奴隷商異世界を往く 〜奴隷商人の娘に転生したんだけど、奴隷達に慕われ過ぎちゃったので人材派遣で一旗揚げようと思います!~

奴隷商異世界を往く 〜奴隷商人の娘に転生したんだけど、奴隷達に慕われ過ぎちゃったので人材派遣で一旗揚げようと思います!~

last updateLast Updated : 2026-10-19
By:  テケリ・リUpdated just now
Language: Japanese
goodnovel16goodnovel
Not enough ratings
77Chapters
483views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

 目が覚めたら、異世界で奴隷商人の娘に転生していた。ちなみに前世では男で、社畜で、多分だけど過労死したっぽい。  知らない物だらけの異世界で温かい家族や奴隷達に囲まれて過ごしていく内に、俺はすっかりこの人生を気に入っていた。まあ……この世界特有の【適正】やら【職業技能】やらでは考える事は多いけどな。  そんな異世界なんだが、過労死した元社畜の俺にとっては許しがたい点が多すぎてな。色々と手を加えて頑張ってるんだ。その過程で奴隷達の扱いなんかも変えたりしてな。  まあ、なんて言うか……とにかく今世も過労死だったり奴隷の反乱なんてのはごめんなので、できる限りホワイトな経営目指して、奴隷達と頑張って生きてくわ。

