ヒカリは壮介の胸板に顔を埋め、そっと息を吸う。それだけでここは安全だと思えて、すぐに夢の中に潜り込めた。 翌朝、けたたましい目覚ましアラームで起きる。「うぅ……。まだ寝てたい……」 アラームを止めて掛け布団で頭をすっぽり覆うが、2分後に再び鳴る。アラームを止めて寝返りをうち、ベッドがやたら広いことに気づく。 起き上がって見回すと、壮介がどこにもいない。彼が早朝に出ていくとも聞いてない。「壮介さん、どこ?」(もしかして、捨てられた?) 壮介はそんな人ではないと頭では分かっていても、これまでの経験がネガティブ思考に引きずり込む。不安で泣きそうになると、ドアが開いて壮介が入ってきた。「あ、ヒカリさんおはよう」「おはよう……。いなかったから、びっくりした……」「あぁ、ごめんね? ちょっと、荻原に届け物を頼んでたんだ」「届け物?」「これだよ」 壮介はヒカリにボールペンを手渡す。普通のボールペンより少し重く感じるが、それ以外はこれといった特徴はない。「ボールペン?」「これはペン型のカメラなんだ。もちろん、ボールペンとしても使える。今日、お父さんと会うなら、これで証拠集めをするといい」「ありがとう。絶対に証拠を掴んでくる」「無理はしないで。カメラがバレて、酷いことされたらと思うと、ぞっとする……」「大丈夫、無理はしないって約束する」「それならいいけど……。仕事があるから、僕はもう行くよ。何かあったら、連絡して」「分かった、ありがとう。気を付けて」「ヒカリさんも、気を付けて。また夜会おう」 壮介はヒカリの頬にキスをすると、部屋から出ていく。「私も頑張らないと」 着替えて身支度をすると、金田と合流してタクシーでスタジオに行く。楽屋に入って荷物を置くと、トイレに向かった。 このスタジオのトイレは、右側と左側に個室が5つずつ並んでいる。左右どちらも手前が埋まっていたため、奥の個室に行こうとすると、手前のドアが開き、個室に引っ張り込まれた。 あまりにも唐突のことで、悲鳴さえあげられなかった。 恐る恐る相手の顔を見ると、アリサだった。目が合うと、アリサはお静かにと、自分の唇に人差し指を添え、ヒカリの耳に口を寄せる。「他の個室埋まってた?」 ヒカリはうなずくと、スマホで向かいの個室に誰かが入っていることを伝える。アリサもスマホを出
Última actualización : 2026-08-21 Leer más