All Chapters of 異世界はつらいよ: Chapter 11 - Chapter 20

49 Chapters

6-3

「まぁ、ポムが? それはあの子にしては、随分親切ねぇ……」「えっ?」 ブランシュ嬢が、まさかの奴隷肯定派? と思ってびっくりしていると、彼女は困ったように笑った。「ごめんなさいね。でも、防衛都市は、審査がかなり厳しいのよ」 そう言って、ブランシュ嬢が説明してくれたところによると── 有事の際、防衛都市は逃げてきた者を誰彼構わず受け入れてくれるのだが、それはあくまで〝第一壁の内側〟までだ。「第二壁は市民の命と財産を守るものだから、資格がないと非常時でも中には入れてもらえないの」「ちなみに、第二壁が崩れたら、辺境は陥落したとみなされるよ」 ポムが付け加えた。「でも……、街の真ん中に壁が……ありますよね?」「あれは辺境伯様のお城よ。お城の地下には周辺一帯を壊滅させる、大規模魔法を発動させるための魔法陣があるの。第二壁が破られるような事態になったら、それを使って王都に被害を出さないのが、辺境伯の仕事なのよ」「お城の壁は、その魔法が発動するまでの時間稼ぎなんだって」「……すごく気軽に、コワイ話してません?」 そんなヤバイ土地に暮らしていて、なんで平気なんだ……と思ったが。「壁は頑丈に作られているし、滅多なことで壊れたりはしないわよ」 と、軽く返された。「近隣の村人でも、市街に入るためには手続きと審査を受けなければいけないのだけど。審査は最短でも一年は掛かるの。身元がよくわからない〝難民〟だと、降りない可能性もあるのよ」「えっ? でも……、俺はすんなり通してもらえた……よな?」 ブランシュ嬢を正面から見ると眩しすぎるので、俺は泳がせた目線をポムに当てる。「そりゃ〜、タイガが僕の〝財産〟とみなされたからでしょ〜」「奴隷は個人の持ち物だから、市民の財産として第二壁が守るべき対象になるの」
last updateLast Updated : 2026-08-13
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7-1:ポムの借金

 長屋の外においてあった、荷車の車輪をガンガン蹴っ飛ばしてる、小山のような大男を、俺は呆然と見上げていた。「おらぁ、ポムぅ! さっさと金返せやぁ!」 昭和のヤンキーか、取り立て屋かってぐらいに、鉄板なセリフを吐いている男は、これまたアニメから出てきたような、燃え上がる炎の如く真っ赤な髪色をしていた。 身長は250センチぐらいありそうだ。 あんまりデカクて、離れて見るまで頭頂部に丸いクマ耳があることがわからなかった。 服装はフード付きの前開きベストと、擦り切れたハーフパンツ。 鍛えた筋肉を見せびらかしたいが故に肌の隠れている部位の方が少ないファッションをしているのではないか? と疑いたくなる、筋肉野郎だ。 それが狭い長屋の路地で暴れている。「スカーレット! 物を壊す前に声をかけろよっ!」 飛び出したポムは、大男と荷車の間に割って入った。 てか、これがスカーレット? いやフツーに、スカーレットとか言ったら、ヴィヴィアン・リーみたいなほっそりした美女が出てくるんじゃないの? なんなのこの、暑っ苦しい筋肉ダルマはっ!「テメェが期日までに、きっちり返済にくれば、俺がわざわざ出張る必要もないんだよっ!」 スカーレットが、声を荒げる。「まぁ、スカーレットさんご苦労さま。ごめんなさいね、私がそちらに行けばよかったんだけど」 騒ぎを聞きつけたのか、ブランシュ嬢も出てきた。「ブランシュが謝るこたぁ、ねえよ」 えへへ……とか言って、今まで大暴れしていた大男が、借りてきた猫みたいに大人しく、眦を下げてデレデレになる。「いや、期日より早いし。そもそも姉さん狙いなの、あからさまだし」 ポムがぼそっと呟く。 なるほど、なるほど。 スカーレットはブランシュ嬢の信奉者なのか。 つまりは俺のライバルかっ!「はい、これ、今月分」「なんだよ、また利息だけかぁ〜? こんなんじゃオマエ、いつまで経っても返済終わんねぇぞぉ〜」
last updateLast Updated : 2026-08-14
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7-2

