天寿を全うしたら美少女閻魔大王に異世界に転生を薦められました。~戦国時代から宇宙へ~ のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

60 チャプター

第20話 堺に買い出し!

第20話 堺に買い出し! 九州征伐の日が近づく中、龍之介は戦支度を改めて見直していた。 転生の際に持ち込んだ愛刀『童子切安綱』は、天下に名高い名刀であり、その切れ味にも不満はない。しかし、戦場で刀を失ったり、刃こぼれによって使えなくなったりする可能性まで考えれば、実戦へ持ち込める予備の刀が必要だった。 三上家の家宝である金太刀『金胴鳳凰宝相華文兵庫鎖太刀』もあったが、こちらは朝廷の儀式や正装の際に佩くためのものである。華麗な装飾が施された貴重な太刀を、泥と血にまみれる戦場へ持ち出す気にはなれなかった。「童子切だけに頼るのは、やはり心許ないな。九州へ渡る前に実戦向きの刀を一本手に入れ、家臣たちの武具も見直しておいたほうがよいだろう」 龍之介が望めば、堺の商人たちを嵐山の屋敷へ呼びつけ、刀や武具を並べさせることもできた。正二位左大臣から声がかかったとなれば、商人たちは喜んで品物を積み、競うように京へ駆けつけるはずである。 それでも龍之介は、自ら堺へ足を運ぶことにした。 店に並ぶ品だけでなく、市場の賑わいや人々の暮らしを自分の目で確かめることにも意味がある。天下が平定へ向かいつつある今、武将や公家の屋敷だけを見ていては、これからの国をどのように豊かにすべきか分からないと考えたのである。 この頃には、龍之介の進言によって京と堺を結ぶ運河が整備され、両都市の間を船で往来できるようになっていた。人が歩いて運ぶよりも多くの荷を一度に運べるため、米や木材、反物などの流通も以前より盛んになっている。 龍之介は身分を示す華美な装束を避け、動きやすい小袖と袴に身を包み、護衛を兼ねた家臣二人だけを連れて船へ乗り込んだ。 衣の生地は悪くなかったが、装飾らしい装飾はなく、供回りの人数も少ない。その姿だけを見れば、左大臣どころか、暮らし向きのよくない公家が買い物へ出てきたようにも見えた。「殿、本当に先触れを出さなくてよろしいのでしょうか。堺へ到着してから左大臣様だと知られれば、町中が大騒ぎになります」 家臣の一人が心配そうに尋ねると、龍之介は船の縁から運河の流れを眺めながら答えた。「先
last update最終更新日 : 2026-09-14
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第21話 九州討伐!北条謀叛

第21話 九州討伐! 北条謀叛「機は熟した。島津を討ち、日の本の天下統一を成し遂げる。全軍、いざ出陣せよ!」 安土城の大手口に集まった諸将を前に、織田信長は高らかに号令を発した。 朝日に照らされた錦の御旗が風を受けて翻ると、居並ぶ武将たちは一斉に頭を下げ、鬨の声を上げた。蹄の音、甲冑の金具が触れ合う音、旗指物が風を切る音が重なり、安土の城下全体が震えるほどの迫力となった。 上杉、北条、毛利、長宗我部といった有力大名が表向きは織田家へ従い、いまだ大軍を擁して抵抗を続けているのは、九州を統一した島津家だけである。信長にとって、これが天下統一を完成させる最後の大戦になるはずだった。 信長は安土を出陣すると、京へ立ち寄って朝廷へ参内し、帝から島津討伐の勅命を賜った。「島津は朝廷の命に従わず、兵を集めて関門の往来を妨げておる。関白兼征夷大将軍織田信長は、これを朝敵として討ち、九州の民を戦乱から救うべし」 この勅命によって、島津家は正式に朝敵とされた。 信長の軍勢には朝廷から許された錦の御旗が掲げられ、島津家との戦は、単なる大名同士の領地争いではなく、天下平定のための戦と位置づけられたのである。 龍之介もまた、天下統一の仕上げとなる九州征伐へ加わるため、自らの領地である近江八幡へ入っていた。 正二位左大臣である龍之介は、今回は一人の大名としてだけでなく、帝の代理として全軍を監督する軍監の役目も担っている。そのため三上家の旗に加え、朝廷から預けられた旗も陣中へ掲げられた。 近江八幡には三千人の兵が揃っていたが、龍之介はその全員を連れていくことはしなかった。嵐山城と近江八幡の守りを空にすれば、留守中に何が起きるか分からないため、五百人を守備隊として残し、残る二千五百人を率いて出陣したのである。 西洋式甲冑をまとった兵たちは、湾曲長盾と銃剣装着型火縄銃を携え、柳生宗矩の指導によって一糸乱れぬ隊列を作っていた。「宗矩、九州へ渡るまでに兵を疲れさせてはならぬ。行軍の速さより、全員を無事に戦場へ連れていくことを優先せよ」「承知いたしました。鍛錬を重ねたとはいえ、こ
last update最終更新日 : 2026-09-15
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第22話 西洋備えの最強左大臣

