All Chapters of 触れたものの過去がわかる彼女と触れられても全く困らない俺: Chapter 11 - Chapter 20

60 Chapters

11 20年の時を超えて出てきた証拠

「すまなかった。まさか川村が犯人とは思わなかった」流星は、事件の詳細をC県で聞かれた後、職場に戻って来た。 遺留品持ち出しの話は伏せておき、そっと元の棚に戻したから大丈夫だろう。軽く息を吐いたが、今置かれている状況を冷静に考える。自分は、20年前の一家殺人事件の件で、上司から頼まれて有名な千里眼の女性に会いに行きヒントをもらおうとした。 しかし、その女性が、ホシだった川村の行動を言い当ててしまい、犯人だった川村から襲われた。これだけだと特に自身に何かの処罰が下されることはない。そんなのに頼るなんてどうなんだ?という批判的な目とやっぱりあの女本物なんだという驚きの声が突き刺さるだけだ。むしろ、プライベートの時間を使って行ったものであり、気の毒だと言う同情の声の方が多かった。逆に、久保田はそのようなところに部下2名を行かせて、しかもそのうちの1人が犯人で、部下と民間人を襲うという前代未聞の事を起こし、微妙な立場となっていた。「久保田さん、退職を早めるんじゃないか?」そんな声を聞いて、流星は気の毒になったが、何もできない。だが、久保田本人は周囲の声はあまり気にしていないようだ。妻を早くに亡くしてからは、一人で家にいるのが嫌で仕事をしているようなものだと話していた。 少しでも長く警察に留まりたいという思いもなさそうだった。若い頃は、久保田も仲間たちと夜の街を飲み歩くことや、女性と遊ぶ店に繰り出すこともあったようだが、それらもやめたらしい。 派手な遊びもしないなら、老後のお金もたくさんあるのだろう。流星も、お金に困らない生活をしてみたいものだと考えた。ただ、流星も夜の街には出ない派だ。 以前、勤務地の交番が夜の街の中にあった。 色んなトラブルを見てからは、プライベートで間違えても行きたいとは思えない。顔見知りも多い。久保田の未来は、自分の未来だろうか?そんなことを思いながら、話を続けていく。「私の命令で恐ろしい目にあわせてしまった。これが職務だ
last updateLast Updated : 2026-09-18
Read more

12 会いたかった彼女がそこにいる

「あれ?この鉛筆って、亡くなった男の子が持っていたものと同じ物ですか?」流星は、川村にすり替えた遺留品を渡す時に、鉛筆を一生懸命同じ長さに削って、少し古く見せるために木に水を含ませたりして工夫したのでとても印象に残っていた。うちの備品と同じ鉛筆だったから、うまく誤魔化せたはずだった。「遺留品の鉛筆とは別ですよね。同じ鉛筆が占い師の元にも運ばれるなんて?」「これなんだが、昔からうちの警察の鉛筆の備品はこの種類なんだよ」「20年変わってないんですね」「鉛筆だから、メーカーを変える理由もそんなになくてな。それで、仕事でポケットに鉛筆を入れたままにしてしまうことってお前もあるだろう?これは川村が使っていた鉛筆だ。指紋は堂前のものはなく、川村のものが検出された。」「同僚の妻が不倫相手のものだと夫が触れていない鉛筆を持って来たわけですか……」絶対とは言えないが、証拠品の一つにはなるだろう。「川村が遺留品を持ち出すときに、血のついていないものや事件と関係なさそうなものを探し出していたと倉坂瞳が話しています。もしかして、不倫に関係しそうなものも除去していたのかもしれませんね」瞳の能力を眉唾ものと思っていても、後ろ暗い人間の心理はわからない。結局、事件現場から離れた場所に転がった血のついていない鉛筆を選んだのは、もしも犯人だとバレたらという恐怖からのものだったのだろうか?流星はもう一度その鉛筆を見てあっ!と悲鳴をあげた。「俺、痛恨のミスしました。遺留品として川村に渡したものは2Bにしてしまってました。今、HBって使わないから……」最近はHB鉛筆が使われず、備品も2Bになっていた。鉛筆の塗装とメーカーのマークで判断してしまった。久保田は、なにやってんだとため息をつきながら、頭をポリポリとかいた。「遺留品のすり替えに気づいて、川村はお前をつけていたのかもしれないな。あと、倉坂瞳だが……」「あ、そうです!あの後のことが気に掛か
last updateLast Updated : 2026-09-19
Read more

