Todos los capítulos de 魔法のルージュ〜婚約者を奪われて始まる真実の愛〜: Capítulo 31 - Capítulo 40

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31話

 ヒカリは壮介の胸板に顔を埋め、そっと息を吸う。それだけでここは安全だと思えて、すぐに夢の中に潜り込めた。 翌朝、けたたましい目覚ましアラームで起きる。「うぅ……。まだ寝てたい……」 アラームを止めて掛け布団で頭をすっぽり覆うが、2分後に再び鳴る。アラームを止めて寝返りをうち、ベッドがやたら広いことに気づく。 起き上がって見回すと、壮介がどこにもいない。彼が早朝に出ていくとも聞いてない。「壮介さん、どこ?」(もしかして、捨てられた?) 壮介はそんな人ではないと頭では分かっていても、これまでの経験がネガティブ思考に引きずり込む。不安で泣きそうになると、ドアが開いて壮介が入ってきた。「あ、ヒカリさんおはよう」「おはよう……。いなかったから、びっくりした……」「あぁ、ごめんね? ちょっと、荻原に届け物を頼んでたんだ」「届け物?」「これだよ」 壮介はヒカリにボールペンを手渡す。普通のボールペンより少し重く感じるが、それ以外はこれといった特徴はない。「ボールペン?」「これはペン型のカメラなんだ。もちろん、ボールペンとしても使える。今日、お父さんと会うなら、これで証拠集めをするといい」「ありがとう。絶対に証拠を掴んでくる」「無理はしないで。カメラがバレて、酷いことされたらと思うと、ぞっとする……」「大丈夫、無理はしないって約束する」「それならいいけど……。仕事があるから、僕はもう行くよ。何かあったら、連絡して」「分かった、ありがとう。気を付けて」「ヒカリさんも、気を付けて。また夜会おう」 壮介はヒカリの頬にキスをすると、部屋から出ていく。「私も頑張らないと」 着替えて身支度をすると、金田と合流してタクシーでスタジオに行く。楽屋に入って荷物を置くと、トイレに向かった。 このスタジオのトイレは、右側と左側に個室が5つずつ並んでいる。左右どちらも手前が埋まっていたため、奥の個室に行こうとすると、手前のドアが開き、個室に引っ張り込まれた。 あまりにも唐突のことで、悲鳴さえあげられなかった。  恐る恐る相手の顔を見ると、アリサだった。目が合うと、アリサはお静かにと、自分の唇に人差し指を添え、ヒカリの耳に口を寄せる。「他の個室埋まってた?」 ヒカリはうなずくと、スマホで向かいの個室に誰かが入っていることを伝える。アリサもスマホを出
last updateÚltima actualización : 2026-08-21
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32話

『ヒカリがストーカーしてたのが嘘って証拠、絶対に取ってくるから』『ありがとう。でも、どうして私がここに来るって分かったの?』 ヒカリが仕事前にトイレに行く習慣があると分かっていても、どこのスタジオで仕事するかまでは分からないはずだ。それに人気モデルのアリサだって、ヒカリが来るかどうか怪しい場所に身を隠し続けるほど、暇ではないはず。『スタッフ達が、ヒカリが来るって話してるの聞いたから、トイレで待ってたの。招待状渡したいんだけど、今夜時間ある?』 本当はアリサと会いたいが、今日は父に連行される可能性が高い。それに、スキャンダルの渦中にいる自分といるのをマスコミに見られて、アリサに迷惑がかかるのは避けたかった。『ごめん、今日は無理そう』『分かった、気にしないで。時間出来たら連絡ちょうだい』『分かった、ありがとう』『私はヒカリの味方だからね』 アリサはその文章を見せると、ヒカリを抱きしめてから個室を出た。(心強いな……) 味方が増えたことに感極まり、泣きそうになるのの必死にこらえると、楽屋に戻って準備をし、現場に行く。現場に入ってまず視界に入ったのは、俳優達と話し込んでいる拓也の姿。彼はヒカリに気づくと、会話を切り上げて小走りでヒカリの元へ。 ヒカリは逃げ出したいのを我慢して、にこやかに手を振る。「ヒカリ! ニュース見たぞ、大丈夫か?」 心配そうに顔を覗き込んでくる拓也に、吐き気がする。役者でもないのに、こういう演技だけは上手い。「えぇ、まぁ……」「きっと何かの間違いだよな。ヒカリが妹の結婚相手に、ちょっかい出すわけなんてないし。そこは父さんも母さんも分かってるし、舞花だって気にしてないさ」 拓也はヒカリの肩に手を乗せ、強く掴む。拓也はいつも、ヒカリを気遣うふりをして痛めつけてくるのだ。ヒカリは笑顔を崩さないまま、痛みに耐える。「立派だよなぁ、四葉監督。あんなスキャンダルを起こした娘を気遣うなんて」「本当だよ。やっぱり、前の奥さんの忘れ形見だから、大事にしてるんだろうな」 事情を知らない人達は、拓也に尊敬の念を抱き、歪な親子を見つめていた。きっと彼らには、スキャンダルを起こした娘を気遣ういい父親に見えるのだろう。(おめでたいわね。こんな素人の演技も見抜けないくせに、俳優を名乗るなんて) ヒカリは心の中で毒を吐き、彼らを軽蔑する。
last updateÚltima actualización : 2026-08-21
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33話

