All Chapters of 奴隷商異世界を往く 〜奴隷商人の娘に転生したんだけど、奴隷達に慕われ過ぎちゃったので人材派遣で一旗揚げようと思います!~: Chapter 51 - Chapter 60

78 Chapters

第50話 継承するマリア

  あたしは、お父さんの日記の文字を追い続ける。『七歳になったマリアが〝鑑定の儀〟を受けた。示された適性は【社長】。聞いた事の無い適性だ。僕はてっきり僕と同じ【商人】が出るだろうと思っていたから、つい落胆したところをマリアに見せてしまった。あの敏感な子にそんな態度を見せるなんて、何をやっているんだ、僕は……!』『マリアとの間に溝を感じる。分かってる、悪いのは僕だ。あの子は懸命に自身の適性の有用性を示そうと、あれからも努力を続けている。もしかしたら、あの子が言うように凄い適性なのかもしれない。だったら信じ、見守ってあげよう。それがせめてもの、マリアへの償いだから』『伯父のセイラム男爵――既に隠居だから前男爵か――から、有能な適性持ちなら寄越せと手紙が来た。奪い去った弟に会わせてくれもしないくせに、よくもヌケヌケと……! たとえマリアが言うように【社長】が凄いモノだとしても、絶対に渡さない! 一先ずは、適当に不遇な適性だったと返事を書いて送ってやった。マリアは、渡さない……!』 あの儀式の後で、こんな風に考えて、こんな風に動いていたんだね。お父さんも悩んでたんだね。自分の事ばっかりで、気付いてあげられなくてごめんね。護ってくれて、見守ってくれてありがとう。『ミリアーナの暴挙は正直看過できない。だけど、マリアが必死に訴えてきたんだ。不足分は働いて返すから、ミリアーナを譲ってくれと言ってきた。……正直言葉を失った。僕やヨナの前では常に良い子だったあの子が、あそこまで強く我を通そうとするなんて』『マリアの下であの子に仕えたいと、ミリアーナから嘆願された。あの【赤光】のミリアーナが、一生をあの子に捧げるとまで。あの子がどんな話をしたのかは分からないけど、やっぱりあの子には、特別な〝何か〟があるように思える。見届けてみよう。あの子がこれから何を成すのかを』 あの時は、本当にありがとう……! 苦労を掛けて、本当に
last updateLast Updated : 2026-09-23
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第51話 マリアは奴隷達を集める!

  あたしマリア。十二歳の女の子で、奴隷商会〝ワーグナー商会〟の新会長。 両親が謎の襲撃事件に遭って亡くなってから、既に一ヶ月。寂しさと悲しさは拭えないけれど、我が商会は徐々に落ち着きを取り戻してきているよ。「スマンな、お嬢さん。やはりコレという証拠は何も見付からなかった。力になれなくて本当に申し訳ない」「気にしないでください、ハボックさん。ハボックさんには僧侶の冒険者の方を探していただいたり、色々と助けてもらってますから。それに結局のところ、怪しい人物は最初から限られてますし。あとは、あたし達が独自に動きます」「……本当にやるのか?」「ええ。ですが今はまだ。何よりも、父が遺した商会を護らなければいけませんから。次に狙われるとしたら奴隷達……いえ、商会そのものでしょうからね」 あたしの住む街、アズファランの冒険者ギルドのギルドマスターであるハボックさんと、我が家の応接間で話し合う。「新しい経営体制に、それに見合った人事案、雇用の見直しに賃金の再設定……正直、やる事は山積してますから。そんな時に、いつまでも犯人探しに拘らっている暇は……今はありません」「だが……っ! いや、済まない。しかし商会を継ぐ……しかも奴隷商を継ぐとなると、領主家の承認が必要になるんだぞ? その辺りは大丈夫なのか? ワシが間に立っても良いんだぞ?」「そこまでハボックさんに甘えられませんよ。ギルドはあくまでも中立なんですし。大丈夫です。あたしには、頼りになる仲間が居ますから」 ミリアーナにバネッサ、そしてルーチェ。 両親亡き後、公私共にあたしを常に支えてくれていた大好きな人達。 彼女達が居てくれれば、あたしに怖いものなんか無い。領主家――伯爵家に継承の報告に行くのだって、平気だもん。「そうか……
last updateLast Updated : 2026-09-24
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第52話 マリアは組織改革する!

