気がつくと、そこは薄暗い倉庫みたいな場所だった。 どこかから光が入ってきているらしく、真っ暗じゃないけど、明かりはない。 周りは木箱が積まれていて、視界が開いている先には、閉じた扉があった。「あたたたた……」 またしても、縄で縛られている。 日本にいた頃は、こんな目にあった事は一度もないが、こちらに来てからは二月と経たない間に二度目だ。 帰りたいとは思ってないが、この世界は物騒すぎるな……とも思う。「やあ、目が覚めたようだね」 俺が動いた気配を感じたのか、扉が開いた。 そこには、さっきの暴漢たちの他に、一人、明らかに身に着けているものが上等そうな男が混ざっていた。 声を掛けてきたのも、この男だ。「私はクロワール。君とははじめましてだが、私は君の噂をいろいろと聞いているよ」 フフフと笑った声が大平透みたいで、めっちゃ悪そうな感じしかしない。 扉の外から光が入ってきてるせいで顔がよく見えないが、俺の脳内では完全に真っ黒なセールスマンになっていた。 ただし、真っ黒なセールスマンと違って、シルクハットを被っておらず、頭部にはデカくてひらひらしてる耳が付いている。 でっぷりとかなり太めのおっさんだから、最初はブタかと思ったけど── もしかしてあれは、ゾウ……か?「まずはご無事で何より。……もっとも、少々乱暴な方法を取らせてもらったことは、お詫びしよう」 言葉遣いこそ丁寧だが、その声音には謝罪の色など微塵もない。 むしろ「貴様ごときを丁重に扱う義理はない」と言わんばかりの、冷たい響きがあった。「こんなご招待を受けるすじあい、ないと思うが……?」 俺が冷や汗を垂らしながら言うと、クロワールはまるで子どもの戯言を聞くような顔で肩をすくめ、耳をバサバサッと動かす。「ポムみたいな木っ端な行商人が、最近ずいぶん羽振りがいいと聞いてね。すると
Last Updated : 2026-08-27 Read more