第41話 古い夜更かしからの資料 資料、という言葉は乾いている。 紙の匂いがする。 ファイル名がついていて、日付があって、どこか感情から遠い場所に置かれている気がする。 だが、古い夜更かしから届いたそれは、乾いていなかった。 むしろ逆だった。 開いた瞬間、ずっと昔に燃えたはずの夜が、まだ煙を吐いているのが分かった。 朝の喫茶こもれびは、開店前から重かった。 窓の外では、八百屋の親父さんがトマトの箱を並べている。 日向弁当の方からは、揚げ油の音がかすかに聞こえる。 ゲームセンターのシャッターは半分だけ上がり、いつもの古い筐体の光が、眠そうに床を照らしていた。 世界は普通に朝をやっている。 それなのに、こもれびのカウンターの上には、俺の過去が置かれていた。 スマホの画面。 古い夜更かしからのDM。古い夜更かし:おはようございます。昨日の続きです。資料を送ります。見たくないものもあると思います。すぐに全部見なくても大丈夫です。でも、消さずに残しておいてください。 その後に、いくつかの画像と、テキストファイルが送られていた。 俺は、まだ開けずにいた。 コーヒーも淹れていない。 白湯だけがある。 こはるは窓際の席に座っている。 今日は声を使わない。 昨日も使っていない。 真柴さんの業務指示は継続中だ。 ホワイトボードには、短くこう書かれている。【無理なら、見なくていいです】 芽衣は、開店前の日向弁当から抜けてきた。 手には補給袋。 顔は真剣。 髪は少し跳ねている。
Dernière mise à jour : 2026-09-28 Read More