 スカーレットが去って、ポムはため息を吐きながら、散らかってしまった物を片付け始める。 それをブランシュ嬢が手伝い始めたので、俺も習って物を拾って回った。「あーあ、今月もギリギリだぁ〜!」「悪いわね、ポム」「別にいーよ。それに、姉さんだって仕立物やら、すごく頑張ってくれてるじゃん」 話の流れに疑問が湧いた。「なあ、ポムは借金の返済、ブランシュさんに手伝ってもらってんの?」 直にブランシュ嬢に話しかけるのは恥ずかしいので、ボソボソっとポムに言う。 が、ロップイヤーがピクッと動いて、慌てて否定された。「違うの。元は私の借金なの。ポムが肩代わりしてくれているのよっ!」「えっ! 意外に男気じゃんか、ポム!」「意外は余計でしょ〜。てか、そもそも理不尽な話なんだよ。姉さんが仕立物を届けたら、その仕立てたドレスに針が残ってて、どっかの令嬢の玉の肌に傷がついたから、慰謝料を払えって言われたんだ」 なんだその、時代劇で鉄板な庶民を陥れる罠みたいな話は……。「クロワール商会さんは、仕立物の仕事を一手に引き受けてる、大手さんなの。あそこからお仕事がもらえなくなったら、仕立物は出来なくなっちゃうのよ」「名前からして、黒くて悪そうな商会だな……」「違う、違う、黒じゃなくて、信用商会だよ」 微妙に、また誤変換が発生した気がするが、商会の名前は黒くて悪いわけではないらしい。「じゃあ、私、そろそろ仕立物を届けに行かなきゃだから、失礼するわね」「いってらっしゃい、姉さん」 ポムと俺は、片付けが終わったところで長屋の中へと戻る。「そんで借金は、一体どんくらいあって、利子がどれくらいで、返済計画はどうなってんだよ?」「えっ! マジで返済に付き合ってくれんの?」「奴隷契約までしたくせに、なに言ってんだよ?」 ちょっと体裁を繕った発言だが、俺が借金返済に前向きになったのは、借主がブランシュだと分かっ
last updateLast Updated : 2026-08-14
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8-1:異世界洗礼

 翌朝、ポムがダチョコのレンタルに行ってる間に、スカーレットが訪ねてきた。「ポムー! いるかー!」「出掛けてて、いないぞ」 返事をすると、スカーレットは部屋の中を見回し、最後に首の角度を下向きに修正して、ようやく俺の存在を認識した。「うおっ! なんだ、この坊主! 留守番してんのか?」「いや、俺はポムの奴隷だ」 スカーレットは、しゃがみ込んでから俺のことをジロジロと上から下まで眺め回した。 しゃがんでも、視線の高さがさほど変わらないのが、なんともアレなのだが……。「あいつ、お稚児さんを囲うほど、金があんのか?」「お稚児さん? えっ、あいつロリコン趣味なのかよっ!」 俺の反応に、スカーレットは首を傾げる。「なんだぁ、自覚ないんか? お稚児さんは、オマエさんのこった」「誰がお稚児さんだっ! 37のおっさんつかまえて、気持ち悪いこと言うなっ!」「さんじゅうななぁっ?」 数字を叫んだのち、スカーレットは腹を抱えて笑い出す。「いや〜、イカイジンごっこも大概にしろよ〜! 年上に見られたいからって、そりゃーサバの読みすぎだ!」 ガッハッハッと笑いながら立ち上がり、筋肉クマは俺の頭をグリグリ撫でる。 くそう、なんか悔しい。 俺はスカーレットの手を払い落とした。「どっちにしろ、ポムはいない! 出直せっ!」「どうせダチョコのレンタルに行ってんだろ? 待つぜ」 そう言って、スカーレットはそこに停めてある荷車に寄り掛かる。 ボロイ荷車は、スカーレットの体重にギシギシと不穏な音を立てた。「よせ、荷車が壊れる」「うるせーなぁ」 ブツブツ言いつつも荷車から離れたスカーレットは、周囲をキョロキョロしていた。 ポムを待つ間に、一目ブランシュ嬢を拝めたらラッキー! とか、思っているんだろう。 おまえが見たら、ブランシュ嬢のきらめきが減るわいっ! と腹の中で悪態をついていると、そこにダチョコを連れた
last updateLast Updated : 2026-08-15
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8-2

