Tous les chapitres de : Chapitre 31 - Chapitre 40

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第30話 「私が正しいと思ったせいで、あの子たちを壊すところでした」婚約を望んだ叔母の告白

 文化祭まであと八日となった朝、私はいつものように店の厨房から漂ってくるバターの匂いで目を覚ました。昨夜は西園寺綾乃さんから、紛失していた家紋入りカードが叔母の西園寺冬香さんのものであり、その冬香さんが四日前に九条グループ本社で長谷川雅臣さんと会っていたと知らされたので、もっと眠れないかと思っていたのだけれど、意外にも身体はいつもの時間までしっかり眠っていたらしい。 ベッドの上でスマートフォンを確認すると、午前六時を少し回ったところで綾乃さんからメッセージが届いていた。『今日の夕方、父と一緒に冬香叔母様から話を聞くことになりました。私も同席します。何かわかれば、私から話せることはお伝えします。ただ、叔母様を最初から犯人だと思っているわけではありません。それだけは先に紗季さんにも伝えておきたくて』 その最後の一文を読んで、私は少しだけ安心した。 綾乃さんの家でなくなったカードが脅迫のような封筒の受け渡しに使われ、西園寺家と九条家の婚姻を強く望んでいた冬香さんが、その直前に長谷川さんと会っている。並べてしまえば疑わしい材料ばかりだけれど、疑わしいことと犯人だと決めることは同じではない。「みんな、だんだん『決めつけない』が上手になってきたなあ……」 呟きながら返信を打っていると、開けたままになっていた部屋の扉から母が顔を出した。「紗季、起きてるなら下りてきなさい。今日、叔父さんが寝坊してる
last updateDernière mise à jour : 2026-09-11
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第31話 昔の名簿に、毎日そばにいる人の名字がありました

 文化祭まであと七日となった朝、私は目を覚まして最初にスマートフォンを確認し、それから自分でも少し嫌になった。以前なら起きて最初に見るものといえば天気予報か友達からのメッセージくらいだったのに、最近は「夜中に九条家で何か起きていないか」を確認することが習慣になりつつある。幸い、黒崎さんから緊急の連絡は来ておらず、篠宮君から届いていたのも『おはよう。昨日はちゃんと眠れた?』という普通のメッセージだけだったので、私はベッドの上で少し安心しながら『眠れたよ。そっちは? 朝から私の睡眠時間まで管理し始めたら怒るからね』と返した。 数分もしないうちに返事が来た。『管理はしない。ただ、昨日は西園寺家のこともあったから心配だった。俺も眠れた。それと、今日は学校で話したいことがある』 最後の一文を見た瞬間、せっかく落ち着いていた気持ちが少し重くなる。『良い話?』『たぶん、あまり良くない。でも悪いと決まった話でもないから、学校でちゃんと説明する』 ずいぶん慎重な書き方だった。 以前の篠宮君なら、私を心配させたくないからと何も言わず、学校へ来てから突然重大な話を始めていたと思う。それに比べれば、「良くないかもしれない話がある」と先に伝えてくれるだけでもだいぶ違う。 朝食の席で母へそのことを話すと、母は焼いたパンへジャムを塗りながら呆れた顔をした
last updateDernière mise à jour : 2026-09-12
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第32話 「誰かを好きになることまで、最初から禁止されていたの?」御曹司の人生を決めた古い計画書

  文化祭まであと六日となった朝、私は教室の扉を開けた瞬間、いつもならこちらへ顔を上げる篠宮君が珍しく窓の外を見たまま動かなかったので、昨夜から何かあったのだとすぐにわかった。ぼさぼさの髪も黒縁眼鏡も、少し猫背にした姿勢も普段と変わっていないけれど、付き合い始めてから彼の機嫌や迷いが以前よりわかるようになったせいか、何も言われなくても「今日は普通じゃない」と感じる。「おはよう、篠宮君。朝から難しい顔してるけど、昨日の続きで何かわかった?」 私が鞄を机の横へ掛けながら尋ねると、篠宮君はようやくこちらを向いた。「おはよう、高梨。話したいことはある。でも、朝から聞かせていい話か迷ってた」「それを決めるところから私に聞いてよ。内容も知らないのに、聞くかどうか決められないでしょう」「そうだった。ごめん」「謝るほどじゃないよ。それで、何があったの?」 篠宮君はスマートフォンを取り出したものの、画面を見せる前に一度手を止めた。「十九年前に旧家政評議会の資料が持ち出されて、そのまま行方がわからなくなってることが判明した。その中に、俺について書かれた個人記録もあったらしい」「十九年前って、篠宮君が生まれるより前じゃない?」「正確
last updateDernière mise à jour : 2026-09-13
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第34話 「先生まで疑わなきゃいけないなんて嫌です」それでも文化祭は、もう止めたくありません

