第51話 証拠の箱と、名前の箱 証拠は、思ったより場所を取る。 俺は、それを今朝になって知った。 データなら場所を取らないと思っていた。 画像。 ログ。 スクリーンショット。 動画のURL。 投稿時刻。 DMの受信時間。 古い夜更かしから届いた資料。 真柴さんが整理した時系列表。 全部、画面の中に入っている。 だから物理的には場所を取らない。 そう思っていた。 だが、違った。 証拠は、机の上に出てくる。 外付けドライブ。 紙ファイル。 付箋。 日付を書いた封筒。 印刷した一覧表。 記録シート。 ペン。 間違えて置かれた昆布おにぎり。 さらに、なぜか八百屋から届いたトマト。 場所を取る。 かなり取る。 喫茶こもれびのカウンターは、喫茶店というより小さな事務所みたいになっていた。 いや、事務所というより、証拠と白湯と商店街の野菜が共存する謎の作業場だ。「これ、もう喫茶店じゃなくない?」 芽衣が言った。 今日の彼女は、補給袋と一緒にラベルシールを持ってきていた。 日向弁当で使うやつらしい。 白いシールに、太い油性ペンで文字を書いている。「喫茶店です」 俺は答えた。「カウンターに外付けドライブとトマト並んでる喫茶店、なかなか攻めてるよ」「トマトは俺のせいじゃない」「証拠も悠斗兄だけのせいじゃない」「それはそうだけど」「白湯は?」「それは&hell
Last Updated : 2026-10-08 Read more