View More

Chapter 1

第0話 人材派遣会社

「クハハハッ! よくぞ我が魔王城まで辿り着いたな、選ばれし〝勇者〟タテワキの一党よ!!」

「〝魔王〟バルタザールよ! 貴様の野望もこれまでだ! オレとオレの仲間達とで、貴様の命運を断ってみせる!!」

 ここは剣と魔法の世界〝エウレーカ〟。人間、亜人、魔族、魔物が入り乱れ、血で血を洗い覇権を競う、命の価値の低い世界。

 邪神教の狂信者の手により悠久の眠りから目覚めた魔王バルタザールは、人類を支配せんと配下と共に戦乱を巻き起こした。

 対する人類側は、古いにしえより伝わる秘術を用いて異界の勇者――タテワキ・ミドウを召喚し、対抗する。

 両陣営が相見あいまみえ、魔王城の広い玉座の間で、いざ矛を交えんと接近する。

 彼我の距離が縮まり、世界の命運が懸かった運命の一戦が、今ここに――――

「あれ? お前ら、そっちに雇われてたのか?」

「そう言うアンタ達こそ、魔王に雇われてたのね?」

 何故か足を止め、武器を下ろす魔王配下の四天王と勇者の一党。

「ぬっ!? どうした四天王達よ! 戦うのだ!!」

「みんな、一体どうしたんだ!?」

 訝しむ勇者と魔王。

 そんなそれぞれに、彼らの配下と仲間は振り返り口を開いた。

「すみません、魔王様。俺達、アイツらとは戦えません」

「ぬなっ!!??」

 驚愕に目を見開く魔王。

「ごめんね、タテワキ君。私達も、彼らとは戦えないわ」

「え……!? ど、どうして!?」

 開いた口が塞がらない勇者。

「どうしてって、なあ?」

「ねえ?」

 何やらただならぬ雰囲気に陥った決戦の舞台。

 そんな雰囲気を一刀両断するがごとく、魔王配下の四天王達と勇者の一党の面々は、口を揃えてこう言った。

「「「社則だから」」」

 それだけを言い残し、四天王も勇者一党も、み·ん·な·仲·良·く·魔王城を後にした。

 後に残ったのは呆然と立ち尽くす勇者と、肩を怒りに震わせる魔王のみだ。

 突然ハッと我に返った勇者が、懐から一枚の紙を取り出した。そこには、こう記されていた。

『社員同士による戦闘行為は、その一切を拒否できるものとする。またそのような事態が発覚した場合はその時点で契約を終了とすることを、承知するものである』

 それは、ある商社と交わした契約書だった。

「むっ!? 勇者タテワキよ、その紙はもしや……?」

 それを見た魔王が、徐おもむろに自身も懐から紙を取り出す。

 今だけは世界の命運も両者の因縁も脇へと追いやり、それを互いに見比べる勇者と魔王。

 その紙は、勇者が持つ契約書と寸分違わず同じ物であった――――

 ◇

「いやぁー、まさか魔王軍と勇者パーティーと、どっちにも俺らが雇われてたとはなぁ」

「ホントよね。でもこれで良かったのかしら? 〝社長〟のことだから、きっとこれも想定内なんだろうけどさ」

 黄昏に染まる街道を、つい先程までは敵対する勢力に属していた男女数名が、仲良く談笑しながら歩いていた。

 種族も性別も、容姿も装備もバラバラな彼ら。そんな彼らの唯一の共通点といえば。

「いいんじゃねぇの? 〝お嬢〟の目に偽装は通じないし、全て知った上で契約したってんなら、案外こうやって毒気を抜くことが目的だったのかもだしな」

「それもそうよね。だいたいが派遣された兵力の私達が最高戦力って、どういうことだって話だしね」

「違ちげぇねぇや。まさか派遣されてすぐに、最高幹部の四天王にされるとは思ってなかったわ」

「私達だって。勇者君に人望が無いのか、人類側にやる気が無いのか……。とにかく使えない奴らしかお供に居なかったからねぇ……」

 彼らの装備の何処かしらか一箇所には、その所属を示す印が存在していた。それは、この世界でも有数の版図を有する帝国の、とある大商会の刻印である。

 手広く手厚く人材を集め、依頼があれば優秀な人材を派遣し、どんな仕事をも完遂してみせるその商会。

 戦闘員でも、職人でも、料理人でもなんでもござれと豊富な人材を抱え込み、貴族や皇帝ですらその人材達で助けた実績を持つ、個·人·が所有する会社。

 その名も、〝人材派遣会社〟ワーグナー商会。

「でもまあ、おかげでケガすることもなくさっさと帰れることになったし、〝お嬢〟様様だわな」

「ホントね。勇者君には悪いけど、会社でみんなと過ごしてる方がよっぽど楽しいしね。料理も美味しいし」