 「会長は俺らを奴隷から解放して改めて雇うって言ってくれたっすけど、どんな事をさせるつもりなんすかね? それに解放されたら、俺らには会長に従う義務は無くなるっす。わざわざそんなリスクを負う理由ってのも、聞かせてくれませんすかね?」「アンドレ、言葉が過ぎるぞ!」「だってそうだろう、ミリアーナ? 前会長……スティーブの旦那は、奴隷商人として俺らを使役してきた。その方が圧倒的に安上がりだし、裏切られる心配だって無ぇんだぜ? お嬢……マリア会長が何をするつもりなのか、商人として何を考えているのか、気になるじゃねぇか」 アンドレにとって、父スティーブは雇い主である前に恩人だ。過酷な労役を課される犯罪奴隷にされずに済んだのは、偏にスティーブがその能力を見抜き、欲したから。だから彼は……ううん。ここに居るスティーブに見出された奴隷達みんなは、それぞれに恩を返そうと、献身的に前会長に仕えてきた。 そう、スティーブにだ。あたしではなく。「みんなが父への恩を返そうと、奴隷とはいえ文句も言わずに仕えてくれていた事に、あたしは感謝してるの。そしてその、父に向けられた信頼と忠誠を、今度はあたしに注いでもらいたいの。あたしはまだまだ未熟だし子供だから、みんなの信用への対価を充分に賄う事は難しい。あたしはみんなが恩義を感じている前会長じゃないしね。 だからこその奴隷身分からの解放と、正式な雇用なの。お金で釣る事は不本意だけれど、奴隷だった頃よりもよほど良い賃金を約束する。商会の経営体制も、それに合わせて見直してる。だからどうか、あたしにみんなの力を貸してほしい。これからはあたしに従わされる奴隷としてじゃなく、一人の部下として、あたしを支えてほしいの」 あたしが彼等の信用に対して確実に払える対価は、今はお金しかない。両親があたしに内緒でコッソリと貯めてくれていたあたしのお金を準備資金として、彼等優秀な人材を出来るだけ高待遇で迎える。 この商会の将来を見据えて、あたしが打つ第一手だ
last updateLast Updated : 2026-09-25
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第53話 マリアは伯爵閣下に謁見する!

 「……お主のような女児が、奴隷商会を継承すると申すか。何かの冗談か、夢ならば良いのだが」 こんっの野郎……! ちょっとあたしがティーンエイジャーでプリチー過ぎてそれはもう愛嬌たっぷりだからって、言うに事欠いてそれは無いでしょッ!? あたしマリア。十二歳の美少女(自他共に認めてるよ!)で、奴隷商会〝ワーグナー商会〟の新たな商会長。 今日は、我が商会が所属する領地の主――〝クオルーン・ヨウル・キャスター・ムッツァート〟伯爵閣下に謁見するために、領都〝ハル・ムッツァート〟まで遠路遥々お出掛けしてきました。 それと言うのも、奴隷商人というのは我が〝フォーブナイト帝国〟においては厳重に監視・管理されており、法律によって正規の奴隷商人でない違法な者は厳しく罰せられるのね。 あたし達奴隷商人は、使い様によっては非常に危険な魔導具を所持・行使するために、国の定める法律の下での認可が必要なのだ。そしてそんな奴隷商人の数を徒に増やさないために、一子相伝みたいな感じで、継承にも領主の認可が必要なワケ。 魔導具普通に持ってるじゃんって? アレはお父さんのお古だよ。 普通ならあたしみたいに、七歳の子供の頃から働いたりしないからね。お父さんが仕事を教えるのにも必要って事で、急遽用立ててもらったんだよ。もちろんその際に、扱うに足る知識や能力があるかは奴隷商人の組合みたいな所で試験を受けましたけどね。 で! 遠路遥々――片道馬車で三日だよ?――領都に赴いて、長い長い待ち時間を退屈に過ごして、いよいよ伯爵閣下とのご対面並びに継承の挨拶という段になって……「前会長の突然の不幸には同情を禁じ得ないものである。だがしかし、さすがに齢僅か十二の、成人もしていない女児に継がせるなどとはな……」 メッチャ舐められとります……ッ!!(イマココ!) 我が家のみん
last updateLast Updated : 2026-09-26
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第54話 マリアは伯爵閣下に褒められる!

