All Chapters of 奴隷商異世界を往く 〜奴隷商人の娘に転生したんだけど、奴隷達に慕われ過ぎちゃったので人材派遣で一旗揚げようと思います!~: Chapter 11 - Chapter 20

78 Chapters

第10話 適性を知る少女・マリア

  七歳になって遂に迎えた、〝鑑定の儀〟当日。 あたしは両親と一緒に馬車に乗って、複数の護衛を連れて街の教会を目指して家を出た。  七歳にして初めての外出に心が踊ったものだけど、それも市街地に入って十分もしない内に沈静化しちゃった。 馬車の硝子の嵌められた窓から見えるのは、目に新しいファンタジーその物の街並みと―――― 道行く人達から我が家の馬車隊に向けられる嫌悪にも似た視線――――奴隷商が快く思われていないってことを、アリアリと痛感した十分弱の時間だったね。 もちろん、馬車の周囲には護衛の戦闘奴隷も連れて来ている。あたしが大好きなミリアーナもその一人で、他に三人の計四人で、馬車を囲むように護ってくれている。 父親のスティーブや母親のジョアーナが、外は危ないと言う意味がよく解ったよ。これは確かに、護衛が居ないと安心して出歩けないよね。 ……別に悪い事してる訳じゃないのに。 バネッサの授業で法律も習ったけど、それに反する事なんてウチでは一切していない。法の定める下で、真っ当に商品のやり取りをしているだけだ。 その商品が奴隷というだけで、こうまで悪意を向けられるものなのか……そんなやり切れない思いを抱えながら、あたしは石畳の路の凹凸の振動に、身体を揺らせていた。  「マリアちゃん。ほら、着いたわよ」  いつの間にかうたた寝をしていたらしいあたしは、優しく身体を揺するママ――ジョアーナに起こされた。 「ここが、教会……」  あたしのイメージでは、三角屋根のこじんまりとした物――街角に建っていて、牧師さんや神父さんが自分の家族含め少ない人数で切り盛りしているような、そんなオーソドックスな教会を想像していたんだけど。あれ? 神父さんは結婚しちゃいけないんだっけ? ともあれ……これ、教会と言うより聖堂だよね……? 大きな、立派な、豪華な、文化財としても価値の有りそうな風格の建物が、そこには聳え立っていた。 馬
last updateLast Updated : 2026-08-13
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第11話 悪夢見る少女・マリア

 『おい見てみろよ! あの奴隷商の娘だぜ。なんかワケ分からん【社長】とかいう職業適性の!』『ああ、アイツが? 意味分かんねーよなぁ。なんだよ【社長】って?』  うるさい! あたしだって好きでこんな職業適性を得たんじゃない! 『アレじゃないのぉ? 東方とかの神殿って、お社って言うんでしょ? そこの長ってことじゃないのぉ?』『何それウケるー! それじゃああの子は身を立てるためには、わざわざ海を越えて、東方の蛮族の国に行かなきゃいけないんだ?』  ちっげーわドアホ! 社長ってのは、会社の長だ! 偉いんだぞ!!  大体神社を仕切ってるのは宮司さんだ! 全国の社長さんと宮司さんに謝れ! 『ぶはっ! 何それ!? そんなの実質追放じゃーん!!』  やめて……! 『いい気味だね! 人の売り買いなんてしてるから罰が当たったんだよ!』  違うもん! ウチは真っ当な商売してるもん! 『ホントそれな!! ヒト様の命で食うメシは、よっぽど美味かっただろうよ!』  悪いことなんてしてない! 法律だって守ってるし、奴隷達だってちゃんと守ってるもん! 『さっさと東の国に行っちゃえばいいんだよ! 清々するよ!』  やめてよ! 奴隷商人だって立派な仕事だもん! 無職だったり、借金に苦しむ人達を助けてるもん! 『目障りだよな! 奴隷商人も、奴隷も! 消えちゃえよ!!』  やめてったら! スティーブもジョアーナも、善い人だもん! 奴隷達だって、みんな善い人達だもん!! バカにしないで!! 『出て行かないなら、殺しちゃおうぜ! ヒト様の命で金儲けする奴なんか、死んだ方が世のためだろ!!』  いや!  やめて……!!  「いやあ
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第12話 奴隷に愛される少女・マリア