「あッ!! 料理で思い出したが、そういや〝あの日〟が近いんじゃねぇか!?」

「ハッ!? そういえばそうだったわ!! 月に一度の〝カレーの日〟まであと三日しか無いわ!?」

「こうしちゃ居られねぇ!! おうお前ら、急いで〝お嬢〟の居る本社へ帰るぞ!!」

「私達も急ぐわよ!! 〝社長〟手ずから作ったカレーライス……! 絶対逃す訳にはいかないわ!!」

 片や魔王軍に雇われ、最高幹部である四天王として君臨していた戦士達が。片や勇者にその実力を見初められ、魔王討伐の旅の一党として同行していた戦士達が。

 夕焼けに染まる街道を、我先に帰らんと駆け出していく。

 目的は一つ。

 彼らに〝お嬢〟と。〝社長〟と呼ばれ親しまれている、一人の少女の元へと帰還するためであった――――

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters
No Comments
77 Chapters
第0話 人材派遣会社
「クハハハッ! よくぞ我が魔王城まで辿り着いたな、選ばれし〝勇者〟タテワキの一党よ!!」「〝魔王〟バルタザールよ! 貴様の野望もこれまでだ! オレとオレの仲間達とで、貴様の命運を断ってみせる!!」  ここは剣と魔法の世界〝エウレーカ〟。人間、亜人、魔族、魔物が入り乱れ、血で血を洗い覇権を競う、命の価値の低い世界。 邪神教の狂信者の手により悠久の眠りから目覚めた魔王バルタザールは、人類を支配せんと配下と共に戦乱を巻き起こした。  対する人類側は、古より伝わる秘術を用いて異界の勇者――タテワキ・ミドウを召喚し、対抗する。 両陣営が相見え、魔王城の広い玉座の間で、いざ矛を交えんと接近する。  彼我の距離が縮まり、世界の命運が懸かった運命の一戦が、今ここに―――― 「あれ? お前ら、そっちに雇われてたのか?」「そう言うアンタ達こそ、魔王に雇われてたのね?」  何故か足を止め、武器を下ろす魔王配下の四天王と勇者の一党。 「ぬっ!? どうした四天王達よ! 戦うのだ!!」「みんな、一体どうしたんだ!?」  訝しむ勇者と魔王。  そんなそれぞれに、彼らの配下と仲間は振り返り口を開いた。 「すみません、魔王様。俺達、アイツらとは戦えません」「ぬなっ!!??」  驚愕に目を見開く魔王。 「ごめんね、タテワキ君。私達も、彼らとは戦えないわ」「え……!? ど、どうして!?」  開いた口が塞がらない勇者。 「どうしてって、なあ?」「ねえ?」  何やらただならぬ雰囲気に陥った決戦の舞台。  そんな雰囲気を一刀両断するがごとく、魔王配下の四天王達と勇者の一党の面々は、口を揃えてこう言った。 「「「社則だから」」」  それだけを言い残し、四天王も勇者一党も、みんな仲良く魔王城を後にした。  後に残ったのは呆然と立ち尽くす勇者と、肩を怒りに震わせる魔王のみだ。 突然ハッと我に返った勇者が、懐から一枚の紙を取り出した。そこには、こう記されていた。 『社員同士による戦闘行為は、その一切を拒否できるものとする。またそのような事態が発覚した場合はその時点で契約を終了とすることを、承知するものである』  それは、ある商社と交わした契約書だった。 「むっ!? 勇者タテワキよ、その紙はもしや……?」  それを見た魔
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第1話 転生した乳幼児・マリア
「――ギャアッ! ホギャアッ! ホギャアッ!」 うるっさいなー。 耳に飛び込んでくる声で意識が覚醒する。 瞼は重く、まだ目を開けられない。「おお! 産まれ…………アーナ!!」「元……女の子です……!」「女の子…………無事に……まれ……かった……良く……ったな、ジョアー……!!」「…………りが……うアナタ。ほら、……の子よ。抱い……げて……」 いやいや、アンタらおかしくない? どうしてヒトが寝てる傍でそんな騒いでんの!? 安眠妨害なんですけど!?  赤ちゃんもずっと泣いてて正直煩いって!! 意識が段々と鮮明になってくる。と同時に、身体全体で何かに抱えられたような、そんな感覚と浮遊感を感じる。 な、なんだあ!?「ほぎゃあああっ!?」 うるさっ!? ちょ! とにかく、赤ちゃん泣き止まさせてよ!「ほ〜ら、パパだぞ〜♪ はじめまちて〜♪ おお、泣き止んだぞっ!」 先程よりも声が鮮明に聴こえてくる……っていうか、近くない? まるで、顔を覗き込まれて声を掛けられているような……? 