Todos los capítulos de 京極社長は善良すぎる女に飼われたい……2つのダイヤが秘密を暴く: Capítulo 71 - Capítulo 80

83 Capítulos

71.すれ違う夜 side.京極

「あなたの娘よ?李仁」 「ふざけるな……」 テーブルの脇に立ち尽くし、子供の隣に座る笑顔の真美を睨んだ。 「こっちだよ」 「……は?」 見たところ5歳くらいだろうか。子供は椅子から降りると、俺に座るよう向かいの椅子を引く。 「舞菜がパパの隣に座りたいって!」 冷やかすように真美が言う。 小さな体で椅子と格闘する子供を見て、俺は思わずその手を止めた。 「こんな重いもの、危ないから」 そう言ってから、真美が俺をパパと言ったことに気づき、彼女を睨む。 「……冗談はよせ。そんな呼び方をされる筋合いはない」 「酔って帰った夜のこと、思い出せないのね。あの日、離婚の話になって……あなたは私を抱いたのよ?」 「……ふざけるな。俺はそんな、」 「まぁ……私が抱いた方かしら。あなたを機能させて、私が上になって」 子供の前で赤裸々な事を話す真美を手で制した。いくら意味がわからないとはいえ、適切な会話ではない。……だが、記憶がよみがえったのも確かだった。 真美との夫婦仲が険悪になり、不安定だった俺は、異様に酒を飲んでしまう時期があった。祖父がそんな俺を心配して、帰宅した俺を介抱したことを思い出す…… 「別れたくなかったから、あなたを抱いたのよ。でも離婚の話は進んで……まさか本当に妊娠するなんて思わなかった。だから1人で産んで育ててきたの」 祖父に心配をかけたことへの後悔の念ばかり思い出していたのは、あの頃の自分の気持ちを認めたくなかったからかもしれない。 俺は確かに、真美を愛していた。……だが同時に自由奔放で自分勝手な彼女を持て余してもいたのだ。 真美はペラペラと、当時のことを話しているが、俺の耳には届かなかった。ただ……酔った俺を抱いたという真美の言葉には納得するものがあった。彼女はそういう女だったから。 「そこまで言うなら、DNA鑑定でハッキリさせる」 「……認めたくないのね」 「当然だろう。本当に俺の子供なら、5年も沈黙してどうして今なんだ?」 気づけば、カフェ楓に入ってかなり時間が過ぎていた。 凪のことがずっと気にかかりながら、真美の言い分を聞き逃せない。そこから矛盾を見つけようとしていたのだ。 「何が目的だ?……もしかしたら」 ネックレス……と言おうとして、隣にふわりとし
last updateÚltima actualización : 2026-10-25
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72.帰る理由

「岳さん、今どこにいるんですか?」『ちょっと野暮用で……外にいる。それより、これからちょっと話せない?』2人きりで岳に会わないでほしい、ネックレスの話はしない……京極に言われたことを思い出しながら……「いいですよ。……私も聞きたいことがあるので」こうして私に接触してくる理由は本当にネックレスなのか。……それを手に入れたら、どうするつもりなのか。換金して巨万の富を得る……?岳は京極家と長い付き合いがあり、彼とは幼なじみだ。当然、代々継承されてきたダイヤの希少性は理解しているとしても……お金を手にしたいだけでネックレスを欲しがるだろうか。自分を通じて、京極に用がある……?『駅前にCOLINってバーがある。そこで待ってて』「わかりました」自分自身が京極にとっての弱点だとしたら。2人で会うのは危険だと思うのに、自分の返事に迷いはなかった。「いや、驚いたよ。真美と李仁が一緒にいるところを見ちゃってさ」「そう、だったんですか」さっき京極に連絡をした時、携帯から聞こえてきた声は、やはり真美に間違いなかった。……2人は一緒にいる。きっと今、この瞬間も。「李仁が子供を抱っこしてカフェから出てきて、真美も連れてタクシーに乗ったんだよ。これは自宅に行くだろうと思って、俺も思わず追跡したら案の定だった」「真美さん、私の母と親交があって……京極社長との間に子供がいる話は彼女から聞きました」「……君のお母さんと、真美が?」一瞬、目つきが鋭くなった気がした。「岳さんは、私から何を聞きたいんですか?ネックレスの在り処ですか?……だとしたら、私は持っていません」「凪ちゃんこそ、ネックレスの本当の価値をどこまで知ってるの?」「岳さんは、私の母のこと……知ってますか?」しばらく睨み合い、先に目をそらしたのは岳だった。「悪いことは言わないから、李仁の家は出たほうがいい。サバンナビルディングから、部屋も職場も撤退して、別の場所を探しなよ」「どうして、ですか?」「だって現に、元妻を自分の家に連れ込んでるんだぜ?実は子供も生みましたって、ウソがホントかわからんようなことを抜かす軽い女をさ」京極家に出入りしていた岳は、2人の結婚生活も見てきたのだろう。どんな、2人だったのか……京極は幸せな笑顔を浮かべていたのか、聞きたくなった。「あんな訳アリのおっさんなんて
last updateÚltima actualización : 2026-10-26
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73.幸せのかたち

