「その小説ってもしかして……」 壮介の口から出たのは、まさにヒカリが読んでいた小説のタイトルだった。「そうです」「ヒカリさんもそれ読んでたなんて、嬉しいなぁ」 壮介の子供っぽい笑顔が可愛くて、頬が緩む。壮介は気取ったところがなく、接しやすい。きっと、そういうところに惹かれたのだろう。壮介の笑顔を見ながら、ヒカリはそう考えた。「僕、こんな見た目だから、厨二病だとか、気味悪いだとか言われてたけど、初めて会った時に、ヒカリさんが綺麗って言ってくれて、すごく嬉しかったんです」 壮介の話を聞いて胸が痛む。状況などは違うが、似たような経験はした。 学生の頃、天才子役と言われ、注目されていたが、仕事で早退したり、遅刻したりしていた。極めつけはスマホだろう。小中学校はスマホの持ち込みが禁止されていたが、ヒカリだけは特例でOKが出ていた。 だからクラスメイトに、ズルいとか調子に乗ってるとか言われて、ハブられていた。「理由は違いますけど、私も学生時代はズルいとか調子に乗るなとか言われて、仲間はずれにされてたので、少しは分かります」「やっぱり、芸能人にもそういうのあるんですね」「遅刻や早退はしょっちゅうでしたし、私だけスマホを持ってたから……」「子供って事情なんて考えずに、思ったことを口にしますからね。お互い、大変な学生生活を送ってたようで」「そうですね。あの、海原さんって……」「できれば、壮介とお呼びください」「では、壮介さんで」「はい」 壮介は嬉しそうに返事をする。人懐っこい大型犬を連想した。「壮介さんは、この前子供の頃からファンだって言ってましたけど、いつから私のファンなんですか?」「その、引かないでくださいね? 魔法少女リップルージュの頃から、ファンでした」 壮介は恥ずかしそうに言う。魔法少女リップルージュは、少し珍しい実写ドラマで、小学生の女の子がなりたい自分をイメージしながら魔法のリップを塗ると、イメージした大人になるのだ。 大人になったリップルージュが様々な困難に打ち勝つ話で、当時の女児は皆夢中だった。ヒカリは変身前の小学生を演じていたのだ。「リップルージュ! 懐かしい。そんな前からだったんですね」「はい。なりたい自分になれるのが羨ましくて、よく見てました。新作も、リップルージュをイメージして作ったんです。多くの女性が、なりたい
Última actualización : 2026-08-13 Leer más