークの目撃から、時間が経ち過ぎていたの」 あたしとルーチェだけの部屋に、悲しみと怒りの込もった彼女の声が、震えながら響く。「どういうことなの?」「……集落は巨大化していた。オークだけでも三十匹は居て、それとは別に将軍や、王が生まれていたの……」「そう、なんだ……」 これは、ルーチェの依頼の失敗談だ。 ただの失敗談ではない。彼女以外のパーティーメンバー全員が亡くなるという、悲しすぎるお話。 いつもなら、ルーチェはここで話すのを止めてしまう。 恐怖と悲しみ、そして怒りが極まって、心的外傷が甦って話すどころじゃなくなり、本格的に泣き出してしまうんだ。 だけど今日はなんと……続きを語り出したの。「――――わたしたちは引き返そうとした。とてもわたしたちだけでは手に負えないって。依頼が失敗になっても、みんなでお金を出し合って、借金して返そうって。ギルドに報告を入れなきゃって……!」「それで……どうしたの?」 初めて聞く話の内容に、あたしまで怖くなってくる。 だって、〝オークジェネラル〟に〝オークキング〟って……! 魔物――モンスターには、討伐の適正ランクが存在するの。 大鼠ならFランク、一角兎やゴブリンならEランクって感じでね。 オークはDランク相当なんだけど…… モンスターは長く生きたり、多くの他のモンスターや人間を倒して喰らったりしていくと、〝上位種〟に進化することがあるの。 ゴブリンだと、ゴブリンウォリアーや、ゴブリンマジシャンだっ
last updateLast Updated : 2026-09-04
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第32話 秘密会談に同席するマリア

  ルーチェから事件の真相を聴き出してから、更に一週間。あたしは、持てる手段を全て駆使して、情報収集に力を注いでいた。彼女が意図的に現在の状況に追い込まれていたとしたら、どこかしらに何らかの動きがあるハズだからだ。 法律上では、彼女はすでにあたしの所有する奴隷になっている。あたしの許可なく自由に動けない代わりに、これまたあたしの許可が無ければ誰かが彼女に会うこともできない。そしてもちろん、あたしが今の状態のルーチェに自由行動を許すはずもなく……。 弱っている彼女に今面会を許すほど、あたしの頭はおめでたくない。 ……いや、実際来たんだよねコレが。 俺は彼女の友達だから会わせてくれっていう、どう観ても胡散臭い男が。 もちろんそんな野郎は門前払いだ。その後に尾行して(バネッサが)、結果は残念ながらただの雇われた木っ端で大元を探ることはできなかったんだけど、彼女の身柄を欲しがっている人物が居ることだけは確定した。 ちなみにだけど、あたしは(ルーチェの許可をもらってから)お父さん――スティーブに、彼女が意図的に依頼を失敗させられた事を打ち明けた。スティーブは普段見せることのない厳しい顔で『ギルマスとも相談した方が良い』と言って、その場で手紙を書いて使いの奴隷に持たせてくれた。 で、今日がその手紙のやり取りで決まった約束の日だ。 街ではどこに誰の耳目があるか知れないということで、ギルマスのハボックさん自らが、我がワーグナー商会に訪問してくれることになったの。ルーチェの回復具合も診たいと言ってくれたから、一石二鳥だしね。 ギルマス――ハボックさんは信用に足る人物だと、お父さんも評価している。あたしも、依頼失敗を盾に身柄を要求されているルーチェを護ってくれたことから、彼のことは信用できると思っている。 なかなか居ないよね? 冒険者ギルドの支部長と言えば、本部からの推薦が無ければ就けない役どころだ。会社で言えば、役員とまではいかないけど、部長クラスのお偉いさん。そんな立場の
last updateLast Updated : 2026-09-05
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第33話 暗躍するマリア