「凪……」 つかまれた手首を強く引かれ、次の瞬間、京極の腕の中に閉じ込められてしまった。 「……ちょ、なんですか、急に」 「ごめんなさい。本当に今日は、ごめんなさい」 ……調子が狂う。 こんなに素直に謝れるということは、自分が悪いと自覚しているということだろうが、それにしても調子が狂う。 「い、今はそんなこと後回しです。女の子、風邪引いちゃいますよ」 「あ、そう……だな」 京極も立ち上がり、凪の隣に並ぶ。 「いいですよ、私……持ってきますから」 「いや、俺が運ぶから」 「……自分の子供だから?」 父親としての責任から言っているのか、ちょっとカマをかけてみる。 「それは……ちがうぞ?!俺の子じゃないっ!」 声を潜めているとはいえ、うるさい。 凪は唇に人差し指を立て、静かに……というジェスチャーをしてみせる。 「だが、信じてくれ。……DNA鑑定もするつもりだから」 京極は、必死に弁解したい様子だ。 そんな彼の唇に、背伸びをした凪は、チャックをするジェスチャーも加える。至近距離で、彼の頬が赤くなったのがわかった。 「お口にチャックか……可愛いな」 「……毛布っ!」 別に今夜のことを許したわけではない。 先に立って寝室へと向かう凪の後ろを、京極は呼ばれてもいないのについていった。 「あ、起きたのか」 毛布を持った京極がリビングに入ったところで声を上げた。後ろから確認すると、女の子がソファから起き上がっている。 凪は素早くリビングの明かりをつけ、女の子に駆け寄った。 「はじめまして。私は汐沢凪です。……あなたは?お名前、言えるかな?」 「さかと……まいなです」 「舞菜ちゃんっていうんだね?……寒くて起きちゃったかな?」 京極は毛布を持ったまま、2人のやり取りを見守るのみ。凪は立ち尽くす京極から毛布を奪い取り、舞菜の肩にかけてやった。 「……ママは?」 舞菜は目の前の京極に目を向けた。 「あ……仕事だって出て行った。何時に帰るのかは……」 「おそとがあかるくならないと、かえってこないの」 一瞬、京極と視線を交わす凪。 「連絡は……?」 京極は携帯を取り出し、画面を確認する。……が、すぐに首を横に振った。京極の様子では、職場がどこなのかも
last updateÚltima actualización : 2026-10-26
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74.見たくなかった光景