第22話 西洋備えの最強左大臣 相模湾の水平線に、黒々とした巨大な船影が現れた。 二つの船体を並べ、その上へ強固な甲板と砲台を備えた鉄甲双胴船である。波を切って小田原沖へ近づく姿は、海上を進む城そのものに見えた。 帆柱には錦の御旗と、帝から龍之介へ賜った菊水の旗が掲げられている。潮風を受けて力強く翻る二つの旗を目にした織田方の兵から、たちまち歓声が上がった。「左大臣様の御着陣だ!」「九州から三上勢が参られたぞ!」 正二位左大臣、藤原朝臣三上龍之介正圀。 帝の代理たる軍監として九州征伐へ加わっていた龍之介が、北条討伐の指揮を執るため、小田原へ到着したのである。 龍之介が着いた頃には、柴田勝家、徳川家康、上杉景勝の軍勢が小田原城を包囲していた。 周辺に点在していた北条方の支城は、そのほとんどがすでに陥落している。ところが、本拠である小田原城だけは、いまだに攻め落とすことができずにいた。 北条氏政は、信長に対して一度は恭順の意を示し、表向きは大人しくしていた。しかし、その陰では小田原城の拡張と改修を休むことなく続けていたのである。 城下町だけでなく、武家屋敷や寺社、さらには田畑までも長大な堀と土塁で囲み、総構えの内側へ取り込んでいた。籠城中でもある程度の食糧を自給できるため、通常の兵糧攻めでは容易に音を上げない。 さらに、この世界の小田原城には、龍之介が知る前世の歴史には存在しなかった立派な天守までそびえている。 山と谷の起伏を巧みに利用し、幾重もの堀や土塁を巡らせた総構えは、まさに北条家が総力を挙げて築き上げた難攻不落の要塞であった。「なるほど。北条も、ただ時節を待っていたわけではないか」 鉄甲船の甲板から遠く小田原城を眺めながら、龍之介は感心したようにつぶやいた。 陸では織田方の大軍が城を包囲しているものの、海上の封鎖は十分ではない。織田家の主だった水軍と鉄甲船の多くが九州征伐へ投入されていたため、北条側は夜陰に紛れて物資を運び込むことができたのである。 このまま力任せに攻めれば、織田方にも多く
last update最終更新日 : 2026-09-16
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第23話 関東管領職