「ヒカリさん、香坂さんにストーカーしていたのは本当ですか?」「舞花さんの結婚相手って知らなかったんですか?」「妹さんに申し訳ないって思わないんですか?」「会見を開いてください」「ヒカリは無実です。つきまとわないでください」 拓也はマスコミからヒカリをかばいながら進み、自分の車までたどり着くと、ヒカリを助手席に座らせる。ヒカリは拓也が運転席に座る前に、ペン型カメラのレンズを運転席に向けた。 駐車場を出てマスコミを振り切ると、拓也はヒカリの腹部に拳を打ち込む。「この恥さらしが!」「痛い! 私はなにもしてないじゃない。蒼斗さんと婚約したのも、式を挙げるはずだったのも私じゃない! それを舞花が横取りして……」「うるさい!」 今度は頭を叩かれる。ヒカリはいつもより大きな悲鳴を上げた。自分がどれだけ痛めつけられているかを、明確にするためだ。「まだ分からないのか? 蒼斗くんは最初からお前なんか相手にしてないんだよ。それに、元々舞花と付き合ってたんだ。お前はただの暇つぶしだ」「暇つぶしって……。私を笑い者にするために、蒼斗さんを近づけて、結婚式直前でドレスを奪ったの?」「当たり前だろう。どこまでも頭の悪い女だな。お前が娘であることが、恥ずかしくて仕方ないよ」 今度は太ももをつねられる。悲鳴を上げると、更に暴力や暴言を振るわれた。目的地に着くまで、ヒカリはずっと殴られ続けた。「着いたぞ。はやく降りろ」 ヒカリが降りると、拓也はこれ見よがしに除菌スプレーをシートにかける。その間、ヒカリは建物を見上げた。趣深い日本家屋のような料亭だ。 何度か来たことがあるが、料理を口にしたことは1度もない。 部屋に案内される。個室に入ると4人用のテーブルがあって、蒼斗、舞花、結花がいる。料理は既にテーブルの上に並び、先に来ていた3人が食べているが、ヒカリの食事はない。これもいつものことだ。「お前の席はそこだ」 拓也が指さしたのは
last updateÚltima actualización : 2026-08-22
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34話