  初めて入るお城の中は、さすがは【キャスター】の称号を与えられた伯爵様の居城といった、質実剛健、機能性・実用性重視のまるで城塞といった風情だ。 華美な装飾は控え目で、威容を示す最低限に抑えられて飾られており、屈強な……親衛隊って言うのかな? そんな装いの騎士達が、要所要所に配置されて目を光らせている。 あ、【キャスター】の称号っていうのは、当代随一の魔法の使い手であり、戦争での功績著しかったクオルーン・ヨウル・ムッツァート伯爵に皇帝から授けられた、名誉ある称号なのね。それを贈られ貴族なり功績者は、名前と共に名乗る栄誉を得られるの。 〝クオルーン〟が名前。キャスターが称号で、〝ムッツァート〟が家名ね。〝ヨウル〟はムッツァート伯爵家の開祖様の名前で、代々家督の継承と共に引き継いでいるらしいよ。なんでも騎士爵からの叩き上げで伯爵の地位まで昇り詰めて、この広大な領地を拝領したんだとか。 凄いよね、ヨウル様って。 謁見まで待機するように通された部屋の中で、そんな伯爵家の開祖たる初代ムッツァート伯爵閣下の肖像画を眺めながら、あたしは事前に教えてもらった伯爵家の情報を反芻していた。 現ムッツァート伯爵であるクオルーン様は、五代目になる。御歳四十五歳。お世継ぎにも恵まれ、嫡男は今年が軍役の最後の年だとか。 軍役が明ければ、晴れて伯爵家の後継者として領の運営に携わっていくらしい。この帝国、軍事的にも大国なせいか、貴族家の嫡子には一定期間の軍役が義務付けられてるのよね。 まあ世継ぎを預かる訳だから、あんまり最前線なんかには駆り出されたりはしないんだけどね。現場での指揮や兵の運用を学び、頑健たる統治に反映させよ、って事らしい。 嫡男様の名は〝サイファー・ムッツァート〟様。二十一歳ってことは、ルーチェと同い歳だね。文武両道で、貴族学院を上位の成績で卒業した他にも、帝都〝アイゼンベルグ〟で毎年行われる剣術大会でも、学生の時分にも関わらず準優勝したそうだ。 こんな有能で素晴らしい後継者に恵まれて、我等がムッツァート伯爵領は今後も安泰だね! と、段々と思考迷子になり始め
last updateLast Updated : 2026-09-27
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第55話  マリアは爆弾を投下する!

  ムッツァート伯爵閣下の厳かな声に促され、あたしは意を決して、今回謁見を願い出た本題を切り出した。「三月前の事です。前会長スティーブとその妻ジョアーナが、不幸な事件にて身罷りましてございます。よって、彼等の唯一の子であるわたくしマリアが当商会を継承したく、その許可を頂戴しに参上致した次第でございます」「不幸な事件とな? 補佐官、仔細は?」「はっ。三ヶ月前、アズファランの街から馬で一日といった街道の外れにて、損傷著しい遺体が発見されたとのことです。冒険者により発見された遺体は、その娘マリアの両親と商会所属の奴隷達であると、確認が取れております。死亡届は確認の翌日に、代官宛に届出がありました」 確認を求めた伯爵に、補佐官さんがスラスラと答える。流石、事前調査は抜かりなくされてるみたいだね。「なるほど、それは痛ましい事だ。両親並びに奴隷達の冥福を祈ろう」「勿体ないお言葉、深く感謝申し上げます。父母や奴隷達も、草葉の陰にて大いに喜んでいる事と存じます」 いやいや、マジで良い人だこの伯爵様ってば。上級貴族が平民や奴隷の冥福を祈るなんて、有り得ないでしょ。「それで……商会を継承すると申したのか? お主がか?」「はい。わたくしマリアめが、遺された奴隷商会を継承致したく存じます」「………………本気で申しているのか?」「もちろんでございます、伯爵閣下」  ――――で、現在に至りあたしはキレそうになっているというワケだよ。 あたしが跡を継ぐと重ねて宣言した途端、それまで温かみのあった伯爵の顔は一変し、呆れたような、哀れなものを見るような目であたしを観てきたのだ。 ぐぬぬぬぬ……! いや、仕方ない事かもだけどさあ! でも悔しいんじゃー!!
last updateLast Updated : 2026-09-28
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第56話 マリアは領都で観光する!

