「凪さん、実はちょっと、話があるんですけど……」「小森さん……どうしたんですか?」京極と、ネックレスについての新情報を披露しあって数日が過ぎたある日のこと。小森がいつになく神妙な表情で凪に声をかけた。「……ちょうどお昼時だし、下の中華料理店にでも行きますか」サバンナビルディング取り壊しのニュースが入った時は動揺していた店主も、今はすっかり落ち着きを取り戻し、笑顔で出迎えてくれた。ラーメンとチャーハンを注文し、凪は小森の話が始まるのを待つ。「……実は田舎の母が事故で骨折してしまってね」「え……?!」思いがけない知らせに血の気が引いた……母が事故に遭ったと知らせを受け、病院に駆けつけた4年前がよみがえる。「一人で暮らすのは難しくなりそうだから、僕がそばにいてやろうと思うんだ」「それはもう……もちろんです。こちらのことは心配せず、明日にでも帰ってあげてください」「はい。……急で本当に申し訳ない」介護士としても人としても頼れる小森が、つまみっ子倶楽部を去ってしまうのは、凪にとって大きな痛手だった。なにしろ、母が開設した当時からのスタッフだ……母の事を話せる数少ない人が離れていくなんて。凪の心に深い悲しみが広がる。「……あとね、先に僕から報告したほうがいいと思うから話すんだけど」別件だとしながら、小森が頬を染めて話した内容に……凪は声も出ないほど驚いた。「小森さん、いろいろあったみたいだね。餃子で精をつけてよ!」食べ終わって店を出ようとした2人に、店主が親しげに声をかけ、美味しそうな焼き餃子のパックを小森に差し出した。「えぇ?本当に?嬉しいなぁ……」小森は店主に握手を求め、これまでのお礼をのべた。「僕がいなくなる分、困った時は凪さんを助けてやって」小森の言葉に涙を浮かべた時だ。店主はふと思い出したらしい。「そういやさ、いつだったか……ここにお宅のこと聞きに来た人がいたんだよね」店主がポン、と手を打って話しはじめた。「つまみっ子倶楽部のことですか?」「そうそう。何時頃までやってるのか、とか……あと運営者について、凪ちゃんのことをさ」「……私?」店主によると、その人物は初めて店にやって来たお客だという。「小綺麗なスーツを着た年配の男性だよ。……汐沢さんって人がお母さんの後を継いでやってるってことと、夜の7時頃までは誰かし
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-10 Mehr lesen