 文化祭まであと四日となった朝、私はいつもより少し早く目を覚ましたものの、すぐにはベッドから起き上がれなかった。昨夜、篠宮君から聞いた御影清隆という元大学教授の話だけでも十分に気分が重かったのに、その御影さんから「長谷川雅臣が連絡を取っていた相手を先生と呼んでいた」「その人物から文化祭実行委員の配置を受け取ったようだった」と聞かされたことで、今度は毎日顔を合わせている学校の先生たちまで疑う必要が出てきたからだ。 佐伯先生は篠宮君の正体を知ったあとも、文化祭を中止するのではなく安全に参加する方法を学校側と考えてくれた。莉奈が管理する文化祭アカウントに脅迫めいたメッセージが届いた時も、生徒だけで抱え込ませず、自分が前へ出て対応してくれた。教頭先生も松田先生も何度も小会議室で話し合いに参加しているし、学校側として私たちを守ろうとしてくれているようにしか見えない。 それでも、「先生」という一言だけで完全に無関係だと言い切れなくなってしまった。 スマートフォンを見ると、篠宮君からすでにメッセージが届いていた。『おはよう。昨日の話で眠れなかった?』 私は少し考えてから返信した。『普通に眠れたけど、起きてから考えすぎてベッドから出たくなくなってる。そっちは?』 すぐに返事が来る。『俺も似た感じ。でも今日は学校へ行く。佐伯先生たちにも普通に
last updateDernière mise à jour : 2026-09-15
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第35話 「お義姉様って呼ぶのは、まだ早いですか?」御曹司の妹が交際を正式に確認しに来ました

 文化祭まであと三日となった朝、私は教室へ入る前に一度だけ廊下の奥へ視線を向けた。昨日までなら何となく見ていた職員室の前なのに、松田先生のアカウントから夜遅くに文化祭実行委員のシフト表へアクセスした記録があったと聞いてしまったせいで、今日はそこを通る先生一人一人が妙に気になってしまう。 自分でも嫌になるくらい意識していると、ちょうど職員室から松田先生が出てきた。「おはよう、高梨。朝から廊下の真ん中で難しい顔してどうした。文化祭の準備が間に合わないなら、今日も美術室のラミネーター貸すぞ」「おはようございます。いえ、昨日でだいたい終わったので大丈夫です。あと、前に借りたやつも壊してませんからね」「それならよかった。莉奈に『神です』って持ち上げられた直後に壊されたら、神としての寿命が短すぎるからな」「先生、自分から神って言わないでください」「言い始めたのはそっちだろう。まあ、今日からは新しい物を増やすより、今あるものがちゃんと動くか確認するほうを優先しろ。直前三日で余計なアイデアを出すと、だいたい誰かが泣くことになるから」 いつもの松田先生だった。 文化祭前になると廊下を走り回り、頼まれてもいないのに足りない備品を見つけて持ってきて、他のクラスの生徒からまで「松田先生、これどうすればいいですか」と捕まっている先生にしか見えない。
last updateDernière mise à jour : 2026-09-16
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第36話 「松田先生が、十九年前から蓮司を知っていた?」信じたかった先生の名前が、古い計画書にありました

