「え……でも……奈央さんに知られるのは……」瞳は、気にしていたことを突然流星の口から伝えられて動揺していた。「ちがう。多分昔好きだった話をしたからだよね。そうじゃないんだ。もっと単純で、もっと困った事態なんだよ」話を聞けば、流星が実家の親に隠さなければいけない理由は、瞳にもよくわかった。結婚前に女性と暮らすのに、交際相手ですらない。更に、流星は、その女性を守るために怪我をしてしまった。そんな元凶がマンションに転がり込んでいるのだ。親と通じている奈央さんに、わざわざ同居の件を伝えるなんてとんでもないことだった。「流星さんにとって、自分は奈央さんに隠したい存在なのだと思いこんでいたので……でも、狭いコミュニティだとそんなに話が伝わってしまうんですね」良くも悪くも転居を繰り返していた母、愛は近所付き合いとは無縁の女性だった。親に伝えたら、その親が周辺の住民みんなに噂を振りまくなんて恐ろしすぎる。でも……瞳は少しだけ違和感があった。そんな田舎で、結婚すぐに夫が不倫しているかもしれない状況を流星に相談できるのは、奈央さんがそれだけ流星さんを信頼しているからじゃないのかしら?流星さんはそのことに気づいているのだろうか――◇数日後――富山もぎっくり腰のため、瞳も抜糸のため、二人仲良く今日は通院休暇と休みになった。そんな休暇が富山探偵事務所にはあるのか?何はともあれ、無事、瞳の額は絆創膏だけになる。それだけではない。なんと地図アプリをみながら、病院に一人で通院できたのだ。「流星さんに、報告しなくちゃ!」【額の抜糸が済みました。家にも無事に帰れました】送信ボタンをえいっと押す。その送信ボタンを押す最中も自然と口元が綻ぶ。自分はこんなに笑える日々をかつて過ごした
Last Updated : 2026-10-24 Read more