恐る恐る、重い瞼を開く。眩しいな。 目に映るのは、ボヤけた輪郭の、男の顔? 視界が、やけに揺れている……というか、身体に感じた浮遊感も、抱擁感も継続中だし、揺らされている感覚もある。 そしてその揺れが、視界の揺れと一致しているような……「おお! 瞳はママにそっくりなエメラルドグリーンだな! これは将来絶対、美人になるぞぉ〜っ!」 ――――これは、まさかそういうことなのか……? 思うように動かない身体に鞭打って、右手をそろりと顔の前に動かす。 目の前の男の顔に比べれば、ひどく小さな手。 指も短く、プニっとしていて丸みを帯びている。 念の為、手を閉じて、開いてみる。うん、動くね。 ………………。「ほ、ほんぎゃあああああああっ!!?(あ、赤ちゃんになっとるううう!!?)」 どうやら、俺は赤ん坊に転生したらしい。 ◇ 前世の俺は、地球生まれの日本人だ。それが何の因果か、こうして赤ちゃんの身体となってオギャッてるのだ。 ラノベで定番の転生トラックにお遭いした訳でもないし、麗しき女神様に喚び出されて、なんやかや話して転生特典等を頂いた記憶も無い。 最後の記憶でMMORPGをやっていた訳でもなければ、突如教室に魔法陣が出現してクラスメイト共々、王様や
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第2話 ハイハイマスター・マリア
  転生してどれくらい経っただろうか。 最初は抱っこをされても、首がグラグラして気持ち悪かった。 ずっと仰向けじゃ腰を痛めやしないかと、頑張って寝返りも練習した。 寝ているとどうしても天井かベビーベッドの柵くらいしか見えなかったから、腕立て伏せ……とまではいかないものの、上半身を持ち上げて、それを支える腕を鍛えた。 もっと良い眺めを我が物とするために、まるでお人形さんみたいに、ちょこなんっと座る特技を得た。 そして、遂に……!「ぶぎゃっ!?」 だめか。 ハイハイ成らず。 くっそー。両手と両脚を効率良く動かせない! 俺って前世で、どうやって手足を動かしてたっけなぁ……? まず脚がなよっちいんだよなぁ。膝で支えていられない。「おあ……だぁ~……っ!」 ズベッと滑る。「あだぁ~……ふぎゅっ!」 ベシャッと倒れる。「ぶあぅ~……ほあっ!?」 フワッと持ち上げられる。「あびゃあぁ~!? ふぎゃああ!?(なんだ!? 何事だ!?)」「驚いたな。まだ生後三ヶ月だというのに、もう起きようとしているじゃないか」 くっ! 犯人はアンタか親父ィ!? 急に抱っこすんなよ! ビックリするじゃんか!! 赤ちゃんの心臓は小さいんだぞ! 心臓麻痺でも起こしたらどうしてくれる!? 脳裏にふと、前世での少年時代に飼っていたハムスターのチョコさんを思い描く。 エアコンのフィルターカバーが外れ、床に落ちた際の大きな音で心臓麻痺を起こして亡くなってしまったチョコさん。 彼女ももしかして、この世界に来ているのだろうか…
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第3話 母を呼ぶ乳幼児・マリア
  あたし……俺は、一歳とちょっとになった。 もう一年以上か。最初は夢かもってそんなことも思ってたけど、そんなこともないわけで。今ではすっかり女の子扱いにも慣れてしまった。 ママンの素敵なおっぱいに誑かされてハイハイをマスターしてからも、俺は精力的に筋トレに励んで脚を鍛え、早々に掴まり立ちを会得した。 父親のスティーブと母親のジョアーナの喜びようったら、まあ凄かったな。やれ『天才だ!』だの、『神童よ!』だのと、右へ左への大騒ぎだった。  それに気を良くした俺は、調子に乗って次なる試練、掴まり歩きにも挑戦したんだ。 結果は――――惨敗。 頭が重たいの。  バランス取るのが難しいの。 見事にバランスを崩してすっ転んだ俺は、小さな――それでも俺と同じくらいの大きさだったけど――足台に頭をぶつけてギャン泣き。 慌てふためく両親。  そして次の日から、俺の周囲には掴まれる手頃な物が置かれなくなった。 リベンジできないじゃねーか!!  泣いたのは本能からであって、俺の内心は『ふおおおおっ!? 頭がっ! 頭痛が痛いっ!!』くらいだったのに。 『マリアの周りにこんな危険な物を置いとくなんて!! ヨナ、君が居ながら何故気付かなかったんだ!?』『何よ!? アナタだって、マリアが掴まり立ちした時には泣いて喜んでたじゃないの!!』  両親の喧嘩を見たのは、この時が初めてだった。さすがに俺のせいで二人が喧嘩するのは……悲しかったな。  だから、俺は先ずは二人を止めなきゃって、必死に声を張り上げたんだ。 『ほぎゃああ! あだああううああおおっ!!!(やめてくれよ! 喧嘩しないでくれよおおっ!!!)』  まあ、泣き声にしかならなかったけれども。 いや、結果としては喧嘩は治まったよ?  どうも喧嘩をしたせいで、俺が余計に泣いてしまったと思ったらしい。 二人も俺の前では喧嘩しない、って約束を交わしたみたいだ。