 「あまりご無理はなさらないでくださいね。ミリアーナも心配していますよ」「ミリアーナが?」 ミリアーナとは、借金奴隷の身分にある、冒険者の綺麗な女性だ。あたしが大好きな人で、良くお話をしてもらっている。「あの儀式の日からお嬢様に元気が無いと、私に相談してきましたよ。今日は午前中は仕事が無いみたいですので、お勉強をお休みにして、行ってらしてはいかがですか?」 彼女の主な仕事は、戦闘の技能を使っての護衛や、人に雇われる用心棒のようなモノが多い。だから、あたしが彼女を護衛にしない限りはこちらから会いに行かないと、会う機会はそうそう無い。 以前は足繁く通ってお話をせがんでいたけれど、それもだんだんと数を減らしていた。 彼女が言ったように、あの儀式の日から。「うん、そうする。あたしもミリアーナに会いたいな」 今やあたしの拠り所は、ミリアーナとバネッサの二人の奴隷だけ。 あたしが本音を言える相手は、たったこれだけになってしまった。 パパやママは気を遣っているのか、腫れ物に触るかのように余所余所しい。あたしがバネッサに師事して勉強を続けているのを、ただ見守っているだけって感じだ。 前のような心温まる触れ合いも、ウザかったけどパパの強引な抱擁も、今では無い。 ――――寂しいな。 でも、詳細不明な職業【社長】を叩き出したあたしを見た、あの落胆したようなパパの顔が。 夕飯の時にあたしに向けられた、哀れむようなママの顔が。 どうしても頭から離れずにいて、あたしから踏み出す力を削いでくる。 あたしは頑張ってるよ? 【社長】の意味を知っているから、そうなるために。パパもママも信じてくれなかったけど、【商人】よりよっぽど凄い職業なんだから。 だから、また褒めてほしいな。 ウチの家業を、この奴隷商人という仕事を、あたしは立派な仕事だと思う。少なくとも、違法行為の無い我が〝ワーグナー商会〟は、真っ当な商売人だと思ってい
last updateLast Updated : 2026-08-15
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第13話 奴隷を愛する少女・マリア

 「ミリアーナをあたし専属にしたいから、契約させて」  夕飯の席。  あたしが発した言葉に、食卓の面々の動きが固まった。 ママ……ジョアーナは、驚愕に目を見開いて。  パパ……スティーブは、苦虫を噛み潰したような顔をして。 「パパ。ミリアーナの奴隷契約の主人を、あたしにして」  もう一度、重ねて言う。  パパの渋面が益々渋くなっていく。 「マリアちゃん、あなた自分で何を言っているか解って――――」  ママが思わずといった様子で椅子から腰を浮かし言い募ろうとしたのを、パパが手振りで制する。パパは渋面を張り付けた難しい顔をしたままで、あたしをじっと見詰めている。 ややあってその難しい顔の、固く結ばれた口を重々しく開いて。以前までの親バカなパパからは想像も着かないような真面目な声色で、ゆっくりと諭すように、あたしに語り掛け始めた。 「マリア。ミリアーナは、奴隷としてやってはいけない事をしたんだよ? 物を壊し、暴力を振るい、主人に逆らったんだ。これは、犯罪者として扱って良いほどの重大な事なんだよ? それを解った上で言っているのかい?」  奴隷に定められた部屋からの、器物を損壊した上での脱走。他の奴隷への暴行、傷害。主人への明確な反抗。そのどれもが、借金奴隷から犯罪奴隷へと更に身分を落とされても、文句の言えない事。 そんなことは解ってるんだよ。 「ミリアーナがああなったのは、あたしのせいだもの。あたしのために怒ってくれたミリアーナを、犯罪奴隷になんかさせたくないの。だからお願い。お小遣いも要らないし、ワガママももう言わないから」  ママが作ってくれたご飯にも手を付けずに、真っ直ぐにパパを見詰める。 手っ取り早く彼女を救いたければ、買い取れば良い。でも力もお金も無いあたしでは、ミリアーナを救うことはできない。 「今まで貰ったお小遣いも、貯めてたのを全部返す。足りない分はこの先お仕事を手伝って絶対に返
last updateLast Updated : 2026-08-16
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第14話 奴隷使いの少女・マリア