13 彼女を部屋に入れる理由

「あ、あの、汚い部屋だけど……」そう言って玄関ドアを開けようとした流星は、ふと動きが止まる。待てよ……俺の周辺は、まだいろいろ聞きたがるマスコミがやっと消えつつある状態だ。正直、瞳とのことを面白おかしく記事に書かれたらどうする?彼女にも迷惑をかけることになるし、自分も色々聞かれたくない。かといって、こちらに問題があって彼女が追い出されたのは事実だし、顔色も悪いし、すぐ部屋で休ませてあげたい。いや、待てよ!とはいえ、さあどうぞと家に入れるのは危険すぎないか?もし、彼女に襲われたとか、何か言いがかりをつけられたら?「ちょ、ちょっと待って!」流星は、玄関ドアに手をかけたまま固まってしまった。どうしよう。アパート追い出された瞳の状況を知っている。そして、彼女は今、明らかに荷物を持って困っている。しかもそれは、自分の責任でもあった。ちらっと流星は瞳を見た。瞳は、流星の考えたことが分かったのか?「実は私……あの後、気がついたら病院にいまして帰ったら大家に追い出されたんですよ……理由は、言わなくてもご存知ですよね」ジト目で、真正面から流星を睨むように見つめてくる。「……そ、そうなんですか……」(ええ、俺のせいです。知っておりますとも……)じーっと瞳に無表情で見られて、何とも言えない圧力が……これは恨まれているよな。正当な対価と引き換えに、体調を崩しながら力を使った結果、目覚めたら顧客同士が刃傷沙汰のトラブルを起こした。それなのに、何もしていない彼女がトラブルを起こしたと部屋を追い出されてしまったのだ。更には、テレビ、週刊誌で顔まで出されてしまった。「ええと&hellip
last updateLast Updated : 2026-09-20
Read more

14 母から子への連鎖

14 母から子への連鎖「えっ!いきなり夜の街へ?」話を聞いて流星は驚くが、瞳にはそれなりの訳がある。一つは母、愛の存在だ。悔しいが、瞳は愛の生き方しか見たことがない。占いとクラブやスナックで働いて、お金を稼いでいた愛。愛は、子連れだった事や、交際している男を連れ込むために個人で家を借りていた。しかし、店が手配した家に住んでいたホステス仲間が、何度か愛の元に泊まりに来ていたのを覚えていたのだ。「その手の店には、住み込みのある所があります。私は、この能力で騒がれた時期があり、中学もまともに出ていません。就くことが出来る仕事は限られます。ですが、お客様を良い気持ちにさせることが出来ないみたいで。結局、相手を怒らせクビになりました」瞳は店を追い出されたことを告げ、流星の前でぽろりと涙をこぼした。情けない……あの母にだってできた仕事が私はできない。男をひっかえとっかえすることを軽蔑していたのに、ひっかえとっかえどころか相手を怒らせてしまった。「えっ、でも君の顔立ちなら、静かに微笑むだけでも喜ぶ客がいそうだけど?」「いえ、それが人に触られるのが苦手なのです。意識しなくても、その手や体、物の見てきた過去が、勝手に見えてしまうことがあります」瞳はその時のことを思い出し、顔つきが嫌悪という形で思わず歪む。「最初のお店は、手を触れられた瞬間、隣に座っているホステスのゆかりさんとそのお客様の濃厚なベッドシーンが見えてきました。いえ、その手の歴史ですのでその感覚とか……」「うわぁ」それを思い出し、瞳は再びボロボロ涙が溢れてきた。なんで、男の人の経験もないのに、男側の触った感覚を味わわなければならないのか……流星も、慰めるために手を伸ばそうとしたのだろう。それを聞いて瞬時に引っ込めてもじもじする。「多分、リアルにその経験が直近だったからだとは思うんです。同伴もですが、お二人は世にいうセフレの関
last updateLast Updated : 2026-09-21
Read more