 スカーレットは、全く言葉通り元気な奴で、荷駝車に楽々と徒歩でついてくる。 確かに荷駝車は、さほどの速度は出ない。 だが、徐行してる車ぐらいの速度はあるから、俺なら息を切らして走るレベルだ。 それを、鼻歌交じりに並走していて、しかも走る素振りは微塵もないのだ。 恐るべし、クマの脚力である。「スカーレットって、ブランシュさん目当てで、ポムんとこの取り立てに来てるのか?」 御者台にポムと並んで座り、俺はスカーレットを横目に眺めながら尋ねた。「あの辺りで、姉さん狙ってない男は、僕以外にいないんじゃないかな?」「えっ、じゃあポムはブランシュさんのこと、なんとも思ってないんかい?」「血の繋がりはなくても、姉さんって呼ぶぐらい身近な存在だしね〜。姉さんには幸せになってもらいたいから、僕じゃダメだね〜」 アハハハ〜と、ポムは笑う。「あんな美人を前にして、そんなこと言えるとは……」 しばらく荷駝車を走らせていると、前に小さな人影がバラバラっと出てくる。「うわっ! なんだ?」「あ〜、面倒なの出ちゃったな……」 だが、困り顔で耳がヘニャとなってるポムが、御者台の下からなにかを取り出すより早く、横を歩いていたスカーレットが、前に走り出た。 クマの瞬発力に〝脱兎の如く〟と言っていいのかわからないが、駆け出しながら背負っていた大剣を抜くと、スカーレットは行く手を遮る小さな人影のようなものを、全くなんの容赦もなくバッサバッサと切り捨てている。「なっ、なっ、なんだっ?」 びっくりして横を見ると、ポムは荷駝車を止めて、手にクロスボウを構えていた。「えっ? 撃つの? 撃っちゃうの?」「スカーレットがやりそこなったのがこっちきたら、撃つに決まってんでしょ。ゴブリン相手に躊躇してたら、こっちがやられるっての」「こっちこなかったら、撃たない……のか?」「当たり前でしょ。矢が一本、いくらすると思ってんのさ?」
last updateLast Updated : 2026-08-15
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8-3

 街道から少し外れたところに小川があって、ポムに吐くならここでと言われた。  なんでわざわざ我慢をさせてここまで引っ張ってきたのか? と言えば。「街道に獣が寄ってこないようにするために決まってんでしょ」 と、ポムに言われた。「後、口を濯ぐならこの水筒の水にして、川の水を直に口に入れちゃ駄目だよ」 革袋に入った水を手渡されたので、川の水では顔を洗うに留める。  最後にポムは〝生活魔法〟なるもので、濡れた手足や汚れた服を綺麗にしてくれた。「ちょっとは落ち着いた〜?」 ポムの問いに、俺は無言で頷く。「ごめん……。墓掘りの邪魔して……」 「えっ? なに可愛いこと言ってンの? まさかゴブリンさんごめんなさいとかって、拝む気だった?」 「はっ?」 「あんなの、街道に獣が寄ってこないように埋めたに決まってんでしょ。大丈夫、スカは力だけは有り余ってるから、きっちり一人で始末してくれてるよ」 実際に、俺たちが街道に戻った時には、スカーレットはゴブリンの死骸をすっかり埋め終わっていた。「すまん、ありがとう」 「いーけど。今度っから、僕の言いつけは絶対厳守だよ〜」 「うん」 頷いた俺の頭を、ポムは〝よしよし〟と撫でる。  また子供扱いか……と思ったが、ゴブリン遭遇から今に至るまでの流れを思い返すと、ガキ扱いされても致し方ない。  ポムは前を向くと、手綱を持って荷駝車を動かした。「そのお稚児さん、弱すぎんだろ。過保護だなぁ」 「ただ行く道が同じだけの奴と、話すことなんかないよ」 「はは〜ん、オマエさん。惚の字かよ」 「うっさい。借金取りは仕事だけしてろっ」 スカーレットの苦言に、ポムは悪態を返している。  だが、正直こればっかりは、スカーレットの意見の方が正しいと俺も思った。「次の村で、お昼休憩にしようね〜」 なんて、ポムは呑気に言っていた。
last updateLast Updated : 2026-08-15
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9-1:タマゴとトルタとオクラホマ