  コンコン、と。  控えめなノックの音に、読んでいた本から顔を上げた。 「お嬢様、バネッサです」「どうぞ」  静かに開かれた扉の向こうには、あたしの先生でもあるメイド奴隷のバネッサと……バツの悪そうな顔をしている、ミリアーナが立っていた。 「ミリアーナ! 目が覚めたんだねっ!」  あたしは思わず本を投げ出し椅子から飛び降りて、扉の前に佇む彼女に駆け寄っていた。目立った外傷も見受けられず、パッと見では元気そうに見えたから、嬉しくて。 だけどそんなあたしを、バネッサが阻んだの。 「お嬢様。どうかお近付きになりませんよう。お気持ちは解るとはいえ主人に楯突いた奴隷に、これ以上主人の御子息が近付くのを許す訳には参りません」  う……! バネッサの顔付きが厳しい……。これは、勉強で何度も同じミスをした時に見せる顔だ。 こうなった時のバネッサはホントに厳しくて、あたしが理解出来るまで懇々と、繰り返し同じ内容を説き始めるのだ。 「……分かったよ。じゃあ、この場ではバネッサが監視するのね? お話、させてくれるんでしょ?」「そうなります。ですのでお嬢様、どうかお席にお戻りくださいませ」  バネッサの指示に素直に従う。これ以上ミリアーナに罰が与えられるような事をするのは、避けないとね。大人しく勉強机の椅子に座って、改めて彼女たちに向き直る。 「立ち話も何だし、座ってお話しよ?」  そう言ってあたしはミリアーナとバネッサに、部屋に置いてある椅子に座るよう促したの。 けど。 「お嬢様! この度は、大変なご迷惑をお掛けしました……!」  バネッサが部屋の隅にある椅子を取りに行く間に、膝を折り、枷の付いた両手を床に着けて。 ミリアーナは、深々と頭を下げた。 「ちょっ!? ミリア――――」
last updateLast Updated : 2026-08-17
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第15話 命令を下す少女・マリア

 「ただいま戻りました、お嬢様」「おかえり、ミリアーナ」  ノックをしてあたしの部屋に入って来たミリアーナ。彼女は、あたしの専属奴隷になった。  あたしが説得した後にパパ……スティーブとも話をして、正式にそう決まったのだ。 その代わりに、彼女がこの間の騒動で破壊した物の修繕費や怪我をさせた奴隷達の治療費は、彼女がこれまでウチで働いて積み立ててきたお金から支払われたそうだ。  結果、彼女の借金はほぼ元通りとなり、奴隷から解放される日は遠のいてしまった。 でも、その話をしていたミリアーナは、どこか清々しそうな雰囲気だった。  理由を訊いても教えてくれなかったので、なんでかは分からないけど。 「今日は早かったね。簡単な依頼だったの?」「そうですね。ゴブリンを十体以上討伐すれば良かったので、群れを探したんです。割と早くに見付かったので、幸運でしたね」  ミリアーナには現在、あたしの奴隷として冒険者活動を再開してもらっているんだ。なんでかって言うと、あたしではまだ、彼女に仕事を取ってくることができないからだ。 そもそもまだパパには、お仕事のことは何も教えてもらえていないし。だからこうしてミリアーナに冒険者として稼いでもらって、彼女の貯蓄と、あたしの資金を貯め始めたの。 まあ、ミリアーナの冒険者資格が取り消されていたって話には、驚いたけどね。 実はコレ、割と良くあることらしい。 『冒険者には、依頼の失敗に対してだけでなく与えられる罰則が在るんです。例えばですが、依頼を一定期間受けないと登録を抹消されてしまう……というものですね』  最低ランクのFランクになって帰って来たミリアーナに驚いて尋ねたところ、そう教えてくれた。ランクが上がってしまえば、依頼を受けない猶予期間は延びていくらしいけど、そんな制度があったんだね。 でもまあ、聞いてみれば当然かも。  冒険者ギルドは、冒険者を管理・保護する互助組織だ。冒険者達は依頼をこなし
last updateLast Updated : 2026-08-18
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第16話 就職を志願する少女・マリア