第23話 関東管領職 九州の島津家と関東の北条家が相次いで織田信長の軍門に下り、長く続いた天下統一の戦いは、ついに終わりを迎えた。 しかし、戦が終われば、それですべてが片づくわけではない。降伏した大名の処分、新たに支配下へ入った土地の統治、戦功を挙げた諸将への恩賞など、決めなければならないことが山ほど残されていた。 国分けと仕置きを決めるため、主だった織田家の諸将が安土城へ集められた。 九州征伐で大きな働きを見せた羽柴秀吉と明智光秀には、大幅な加増が与えられた。 羽柴秀吉は九州探題に任じられ、九州へ領地替えとなった。現地には島津家をはじめとする旧勢力の影響が根強く残っているため、武力だけでなく、人心をつかむ才にも長けた秀吉が選ばれたのである。 秀吉が治めていた中国地方の領地は、明智光秀へ与えられた。すでに中国探題として日本海側の統治を任されていた光秀は、瀬戸内海側を含む広大な領地を治める大大名となった。 九州と中国地方の仕置きは、多少の意見の違いこそあったものの、大きく揉めることなく決まった。 問題となったのは、北条家と佐竹家から召し上げた関東の領地である。 北条討伐において最大の功績を挙げたのが、左大臣である龍之介であることに異論を挟む者はいなかった。 難攻不落とされた小田原城の総構えを海上から破壊し、わずか二千の兵で突破口を開いた。さらに佐竹家を海から威圧して降伏へ追い込み、関東の戦を早期に終わらせた功績は、ほかの諸将と比べても群を抜いている。 安土城の広間で諸将を前にした信長は、龍之介へ堂々と告げた。「今回の勝利は、左大臣殿の働きによるところが大きい。余は、その功績に報いるため、北条から召し上げた関八州のすべてを左大臣殿へ与えたいと考えておる」 広間にどよめきが起こった。 関八州といえば、相模、武蔵、安房、上総、下総、常陸、上野、下野の八か国である。それらすべてを治めれば、織田家中どころか、日本で信長に次ぐほどの大領主となる。 ところが、龍之介は少しも迷うことなく頭を下げた。「ありがたき御言葉ではござい
last update最終更新日 : 2026-09-17
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第24話 信長、海外へ

第24話 信長、海外へ 天下統一を成し遂げた織田信長は、関白の職を嫡男である織田信忠へ譲った。 朝廷も信忠の関白就任を認め、今後は織田家が関白職を受け継ぐことについても許しを与えた。この異例の継承が滞りなく認められた背景には、正二位左大臣である龍之介が朝廷と織田家の間に立ち、根回しをしたことが大きく関係していた。 龍之介は帝に対し、信忠が父の権力をそのまま受け継ぐためではなく、天下の安寧を守り、幕府と朝廷の関係を安定させるために関白職を継承するのだと説明したのである。 一方、信長は征夷大将軍の職だけは信忠へ譲らなかった。 海外へ進出するにあたり、異国の脅威から日本を守るという大義名分が必要だったからである。征夷大将軍の名があれば、信長は幕府の軍船を率いて外国へ赴き、日本の安全を守るために行動しているのだと国内外へ示すことができる。 もっとも、信長自身は外国を武力で征服するつもりはなかった。 安土城の天主で龍之介と語り合った際、信長は世界各国との交易を通じて日本を豊かにし、自らの目で世界を見て回ることを決めていた。 その最初の航海には、日本での布教活動を通じて海外の事情に詳しかったルイス・フロイスが案内役として同行することになった。 ほかにも通訳、堺や博多の商人、船大工、護衛の兵が乗り込み、信長のために新造された大型鉄甲船は、安土幕府の旗を掲げて日本を出航した。 信長が最初に向かったのは、明国の上海である。 港には大小さまざまな船が集まり、倉には各地から運ばれた品物が山のように積まれていた。通りでは信長がこれまで聞いたこともない言葉が飛び交い、絹織物や陶磁器、香辛料、茶、薬、書物などが盛んに取り引きされている。 日本の城下町とも、堺の町とも異なる光景に、信長は子供のように目を輝かせた。「フロイス、この町には、いったいどれほどの国の船が集まっておるのだ」「正確な数は私にも分かりません。明国内から参る船だけでなく、南方の国々や、西洋の商人と取り引きをする者も集まっております。上海は、海と川の双方を使える港でございますから」「なるほ
last update最終更新日 : 2026-09-18
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第25話 西洋が敵に?