  あたし達の領主である伯爵閣下――クオルーン・ヨウル・キャスター・ムッツァート様との謁見から三日が経った。あたしはその間、我が生家の在る街では中々楽しむことの出来ない、市街の散策というモノを満喫していた。 アズファランの街だと、あたしが奴隷商の娘と知られると露骨に煙たがられるからね。そうでなくても奴隷を連れて歩いていると良い顔をされないのだし(まあ、それは当然かもしれないけどさ)。 いやぁー、やっぱり領都ともなると都会って感じがするね! 前世(日本)の感覚に当てはめれば、普通の街で住んでた人が県庁所在地に出て来たようなモノかな。領主である伯爵様が堅実に治めているってのも大きいだろうけど、人の声や笑顔に活気が満ち溢れているよ。 うん、あたしは良い領地で生活しているんだね。領主がムッツァート伯爵で良かったよ。 そんなムッツァート伯爵だけど、補佐のバネッサや情報通のアンドレによれば、現在は隣接する侯爵領に所属する、セイラム男爵家――我が家の本家に当たる貴族だ――について調べを進めているだろう、って。「そもそも、今回の自領内の商会継承に敵対派閥の構成員が絡んでいる可能性ありとなれば、たとえ大貴族の伯爵家であろうと動かざるを得ないでしょう」「だよね? いやぁ~、アドリブだったけど、閣下が興味を示してくれたから結果オーライよね」「本当にお嬢は肝が座ってるっすねぇ。俺なんかは、その話をバネッサから聞いた時は血の気が引いたっすよ……!」「その通りです、マリア会長。如何に商会を護るためとはいえ、事前に何のご相談もなく貴族同士の権力闘争を利用するなど……!」 うげ、ヤブヘビだぁ!? そうなのよ! あの謁見の後で宿に戻ってから、あたしってばこっぴどくバネッサにお小言を言い続けられたのよね……! そりゃまあ、貴族の派閥抗争に首を突っ込むなんて、あたしだって嫌だし怖いけどさ! でもそうでもしないと、あの男爵家なら本当に商会の乗っ取りを画策してそうじゃない&hel
last updateLast Updated : 2026-09-29
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第57話 マリアは伯爵に重大情報を伝える!

 「良くぞ参ったな、スティーブの娘マリアよ」「伯爵閣下にご挨拶申し上げます」 再びの伯爵との謁見だけれど、今回は謁見の間は使わずに、こぢんまりと――それでも我が家の応接間よりよっぽど広いけどさ!――した応接室で執り行われた。 短い期間に一度謁見をした事もあってか、馬車の見張りであるヘレナを除いた全員が、室内への立ち入りを許された。 あたしは我が家の面々を後ろに控えさせて、伯爵の勧めに従って対面の席へと腰を下ろす。「さて。此度は非公式の謁見故、記録には残らぬ。またマリアよ、お主がその歳らしからぬ非凡な人間である事も、この三日間の調査で充分に把握した。直答を許す故、忌憚のない意見を聞かせるが良い」「過分なお言葉、恐れ入ります」 正直、内心冷や汗が止まらない……! え、あたしの事までそんな根掘り葉掘り調べたワケ!? ちょ……! ルーチェの件で悪徳男爵を貶めた事まで把握されてないよね!?「ではまず、お主の生家であるワーグナー商会と、お主が本家と申すセイラム男爵家の間柄について述べてみよ」「はい。我が祖父に当たる初代会長ワーグナーは、今は現役を退いた前セイラム男爵様と兄弟の間柄です。祖父ワーグナーは実家である男爵家より独立し、このムッツァート伯爵領にて奴隷商会――ワーグナー商会を起業したと、聞き及んでおります」「ふむ、相違無いな。そういえば、先の戦役にて男爵家の【聖騎士】が殉職したと報告が上がっておったな。聞けばお主の両親がかのファステヴァン領へと旅立ったのも、その者の墓前に参るためだったとか」「はい。男爵家の【聖騎士】アーロン様は、わたくしの父スティーブの実の弟、つまりわたくしの叔父に当たります。〝鑑定の儀〟の後に養子として男爵家に取り立てられ、家門より輩出されたのです。ファステヴァン領の領都大聖堂にて葬儀が行われたとの一報を受け、両親は墓参りに発ったのです」「むぅ…&h
last updateLast Updated : 2026-09-30
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第58話 マリアは伯爵閣下の庇護を得る!