 「さて。それじゃまずは、頼んでおいたことの報告をお願いしようかな。ギルマス、良いかい?」「ああ」 口を付けたカップをソーサーに戻してから、ギルマスさんが懐から紙束を取り出した。「まず一つ目。ルーチェら【明けの明星】に指名依頼を出した貴族についてだな。名は〝メトシェイド・ウォル・ハビリウス男爵〟。ここら一帯の領主である〝ムッツァート伯爵〟閣下の部下の一人だ。歳は四十二で所領は無く、ルーチェ達の拠点であった隣りの街、〝アザレア〟の代官を務めている」 男爵か。それも代官兼務ねぇ。なんか、ロクでもない圧政を敷いてそうなイメージだな。「胡乱げな顔をしてるな、お嬢さん」「マリアはまだまだ、感情を隠せないんだよね」 むう、顔に出てたみたい。だってその情報を聞く前から、その男爵を疑ってるんだもん。「まあそんな顔になるのも無理はない。この男爵、色々と黒い噂が絶えない男でな」「そんなにかい?」「ああ。伯爵閣下がご多忙で領都をあまり動かれないのを良い事に、好き勝手やっているらしいな。税はこの街〝アズファラン〟の倍、関税も五割増しで掛けている。街の商家からの賄賂は当たり前で、日がな一日遊興に耽っているそうだ」「酷過ぎますね」「本当だねぇ。行政はどうしてるんだい?」「配下の文官に押し付けているようだ。しかも水増しして徴収した税金は計上せずにな」「うわぁ〜」「横領じゃないか……! 告発はされないのかい?」「証拠の守りが堅くてな。それにギルドは中立だ。いずれかの勢力に依頼として協力はしても、与したりはできない。独自に調査しようもんなら、越権行為で国から苦情を上げられかねん」 なるほど……冒険者ギルドとしてはそこまで干渉はできないということか。だけどこれだけ調べるのも、結構危ない気がするけど……
last updateLast Updated : 2026-09-06
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第34話 お嬢様の指令:ミリアーナとバネッサ①

 「何とか朝の入場には間に合ったな。バネッサ、この後の計画は?」「旦那様の奴隷諜報員が拠点を設けているはずです。合流場所は冒険者ギルド支部。掲示板前で符牒の確認がございます」「なるほど。時間の指定は?」「朝食後とのことですので、〝剣の鳥〟の刻頃でしょうか」「なら我々も腹ごしらえしてから動くべきだな。良さそうな軽食屋は在るのか?」「調べは済んでおります。質と量を勘案すると、〝豚の鼻亭〟がコストパフォーマンス的には最良かと」「なんだか入るのに勇気が要りそうな店名だが、バネッサの調べならそこが一番なんだろうな。それじゃあ、案内を頼む」「お任せを」 〝剣の花〟の刻(午前五時)を告げる鐘の音が響く中、街の入場門からゾロゾロと旅装束の人の流れが街中へと進んで行く。反対に出て行くのは、肩に鍬を担いだりしている農民がほとんどであった。 そんな人の流れの中に、二人の美女が紛れ込んで居た。奴隷商人見習いの少女、マリアが所有する奴隷である、ミリアーナとバネッサだ。 彼女達は昨夜の内に居住地である〝アズファラン〟の街を出て、一晩で隣り街であるここ〝アザレア〟に到着していた。通常であれば丸一日掛けて踏破する距離を、である。だというのに、二人にはまるで疲れた様子は見受けられなかった。「そこの路地を入って五軒目のお店ですね。宿屋も兼ねていますから、ついでに拠点といたしましょう」「拠点は旦那様の奴隷が確保しているのではないのか?」「リスクの分散は諜報に於いて基本中の基本ですよ。今までは縁遠かったかもしれませんが、貴女も覚えておいてくださいね」「む、なるほど。お嬢様が独立した時のために、か」「ええ。早晩お嬢様は、旦那様より独立を果たされるでしょう。その際にお嬢様の支えとしての行動が最も求められるのは、私達二人ですからね」「承知した。確かに、こういう裏方の仕事も必要になってくるだろうしな。色々と教授を頼む」 そう話しながら路地を進み、目的の店〝豚の
last updateLast Updated : 2026-09-07
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第35話 お嬢様の指令:ミリアーナとバネッサ②

  〝アザレア〟の街の冒険者ギルド支部にて。「お嬢さん方よぉ、こんな場所に何の用だい? ここはおたくらのような別嬪さん達が来るような場所じゃねぇぜ? 〝旦那様はどうした〟んだい?」「〝主人の言い付け〟ですので、お構いなく」 掲示板を前に論議を交わすミリアーナとバネッサの元へ、冒険者風の身形をした、少し酒に酔っているらしい男が近付き、粉を掛ける。 傍から観れば何の変哲もない、ただ男が女性を心配し――もしくはナンパをしようと――声を掛けただけに見えただろう。しかしそのさり気ない会話こそが、予め取り決められていた符牒であった。「そうかい。まあせいぜい気を付けるんだな。じゃあな」 一見すればスゲ無く袖にされたように見える男は、バネッサの肩をポンと叩いてアッサリと二人から離れ、ギルド併設の酒場のカウンターへと向かって行った。「……今のがそうなのか?」「ええ。さて、もうここに用は有りませんね。目的地へと向かいましょう」 目を瞬いて尋ねるミリアーナに、バネッサはフワリと微笑んでから撤退を促した。肩を叩かれた際に渡された、住所の書かれた紙片を手に持ちながら――――  木製の扉が、ノックされて乾いた音を立てる。「……〝お嬢様は〟?」「〝超天使〟」 質問への返答にしばしの間を置いてから、扉の鍵が外され開かれた。建物の中に招かれたミリアーナとバネッサは、待ち受けていた男に相対して、フードを外してリラックスする。「良く来たな。バネッサ、ミリアーナ」「アンドレ、ご苦労様です」「久し振りだな、アンドレ。ところで、あの符牒は何なのだ?」「スティーブの旦那がお決めになったんだ。不服か?」「いや、なら納得だ。
last updateLast Updated : 2026-09-08
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第36話 報告を受けるマリア