京極が眠っている寝室に、何の迷いもなく入っていく真美を見上げ、2人は夫婦だったのだと思い知らされた。それは血の気が引いていくような、冷たい何かが心に広がっていくような気分……凪はそっとドアを閉めた。貧血でも起こしたかのように足元がふらつき、壁に手をついてソファに戻る。「……だいじょうぶ?」ソファに座ると、毛布の間から小さな顔が覗いている。「大丈夫だよ。起こしちゃってごめんね」毛布をかけ直し、そっと背中をトントンしてやりながら、凪も目を閉じた。……真美さんはどうして京極社長の部屋に入ったのだろう。今、何をしてるのだろう。無防備に眠る端正な京極の寝顔が思い浮かぶ。真美がそっと近づいて、形の綺麗な唇に彼女の唇が……「……っ!」ハッとして目を開けたのとほぼ同時に、リビングのドアが開いて真美が入ってきた。すぐにこちらには来ないで、冷蔵庫から水を出して飲んでいる。……携帯まで触り始めた。声を出せば舞菜を起こしてしまいそうで、真美が来るのをじっと待った。「ご苦労さま」近づいてきた彼女と交代するように立ち上がる凪。「それでは、私はこれで」軽く会釈して2階の自室へと引き上げた。そして何も考えずにベッドに横になり、目を閉じる。やがてハッとして目が覚めてみると……寝過ごしたようだ!起床するには早いと考えて、ベッドに横になったのが良くなかった……凪はジャージとTシャツに着替えて階下へと降りる。「おはよ、ございます」そこで気がついた。……真美と舞菜が来ているんだっけ。「おはよう」京極はコーヒーを飲みながらタブレットを見ている。舞菜はその前に座り、真美が用意したらしいフレンチトーストを食べながらこちらに手を振ってくれた。「凪ちゃん寝坊?!……意外と抜けてるのね!」真美がキッチンから声をかけたので、凪は曖昧な笑顔を返した。……なんだろう、この構図。とっても家族。父親と母親、そして娘。しかも全員、とびきり美形。凪は振り返ってドアを目指した。ここに、自分の居場所なんてない……洗面室でバシャバシャ顔を洗った。そうすれば、今見た光景が記憶から消えると信じているみたいに。「……凪?」そこへ、京極がやってきた。凪は髪からしずくが垂れるのも構わず顔を上げ、京極と目を合わせた。「どうか、したか?」「いいえ……」複雑な心境を伝えるには時間が
last updateÚltima actualización : 2026-10-27
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75.忍び寄る影 Side.京極

「……昨夜はよくお休みになれませんでしたか?」 後部座席で大あくびをする俺に、秘書の松平が声をかけた。 「あぁ、プロジェクト頓挫の件に加えて、プライベートでもちょっとな」 「ほほほ……やはり若い娘には逃げられそうですか?」 「……そういうことを楽しそうに言うところは山田に似ているな」 「……はて?」 松平が軽口を叩くのは、せめて社用車の中でくらい、俺をリラックスさせようとしているからだ。 ……それくらい社内の雰囲気は刺々しく、また、不可解だった。 「確かめてどうなさるおつもりですか?」 「現場にはまだ現物がそのままになっています。だとしたら、うちとしても独自に調査する意味はあると思いますが」 「……はん!あきらめの悪い男だ」 最後の言葉は小さかったが、確実に耳に入った。 定例の取締役会。 議題はあの、異物が掘り出され、頓挫した大型プロジェクトについて。 「撤退すると言った私に、簡単にあきらめるとは情けないと言ったのは専務ですよ。そのお言葉を聞いて、そうかもしれないと思ったんです。そこで改めて現場を確認させたら、祠も人骨らしきものもそのままでした」 専務は口元を歪めて鼻をこすっている…… イラついている時のクセだと知っている俺は、わざと大げさに言ってやる。 「てっきり開発調査部長から警察に連絡させたのかと思ったのに……専務、指示しなかったんですか?」 「そんなことは言わなくてもわかると……」 「開発調査部は専務の担当ですからね?……お願いしますよ?」 わざと挑発するように視線を向けてやれば、専務の口元はさらに歪んだ。 ……悔しげにテーブルを叩いて会議室を出ていく専務。 乱暴に閉まったドアをしばらく見つめ、俺は残った取締役たちからの報告を受けた。 「……社長」 会議室から出ていこうとする俺に、常務が声をかけてきた。 「実はあの人骨なんですが……開発調査部の社員が、どうしても納得できないと、発見当時の写真を専門家に見せたそうでして」やはり、調査段階で問題がなかった現場がこんなことになって、納得いかない社員もいたということだ。俺は常務に視線を向け、続きを促す。「それが……本物の人骨ではなく、精巧なレプリカではないかと」 「レプリカ?」 「えぇ。ただ、写真だけでは断定できないとのことです」 「……わかりました。
last updateÚltima actualización : 2026-10-27
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76.深まる愛