「私の大事なお客様なの。どこの個室か分からないけど、こんなひどい嫌がらせをする人がいるみたい。この子に、拭くものと食事を用意して」「かしこまりました。お客様、好き嫌いやアレルギーなどはございますか?」「いえ、ないです。ただ、本当に簡単なもので……」 あんなことがあったせいで、空腹を感じていても、食欲がない。豪華な食事が喉を通ると思わなかった。「では、雑炊などいかがでしょうか?」「それでお願いします」「かしこまりました。少々お待ち下さい」 従業員は一礼すると、部屋を出た。 5分もしないうちに従業員が戻ってきて、タオルを数枚手渡してくれた。そのうち2枚はお湯で濡らして絞ったものらしく、湿っていて温かい。ヒカリは濡れタオルで汚れを落としてから、乾いたタオルで拭いた。「汚れは取れた?」「はい。まだにおいが残ってる気がしますけど……」 キャットフードはすべて拭き取り、タオルは部屋の外に置いたというのに、まだ生臭い気がして落ち着かない。はやく風呂に入ってにおいを落としたい気持ちでいっぱいだ。「あの、西野さんはどうして私の担当を辞めたんですか?」 ヒカリは長年気になっていたことを、恐る恐る西野に聞く。 西野はヒカリが中学生の頃から担当してくれた。いつも優しくて、宿題で分からないところがあれば、教えてくれたりしていた。そんな西野を、ヒカリは母のように思っていた。それなのに、ヒカリが高校生の頃に突然担当から外れ、別の人物がマネージャーになったのだ。 あまりにも不自然で、ずっと気になっていた。「一緒に通帳を作ったのが、あなたのお父さんにバレちゃったの。それで圧力をかけられて、芸能界を離れたの」 ヒカリはショックで数秒固まった。他のマネージャーをしていると聞かされていたのだ。まさか、父のせいで辞めていたとは、思ってもみなかった。「そんな……! 私、てっきり誰かのマネージャーをしてるのかと……。西野さんの次に、山内さんって人がマネージャーになって、山内さんに西野さんのことを聞いたら、別の子のマネージャーしてるって言ってたんです」「きっと、口止めされてたんでしょうね。山内さん、ちょっと気が弱いところあるし、余計に言えなかったんだと思う」 西野の言う通り、山内は気弱でいつも自信がなさげで、あまりマネージャーに向いていなかった。歴が2年の金田のほうが、ま
last updateÚltima actualización : 2026-08-24
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35話

 食事が終わると、食後のお茶が運ばれてきた。西野はお茶をすすると、口を開く。「それでヒカリちゃん、香坂蒼斗と何があったの?」 蒼斗の名前を出され、気持ちが重くなる。今は壮介がいて、彼のことしか愛していないが、傷はまだ癒えきっていない。それどころか、先程のキャットフートで傷口をえぐられた気分だ。「実は……」 ヒカリは舞花と蒼斗が元々付き合っていたこと。ふたりはヒカリをバカにするために、蒼斗を仕向け、結婚式直前にウエディングドレスを奪い、ヒカリに受付をさせて惨めな思いをさせたこと。壮介と交際しているのは事実で、蒼斗がヒカリを陥れるためにデマを流したこと。そして先程の出来事をすべて西野に話した。 話している最中、つらかった記憶やその時の感情が蘇り、泣いてしまったが、西野が抱きしめ、背中をさすってくれた。「すいません、途中で泣いちゃって……」「気にしないで。そんなことがあったら、誰だって泣きたくなるよ。海原壮介さんが、一緒に戦おうとしてるんでしょ? 私も、一緒に戦わせて」「西野さん……」 気持ちは嬉しいが、彼女が父に辞めさせられたと知った今、協力してもらうのは気が引けた。「実はね、辞表を書けってあなたのお父様に言われた時の音声を持ってるの。それだけじゃ弱いって言われて、訴えるのを諦めてたんだけど、今ならきっと、役に立つはず」(そういうことなら、西野さんの仇も取ろう) ヒカリは密かに決意した。それがヒカリにできる罪滅ぼしな気がした。「西野さん、ありがとうございます。そうだ、アリサを呼んでいいですか? 結婚式の招待状を受け取る予定なんです。今日会えるか分からないって言ってしまったから、来てくれるかは分からないけど……」「それなら、場所を変えましょう。ヒカリちゃんも、お風呂入りたいでしょ」「じゃあ、私が泊まってるホテルに来ませんか?」「ホテル! たまにはお泊りもいいかも」「わざわざ泊まらなくても……」 ホテルを提案したのはヒカリだが、話し合いをするためだけに泊まらせるのは申し訳がない。「ホテルとかは宿泊客がお客さんを連れ込むのは、原則禁止されてるの。それに、せっかく会えたし、気分転換に泊まるのも悪くないじゃない」「知らなかった……。私、アリサに連絡しますね」「えぇ、お願い」 ヒカリはアリサにラインで事情を伝えた。すぐに既読がつき、ホテ
last updateÚltima actualización : 2026-08-24
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36話