 「お父さん。あたしにお仕事を教えてください」  お昼時。 ママ……ジョアーナの手料理を食べながら、あたしはそうパパに切り出した。 前世では下っ端社員としてしか働いていなかったから、経営のことはからっきし。でも一応は社会人として生きていたから、この世界の言葉や文字、貨幣価値や法律、地理や歴史をある程度覚えれば、基礎的な部分は全てスキップできた。 具体的には、商人に不可欠な算術や交渉術だね。 前世で勉強の成績や仕事の業績がずば抜けて良かったわけではないけれど、四則計算や簡単な暗算、それに営業や取引相手との会話なんかは元々人並みにはできてたもん。先生でもあるメイド奴隷のバネッサも、暗記科目を終えて算術に移ってからは、目を丸くしていたね。 何か教える前から計算が出来るんだから、そりゃビックリもするよねぇ。 まあ驚かせはしたけど、桁の大きな計算もこの世界には無いらしい〝ひっ算〟を使ってアッサリ解いて見せたあたしに、彼女は太鼓判を押してくれたの。だから満を持して、こうしていよいよウチのお仕事を教えてもらおうと切り出したわけよ。 「マリア。キミの優秀さはバネッサから報告を受けている。聞いた時は正直耳を疑ったものだよ。でも、キミはまだ七歳の子供なんだよ? どうしてそこまで急ぐんだい?」  パパの言う事ももっともな事だ。 バネッサに聞いたところ、職人などに子供が弟子入りしたりするのも、早ければ十歳を越えてからか、ある程度身体が成長してからだという話だ。貴族様なんかでも、基礎的な礼儀作法や読み書きや算術を、その頃から習い始めるという。 どう考えても早過ぎるよね。  だからあたしは、予め用意しておいた答えを返すことにした。 「商人に最も大切なのは〝信用〟だと思っています。あたしはまだ七歳で女の子だし、職業適性も馴染みの無い物でした。だけど早くから頑張って勉強して知識を身に付ければ、それだけ早く〝信用〟を得られると思っています。それに……」  一旦言葉を切って、パパの
last updateLast Updated : 2026-08-19
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第17話 就職試験を受ける少女・マリア

  食後ミリアーナとバネッサに、仕事を教えてもらうための試験を受けることになったと話した。 バネッサは自信ありげに、ミリアーナは心配そうな顔で、それぞれ激励の言葉をくれたよ。 うん、あたし頑張るよ! ミリアーナだけじゃなくて、あたしの今後の人生を左右するんだからね! そうしてお話ししていたら、約束の〝盾の芽の刻〟(午後三時)が近付いてきた。「それじゃ二人とも、行ってくるね!」「お嬢様、普段通りに為されば大丈夫でございますよ」「お嬢様、ご武運を……!」 応援が心地好く、また心強いね。でもミリアーナ、『ご武運を』って……。なにも本当に戦うわけじゃないんだから……あはは。まあでも、ある意味ではあたしにとっての〝戦い〟にはなるのかな? 内心込み上げてくる緊張と、高揚に胸を踊らせながら。 あたしは応接室の扉を、ノックした。「入りなさい」 来ることが分かっていたからか、誰何することも無く入室を促された。「失礼します」 受験や面接、就職試験を思い出して、ついついそう言ってから入室した。 室内は相変わらず広い。応接室テーブルには複数の書類が置かれていて、上座と下座にソファが対面に置かれている。 パパは、上座のソファに腰を下ろして居た。「よろしくお願いします」 ソファの横に立って一礼して、パパを真っ直ぐに見詰めて待機。 パパは面食らったような顔をしたけど、すぐに表情を引き締めて咳払いをひとつ。「約束の時刻より早めに来たのは感心だね。座りなさい」 そして、あたしにソファの対面に座るよう促した。 そりゃまあ十分前行動、五分前行動は社会人の基本だからね!「失礼します」 もう一度
last updateLast Updated : 2026-08-20
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第18話 スティーブとジョアーナ