  ミリアーナとバネッサが帰還した。 あたしは二人を労い一日休みを与えてから、報告を受け取ることにした。 場所は今回の当事者の一人でもある、ルーチェの部屋。軽い食事とお菓子を用意して、お茶会を兼ねての報告会である。それというのも、ルーチェ自身が望んだからでね。仲間達の無念がどういった形で晴らされたのか、知りたかったのだそうだ。 少しでも前を向くキッカケになればと思って、あたしはそれを許可したってワケ。 「うんうん。それで、お父さんの奴隷との情報交換の後はどうしたの?」「はい。諜報奴隷であるアンドレと別れた私達は、その日は〝豚の鼻亭〟へと戻り、計画に修正を加えてから休みました」「修正っていうと?」「はい。計画の要である、男爵の口止めに関してですね」 あーなるほどね。当初の計画だと、代官屋敷に侵入して証拠を集める際に、【賢者】の事を他言しないように口止めをする予定だったよね。「調べた結果、男爵は自身の屋敷にほとんど寄り付かず、仕事以外の時は何軒もの愛人宅や娼館で過ごして居たそうで。そちらに潜入した方が怪しまれずに接触できる、と判断致しました」「……ち、ちょっと待ってよ。それってまさか……!?」「ご安心下さい、お嬢様。娼館に潜った訳ではありませんよ」 バネッサへのあたしのツッコミに、ミリアーナがフォローを入れてくる。 ホントに? なんにも無かった? 絶対ヤだぞあたしは。たとえ演技だろうと、バネッサやミリアーナの嬉し恥ずかしムフフな姿態を、そんな野郎に視姦されるのは。 あたしでさえまだ観た事ないのにッッ!!「お嬢様、続きを報告しても?」「ハッ!? う、うん、よろしく……!」 いけないいけない。平常心だぞあたし。 あたしは女の子。機会はこの先いくらでも&
last updateLast Updated : 2026-09-09
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第37話 ミリアーナとバネッサの法に触れるお仕事

  リセリア嬢の協力を取り付けた、その日の夜も更けた頃。私はミリアーナと共に、再び彼女の家を訪れました。 手筈通りに事が運んでいるならば、通りに面した窓の鎧戸に白い布を挟んでおくように指示を残していたのですが――――果たしてその窓には、白い布巾が風に揺られておりました。 私達はそのまま人目を忍んで裏手に回り、勝手口の戸を静かに叩きます。 少しの間を置いて開けられた戸の向こうには、やり遂げた顔のリセリア嬢が立っておりました。 私達は素早く建物内に身を滑り込ませ、薄暗い台所で彼女と向き合います。「首尾は如何でしたか? そのお顔から察するに、成功したとは思いますが」「はい。頂いたお香のおかげで、男爵様……男爵はぐっすり眠っています」「護衛の者は?」「いつもの事ですが、男爵は褥に第三者が近付くのを嫌います。家に入ってからは、皆帰されていました」 上々です。こちらの指示通りとはいえ、お見事な手際でした。諜報員として雇いたいほどですね。 私はリセリア嬢に、負債についての相談と称して男爵を呼び出すようお願いしました。 彼女に聞いた話では、返済についての相談を持ち掛けると男爵は決まってこの家を訪れ、彼女を堪能した挙句に、耳触りの良い言葉を吐いて励ましてくるのだそうです。 同じ女として吐き気を催すほどの愚劣漢ですが、そのおかげで警戒する事なくノコノコ現れたのですから、その単純な頭に少しだけ感謝致しましょう。 そうして呼び出した男爵を、予め匂いの薄い、催眠効果のある香を焚いた寝室に入らせます。気付けの抵抗薬を服用したリセリア嬢は、男爵が眠ってしまうまで会話をして引き延ばし、その身柄を確保したのです。 案内された寝室の扉から中を窺うと、寝台の上にだらしのない身体を横たわらせた男が見えます。アレが男爵なのでしょう。「良く頑張りましたね、リセリア様。後の事は私と、このミリアーナにお任せ下さい」「はい。両親の仇を、
last updateLast Updated : 2026-09-10
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第38話 丸く収めたマリア