「ううん、いても大丈夫。むしろ、いてくれた方が、あの報道が嘘ってふたりに伝わりやすいから」「そのふたり、ヒカリさんを少しでも疑ってたりするの?」 壮介は疑惑と不安の目でヒカリを見つめる。(あ、言い方悪かったかも)「ううん、疑ってる様子はないけど、壮介さんがいたら、話も円滑に進む気がするの。それに、心強いから」 誤解させる言い方をしたことに気づいて言い直すと、壮介は安堵したのか、息を吐く。「そういうことなら。ふたりが来たら僕がもてなすから、ヒカリさんははやくお風呂入っちゃって」「ありがとう、壮介さん」 ヒカリはお言葉に甘えて脱衣所に入る。服を脱ごうとして、ようやく胸ポケットに入れたペン型カメラやスマホに気づく。ヒカリはそれらを出し、部屋に戻った。壮介は不思議そうにヒカリを見上げた。「あれ、ヒカリさん? 脱衣所に不備でもあった?」「違うの。これ、忘れてたから」 ペン型カメラを壮介に手渡し、スマホの動画撮影を止め、充電する。スマホの充電は残り2%しかなかった。「これの映像、見てていい?」「もちろん。内容一緒だから意味ないと思うけど、後でスマホで撮った動画も送ろうか?」「そうだね、念の為お願いしようかな」「分かった。じゃあ、後で」「うん、ゆっくり入ってきて」 今度こそ風呂に入り、丹念に洗ってにおいを落とした。風呂から出ると、西野が来ていた。「ヒカリちゃん、お風呂入れてよかった。においとか取れた?」「はい、取れました」「よかった。少し話したけど、海原さん、いい人ね。安心した」 壮介と西野が一緒にいるところを見るのは、不思議な気分だ。まるで恋人を親に紹介するような、そんな気持ち。 ヒカリのスマホが鳴った。見るとアリサからで、ホテルについたという報告だった。「あ、アリサがついたみたい」「じゃあ、一緒に迎えに行きましょうか。アリサさんとは数回顔を合わせたことがあるけど、ほとんど接点とかなかったから、覚えてないかも」「分かりました。壮介さん、行ってくるね」「あぁ、行ってらっしゃい」 ふたりでアリサを迎えに行き、ヒカリの部屋に集合する。 軽い自己紹介をすると、アリサはヒカリに招待状を手渡した。そこには確かに、蒼斗とヒカリの名前が書かれている。「私が持ってる証拠は、今のところこれくらい。あとは、ヒカリから直接受け取ったことを証言
last updateÚltima actualización : 2026-08-24
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37話

 きっと父の怒声が録音されているだろう。そう考えただけで、聴くのが怖い。だが、このままでいる方がもっと怖い。(前に進まなきゃ……!)「はい、聴かせてください」 「大丈夫? 結構酷いこと言ってるけど……」  気遣う西野に、ヒカリは優しく笑いかける。 「大丈夫です。あの人の暴言は、うんざりするほど聴いてきましたから」 「それなら……。でも、気分が悪くなったらすぐに言って」 「はい」 「じゃあ、流すよ……」  西野は再生ボタンを押す。 『お前か、ヒカリのマネージャーしてるのは。余計なことしやがって』  いの一番に聞こえてきたのは、父の怒声。耳を塞ぎたくなるが、真実と向き合うと決めたのは自分自身だ。ヒカリは拳を握りながら、耳を傾ける。『ヒカリちゃんのお父様、どうかなさいましたか?』 『お前のせいで、財布が減っちまっただろうが!』  テーブルでも叩いたのか、ドンッという音がし、西野の小さな悲鳴が聞こえた。 『ただでさえヒカリの価値なんて、ないも同然なのに、アイツが稼いだ端金を自由に使えなかったら、本当に価値がなくなるじゃねーか! マネージャーの分際でアイツの通帳なんか作りやがって! 今すぐ辞表を書け!』  再びドンッという音が響く。 『私は間違ったことをしていません。ヒカリちゃんはもう高校生です。自分のお金は自分で……。きゃっ!』  西野の悲鳴と、叩く音が聞こえた。 『西野さん、君がしたことはマネージャーの域を越えている。うちとしても、君のような勝手な人間を置いておくわけにはいかないんだよ』  初老の男性の声。この声には、ヒカリも聞き覚えがある。 『社長、待ってください! 四葉監督がしてることは立派な虐待ですよ! それに、さっき私を叩いたのだって、うっ!』  鈍い音と、倒れるような音が聞こえた。 『うっせーんだよ! いいからテメーは消えろ! このブス! 余計なことばっかしやがって! 人様の家庭に口出しする前に、結婚でもしたらどうだ? お前みたいなブス、誰も相手にしないだろうがな』  拓也の嘲笑う声に、西野のすすり泣く声。 音声はここで終わった。「ヒカリさん、手」  壮介に声をかけられ、自分の手のひらに爪が食い込むほど、拳を握っていたことに気づく。手のひらはうっすら内出血をして赤くなっていた。 「あ……。気づかなかった……
last updateÚltima actualización : 2026-08-27
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38話