 俺の気分が最悪のまま、荷駝車は最初の目的地が見えるところまでやってきた。 グロい光景が、ずっと頭の中でぐるぐるしてるのもそうだが、自分がなんの役にも立たなかったことも、凹んでいる理由だった。 次も同じことになったら、やっぱりびっくりするだけな自信もあるのが、なんとも情けない。「よう、ポム! 来たな!」 なだらかな丘の上にある村は、割と小さい集落のようだ。 周りは簡単な柵で囲まれているが、丘の上なので見通しがよく、もしもの〝災害〟時は、いち早く危険を察知出来るようにと、見張り台もあった。 ポムに声を掛けてきたのは、その見張り台にいたおっさんだ。 ゴールデンレトリバーみたいなたれ耳を、嬉しそうにぴょんこぴょんこさせている。「おおーい! ポムがきたぞぉ!」 おっさんが村の方に向かって声掛けをすると、柵の切れ目である村の入口に、村人たちがわらわらっと集まってきた。「こんちわー」 愛想よく挨拶するポムに、村人たちも挨拶を返しているが、見慣れぬ俺とスカーレットには警戒をしているのか、声も掛けない。 とはいえ、スカーレットはそもそも陽気な性格らしく、グイグイいって子供たちとふれあい始めていた。 集まってきた村人は、見張り台のおっさんと同じ耳が付いているので、どうやらここはレトリバーの村のようだ。「今日は、以前頼まれてた反物があるよ〜。後はまぁ、いつものラインナップって感じかなぁ〜」 ポムは荷駝車を広場の端に止め、木箱を下ろすと蓋を開けて商売を始める。 人見知りの俺は、荷駝車の影に隠れつつ、荷下ろしを目立たないように手伝った。 先日の、井戸を修理した村ぐらいの規模だと、村の中に雑貨店がある。 そういう場合は、店に商品を置いてもらったり、卸したりする契約をするのだそうだ。 村にこれといった店舗がない場合は、荷駝車を屋台代わりにして、広場で小売をするスタイルらしい。「お昼は、いつものトルタで済ませたいんだけど、今日は三人分お願いできるかな?」 塩やら香辛料やらを選んでいたおばさんに、ポムが頼
last updateLast Updated : 2026-08-16
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9-2

 ニワトリに似ているが、柄が微妙にキジトラ猫みたいな鳥と、アヒルに似ているが、こっちはサバトラ猫みたいな柄の鳥がたくさんいる場所に、俺たちは案内された。「ホントにどうにかなるのかねぇ?」 おばさんは、困り顔で笑っている。「ダイジョーブ、ダイジョーブ」「その根拠のない自信はなんなんだよ?」 ポムは安請け合いをしているが、後ろをついてきたスカーレットは懐疑的だ。「そんじゃあ……」 こうなっては仕方ない。 気分は地を這うどころか、沼底みたいだったが、ビジネスはビジネスだ。 俺はとりあえず、鳥小屋の壁に手を当ててみた。「………………?」 反応は、ない。 頭頂部を下敷きで擦られた後みたいなゾワッと感でもありゃ、なにか〝掴みどころ〟もあったかもしれないが。 なんの予兆も、気配もない。 ただ、空白のような間があっただけで、なにも起きなかった。「どうしたの、タイガ?」「どうしたもなにも、アレは俺がしようと思ってするんじゃないからなぁ」「鳥小屋じゃなくて、鳥じゃないとダメなのかなぁ?」「だって、鳥が全体にタマゴ生まないんだろう?」「まあまあ。やるだけやってみよ」 そう言って、ポムは足元で地面をつついていた一羽をひょいっと抱き上げると、俺に抱かせる。「うーん……」「駄目かぁ……。じゃあ、次」「待て、全部試す気かっ?」「当たり前でしょ〜。ほら、スカも鳥捕まえて!」「おっ? おおっ!」 そこでデカいクマが動いたのを機に、鳥がワッと逃げ始める。 えらい騒ぎになったが、ポムは諦めず、結局そこで小一時間、俺たちは鳥を追いかけ回すことになった。
last updateLast Updated : 2026-08-16
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9-3