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第4話 親父を泣かす乳幼児・マリア
 「アナタ! スティーブ!? どこに居るの!? マリアが!! スティーブ!!??」  俺がジョアーナの名前と、『ママ』と発言した途端、母親であるジョアーナは俺を抱えたまま、血相を変えて猛然と家の中を走り出した。 これは、さてはアレか? 『この子喋ったわよ!!』って報告するイベントだな? いやうん、百歩譲ってそれは良いとしよう。  でもママ、もうちょいゆっくり移動してほしい。そんなメッチャ全速力で走らないでほしい。 うん、超怖いの。  おしっこ漏れそう。 だがそこは俺。愛する母親の腕の中で漏らすなど、死んでも御免|蒙《こうむ》る! 耐えろ、俺の膀胱ォ……ッ!! 「どうしたんだいヨナ? そんな大声を出して、はしたないよ?」  そんな感じで我が膀胱と死闘を繰り広げていると、父親のスティーブが廊下に並ぶ内の一室から扉を開けて、ヒョイッと顔を出てきた。  そこはスティーブが仕事に使っている書斎だ。一度だけ、彼に抱かれて入ったことがある。 その部屋には大量の本が棚にビッシリと収められていて、シックな木の机と、物語の登場人物が座っていそうなクッションの効いた椅子が置いてあり、強く印象に残っている。  そこから出て来たスティーブの手には、インクを付けるタイプの、いわゆる羽根ペンが握られていた。 書き物のお仕事中だったのかな? 「スティーブ、聞いて! マリアが喋ったの!! 私のこと『ママ』って、『ジョアーナ』って呼んだのよ!!」  ポロリ、と。 スティーブの手から、羽根ペンが床に落ちる。 ああ! 床のクロスにインクの染みが!?  しかし、そんな俺の心配を余所に、二人は一気に盛り上がる。 「ほ、本当なのかい、ヨナ!? 本当に、マリアが君の名を喋ったのかい!!??」「ええ! 何度か練習するみたいに言ってたけど、最後にはハッキリと『ジョアーナ』って言ったわ!!」  おおーい
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第5話 あんよマスター・マリア
  ふっふっふ……! 遂にやってやったぞ!! 恐ろしい思いはしたけど、なんとか言語を習得したあたしは……俺は、嘆願と懇願と泣き声によって、掴まり歩きの訓練を再開することに成功した。 そして一歳も半ばを越えた頃……つまり現在だが、俺は遂に掴まり歩きを経て、よちよち歩きをマスターしたのだ!! 「んっふっふ〜。あたちにちゃちゃえば、どーってこちょにゃいわ」  思考と言語が一体化したことにより、過度に泣き叫ばなくても意思の疎通が可能になった。そしてハイハイと歩行が可能になった今、俺の行動範囲は一気に広まったと言って良いだろう。 いざ、状況確認だ。 あの時――あたし……俺が初めて両親を言葉に出して呼んだ時に母親のジョアーナが行使した、魔法らしき力。  アレが見間違いでないのなら、ここは少なくともあたしが……俺こと【八城要】が生きていた地球ではないということになる。魔法なんて無い世界だったはずだからな。 それを、確認しなければならない。 いやね? ママやパパに抱っこされて外を観るとか、庭先に出て道行く人を観察するとか、そういうのに多少は希望を持ってたのよ。 だけど、両親共に普段はずっと家の中。買い物に街に繰り出す訳でもなく、かと言って生活に苦しんでいる様子も無い。  むしろ、それなりに裕福な暮らしをしているようにも思える。 両親は、いや、あたしの父親……俺の父親であるスティーブは、いったいどうやってこの生活を維持しているのだろうか?  気になって気になって仕方がなくて、あんよをマスターするのにも熱が入ったってわけ。 そして、さあ……! いざ、未知の扉へ――――  「はああぁぁぁぁ〜〜っ…………」  あたし落胆中。  いや、俺落胆中。 うん。〝ヤツ〟の存在を、完っ全に失念しておりました。 そう、それは……! 扉!! あんなん届くかっ!  床から