第25話 西洋が敵に? 天下統一を果たした日本の急速な発展は、遠く海を隔てた西洋諸国からも注目され始めていた。 日本を訪れていた宣教師や商人たちは、各地で目にした変化を詳しく書き記し、何通もの書状に分けて本国へ送り続けていた。 そこに記されていたのは、長い戦乱を終わらせた織田信長という天下人と、彼に協力する左大臣、三上龍之介正圀の存在だった。 極東にある島国が、国内を統一したことだけならば、西洋の王たちもさほど驚かなかったかもしれない。世界のどこかで国が興り、また滅びることなど、決して珍しい話ではないからである。 ところが、日本は天下統一からわずかな間に、鉄で覆われた巨大船へ蒸気機関を搭載し、風がなくとも自ら進める船を海へ送り出し始めた。 西洋のどの国にも、まだ存在していない船である。 しかも、織田信長は周辺の国々へ大軍を送り、武力によって領土を奪っているわけではなかった。 現地の支配者と交渉し、使われていない島や小さな港を正式に買い取る。そこへ倉や船着き場を造り、自国の商船を守るための砦を築くと、食糧や水、燃料を補給する拠点として利用する。 新たな港を手に入れれば、そこからさらに遠くへ船を送り、次の寄港地を得る。土地を広く支配しないため、統治に多くの兵や役人を置く必要もなく、現地の反乱に悩まされることも少なかった。 信長と龍之介にとっては、外国との交易を安全に行うための政策にすぎない。 しかし、西洋諸国から見れば、蒸気機関を備えた鉄甲船が寄港できる日本の拠点が、海上へ一つずつ増えていることになる。小さな点にすぎなかった拠点が航路によって結ばれれば、やがて大きな支配力を持つことは明らかだった。 さらに、日本は各地との交易によって急速に富み始めていた。 日本からは銀、銅、鉄、刀剣、絹織物、陶磁器、漆器、茶などが運び出され、外国からは香辛料、砂糖、薬、硝石、書物、天文器具などが持ち帰られる。 得られた富は新たな港や造船所の建設へ使われ、日立や鹿島の造船所では、蒸気機関を搭載した鉄甲船の建造が次々と始まっていた。 日本へ滞在してい
last update最終更新日 : 2026-09-19
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第26話 水戸城完成

第26話 水戸城完成 常陸国における龍之介の本拠地、水戸城の大改修がついに完了した。 普請が始まってからというもの、水戸の町では槌やのみの音が絶えることなく響き、各地から集められた石工や大工、鍛冶師たちが昼夜を分かたず働いてきた。もっとも、龍之介は工事を急ぐあまり人夫を酷使することを許さず、農繁期には農民を村へ帰し、賃金で雇った職人を中心に普請を進めさせていた。 それだけに完成まで多少の年月を必要としたものの、水戸城は関東管領の本拠にふさわしい、堅固な城として生まれ変わったのである。 完成の日、龍之介は柳生宗矩や普請を任せた家臣たちとともに、城内を見て回っていた。 一行が城壁の上へ上がると、北にはゆったりと流れる那珂川が見え、南には日の光を受けた千波湖の水面が広がっている。その間には整然と区画された城下町があり、新しい屋根が幾重にも連なっていた。「見事な城が完成いたしましたな。以前の水戸城を知る者が見ても、ここが同じ場所だとは信じられぬでしょう」 宗矩が感心したように周囲を見渡すと、普請奉行を務めた家臣も誇らしげに胸を張った。「佐竹家が使っていた頃の建物は、残せるものだけを移築いたしました。しかし、縄張りから城壁に至るまで、ほとんどすべてを殿の御指示に従って造り直しております。まことに、日の本のどこにもない城となりました」「日の本にないのは当然であろう。この形の城が日本で造られるのは、本来ならば、まだずっと先の時代だからな」 龍之介はそうつぶやいたが、二人には意味が分からなかったらしく、そろって不思議そうな顔をした。 龍之介が前世で知っていた水戸城は、水戸徳川家の居城であった。 徳川御三家の一つと呼ばれながらも、壮麗な天守や高い石垣を備えた城ではなく、土塁と堀を中心に三つの曲輪を連ねた、比較的質素な城郭だった。 もちろん、それには理由がある。 水戸徳川家の藩主は江戸に常住することを求められ、一般の大名のような参勤交代を行わない、特殊な立場にあった。将軍家に何かが起きた際には、江戸にいる直参旗本たちをまとめる役目を担うとされていたためである。
last update最終更新日 : 2026-09-20
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第27話 常陸国での生活

