All Chapters of 触れたものの過去がわかる彼女と触れられても全く困らない俺: Chapter 31 - Chapter 40

60 Chapters

31 健全な年ごろの男女です

「本当にベッドで眠って良いのかしら?」流星がシャワーを浴びている間に瞳はベッドの上を整えた。流星の手で準備された寝袋が、フローリングの上に敷かれているのを見て顔を曇らせる。(背中痛くならないかしら?)この寝袋は自分にとっては星空を見せてくれて、人の体温の温かさを感じさせてくれる素敵な寝袋だ。だけど普通の人にはとりたてて変哲のない寝袋だ。(まだ完治してないのよね。傷口にこたえないかしら)ベッドを整えるために布団やベッドのフレームに触れると、瞳の前にはところどころ過去が見えた。意識して触れないようにしているが、このベッドの前にクローゼットがあり、流星が着替えている過去が見える。風呂の中で大切なところは見ておりません!と宣言したけど、お着替えのトランクス姿は、今まさに見ていますと告白する勇気もない。暑い日には、上を着ずにそのままベッドに横になる日もあるようで、過去の流星は無防備に瞳の目の前で横になる。流星さんが健全な男性なのはわかったわ。でも、このベッドの周りが一番濃厚なのよ困ったわね……自分がここに寝てシーツに触れることを想像する。自分が見て不快になるものは一つもない。なぜなら生活の一コマで、情事でもなんでもないからだ。一人で消毒をして肩にガーゼを当てる姿も見えている。でも、これは完全な覗きと同じだわこういう時、相手は見られている範囲を知りたいもの?これから傷を初めて見せる相手が既に知っているというのは気持ち悪いだろう。かといって白々しくここが傷なのね?と初めてのフリをして触れるのも嫌な人間になる気がした。(素直に見えたものは見えたと言おう……嘘はつきたくない)そのとき、室内にふわっと暖かい空気が混じり合った。どうやら流星がシャワーを浴び終えたらしい。「じゃあ、お願いしても良い?」濡れた髪をタオルで拭き、上半身裸で短パン姿の流星がベッドに近
last updateLast Updated : 2026-10-04
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32 俺たちの揺れる下着

健全な年頃の男女は、シングルベッドで真っ直ぐ二人で寝ないよ。流星は眠っている瞳を見つめてため息をついた。疲れていたのか、瞳は横になったと同時に眠りについた。 真っ赤な寝袋から顔だけが出る姿はたらこの着ぐるみのようだが、なまじ綺麗な顔立ちなので隣にいるだけで破壊力がある。とりあえず、ジェットコースター並みにとんでもないことが起き続けていることは間違いないな。25年彼女がいないことに焦りはあるが、だからと言って前日は彼女でもない女性がお泊まりをして、今日はその女性がシングルベッドで一緒に寝ている。お互い手を触れ合ったことさえないのに、まさにモザイクがかかる部分以外はお互い見ている。普通に絶対にないシチュエーションだ。あと、どうするかなあ。チラリと自動掃除機を見つめた。俺が掃除機のカメラを使って彼女を覗き見したのがバレるのは時間の問題だ。しかも彼女を信じていなかったというようなものだ。バレたら軽蔑されるよな…… また、出て行かれないようにしないと…… どうやってそれを伝えようか?そう考えているうちに、明け方から活動する人たちのバイクの音が聞こえてきて……「おはようございます。ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」ハッと目覚めると、瞳が洗濯機を回して、ちょうど米を研ぎ終わっているところだった。「えっ?ほとんど寝てないんじゃないか?」「いえ、もう昼ですよ」ベッドの上の寝袋は綺麗に畳まれ、壁の時計は12時を回っていた。「私服や下着をあまり持ってないので洗濯機をお借りしました。流星さんのものも一緒に干しておきますね」「……あ、ああ……」昼……本当に? 瞳が真横にいるのに気にせず眠れてしまった。 健全すぎないか?俺…… 髪をくしゃっとかきあげて、どう反応したら良いか悩む。「その……眠れたの?」「ええ、昨夜も素敵な星空が見えたと思ったらもう眠りについてました。それで、昨夜の話なんですけど
last updateLast Updated : 2026-10-05
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33 その男は敵が味方か?