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第6話 奴隷商の娘・マリア
 「奥様、お嬢様。どうかなさいましたか?」  顔を声の方に動かすと……おお! マジでメイドさんだ!! メイド喫茶のような萌え萌えミニなのではなく、クラシカルなザ・メイド服に身を包んだ綺麗なお姉さんが、瞳を伏せて会釈をして佇んでいた。 「なんでもないわ。マリアに庭を見せに行くだけよ」「左様でございましたか。では、護衛の手配を」  これ、マジで貴族転生ルートかな。  いやぁマジかー。 んん? でもちょっと違和感。  たかが庭だろ? どうして護衛なんか必要なんだ? それに、このメイドさん。華美ではないけど、キチンと手入れをされたメイド服に、似つかわしくない無骨な金属製の首輪が目立つ。  ネックレスでも、ペンダントでもない首輪……もっと言えば、首枷。 まるで、ラノベや漫画で見た奴隷みたいな―――― 「そうね。でも女性にしてちょうだい。男性では、マリアが怖がってしまうわ」「かしこまりました。すぐに手配し、玄関に待たせておきます」  あたしが……俺が考え事をしている間に、そんな話をしていたメイドさんは、一礼すると颯爽と廊下の向こうへ消えて行った。 「さあ、マリアちゃん。パパにご挨拶してから行きましょうね〜♪」  ジョアーナに抱かれて、再び廊下を移動する。 パパ――スティーブの書斎は、もう既に通り過ぎている。ということは、他の部屋で何かやっているのか? 俄然興味が湧いてきたな。  まあ、書斎でいつも何をしているかすら、まだ知らないんだけどね。 少し廊下を行った先の、立派な木製の両開きの扉。  そこに着いたジョアーナは、あたしを……俺を抱いたまま片方の手でノックする。 「アナタ? 私よ」「ヨナかい? 入りなさい」  短い応答で部屋の主の許可を得たジョアーナは、両開きの扉の片方を開き、中へと入る。
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第7話 お手伝い幼女・マリア
  最近ずっと考えていることがある。 性同一性障害ってさ、男の身体に女の心、もしくはその逆だろ? それによって、自分の意思で性転換を果たしたりして、男になったり女になったりする人も居るんだよね? じゃあさ、『前世は男だったけど転生したら何故か女の子に産まれてて、でも前世の男の人格が入っている』場合は、どうすればいいのだろう? その本質は男と女、一体どちらなのだろう? ぶっちゃけ今まさにあたし……俺がその状態なんだが! 俺はあたしで、あたしは俺で。  一体どう振る舞えばいいのだろうか。 名実共に女の子に産まれたんだから、内面も女の子になるべきなのだろうか。 そんなことを、ずっと考えているんだ。  お気に入りのクマさんのぬいぐるみを抱きながら。 「マリアちゃ〜ん、ご飯ですよぉ〜♪」「はーい、ママ〜♪」  今世の母親であるジョアーナが、開け放たれた扉の向こうから声を響かせる。  クマさんのぬいぐるみを抱っこして、そちらへと向かう。 奴隷商の娘、マリア三歳。 趣味は運動と、絵本を読むことと、おままごと。  特技は肩たたきと足踏みマッサージ。  好きな物はキレイな色のリボンとクマさんのぬいぐるみ。  嫌いな物は脚が八本以上ある蟲とパパのおヒゲ。  最近のお気に入りは、家で働いている奴隷さん達に色んなお話を聞くことです! 「って、マジで女の子になってるじゃん!?」  今日もセルフツッコミが冴え渡る。 そんなあたし……もうあたしでいいや。あたしは、三歳になった。 自分が奴隷商人の一家の娘と知ったあの日から、無理に外に出せとは、もう言ってはいない。  父親のスティーブや母親のジョアーナは、奴隷を扱う商売柄他人の恨みを買いやすいから、いつも屋敷の中に居たんだ。 実際にスティーブなんかは、街を歩いていて襲われたこともあったらしい。  いつかの食事中に聞いた話だったが
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第8話 自由な幼女・マリア
