瞳は、断られることを覚悟で言った。もちろん、ダメ元だ。この話は、流星にメリットがない。知らない人と同居して、相手は家賃の負担も出来ないのだから。流星の表情が固まり、困ったような顔を見てしまった。お世話になった人になんて顔をさせてしまったのか……失敗した……言うなら朝ごはんの後だった。ご飯を作ったことで喜んでいる人に対して、断りにくい話をするのは卑怯だ。ダメ元と思って膨らんでいた気持ちが、シューっと音を立てて萎んでいくのを感じる。「はは……ご、ごめんなさい。とても過ごしやすくて、こんなにぐっすり眠れたのは久しぶりすぎて……」人の良心につけ込む真似をしてしまった自分に嫌気がさす。「なんだろう。大川さん、とってもいい人すぎちゃったんです。だから、ダメ元で言ってみただけなので気にしないで」「……あ、ええと……」流星が必死に言葉を選ぼうとして、口元に手をあてて固まっている。これでは、やってることは、母と一緒だ。自分に幻滅する。「本当に……私ってば、困らせちゃってごめんなさい。あ!この朝ごはんは打算ではないですよ。あ、少し打算かな。私もご飯にありつけるって思ったんだから」茶碗にご飯をよそい、味噌汁を二人分入れて机に運ぶ。ごはんの温もりと、お椀から流れる味噌の香りが、再び空っぽになった胃を刺激した。「あの……君をここに置いていいかがわからないんだ。俺も昨日、久しぶりに人と一緒に過ごす生活で楽しかった。ただ、出会い方が知っての通り、事件絡みだ。あの日はプライベートの扱いだから、関係ないって言えば関係ないけど、君は俺と一緒に事件に巻き込まれた被害者でもあるから……その……」一生懸命に言葉を選ぼうと
Last Updated : 2026-09-25 Read more