「じゃあ行こうか、今日は焼肉にしようかな?一人で焼肉は食べにくいんだ。一緒に焼いてくれる相手がいるのは嬉しい」瞳は外に出るだけで顔が強張った。それをほぐすように流星からかけられた焼肉の話題に笑顔を向けようとしたが、それでも顔は引き攣る。すると、そっと腰に手が添えられた。「これだったらどう?手はお互い触れ合ってないから……不安ならシャツとか握ってくれたらいいから」「すいません……ちょっと人目が気になってしまって……」自分は知らないけど、周囲は知っている。いつ誰が声をかけてくるかわからない。それは恐怖だった。「そうか。じゃあコンビニで髪を結ぶものを買おうか?多分髪を結ぶだけでも雰囲気が変わるかも」「コンビニ……」瞳は値段が高いコンビニで買い物はほぼない。店内に入ると、おにぎりや弁当、飲み物だけではなく、日用品もあり驚く。ただ、客がこちらを見ている気がして思わずぎゅっと流星のTシャツを握りしめた。今朝このシャツを流星が選ぶ様子が見える。そして、シャツを着た後は瞳がご飯を作っている姿が映し出される。私……笑ってるわ……流星の前で笑顔で会話している自分が見えて驚く。それだけで、早くここに戻りたいと泣きそうになった。「瞳さん、ヘアゴムがあったよ」瞳は占いでも使えるように、いつも白いシャツと黒のロングスカートを履いている。黒のゴムで結べば、清潔感があり、就職の面接受けが良いかも知れない。買ったゴムで髪を結び、タクシーに乗り込むと10分ほどで飲み屋などがある繁華街の一角にある雑居ビルについた。そこに、久保田が立っているのが見える。「遅くなりました、すいません。あの……今日はよろしくお願いします」「いや、傷は大丈夫かい?髪を
last updateLast Updated : 2026-10-06
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34 精神的な呪縛に気づかない

富山の雇用条件はあっさりしたものだ。 住民票を事務所に置き、姿形を変え、スマホを持ってくる。 それが揃ったらやってこいという指示だった。「転出届を住民票が置いてある市に郵送でお願いしないといけないので、少し時間がかかると思います」「それまでに他の準備をしておくかね。さて……美容院か……君はここに来たばかりなら知っているお店とかはないか?」「そうですね……ハサミで切ってましたし、母からこの髪型を変えるなと言われて育ったせいか髪型を変えていいという発想を持ったことがありませんでした」「ハサミ……」久保田は声を失っている。ハサミで切るのは当たり前のことなので瞳は気にしない。 むしろ、母に反発していても体に染み込んだ教えから何も抜け出せていないことにショックを受けていた。逃げ回るにしても髪型と色を変えるだけで誤魔化せる場面もあったはずだ。「君は今までお母さんの言いなりに?いや……昔、テレビのスタジオにいるお母さんと君を見たことがあったから……」久保田は眉を顰めた。25歳にもなって親の言いなりかと思っているのだろう。当たり前の反応だと思った。自分の髪型を自分で決められない。更には自分でハサミで切るだけなんて、久保田のように安定した職についている周辺では存在しないだろう。 いや……それは流星の周辺にだって……胸がぎゅっと苦しくなる。 瞳は、少しひきつる笑顔で自分の髪に触れた。「ほら、これに占いのベールを被ったらミステリアスでしょう。テレビに出ていた頃は着物もよく着ましたからね。あまりに今までの仕事が長すぎて、変わってもいいという発想が浮かばなかった自分がショックだっただけです。でも職種が探偵なら確かにもう髪型も変えていいんですよね」母の言いなりになっていたのか? 精神まで母に支配され続けていたのか? だから、髪型も色も変えなかったのか? その答えは「はい」だ。でも、久保田や流星にそんな情けない人間と見られたくなかった。 あの母から離れて自力でここまでやってきた。 私は、貧乏でもその日暮らしでも自分の力で未来を歩んできたはずなのに、また母の呪縛から抜け出せていない。「私は、年頃のお嬢さんのようにおしゃれを楽しんでほしいと思うけど、その髪型も君に似合うと思うよ。おじさんだからおしゃれには疎いんだけどね……」久保田は言葉を選びな
last updateLast Updated : 2026-10-07
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35 初めてのプレゼント