第27話 常陸国での生活 水戸城が完成してから、龍之介の生活には一定の周期が生まれていた。 二か月間は常陸国に滞在し、水戸城を拠点として領内の政務を行う。その後の一か月は嵐山城と近江八幡城で過ごし、その間に御所へ参内するとともに、安土城へ登城して信長や信忠と国政について話し合うのである。 常陸と畿内の移動には、主に海路が使われた。 鹿島港か日立港から蒸気機関を備えた鉄甲双胴船へ乗り、太平洋を南下して紀伊半島を回り、堺の港へ入る。そこから先は、整備された運河や街道を使って京や近江へ向かった。 陸路だけを使うより速いうえ、道中でも船内で書状を読み、家臣たちと評定を開くことができる。多少の荒波に揺られることはあったものの、忙しい龍之介にとって、移動にかかる時間まで政務へ使えるのは大きな利点だった。 常陸にいる間、龍之介は朝早くから家臣たちの報告を受け、街道や水路の整備、農地の開墾、鉱山と造船所の運営に関する指示を出した。 昼餉を取る時間を忘れ、歩美に叱られることも珍しくない。「旦那様、また昼餉へ手をつけておられませんね。朝から同じ姿勢で絵図をご覧になっていては、体を壊してしまいます」「あと少しで、那珂川沿いの新しい水路が決まりそうなのだ。ここへ堰を設ければ、三つの村へ水を引けるようになる」「その三つの村を豊かにする前に、旦那様が倒れてしまわれては困ります。続きは召し上がってからになさってください」「冷めてからでも食べられるぞ」「温かいうちのほうがおいしいに決まっております。政務を中断なさらないのであれば、絵図の上へ膳を置かせていただきますよ」「それだけは困る。せっかく書き込んだ水路が、汁物で大洪水になってしまうではないか」「でしたら、素直にお休みくださいませ」 穏やかに微笑んでいるものの、歩美が本気で言っていることは、その目を見れば分かる。龍之介は家臣たちの前で妻に負けたことを悟り、苦笑しながら筆を置くしかなかった。 日が暮れて政務を終えれば、今度は家族と過ごす時間である。 龍之介は正室の歩美をはじ
last update最終更新日 : 2026-09-21
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第28話 常陸から茨城国へ

