場所は地下鉄に向かう途中の階段――の、踊り場にある関係者以外立ち入り禁止の立て札があるドア。 「こ、これは……っ!」 ドアの向こうに広がっている世界を見て、私は言葉を失った。 普通こういうのは細長い通路が連なって、中の事務室へと繋がっているものだ。面白くもなんともない。 しかし眼前に広がるのは、まるで銀行の金庫のように巨大で、重厚で、それでいて何者をも通さないという悪意に満ちた、壁。 「これは……鉄道会社のものじゃない。これは……この作りは……」 私は震える声で、ぼそりと。 「これは、シェルターだ」 凄まじい悪意を感じる。人を殺すという殺意すら伝わる。 選ばれた者だけを助け、他は誰一人許さないという尋常あらざる敵愾心。 そんなオーラが扉から胸焼けするほどに漂っているのだ。 「じゃあ、あのニュースは……ニュースは……っ!」 彗星は、衝突する。 そして目の前にあるのは――選ばれし者だけが助かるための、秘密の部屋。 どくんどくんと心臓が怪しく高鳴る。私は何度も深呼吸をして、心を落ち着かせた。 そして子供たちに向かい、しゃがみ込んで、 「ねえ、みんな。よく聞いて」 優しい笑顔を振りまいた。 「うん」「なあに?」「なんでもいってよー」「はーい」「え?」「どしたの?」 「ここでかくれんぼしよう。それでこの扉が開いたら、中に入っちゃって」 「え?」「いいの?」「わーい」「うん!」「たのしみー」「えへへ」 「よし、決まりだね」 私はそう言うと立ち上がり、そっと非常階段のドアを閉めた。 子供たちが、もう二度と外に出ることのないように。
Last Updated : 2026-09-26 Read more