「私だって、まだ悔しい気持ちはある。でもね、ヒカリちゃん。私はあなたの無実を晴らしたい。それで香坂蒼斗と四葉家族が痛い目にあえば、私の気持ちもきっと晴れるから。だから、今は証拠集めをしましょう」 「西野さん……。分かった、あの人達に、絶対天罰を下す」 「ふたりは証言や証拠集め。西野さんは音声データの提出。僕は弁護士の手配と証拠の整理でいいかな」  壮介が分かりやすいように役割を伝えてくれた。弁護士はこれから探すところだったから、壮介が見つけてくれたら助かるが、そこまで甘えていいのかと不安になる。「弁護士、お願いしていいの?」 「当たり前だよ。というか、僕は芸能人じゃないから、それくらいしかできない。その代わり、腕の良い弁護士を知ってるから、安心して」 「ありがとう、壮介さん」 「いいって。そうだ、お二方にもこれを」  壮介はペン型カメラを、西野とアリサに手渡した。 ふたりは不思議そうにペン型カメラを眺める。「これは?」 「ペン型カメラです。証拠集めに役に立つと思います。西野さんも、念の為持っておいてください。彼らが勘ぐって、あなたに近づく可能性もあるので」 「ありがとうございます。証拠になるかは分からないけど、何人かのマネージャー仲間と、まだ連絡取ってるの。それとなく聞いてみる」 「流れも決まったし、解散しよっか。ふたりの邪魔しちゃ悪いしね」 「ふふ、そうね」  アリサがニヤニヤしながら言い、西野が乗っかる。 色恋や、からかわれることに慣れていないヒカリの顔は、見る見る赤くなっていく。「もう、ふたり共からかわないで!」 「赤くなって可愛いんだから。またね」 「おやすみなさい」  ふたりが出ていくと、壮介がヒカリを抱きしめる。 「ヒカリさん……。実は、伝えておかないといけないことがあって……」 「な、なに?」  重苦しい声に、緊張する。 「僕がここに頻繁に出入りしたら、ヒカリさんがここにいるってバレるかもしれない。それに、仕事もあるし……。だから、緊急時以外は、もうここには来ないようにするよ」  壮介がいなくなるのは心細い。だが、彼は社長だ。壮介にしか出来ない仕事も、山程あるだろう。ワガママを言って困らせてはいけない。 「分かった。何かあったらすぐに連絡するね」 「ごめんね」 「謝らないで」 「その代わりといっち
last updateÚltima actualización : 2026-08-27
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39話