  時刻は深夜。 一日の仕事を終えた家長である男――スティーブが、自らの書斎からダイニングへと戻って来た。「ヨナ……? まだ起きていたのかい?」 声を上げたスティーブの視線の先には、彼の妻であるジョアーナが、ダイニングテーブルに着いて珍しく酒を嗜んでいた。「アナタ……なんだか眠れなくてね……」「マリアのことかい……?」 スティーブは食器棚から自分用にグラスを取り出し、ジョアーナの対面へと腰を下ろす。 そのままテーブルに置かれている酒瓶から、琥珀色をした蒸留酒を手酌で注いでひと口呷った。「あの子ったら……まだ七歳なのよ……? どうして、あんなにも頑なに……!」 消沈した様子で呟くように吐露される言葉を、スティーブはただ静かに聴いていた。「ミリアーナの時もそうよ……! たかが奴隷一人のために将来を棒に振りかねないことを言い出して! どうして――――」「ヨナ」 しかし、堰を切ったかのように紡がれる言葉のひとつに、スティーブは視線を鋭くして言葉を遮った。「奴隷と言っても、彼女は犯罪奴隷という訳でもない。犯罪者でもなければ、僕達と同じ人間だ。確かに商品として扱ってはいるけど、そこは忘れてはいけないよ」 穏やかな口調ではあったが、そこには確固たる信念が感じられる。「……っ! ご、ごめんなさい、アナタ……」 言葉に詰まったジョアーナは、眉を下げて謝罪の言葉を口にする。スティーブはそんな妻の様子に苦笑を漏らしながら、彼女の空になっていたグラスに酒を
last updateLast Updated : 2026-08-21
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第19話 間を取り持つ少女・マリア

 「パパ……会長。今半期分のあたしとミリアーナの人頭税と、今月分の返済金です。お納めください」  あたしは、九歳になった。 パパ――スティーブの下で見習いの下働きを始めてから、そして職業適性【社長】を手に入れてから二年が経ち、奴隷達の管理については一通り学ばせてもらった。 奴隷達は基本的に、お互いに協力し合って身の回りの事をこなしている。奴隷部屋の掃除や洗濯、自分達の食事の準備などは、外部の仕事の無い奴隷達で交代で行っているみたい。 もちろん新入りの奴隷には、仕事を覚えてもらうためにも多めに役割が割り振られているけれど、事実上の奴隷達のトップであるバネッサ――使用人の奴隷で、礼儀作法の教官でもあり、あたしの先生でもある――が、あまり新人ばかりに押し付けられないように管理しているんだって。 ……いつも思うけど、バネッサってちょっと優秀過ぎだよね? 流石は元貴族様にお仕えしていた一門のご令嬢、って感じなのかな。料理等の家事の訓練にもなるからと、彼女がパパ……会長に提案したらしいの。 本当なら奴隷達の食事に関しても商会側が面倒を見ないといけないんだけど、それを食材の提供に留め自分達で調理を行うことで、後々独立するか、どこかに仕えることになった際の食材管理の能力も養える、という寸法らしい。 「……マリア、また返納金額を上げたのかい? 前回よりもまた多くなっているんだけど……」  あたしから受け取った皮袋の中身を検めて、会長が溜め息混じりに訊ねてくる。 「心配しないでください、会長。ちゃんと設定基本額の貯蓄は続けられていますし、余剰分を多少上乗せしているだけですよ」  苦笑しながら「これが多少ねぇ……」と貨幣を袋に戻した会長は、書斎の執務机に束になっていた書類を、あたしに渡してくる。 「これが今月の商会の収支報告書だよ。間違いが無いか確認よろしく」  現在あたしは、商会の会計関連の仕事にも携わらせてもらっている。あの就職試験の折に見せた計算能力
last updateLast Updated : 2026-08-22
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