瞳を久保田にお願いした後の流星は、その場を任せたものの瞳の事で頭がいっぱいだった。(二日一緒に過ごしただけの俺が心配しても仕方ないか)ただ、そんな二日の男に助けを求めなければならないほどの状況で瞳はかろうじて立っている。自分のTシャツを握りしめていた瞳の姿を思い出し、その掴まれた場所にそっと触れた。俺には何も見えない……彼女はこのシャツに触れて何が見えたんだろうか?それに……掃除機のカメラの件を思い出して気が重くなった。なんであんな軽率なことをしたのかと自分を責めたくなる。早く伝えた方がいいよな。本当に何も隠すものがない人間でありたい。ただ、隠すものがなくても、裸みたいに見られない方が良いものもあるよな……とふと考えた。例えば、俺だって年頃の男だからいかがわしい動画を見ることもあるし、トイレで済ませているが一人で処理することもある。ん?今のところそれ以外見られたくないものはないか……瞳の言い方だと、見えそうなところで急いで手を離して気を遣ってくれているらしいし、見られたくもないが、むしろ見たくもないパターンの方があるだろう。流星は、ふと手を見つめた。「触れたものから勝手に情報が入ることもあるけど、手さえ離せば見なくて済むって言ってたな……」家はともかく外でも勝手に情報が流れ込んでくるのは苦しいに違いない。「そうだ!肉を買う前に、ちょっと見てみるか」流星はバイクにエンジンをかけ、街の中心部にある百貨店に向かって走っていった。到着して向かっていくのは一階にある手袋や日傘のコーナーだ。「レース、布、革……革はやめておこう……どこまで遡るかわからない」解体されて革にされる瞬間まで見えた日には、二度とそれをつけようとは思わないだろう。ぶ
last updateLast Updated : 2026-10-08
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36 二人の甘い殴り合い

「おかえり、瞳さん疲れたでしょう。今日は瞳さんのウェルカム焼肉パーティーだよ」肉の袋を開封して、笑顔でミニコンロを出す流星と対照的に、瞳は肉を見て釘付けになる。「流星さん、焼肉をするとは聞いていましたが……これ細切りにして野菜に混ぜたら1ヶ月は毎日お肉が食べられると思うんですけど……」「それじゃ、焼肉にならないよ」流星は何を言っているの?と言うように怪訝な顔つきをして瞳を見つめた。「私、焼肉したことがなくて……肉だけなの?」幼少期から裕福ではなかったし、テレビに出た時は忙しすぎてまともにご飯を食べていない。逃げ回ってからは金銭的に厳しく、肉単体を食べる生活は送っていない。「えっ!初めてなの?」そう言われてこくんと頷く。「そっか、じゃあしっかり食べてもらわないとね」「は、はい……」瞳はごくっと唾を飲み込んだ。「あ、白のブラウスはダメだよ。絶対飛び散るから奥で着替えておいでよ」瞳は頷きながら、部屋の奥に久保田に買ってもらったスマホも持って行き、そういえばと振り向いた。「流星さん……このスマホをわいふぁいというのに繋いでもらえと言われたんです。何のことかよくわからなくて?」「これ最新型スマホじゃないか?どうしたの」「それが……」探偵事務所に行き、富山の条件を聞いて、久保田が気を利かせて買ってくれた話をする。「まあ確かに……訴えられることを思えば安いだろうけど。瞳さんがびっくりするのは当たり前だよ」「しかも、これで就職準備をするようにとお金まで頂いてしまって。もちろん貯めたらお返しするつもりなんですけど……」その茶封筒の10万円を見て、流星も目を丸くした。「そうか……多分、俺に気
last updateLast Updated : 2026-10-09
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37 知らなくて良い初恋