15 逃げても追ってくる人たち

「それはよく逃げてきたよ」流星は、目の前でポロポロ涙を流す瞳に、気の利いたことも言えなければ、慰める具体的な行動も取れず情けなくなる。せめて、今後のことだけでも協力したい。間違いなくそのきっかけを作ったのが自分であることは、骨身に染みるほど痛感していた。「夜の街がダメなことはよくわかった。ただ、今後の生活のことを考えないといけないよね」瞳は、悪目立ちするぐらい可愛い整った顔立ちをしている。おそらく触れられる範囲なら、彼女に触れてみたいと思う男は多いだろうし、客という垣根を超えてもっとお近づきになりたい男もいるだろう。だが、そんな性的な思惑で触れられたらアウトなのだから、水商売は潔く諦めた方がいい。「ちなみに、今お金はどのくらいあるの?」「細々と貯めたお金とその店でもらった1万円から電車代を引いた残りですね」そう言って差し出して見せた小さながま口財布に少しだけ……千円札数枚と小銭……合わせて1万もあるかどうかだ。さらには、手荷物も少なすぎる。ちらっと持って来たバッグに視線を移し、瞳の物の少なさを知り、流星は唖然とした。「家を借りるにしても、敷金礼金足りないな。やっぱり、どこかに居住地を決めないと、行政サービスも受けられないぞ」「それが……住所を決めてしまうと、あなた方のように相談に来る人が絶えないんです」そう瞳に軽く睨まれて言われると、流星はぐっと言葉に詰まり、偉そうにいう資格などなかったと項垂れた。そうだ……俺たちは、瞳が逃げ回っているのを知りながら、わざわざ探し出してまで追いかけた張本人じゃないか。考えれば考えるほど、瞳に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。「……そうだな。俺たちみたいな奴がそうやってたくさん来るんだよね」瞳は、わかってくれましたか?と苦笑いして頷いた。「そうですね。最後の手段として藁にもすがるような気持ち
last updateLast Updated : 2026-09-21
Read more

16 彼女に胃袋を掴まれた

「占いは、自分にとって都合のいい言葉を告げてもらって、後押ししてもらいたいというその人の願望でもあるからね」流星も顔を曇らせて、瞳の話に眉を下げた。「はい、当時は5歳でしたから、本当に何も考えずに見たままを伝えてしまいました。でも、今も根本的に考えは変わっていないんです。やはり真実に基づいた話を中心に伝えています」「それは、真剣な相談じゃない時でも?」「そうですね、今までは温泉街で占いで細々生計をたててましたけど、少ししか能力は使いませんし、深刻なものもありません。一見さんばかりですからね。ただ、それでも真実に基づいた話をするように心がけています」「そっか……真面目だな」ここまでの行動を見ていて分かったが、瞳は融通が効かず不器用だ。お金をもらう限りは、倒れようと苦しもうと真実を探しにいく。そして、相手が望まない答えでも、それを告げるのだ。「言いたいことは分かってます。占いなら外れてもいいんです。でも、目の前に真実が見えていたら……それが、不幸になるとわかって都合のいい耳に心地の良い言葉を紡ぐのは詐欺のような気がしてしまうんです」「それが君の優しさなんだと思う。嘘を言っても責められない。でも、嘘をつくことで、その人が不幸になるのに目をつぶらないのは、相手を思い遣ってのことだろう?俺はそういうの嫌いじゃないよ」流星はそう呟いて、ん?と固まる。俺、今さりげになんて言った?「あ、あの!嫌いじゃないというのはそういうプロ姿勢というか……」慌てて、どう訂正するのが誤解を招かないのかパニックになる。それをキョトンとした顔で瞳は見て、思わず吹き出した。「大川さん、気を遣ってくださりありがとうございます」ツボに入ったのか、しばらく瞳は肩を震わせて笑っていた。「え、そんなにおかしい?」「いえ……ちょっと警察署の喫煙所の話を思い出して……いえ、こちらの話です。」
last updateLast Updated : 2026-09-22
Read more

17 まさかの出会いの神様は?