第28話 常陸から茨城国へ 龍之介には、今世でどうしても成し遂げたいことがあった。 前世において、故郷である茨城県が都道府県魅力度ランキングの最下位に何度も選ばれていたことが、百歳で生涯を終えるまで悔しくて仕方がなかったのである。 前世の茨城県も、決して貧しく、何もない土地ではなかった。 広大な農地を持ち、野菜や果物の出荷量は全国でも上位に入る。沖合には寒流と暖流が交わる豊かな漁場があり、海産物にも恵まれていた。 工業面でも「世界のHIT●CHI」と呼ばれる大企業があり、鹿島には巨大な工業地帯が築かれていた。常陸牛や豚肉、鶏肉にも優れたものがあり、蕎麦にも最高級と呼ばれるブランドが存在する。 古い歴史と豊かな自然を持ち、海も山も湖もある。それにもかかわらず、なぜか魅力度だけは低く見られてしまう。 龍之介には、その評価がどうしても納得できなかった。(前世では魅力をうまく伝えられなかったのかもしれぬ。ならば今世では、誰にも見過ごせぬほど豊かな国にしてしまえばよい) その思いが、龍之介を常陸、上総、下総、磐城の領地経営へ駆り立てていた。 龍之介の領地は、朝廷と安土幕府への貢献を重ねるにつれて、さらに広がっていた。 関東の仕置きが落ち着いた後、房総半島南端の安房も三上家へ与えられたため、房総半島のほぼ全域が龍之介の支配下に入ったのである。 前世の地図で表せば、千葉県の全域に茨城県と福島県浜通りの一部を加えた、南北に長い領地となる。(これはもう、チバラキ県どころではないな。千葉から磐城まで、すべて合わせて茨城にしてしまった形ではないか) そのようなことを考えていた龍之介は、ある日の評定で、家臣たちへ一枚の大きな絵図を示した。 絵図には常陸、上総、下総、安房、磐城が描かれ、主要な城、港、街道、河川が色分けされている。水戸城へ集められた家臣たちは、龍之介が何を話すつもりなのか分からず、静かに次の言葉を待っていた。「これまで我が領地は、常陸、上総、下総、安房、磐城と、それぞれの国名で呼ばれてきた。しかし、領地全体をまとめて呼
last update最終更新日 : 2026-09-22
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第29話 跡取り誕生

第29話 跡取り誕生 水戸城を拠点として茨城国の運営に力を注いでいた龍之介のもとへ、待ち望んでいた日が訪れた。 その日の龍之介は、朝から家臣たちと那珂川流域の新田開発について評定を行っていた。「新たに開いた田へ水を引くことばかり考え、下流の村で水が足りなくなってはならぬ。堰を設ける前に、川の水量を一年かけて調べる必要がある。農地を増やした結果、昔からある田を枯らすようなことだけは避けよ」 龍之介が絵図へ目を落としながら命じていると、廊下の向こうから慌ただしい足音が近づいてきた。 やがて襖が開き、歩美の身の回りを世話している侍女が、息を切らしながら平伏した。「御評定の最中に申し訳ございません。奥方様の御産が始まりました」 その言葉を聞いた瞬間、龍之介は手にしていた筆を止めた。「歩美の具合はどうなのだ。苦しんではおらぬか」「産婆も医師も、今のところ心配はないと申しております。されど初めての御産にございますので、少し時間がかかるかもしれないとのことです」「分かった。すぐに参る」 龍之介は立ち上がったものの、途中で家臣たちが残っていることを思い出し、振り返った。「本日の評定はここまでとする。話し合ったことは書面にまとめ、明日改めて持ってきてくれ」「かしこまりました。奥方様の安産を、我らも心よりお祈り申し上げます」 家臣たちから一斉に頭を下げられた龍之介は、落ち着いて返事をしたつもりだったが、その足は自然と早くなっていた。 奥御殿へ駆けつけても、龍之介が産室へ入ることはできない。 襖の向こうでは歩美を励ます産婆の声が聞こえ、その合間に苦しそうな息遣いが漏れてくる。龍之介は廊下へ座ったものの、じっとしていられず、何度も立ち上がっては同じ場所を歩き回った。 その様子を見かねた深雪が、少し呆れた顔で声をかけた。「お兄様、先ほどから同じところを何往復なさっているのですか。廊下の板がすり減ってしまいます」「私とて、何かせずにはいられぬのだ。歩美は朝から苦しんでおるというのに、私はこ
last update最終更新日 : 2026-09-23
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