「あっ、奈央からだ……」流星はスマホを見て少しだけ困ったように眉を寄せた。「奈央……さん?」「ああ、この子は俺の幼馴染。今日偶然会ったんだけど結婚生活がうまくいってないみたいで相談にのってほしいと言われたんだ」そういって、胸ポケットから百貨店の包装紙に包まれたものを瞳に渡す。「これ良かったら俺から……ここの家のものは好きに見ていいけど、新しい職場で見たくないものが見えたらこれを使って欲しいと思ったんだ」「私に?」「うん、これを探していたらこの店に勤めていた奈央と会ったんだよ。一緒に探してくれたからセンスはいいと思うよ」「……うわぁ、おしゃれな手袋……」包装紙の中には薄いピンクで人差し指だけ細工がしてあり指を出すことが出来るおしゃれなレース飾りのついた手袋が入っていた。「スマホは手袋をつけたままだと使いにくいからこういうのが便利なんだって。使ってくれると嬉しい」「つけてもいいですか?」流星が笑顔で頷くのを確認して、瞳はドキドキしながら手袋をつける。自分のために選んでくれた流星の気持ちが嬉しい。だが――手袋をはめた瞬間、手袋を選ぶ流星が見えてくる。 真剣に手袋を持っては棚に置くを繰り返す。 やがて、素敵な笑顔で身なりも美しい女性が声をかけてくる。(この方が……奈央さん……)流星が向けた笑顔は一切の緊張がない。 自分に見せる気遣いや遠慮もなく、心の垣根がないなんでも言い合える関係にみえる。女性慣れしてないなんて嘘じゃない……なぜかそれを見て胸がザワザワする。更には、奈央から手袋を彼女に贈るのかと聞かれて……(仕事でお世話になった人への贈り物……)流星は奈央からの質問の返答に嘘の内容を答えていた。 瞬時に自分の存在を隠されたことで、流星は瞳のことを周囲に知られたくないと思っていることに気づく。それが見えて思わず、瞳の表情は曇った。「……瞳さん?どうしたの?手袋なにか都合が悪いものが見えた?革は避けたんだけど、もしかしたら何かある商品だった?」はっとその声に我に返り、瞳は「ちがうの」と首を振る。「い……いえ、こんな素敵な贈り物をもらったのは初めてだったから嬉しくてぼんやりしちゃって」「それならいいんだ。嫌な気持ちになることがあったら意味がないからね」流星はそう言ってうれしそうにもじもじとした。「実は俺、女性にプレ
last updateLast Updated : 2026-10-10
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38 初めての優越感

「はぁ、食べた食べた……というか、肝心の瞳さんがあまり食べてないよね?」流星は焼肉を終えた後、大袈裟にお腹をさすりながら残った肉を冷蔵庫に片付けながら瞳に声をかけた。「食べましたよ。だってお肉ですよ?何度も噛み締めるし、飲み込むのが勿体無いじゃないですか。それを繰り返していたら、お腹が一杯で……しかもこの香り」瞳はそう言いながら部屋の焼肉臭を思いっきり吸い込む。「焼肉って二度お得なんですね。食べてお腹いっぱい、その残り香でまた癒される」ふふっと嬉しそうに笑う瞳を怪訝な顔つきで流星は見つめる。「ごめんね、喜んでもらっているけどこの匂いは喜ばれません。服やシーツに匂いが染み込むし換気するよ」なかなか感動の仕方が独特だな。流星が苦笑いしながら窓を開けると、少し生暖かい風が室内に入り込んでくる。「な、なんて勿体無い!流星さん、お肉の香りが……ああ、ああっ!」開けた窓を閉めたいと流星に目で訴える。この香りと白ごはんだけで数日はいけるはずだと騒ぎ出す。感動の仕方が独特だが、無表情だった瞳の顔を知っているだけに、目がこんなに輝いて、笑顔が可愛いのを知っているのは俺だけだという優越感が流星の心を支配する。「瞳さん、たくさん食べてくれないから明日もこのお肉だよ。悪いけどこれを使って料理してくれる?」「悪い?悪いわけないじゃないですか……どうしよう、野菜炒めでしょ、焼きうどん、焼きそば……」指を折りながら困ったようになにを作るか悩む瞳を見て、明日もここにちゃんといるんだと流星はホッとした。「そうだ!スマホを買ったんだろう?設定するよ。そうしたら、料理のレシピも見られるし、髪型も探せるしね」流星は、瞳から買ったばかりのスマホを受け取り、設定し始めた。瞳はしばらくそれをじっと眺めていたが、分からないせいか焼肉に使ったフライパンや皿を洗い始めるその音を聞きながら
last updateLast Updated : 2026-10-11
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39 触れたらそこは胸だった