少しすると瞳が机の上に温かいごはんと味噌汁、卵焼きと野菜炒めにお浸しを並べていく。「あの……本当に簡単なものしか作れなくて、がっかりさせたらごめんなさい」「いやいや、すごい美味しそうだよ。しかもこんなに短時間で何品も作るなんて凄いよ」目も心も満たされる和風の食事。しかも、いつも食事相手はスマホだったのに目の前に人がいて、こんな美女と会話をしながら食べられるなんて……ああ、神様!俺と瞳さんを救ってくださりありがとう!流星がそう心の中で拝むと、あの怒鳴り込んできた大家のサムズアップな顔が流れる。瞳にとっては碌な大家ではないが、あの人がいなければ出会っておらず助かってもいない。そんな流星の様子に気づくこともなく、瞳はご飯を見てうっとり両手を組み合わせる。「いただきましょうか?うわあ、段ボールじゃない机って久しぶりかも」机に並べられたご飯を前にそんな話を聞くと、あの瞳の部屋にあったダンボールに布をかけた机を思い出す。だがダンボールとまでは言わないが、流星の家の机もお互いが頭を下げたらゴッツンしそうになる距離だ。そんな近距離で女性と向かい合って食事をするだけで、動揺するなというのが無理だ。流星はお茶をドボドボ注ぎながらひたすら冷静に、冷静に、冷静に!と心で連呼し始めた。「大川さん、お茶こぼれてますよ」すぐ、こぼれたお茶を布巾で拭く瞳。だめだ!冷静になっても、胃袋も心も鷲掴みされてる。おかしいことは分かっても、軌道修正が出来ない。その後、二人で「いただきます」と手を合わせる。この距離感で!流星は、いよいよ持っている箸がカタカタ震え始めた。気の利いたことを言わなければ……ダメだ頭が真っ白だ。作ってくれてありがとう?素敵なご飯だね?ああ!こういう時なんて言って女性を喜ばせたらいいんだ?「熱々って美味しいですね。久
last updateLast Updated : 2026-09-22
Read more

18 一言言ってやらないと気が済まない

少し前に遡る。瞳が、風俗業の男たちに追われ、電車で「大川流星」の名刺の存在を思い出した後のことだ。瞳は、大家から荷物を押し付けられたバッグに入っていた名刺を持って、わなわな震えていた。「こんな男!!なんて疫病神!だから彼女が出来ないのよ!」一言文句を言ってやらないと済まない。あんな奴を一瞬でも、良い人のように感じた自分がバカだった。川村に気をつけろなんて言わなきゃ良かったのよ。「本当に、なんで私が追い出されなきゃならないのよ……」八つ当たりなのはわかっている。私が無事なのは、彼が守ってくれたからだろう。でも……許せん。怒りの炎がメラメラ燃えて、とりあえずこいつに文句を言うという目標を立てた。そして、自分のこれからの身の上をせめて知ってくれと思う。どうせ文句を言ったところで門前払いだろうけど……「それが終わったら、ネットカフェで生活していくしかないかな……」揺れる電車の中で、瞳は名刺から少しでも「大川流星」と言う男の情報を得ようとした。「なんかセキュリティの前で話をしている……セキュリティは0123……そんな単純な番号でいいのかしら?で……どこに住んでいるのか……」女性と話している流星は、名刺を持ったまま、その女性の持ってきた書類に印鑑をついている……がん保険……契約書……こっちは普通の保険料を確保するだけでも一苦労なのに、さらに保険まで充実とはね。ますます、一言文句を言ってやらないと!いやどうせ無理でも、お前の家に入れろぐらい言ってもいい気がする。だって向こうだって一方的に家に来て、最初なんて無料で能力を使えって押しかけてきたんだからね。鼻息荒く、
last updateLast Updated : 2026-09-23
Read more