「それにスても……困ったことになっで、おらはどうやっで慰めたらええでスかねぇ?」新田が言うのは、京極の元妻が、子供を連れて居座っている事態についてだ。「別に、慰めなんかいりませんよ」「……おはよう」舞菜をつまみっ子倶楽部で預かるようになって3日……京極の疲労は焦燥感まで漂うようになっていた。真美と舞菜は一階奥の個室に泊まらせ、今はDNA鑑定の結果を待っているところ。「おはようございます。あの、大丈夫ですか?」「はは……心配してくれるのか」近づく凪に、弱々しい笑顔を向ける京極。……すん、っとした雰囲気を感じ取った。「お前ら2人、揃ってキッチンに立ってると、まるで若夫婦だな?」そんなことない、という自分の言葉を待っていると、凪は気づく。「あ、あ〜あ……べごが鳴いでっから、ちょっと様子を見てくっかな〜」新田はそう言いながらあたふたとリビングを出ていった。凪はそんな彼を見送りながら、はてな顔になる。「『べご』って……」「牛を表す東北地方の方言だが、どこから牛の鳴き声がするんだよ……」首をひねりながら、京極の表情に笑みが浮かぶ。……凪もホッとして頬を緩めた。「凪、ごめんな。鑑定結果が出たら、すぐに2人には出ていってもらうから」「いえ……逆に私の方こそ、舞菜ちゃんを引き受けちゃったから、ここに置かざるを得なくなっちゃって」「はじめは、2人だったのにな?」一歩、京極が近づいてきた。忙しさと、家の中にいる人間の多さで、なかなか近づくことができなかった。……妙に緊張する。京極の顔がそっと近づいてくるのがわかった。疲れと焦燥感を癒やすのに、自分が必要なのであれば……凪も顔を上げる。「……おはよ〜!朝ごはんできてる?」もう少しで唇が触れる、という時……真美が舞菜を連れ、勢いよくリビングの扉を開けた。「あぁーー………っ!」ガックリしたのか、その場にしゃがみ込む京極。「あら?……あらあら?もしかして邪魔しちゃったかしらぁ?」アハハ!と明るく笑う真美を見て、凪は心のなかでわずかな違和感を覚えた。DNA鑑定までして、京極と娘の親子関係を証明したいのは、3人で暮らす未来を願っているからではないのか……だとするなら、自分は邪魔者のはず。なのにまるで冷やかすように笑うなんて、余裕があるのか、それとも……お金だけをもらえればそれでいいと思ってる
last updateÚltima actualización : 2026-10-29
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77.愛が底をつきた Side.京極

「社長、臨時取締役会のお時間です」 「あぁ、今行く」 秘書の松平が社長室に入ってきた。 軽い頭痛を感じながら立ち上がり、上着に袖を通しながら、俺は数日前の出来事を思い出していた。 ◇◇◇◇◇ 「今回は、異例中の異例ですよ?……うちの実績は、それなりに評価されていると思っていましたが」 「それはもちろんです、京極社長。ただ……大型案件の失注、出資企業の撤退、それに、掘削現場での人骨騒動が問題になりましてね」 難しい顔をしてみせるのは、メインバンクの担当者だ。 これまで順調に進んできた融資審査が、これほど長期化すなど異例のこと。 京極 REAL ESTATEとメインバンクは、長年良好な関係を築いてきたはず。……なのに、このままでは取れるはずの仕事が取れなくなる。 だが担当者の表情は事態の深刻さを物語り、何を言っても「審査部の意向」「本部の決裁が下りない」と繰り返されるだけだった。 「融資が難航するとは……どうするつもりですかっ?」 話を聞きつけた専務が、社長室をノックもせず開けて入ってきた。 「……ここのところ続いている不穏な事態を重く見て、融資が降りるまで時間がかかってます。今回は追加書類を提出をして、再度審査されるそうです」 「そんな悠長なことじゃ、案件を落としますよ?……そうなったらあなた、」 「わかっています。今、別の銀行を当たらせているところですから」 「そんなことを聞いているんじゃありませんよ!……案件が取れなかったら、どう責任を取るおつもりですかと聞いているっ!」 コンペで勝っても、資金の目処がつかなければ、案件を動かす初期費用がない。 結果、撤退せざるを得なくなると懸念はわかる。……わかるが。 「……だいたい、あなたみたいな若造に代表取締役なんて、無理だと思ってましたよっ!」 大きくため息をつき、腕を組む専務。 「どうして先代は、順当に後継者を選ばなかったんですかね?……孫より優秀な人がいたでしょうに……」 「祖父の決定に今さら異論を唱えないでください。……亡くなった者は、何を言われても言い返すことができない。……それを、」 忘れないでくれ、と言いたかったのだが、冷静さを欠いた専務の言葉は止まらない。 「あなたも、ご自分から辞退すべきだったんですよ!ご両親に相談もせずのうのうと社長におさまって……いい気
last updateÚltima actualización : 2026-10-29
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78.暗闇の京極