 「マリアよ」 領主であるムッツァート伯爵の穏やかな声が、非公式の謁見の場である応接室に静かに行き渡る。 両親の死と男爵家についての因果関係やその確執等を推察も含めて彼に披露したあたしは、その穏やかながらも力強い声に顔を上げ、威厳溢れる伯爵の目を真っ直ぐに見詰めた。 伯爵に事件のあらましを語っている内に……知らず知らずの内に強くスカートを握っていた拳の力を弛め、彼の言葉を待つ。 ややあって。「良くぞ話してくれた。お主が語った事柄は、我が名に誓い必ずや詳らかにしよう。正規の奴隷商にのみ扱いを許される魔導具の行方も、明らかにせねばならない故な。見たところ【赤光】のを始め優秀な者達を有しているようだが、呉々も早まるでないぞ?」 こちらで調べて裏を取るから、いくら優秀な奴隷が居るからって勝手な行動はするなよ、と。 一見釘を刺しこちらの動きを制するような言葉ではあったが……どうやら、あたしが齎した情報は伯爵にとって有用であると、そう判断されたようだ。 これであたしは新会長としての能力を示せた事になる……のかな。 やったよお父さん、お母さん。「ありがとう存じます、伯爵閣下。わたくしは我が商会を護り、伯爵領の、ひいては我らがフォーブナイト帝国の益々の発展に寄与する所存でございます」「うむ、良くぞ申した。追って正式な沙汰を下す故、別室にて待機せよ。ああそれと……」 うん? まだ何かあるのだろうか?「お主の商会には我が配下を一名、監督官として派遣する事と相なった。これはお主の年齢を鑑みての特別措置である事、理解せよ」「……能力は問題無くとも幼さ故に不安が残る方々を、安心させるためでございますね。謹んでお受け致します」「真に優秀であるな。平民にしておくのが
last updateLast Updated : 2026-10-01
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第59話 マリアは三度呼び出される!

  またまた待機ということで、領都ハル・ムッツァートに追加滞在すること二日。そろそろ観光する所も無くなってきた、そんなあたし達の滞在する宿に領城から遣いの人が来て、再び領主様である伯爵閣下に呼び出しを受けた。 今回の目的は、あたしの部下と伯爵の部下の親善試合。まあ伯爵本人も観戦するから、御前試合と言った方が良いかもしれないね。 あたしの部下であり仲間のAランク冒険者、〝【赤光】のミリアーナ〟に興味を持った伯爵が、是非腕前を見てみたいと言ったのがキッカケだよ。 所詮平民のあたしが貴族様の……それも大貴族たる伯爵閣下の頼みを断れるワケがないじゃないか! あたしは早く帰りたかったのにぃーーッ!! そんなワケで領城に辿り着いたあたし達。 三度目という事である程度の信用を得られたのか、今回はなんと馬車と馬に警護を付けてもらえた。〝戦闘部〟の奴隷として研修中のヘレナにはミリアーナの試合を見せてあげたかったから、正直とても助かった。 もし警護が無かったら代わりにアンドレに見張りを頼んでたところだね。アンドレとしても観戦したかったらしくて、非常に喜んでいたよ。「伯爵閣下所有の騎士団は、その勇名が響き渡っているっすからねぇ。他の騎士団が魔導士を毛嫌いしている中で、ムッツァート騎士団だけは魔導士を組み込み、連携を密にしてるんすよ」「へぇー! 凄く先進的に思えるんだけど、それは誰が発案したの? いつからそうしてきたの?」「構想自体は、初代ムッツァート伯爵閣下……ヨウル閣下が既に提唱していたらしいっすね。周囲を説得し、長い時間を掛けて訓練して、先々代でしたかね? 先々代様の時代に遂には完成に至ったらしいっす」「初代様って事は、五代も前……百二十年も昔に、そんな新しい戦法を提唱したって事!? ヨウル閣下って本当に何者……? ただの騎士上がりとはとても思えないよ……!」「ホントっすよねぇ。なんでも敵国には〝【死神】ヨウル〟の二つ
last updateLast Updated : 2026-10-02
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