  ママの美味しい食事を食べ終えると、あたしはいつもここへ来る。 奴隷達の部屋。  みんな同じ首枷を着けて、簡単なシャツとズボンに身を包んでいる。 一応奴隷であり商品でもあるから、逃亡防止のために格子付きの扉で閉じ込められているけど、簡単ながらベッドも有るし、食事だってちゃんと与えられている。  掃除もそこそこされているし、そもそも奴隷のイメージである〝虐げられている人〟っていうのは、この屋敷には居ない。 家が取り扱っているのは、基本的には借金奴隷達。家族や自分の借金で首が回らなくなって、最後の手段として自分を金に替えて奴隷となる人達だ。 そんな人達の借金を肩代わりして払って仕入れ、奴隷という労働力としてウチで仕事を斡旋する。賃金は積立てられて、借金分の働きをこなしたら解放されるっていう仕組み。 もちろん、斡旋された仕事場で目を掛けられれば、そのまま継続して雇ってもらえたり、買い取ってもらったりと、チャンスもそれなりにある。 奴隷には、他にも労働奴隷や犯罪奴隷、傷病奴隷なんてのも居る。 労働奴隷は、他所の土地から移住とかで移ってきて、職を持たない人が奴隷として仕事を斡旋してもらうもの。借金が無いだけで、基本的な仕組みは借金奴隷と似ている。 犯罪奴隷は、文字通り罪を犯した悪人が奴隷身分に落とされるもの。だいたいは過酷な肉体労働をさせられて、期限が有ればそれだけ勤めれば解放されるけど、終身刑なんかだと死ぬまで扱き使われる。前世で言うと、受刑者の労役だね。 傷病奴隷は、戦争で大怪我を負ったり、大病を患ったりして、普通の仕事に就けなくて、どうしようもなくなった人がなる。大きな工場とかに送られて、簡単な流れ作業とかの人工になることが多い。でも他と違って欠陥があるから、なかなか買い手がつかない。 最初は奴隷商人の娘なんてバッドエンドしか見えないじゃん、って絶望してたんだ。 よくあるラノベみたいにイケイケな勇者とかが転移とか転生してきて、『奴隷商人なんてクズだー!!』って排除されたらどうしよう!?って、気が気
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
第9話 教育を受ける幼女・マリア
  どうしよどうしよどうしよぉおおおおおおおおおおおおッ!!?? あたしマリア、五歳の女の子。  前世は社畜のアラサー男性だったけど、今世ではパパ譲りのサラサラブロンドヘアーと、ママ譲りのエメラルドグリーンの瞳が愛らしい、自他共に認める美少女だよ! まあ、奴隷商人の一人娘ではありますけれども。 それより聞いてほしい。この世界の子供達は七歳になると、〝鑑定の儀〟とやらを受けるらしい。 子供達を聖職者を介して神様が判定して、職業の適性や魔法の適性を調べる儀式だそうだ。その儀式で優秀な結果が出れば、将来は約束されたも同然。世の親達、そしてその子供達も、一段と張り切るイベントらしいのだ。 んー、まあファンタジー物のラノベで割とテンプレな儀式ってことだよね? その儀式で最低な結果だと、あたし追放されちゃったりすんのかな……? ラノベみたいに! ラノベみたいに!! それで過酷な環境に放り込まれて、なんやかやして超絶レベルアップを経て最強に至り、追放してきた奴らにざまぁして回んなきゃいけないの……!? その話を聴かされた、そんなありふれた展開を恐れたあたしことマリア五歳美少女は、絶対に無難な適性を勝ち取ろうと決意したの。 職業の適性は……【商人】が獲れればベストだよね。別に取れなくたって家業はあたしが継ぐつもりだし、関係ないと言ったらないんだけど。 魔法の適性は正直色々欲しいものだけど……憧れるけど……! でもやっぱり戦うのは怖いし、無理! というわけで、支援系の魔法か、俗に〝生活魔法〟と呼ばれている無属性の魔法の適性を狙いたいところ。 一瞬【治癒魔法】も考えたけど、治癒の才能のある人って、半ば強制的に教会に勧誘されるらしいんだよね。 あれだ。治癒の力は神が与えたもうた奇跡なり〜、ってやつ。で、そんなのはごめんだから治癒魔法もパスね。 「う〜ん……」  望んだ適性を得るにはどうすれば良いのか。中身はアラサーとはいえ異世界初心者(五年目)であるあたしは、悩みに悩んだ末に、奴隷達の部屋を訪れた。
last updateLast Updated : 2026-08-13
Read more
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status