「ご苦労だったねぇ。はい、これ、約束のトルタ」 ちょっと同情気味のおばさんは、最初からなんの期待もしてなかったって顔で、俺たちを家に招いて昼食を出してくれた。「結局、ありゃなんだったんだ?」 鳥を追いかけ回すのを手伝ってくれたスカーレットは、意味がわからないままで、不合理って顔をしている。「発動しない原因がわかんないと、気軽に次の仕事が請け負えないなぁ」 ポムは腕組みをして、うんうん唸っていた。 おばさんが出してくれた〝トルタ〟は、スパニッシュオムレツみたいな感じの料理で、じゃがいもっぽいものをタマゴで焼き固めた料理だ。 ゴブリンのグロい現場を目撃し、朝食をすっかり吐き戻してしまったために、正直に言うとかなり腹が減っていた。 もっとも先刻までは気落ちがひどくて空腹なんて感じているヒマがなかったのだが。 鳥を追いかけ回すことで物理的にヘトヘトになった所為か、むしろメンタルのヘコヘコは空腹を感じられる程度に復活してきている。 なので、おばさんのトルタはものすごく魅力的だった。「いただきます」 悩むポムも、不審顔のスカーレットも無視して、俺はトルタにかぶりつく。「うまっ!」「ありゃ、そんなに美味しそうに食べてもらえると、嬉しいねぇ」「そりゃ、ベラさんのトルタは絶品だし」 なぜかポムが自慢げだが、自分の知る美味しい料理を紹介して鼻高って気持ちはわからなくもない。 スカーレットも「こりゃうめえなっ!」とか言って、バクバク食っている。 しかし、鳥がタマゴを生まないってことは、晩飯にこのトルタが作れないってことだ。 おばさんには、旦那も子どももいるって言うし、村に物資を運んでくれるポムのためにとタマゴを使用された結果、彼らの夕食が質素になるのはなんか違うと感じる。 と、思った瞬間。 俺の脳天に〝アレ〟がピシャーンと落ちてきた。 体が勝手に動いてバッと立ち上がり、外へと駆け出す。「うわっ、なんだっ?」「ちょっと、どうしたんだい?」「あれ〜
last updateLast Updated : 2026-08-16
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10-1:ヤクシー! セイジョ

 防衛都市に戻ったところで、スカーレットは首を傾げながら「よーするに、新しい相棒のおかげで、ちょっと儲けが大きくなったってことだよな」と言って、帰っていった。 もちろん、長屋まで付いてきて、ブランシュ嬢の顔を見るのを忘れずに……だ。 一方でポムと俺は、部屋で難しい顔を突き合わせていた。「今日は、なんで直ぐに発動しなかったんだろ?」「それは俺にもワカラン。ちゅーか、そもそも俺は精霊魔法がなんなのかも、よーワカランわ」「今までと今日で、なんか違いがあったかなぁ?」「いや、三回しかやったことない案件で、統計は取れないだろ」 なんて話をしてると、扉にノックの音がする。 ポムは応対に出ると、直ぐに戻ってきた。「誰だったんだ?」「メッセンジャー。なんか涸れ井戸を直した話が、別の村に伝わって、そっちから見て欲しいってお願いがきたみたい」 口コミの宣伝効果なんて、都会とかSNSでしか通用しないんじゃ? と俺は思っていたが、意外にも村同士の横繋がりはあったっぽい。「でも、今日の不安要素を残したまま、続けて大丈夫かな?」「そんなの、やってみないとわかんないじゃん。それに今日のベラさんみたく、みんな〝上手く言ったら儲けもの〟って思ってるだろうから、ダメでも怒られたりはしないよ〜」 相変わらずポムのノリは軽いが、この性格と応対で、村人からの信用を得ているのだろうな…と、なんとなく思った。
last updateLast Updated : 2026-08-17
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