流星がスマホで話をしながら部屋から遠ざかっていく。「もしもし……あ、奈央?……うん、今は大丈夫だよ」足音と共にその声が玄関を出た外の廊下の向こうへ消えていく。(これが……普段の女性にかける……流星さんの声……)自分に向けられる遠慮や気遣いではない能力も通さずに聞く幼馴染の奈央に対しての生の声。その優しいトーンになぜか瞳の胸がキュッと苦しくなっていく。流星が出ていった後の部屋は、今まであった温もりが抜け落ち、暖かい風が室内に入ってくるのに、急にその空間が広く冷え込んだように思えて、心細い感情が襲ってきた。「嫌だな……きっと私この部屋にいる時はとても幸せだから、誰かにそれを奪われたくないんだわ」頭ではわかっている。女性に慣れたら、流星にはこれから良い人がたくさん現れるはずだし、そうならない今までの方がおかしい。そして、その時までに、この幸せな場から自分は離れる。どうやればこの記憶を閉じ込められるかしら?今後一人で挫けそうになった時に、今度は家の首吊りの過去を見て過ごすんじゃない。この楽しかった過去を見て眠るのだ。この手で、何の物で、何を記憶に残しておけばこの幸せな夢をリピートして眠れるだろう?瞳は手を伸ばして、見た目は他の人と変わらない自分の手の平を見つめた。私は、ここを去る時、またバッグ一つであの玄関を出ていくのだ。バッグの最後の記憶はここを去る時の記憶……もちろん更に遡れば、ここで焼肉を食べたりスマホ見ていた記憶も見つめているだろうけど……幸せな記憶しか残っていない物をたくさん作らないと……ちらっとベッドの上の寝袋が目に入る。今の最高の幸せな気持ちはあの寝袋が全部知っている。流星の過去も、その過去を使って幸せな気持ちに
last updateLast Updated : 2026-10-12
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40 俺好みの女性になる

「いえ、今までも多少はハサミで切り揃えていたので、長さを短くするだけなら……」瞳は切る気満々だ。どうやら髪にお金をかける発想がないのだ。流星は何が何でもそれを止めなければならなかった。「今は格安でカットしてくれるところもあるよ。さすがに自分でカットはやめよう。君は働きに出るんだよ」流星の言葉に、今にもハサミでバサっと切り落としそうだった瞳の行動もピタッと止まった。「……見た目が悪くなると久保田さんにも迷惑かけるかもしれませんね」「そうだよ!きっとそうだと思う。染めるのは手伝ってあげるよ」流星がそう伝えると、瞳はがっかりしたように肩を落とした。「お金かかりますね……」「安いところは探しておくよ。それより雰囲気だよね。尾行や窓口で違和感が持たれない……尾行……するの?」お金の問題だけではなく、富山は何をやらせる気なのか?前も道に迷ったのに……流星は不安になる。人間には向き不向きがある。瞳に尾行させたら、事務所に一人で戻ってこられるのか?「写真を撮ったり指示を送るからスマホに慣れろと言われました」「それは……完全に尾行させる気満々じゃないか」髪を切って化粧を不細工に変えても、この顔の小ささとかスタイルの良さは消せない。尾行には不向きだ。目立つに決まっている。流星の顔は曇り、改めて頭の上から足元まで瞳を見つめ直す。そもそも、化粧で瞳は不細工な顔になれるのか?一重で細目なのをパッチリにすることはできても、最初からパッチリな目を細く見せられるのか?小さな顔に二重顎をつけられるのか?いやもう特殊メイクだ。あまりに無理そうなら久保田課長に無理だと伝えよう。というか、すでに無理な方に一票!瞳はスマホのヘアアレ
last updateLast Updated : 2026-10-13
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