19 何も起こらない部屋

「お邪魔します」初めて、流星の部屋に入った時、瞳の最大の関心事は、流星こだわりのおしゃれで、ロフトまである室内ではなかった。それよりも瞳にとっての重大事項。床に手をついて、思わず天井を見つめる。台を持ってきて、天井に紐を吊るす人もいない。切羽詰まった男女が、心中をするために首を絞め合うこともなければ刺しあうこともない。孤独死でゴミに塗れながら腐っていく遺体すらない。つまりここは、瑕疵物件ではないんだわ。入った早々、家の歴史を見なくても済むのは、精神的に楽だ。瞳は、ばああっ!と思わず笑みが浮かんだ。そういえば、エントランスや建物の壁は古びていない綺麗なものだった。ここは、新築なのかもしれない。ぐるっと、周囲を伺ってホッと一息吐く。(それだけで、最高の部屋だわ)「今日は暑かったでしょう」流星が、普段使いのマグカップに入れた麦茶を運んできてくれたので、慌てて正座する。空腹も感じていたが、気づけば喉もカラカラだ。瞳はありがたくいただき、一口だけ喉を潤そうとした。しかし、そのひんやりとした麦茶が、長く何も入れてなかった胃に吸い込まれるように入っていく。あっという間にそのマグカップは空になった。触れたマグカップは、流星に大切に扱われていた。マグカップは、お茶だけでなくコーヒーや紅茶が入れられることもある。そして、毎日流星が洗って布巾で拭いている姿が見える。丁寧な暮らしが心を癒していく。「美味しいわ……」それだけで、安心して、一気に疲労感が襲ってきた。ふらっとして、思わずお茶が置かれていた机に手が触れた。そこで、瞳は瞬時に固まってしまった。上半身裸の流星がそこを歩く映像が、瞳の頭の中に浮かんできたのだ。しまった。手を離さないと!そう思ったのだが、そこで終了する。性格の問題なのか、部屋のあちこちで着替えることはな
last updateLast Updated : 2026-09-23
Read more

20 ここにいてはダメですか

その後、瞳はゆっくりお風呂に浸からせてもらった。ちゃぷんと浸かると、ほのかに甘い桃の入浴剤を入れてくれたらしく、心の緊張が解けていく。本当に……ここまで気の利く人にどうして彼女がいないのか?瞳にとって、風呂も良い記憶はない。だが、事故物件あるあるの手首を切っている人は、ここにはいない。新築は最高だ!更には、お風呂あるある……男女の、情事のアレコレは……これが、どこの借家でもホテルでも、イチャイチャしているので困るのだ。リアルなAVを目の前で見ている感じになる。「本当にこの家には、女性の影が……おっと……ダメダメ!」流石に、流星が風呂に入る姿がチラッと見えて、風呂の手すりから手を離した。「あ……ぶない。うっかり全てを見てしまうところだったわ」本当に、風呂でイチャイチャしている流星と女性の姿が皆無なことは分かった。だが、今度は明らかに自分がおかしい。犯罪者のようだ。風呂なんだから全裸に決まっているじゃないの。うっかり全身……見た?かもしれない。目をぱちぱちさせて、一瞬先ほど頭に入ってきた情報を巻き戻しそうになる。ぶんぶんぶん!頭を振り、自身に言い聞かせる。大切なところは湯気で隠れていた。きっとそうだ。そう思うことにする。そうに違いない!「風呂すら、彼女がいない家って安心なんだわ」その日、こんなに穏やかな気持ちでお風呂に浸かったのは何年ぶりだろうと安らぎを覚えずにはいられなかった。ボロボロになった普通のパジャマを着て、お風呂から上がると流星が袋に入って巻かれた寝袋を持って立っていた。「ロ、ロフト使って……ええと、俺のもので悪いんだけど、布団がなくて……山登りの時の寝袋を
last updateLast Updated : 2026-09-24
Read more
PREV
123456
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status