真美の希望で舞菜を20時まで預かり、朝と同じように新田と3人で京極邸へと帰る夜。つまみっ子倶楽部で楽しそうに過ごしていた舞菜が、さすがに疲れたのか……途中でウトウトし始めた。「あぁ、失敗したなぁ……慣れてないのに、長時間預かって疲れさせちゃったかもしれない」簡単に引き受けてしまった自分のミスを悔やむ凪を、新田の明るい声が救う。「大丈夫でス!……こういう時のために、おらがいまスから!」ヒョイと舞菜を背負い、恐縮する凪から荷物まで奪う。「すみません……あの、タクシーを呼びましょう」「そいだら駅まで行って、そごから乗った方がいいでス!迎えに来てもらうんじゃぁ、運転手さんの手間だべ?」「はい、そうですね」笑顔の新田を見て思う。鈍そうなのに実は色んなことに気づいて、気を利かせることができるこの人は、実はとても優秀かつ貴重な人材だと。京極邸に到着する頃にはすっかり眠ってしまった舞菜。そのまま部屋に運び、寝かせることにした。家の中は暗い……真美は仕事に行ったのだろう。……てっきり、誰もいないと思った。「……わぁっ!びっくらこいだなぁっ!」先にリビングに戻った新田が驚きの声を上げ、凪も慌てて向かってみると……「京極社長……?!明かりもつけずに、どうしたんですか?」長い足と腕を組み、片手を立てて顎を支え……「考える人」のようなポーズでソファに座っている。……視線は中庭に向いているが、何も見ていないことはわかった。「あぁ、帰ったのか。おかえり」「ただいま、です。今、食事を準備しますけど……」「いや、俺は軽く食べたから、今夜はいい」立ち上がり、そっと凪の頭を撫で、ドアに向かう。何かあったのだろうか……いつもならこんな時、笑ってみせる人なのに。頭に残る手の温もりが、わずかに凪を不安にさせた。そしてそんな背中に声をかけづらい。……今朝、裕貴がこの家に来たのを見たことを。夕食は新田と手分けして準備した。舞菜には、起きたら食べられるよう小さなおにぎりを、いらないと言った京極にも、野菜スープだけ準備した。2人で食事をとり、一足先にリビングを出た新田。「な、凪さん!……地下室のドアが開いてまス!」慌てた様子で戻ってきた新田が、廊下を指さしてオロオロしている。「えっ……地下室?」京極が大切なものを保管している場所だ。凪は新田の脇
last updateÚltima actualización : 2026-10-30
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79.ダイヤの行方 side.裕貴