 文化祭まであと二日となった朝、私は家を出る直前に黒崎さんから届いたメッセージを見て、玄関で靴を履きかけた姿勢のまましばらく動けなくなった。内容は詳しい事情を文字で送れるものではなく、「登校後、篠宮様とともに佐伯先生から説明を受けていただきたいことがございます。現時点で高梨様に直ちに危険が迫っているわけではありませんので、普段通り登校してください」とだけ書かれていたのだけれど、ここ最近の経験から、それが決して軽い話ではないことくらいはわかってしまう。「紗季、靴履くのに何分かかってるの。店の開店準備もあるんだから、玄関塞がないで」 後ろから母に言われ、私はようやく振り返った。「黒崎さんから、学校へ着いたら佐伯先生と話してって連絡が来た」「何かあったの?」「詳しくは書いてない。ただ、すぐ危険ってわけじゃないみたい」 母は一瞬だけ心配そうな顔をしたものの、私のスマートフォンを覗き込もうとはしなかった。「なら学校へ行って聞いてきなさい。帰ってから私にも関係する話なら教えてくれればいいし、今ここで想像だけ膨らませても何もわからないでしょう」「お母さん、最近そういうの慣れすぎじゃない?」「慣れたくはないけど、紗季が毎回深刻な顔してるから、こっちまで一
last updateDernière mise à jour : 2026-09-17
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第37話 「明日の文化祭、逃げずに来てください」疑われた先生が、私たちに頭を下げました

 文化祭前日となった朝、私はいつもより早く目を覚ましたものの、布団から出る前にスマートフォンを見ることはしなかった。ここ数日は目を開けるたび、九条家から新しい問題が見つかった、学校で不審な記録が出た、知らない番号から妙なメッセージが届いたという話ばかりだったので、せめて起きて最初の五分くらいは何も知らない普通の高校生でいたいと思ったからだ。 ところが、顔を洗って制服へ着替え、ようやくスマートフォンを手に取ると、昨夜十一時過ぎに篠宮君から届いたメッセージが一件残っていた。『起きてからでいいから読んで。松田先生について新しいことがわかった。十九年前に御影先生の研究を手伝っていただけじゃなくて、最終試験の草稿を書いた可能性がかなり高い。ただし、今の事件に関与している証拠はまだ確定していない。今日、学校側が本人へもう一度話を聞くことになった』 読み終えたところで、思わず長く息を吐いた。 昨日の時点でも十分怪しかった。それでも心のどこかでは、「昔たまたま御影さんの研究室にいただけかもしれない」「十九年前と今では考え方が変わっているかもしれない」と思いたかった。 最終試験。 大切な相手か、後継者としての地位かを本人に選ばせるという、今まさに私たちへ突きつけられている二択と同じ発想を、若い頃の松田先生が書いていた可能性が高い。 それでも、まだ現在の犯人だとは決められない。
last updateDernière mise à jour : 2026-09-18
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第38話 「今日だけは篠宮蓮でいさせて」御曹司と迎えた、最初で最後かもしれない文化祭

 文化祭当日の朝、私は目覚まし時計が鳴るより二分ほど早く目を覚まし、枕元に置いていたスマートフォンへ手を伸ばしかけてから、昨日決めたことを思い出して一度手を止めた。何か起きているかもしれないから確認したいという気持ちはあるけれど、起きた瞬間から九条家や脅迫のことばかり考えていたら、せっかく何週間も準備してきた文化祭まで始まる前から相手に奪われるような気がしたので、まずカーテンを開け、顔を洗い、制服へ着替えてから確認することにした。 それでも完全に平静というわけにはいかず、制服のリボンを結び直しながら時計を三回も見てしまった。今日は七時四十分に、学校へ向かう途中のコンビニ前で篠宮君と待ち合わせをしている。付き合ってから学校の外で待ち合わせること自体は初めてではないけれど、「文化祭へ一緒に登校する」というだけで、なぜか普段の寄り道より少し特別に思えた。 ようやくスマートフォンを確認すると、黒崎さんから深夜に一件だけメッセージが届いていた。『校内設備の確認を完了いたしました。複数の不審機器を回収しており、学校側と協議のうえ文化祭は予定通り実施されます。ただし本日は警備上の指示へ必ず従ってください。詳細につきましては登校後、蓮司様とともにご説明いたします』 文化祭はやる。 その一文だけで、思っていた以上に安心した。「よかった……」 思わず声に出したところで、開いていた部屋の扉から母が顔を出す
last updateDernière mise à jour : 2026-09-19
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