All Chapters of 炎上して全てを失った元ゲーム実況者の俺、田舎の寂れた商店街で“推しの中の人”を拾う 〜無口な天才VTuber少女と始める: Chapter 61 - Chapter 62

62 Chapters

第61話 後戻りできない資料

第61話 後戻りできない資料 翌朝、俺はこはるの顔をまともに見られなかった。 理由は分かっている。 昨日の夜、こはるが俺を呼んだ。「……悠斗さん」 たった五文字。 声としては、かすれていた。 小さかった。 たぶん、配信で使っていた月乃こはねの声とはまるで違う。 それでも俺には、耳の奥に残るには十分すぎた。 朝、コーヒー豆を量っている最中にも思い出した。 カップを洗っている時にも思い出した。 店先の五つのトマトを見た時にも、なぜか思い出した。 五つのトマトと「悠斗さん」に何の関係があるのかは分からない。 ただ、思い出した。 人間の脳は、時々まったく関係ないものを同じ箱に入れる。 たぶん今の俺の頭の中には、「白湯」「トマト」「悠斗さん」「照れ逃げ顔」が一緒の棚に入っている。 最悪だ。 こはるも、明らかにおかしかった。 窓際の席に座っているが、いつもより少し姿勢が硬い。 白いパーカーの袖を指先まで引っ張り、ホワイトボードを膝に乗せている。 俺が白湯を置きに行くと、彼女は一瞬こちらを見て、すぐ目をそらした。「白湯、置いとく」 俺が言うと、こはるは小さく頷いた。 そして、ホワイトボードに書く。【ありがとうございます】 いつもの文字。 いつものやり取り。 なのに、昨日の声が間に挟まっているせいで、どうにも落ち着かない。 俺は意味もなくカップの向きを直した。 こはるも意味もなく白湯のカップを少し回した。 二人して、白湯の周りで不審
last updateLast Updated : 2026-10-18
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第62話 出せば終わると思った

第62話 出せば終わると思った 出せば終わると思った。 いや、正確には、出せば終わってほしかった。 昨日、古い夜更かしから届いた資料。 暴露系Aと神谷レン側の現在の連絡ログらしきもの。 そこには、俺たちの言葉が「材料」として扱われていた。「白湯側が声明出した」「周辺で疑問形にして投げる」「本人は心配ポジ維持」「“対話拒否”と“証拠ちらつかせ”の線でいける」「“個人同士の連絡や対話を材料にするな”はこっちに刺さるから、先に“説明責任”で上書き」 心配ポジ。 説明責任で上書き。 疑問形にして投げる。 それは、人間の言葉というより、広告の配置図みたいだった。 誰かの苦しみがある。 それをどう切るか。 どう置くか。 どのタイミングで出すか。 本人は触れない方がいい。 周辺で投げる。 疑問形にする。 心配の形にする。 吐き気がした。 それと同じくらい、胸の奥が熱くなった。 怒りだ。 ずっと昔から、俺の中に置きっぱなしだった怒り。 クロユウとして炎上した時、俺は怒ることすらうまくできなかった。 怒れば「逆ギレ」と切られる。 黙れば「逃亡」と切られる。 説明すれば「言い訳」と切られる。 謝れば「やっぱり悪かった」と切られる。 何をしても、切られた。 切られて、並べられて、見世物にされた。
last updateLast Updated : 2026-10-19
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