 「もう結構です。では男爵、衣服を整えてこれから改めてする質問に答えなさい。まずは不正の証拠品について――――」 身体に染み入るように消えた【血命紋】によって、男爵はこの先ルーチェについて話す事も、書に認める事も出来なくなりました。もししようものなら、即刻その人生に終止符が打たれる事でしょう。 この【血命紋】こそが、奴隷商人が忌避され嫌悪される所以なのです。国の厳しい審査の上に、認可され登録を許された者にしか生業とする事ができず、違法な者は厳しく罰せられる理由です。 奴隷商人は代々世襲で、一子にのみ継承されます。それは偏に、これらの危険な〝魔導具〟や〝紋様〟を扱える者を徒に増やさないためなのです。今回のように、悪用すれば為政者ですら操れる代物を、国が管理や監視を徹底する事で抑制しているのです。 お嬢様と共に旦那様からこの説明を受けましたが……あの時のお嬢様の真剣なお顔は、とても凛々しく、お覚悟に満ちた良いお顔でしたね。 聴き取りを終えた男爵が寝室に入り、寝台に身を横たわらせました。私は改めて量を調節した香を焚き、明日の朝まで目覚めないように念を入れてから、寝室の鎧戸と扉を閉めました。「あの……先程の、ルーチェという女性は、いったい……?」 男爵に契約を施したダイニングに戻ると、今回の協力者であるリセリア嬢が、恐る恐る尋ねてきました。「貴女と同じ……男爵によって狙われ、親しい者達を失った不憫な女性です。その女性を護るために、私達はやって来たのです」「……そうでしたか。その、ありがとうございます。私だけでなく、その女性の事も……」 本当にお強く、心根の優しいお人ですね、リセリア嬢は。自身も辛い境遇に貶められたというのに、縁もゆかりも無い他人の事で喜べるとは。
last updateLast Updated : 2026-09-11
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第39話 魔法レッスンに臨むマリア

  ルーチェの抱える問題が解決してから更に日は流れて、あたしは十二歳になった。 ルーチェとのなんちゃってカウンセリングも重ねた回数が功を奏したのか、彼女は自分の意思で日常生活を送れるほどの回復を見せた。まだ時々仲間達の事を思い出して落ち込むこともあるけど、部屋に籠りきりだった生活は改善され、あたしやミリアーナ、バネッサと共に活動する機会も増えてきている。 特にミリアーナには同じ冒険者として親近感を覚えたらしくて、『お姉様』なんて呼んで懐いている。百合百合しくて実に良いね。美女×美少女とか……眼福でございます。ごちそうさまでございます。 で、そんな風にルーチェも回復してきたということで。「ルーチェ、今日からよろしくね!」「はい、お嬢様! 精一杯教えさせてもらいますねっ」 いよいよ待ちに待った、魔法の授業が始まったのだ! 「まず〝魔力〟とは、この世界に生きる総てのものが有しているモノですっ。お嬢様はすでに魔力を動かすことと、注ぐことは出来ていますね?」「うん。魔導具に注いだり、紋章に魔力を翳したりは出来るよ」「凄いですっ。普通の平民の子供では、精々自身の魔力を自覚するくらいしか出来ませんよっ。何歳くらいに出来るようになったんですか?」「んー、お仕事を始めて少ししてからだから、八歳とかそのくらいかなぁ?」 あたしの部屋のソファで隣り合って座り、ルーチェの質問に答えていく。 ルーチェの職業適性は、超希少なものである【賢者】だ。魔法への適性がずば抜けて高い職業で、七歳で受けることになる〝鑑定の儀〟で見付かれば、即座に国からのスカウトが来るような代物である。 ルーチェがそれに目覚めたのは、七歳を迎える少し前だったらしい。ある日突然『そうである』と自覚が芽生え、魔力の扱いを自然に理解する事が出来たのだと言う。それは異常な事だと子供心にも思ったらしく、必死に隠そうと試行錯誤を繰り返す内に、適性を隠蔽する事
last updateLast Updated : 2026-09-12
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