「……バカッ!なんでこんなに早く来るのよ!」「場所がよくわからないから早めに来ただけですよ……」インターホン越しにいきなり怒鳴られた。……真美さんってそういう人だったのか。だったらこの話、乗らなきゃよかったかな。門が開いて中に入ると、真美が玄関ドアを勢いよく開けて大股で歩いてきた。そして俺の腕をつかむと、物凄い力で引っ張っていく。「……遊びに来たわけじゃないのよっ?!あなたには大事な仕事があるの!」初めて来た李仁の家は、ため息が出るような贅沢な空間が広がっていた。どこを見ても一枚の絵画のようで、思わず祖父と暮らす自分の家と比較する。「全室のマスターキーを渡しておくわ。これを使って各部屋を捜索して」「マスターキーって……よくバレませんでしたね」「ここに来てすぐ、李仁の寝室から取ってきたの。よく寝てる時間を狙ったから楽勝よ。……それにあの人、鍵もかけずに休んで、よっぽどあの凪って子を信用してるのね」鍵を放り投げ、真美は続けた。「私はお昼まで寝るから、その間にネックレスと指輪を捜索しておいて」「え……1人で、ですか?」「だから昼過ぎに来いって言ったのよ!お店が終わったの朝方よ?少し寝なきゃもたないわ」真美はそう言いながら奥の部屋へと入ってしまった。予想以上に広い李仁の家と、キツい真美の口調……始める前から気が滅入る。「こんなことなら組まなきゃよかったかな」2度目にそう思った時、真美が突然小山内宝石店にやって来た日のことを思い出した……◇◇◇◇◇「……小山内裕貴くんよね?」「あれ?……真美さん?李仁の、」「覚えててくれた?嬉しい!」その場でギュッと手を握られ、思わず彼女の顔を見た。……昔からこういうスキンシップが得意な女だったと思い出す。「話は、聞いてるわ」誰から……とは聞かない方がいい気がした。それに今日接触してきたのは、祖父の姿がないことを確認してのことだとわかる。「重要な情報を流してるらしいじゃない?すごいわね……」「ま、まぁ……祖父の仕事を手伝ってましたから。李仁のダイヤについては、それなりに詳しいですよ」「そう。だったら、私と組まない?」黒く囲んだ大きな目が、じっと俺を見つめた。……俺があのダイヤに何をしたかなんて、この女は知る由もない。それにしても……李仁と離婚してから格段に化粧が濃くなったな……昔の
last updateÚltima actualización : 2026-10-31
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80.疑惑の行き先

「……まさか、あいつ」地下の保管場所へと急ぐ京極の後を追い、凪も一緒に部屋へと足を踏み入れた。不穏なことに巻き込みたくなくて、新田には部屋に戻ってもらった。……けれど、意外と勘の鋭い彼のこと。ここに何かあることくらいは想像しているかもしれない。京極の指が、暗証番号を入力する箇所を叩いた。「特殊な強化ガラスにしたことで安心して……ミスったな」どういうことかと顔を覗き込んでみれば、凛々しい眉を寄せ、苦い表情の京極がこちらを向く。「結婚当初、ここには真美の宝飾品も保管していた。……だから暗証番号を教えていたんだ」「その後、番号は変えなかったんですか?」「あぁ。……まさか、あいつが覚えているとは思わなかった」そうか……一緒に暮らしていたこの家のことならいろいろとわかるはず。「真美さんが開けたと思ってるんですか?」「あぁ。きっと番号を控えていたんだろう。……どこまでも小賢しい奴だ」見れば、京極の目の下が青黒い気がする。焦燥感と絶望に加え、悲しみまで漂っているように見える。「真美の職場に連絡しよう。すぐに戻らせて説明させる」「待ってください」行きかけた京極の腕を取り、凪は彼の前に立った。「真美さんを問い詰めても、シラを切られたら終わりです。……それより、裕貴さんに事情を聞きに行ったほうがいいように思うんですけど」「裕貴に?」「はい。裕貴さんが今朝この家にやってきたのは間違いありません」凪はポケットからゴソゴソと、携帯を取り出して操作し、ある画像を京極に見せた。「は……すごいな。写真を撮っておいたのか」「はい。ナンバーもしっかり映ってます」「車は確かにこの車種だった気がする。……これを持って、裕貴を訪ねるか」うなずきながら、少しだけ目元に生気が宿った京極に、凪は心の中でホッとため息をついた。「明日は休みなので、私行ってきます」「あぁ、そのことだが……」京極は一瞬視線を下に向け、改めて凪を見た。「俺も一緒に行く。……しばらくは、この件を解決する時間が取れそうだから」話が終わり、凪は自室へと戻ってきた。京極が話してくれた一連の会社での出来事は、偶然が重なったと納得するにはあまりにも……不思議な、そして不運な重なりだと凪も思った。その上、代表取締役の解職……株主総会を経て、京極REAL ESTATEから追われる可能性もあると
last updateÚltima actualización : 2026-11-01
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