 昼過ぎ、壮介は店舗の視察をするために会社から出た。以前なら電車で移動していたが、例のニュースのせいで、マスコミに追いかけ回されたり、一般人に盗撮されたりと苦労している。  これらをヒカリに言うつもりは毛頭ない。彼女は今、必死にトラウマと戦っている。余計な心配をかけたくなかった。 できれば車で移動したいところだが、お抱え運転手を雇う余裕もなければ、免許も持っていない。パーカーのフードを目深にかぶり、タクシーを利用するために、タクシー乗り場に向かう。 「あれぇ? もしかして、海原さん?」  甘ったるい不快な声に足を止めて顔を上げると、舞花がいた。 「きゃー、やっぱり!  海原壮介さんだ。ねぇヤバい。やっぱカッコいい!」「静かにしてくれないかな。誰かさんのせいで、マスコミに追いかけ回されて大変なんだ」「ホント、うちのヒカリのせいですいません。もう、あんな人捨てちゃってください。相手なら、私がいくらでもしますから♡」 壮介は嫌味のつもりで言ったのだが、どうやら舞花には嫌味が通じないようだ。それどころか、壮介の腕に抱きついて、胸を押し付けてくる。 押し付けられた胸は固く、豊胸手術をしたとすぐに分かった。(シリコンなんか押し付けるな、気持ち悪い) 壮介は腕を振り払い、数歩下がった。「僕はあなたに興味ありません。近寄らないでください」「そんなこと言わないでよ。私のほうがいい女でしょ? テクだってあるんだから。ヒカリなんて地味なだけで、なんの取り柄もないじゃない。オバサンなのに、まだ処女だし」 舞花は馬鹿にするようにぷぷっと笑う。怒りで血管が切れそうだが、小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。「あなたには、香坂蒼斗さんがいるでしょ?」 壮介が蒼斗の名前を出すと、舞花は勘弁してくれと言わんばかりに、げんなりする。「あー、蒼斗ねー……。イケメンだし、人気だし、ハリウッド行くかもだから付き合ってやってるけど、下手くそだし、気遣いできないのよねー。調子に乗って、自分はなんでもできるって思い込んでるし。ちょっと強引にすれば、女がときめくと思ってるタイプのバカ。ま、どうせ向こうも女作ってるだろうし、どうでもいいかな。だからさぁ、私と付き合わない? あんなのとは、ただの仮面夫婦でいいし」 舞花は再び距離を詰め、壮介に抱きついてこようとする。壮介は咄嗟にかわ
last updateÚltima actualización : 2026-08-27
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40話

「ヒカリさん、大変です!」 ホテルの部屋で証拠品の整理をしていると、金田が訪ねてきた。彼女は興奮しきっており、顔が赤い。(出た、金田さんのオーバーリアクション……) ヒカリはげんなりする。金田は自分の感情が大きく揺らいだ事柄を、オーバーに報告するところがある。「あのね、金田さん。私は今……」「いいから、これ見てくださいよ!」 金田はヒカリの前に自分のスマホを突き出す。動画らしく、舞花が歩道を歩いている。その先にいたのは、壮介だった。「壮介さん!? どうして舞花なんかと……」 不安にかられながらも見守っていると、舞花は壮介にすり寄っている。「あれぇ? もしかして、海原さん?」  舞花の声に、壮介は顔を上げ、一瞬嫌そうな顔をした。舞花は壮介の表情に気づいていないのか、気にせず近づいていく。 「きゃー、やっぱり!  海原壮介さんだ。ねぇヤバい。やっぱカッコいい!」 舞花は壮介の顔を見上げ、騒ぎ立てる。そんな舞花を見て、壮介はまた嫌そうな顔をする。「え、舞花なんかやばくね?」 投稿者と思われる人物の声が入り、カメラはズームされる。「静かにしてくれないかな。誰かさんのせいで、マスコミに追いかけ回されて大変なんだ」「ホント、うちのヒカリのせいですいません。もう、あんな人捨てちゃってください。相手なら、私がいくらでもしますから♡」 舞花は更に距離を詰めると、壮介の腕に抱きついたが、すぐに振り払われた。壮介はそのまま数歩下がる。「お姉さんの男に手ぇ出すとかやばくね?」「ビッチじゃん」 投稿者達がヒソヒソ話す。「僕はあなたに興味ありません。近寄らないでください」「そんなこと言わないでよ。私のほうがいい女でしょ? テクだってあるんだから。ヒカリなんて地味なだけで、なんの取り柄もないじゃない。オバサンなのに、まだ処女だし」 舞花は馬鹿にするようにぷぷっと笑う。その様子を見ている投稿者は、声を潜めながらヤバいヤバいと言っている。「あなたには、香坂蒼斗さんがいるでしょ?」 壮介が蒼斗の名前を出すと、舞花は勘弁してくれと言わんばかりに、げんなりする。「あー、蒼斗ねー……。イケメンだし、人気だし、ハリウッド行くかもだから付き合ってやってるけど、下手くそだし、気遣いできないのよねー。調子に乗って、自分はなんでもできるって思い込んでるし。ちょっと
last updateÚltima actualización : 2026-08-28
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