第20話 堺に買い出し! 九州征伐の日が近づく中、龍之介は戦支度を改めて見直していた。 転生の際に持ち込んだ愛刀『童子切安綱』は、天下に名高い名刀であり、その切れ味にも不満はない。しかし、戦場で刀を失ったり、刃こぼれによって使えなくなったりする可能性まで考えれば、実戦へ持ち込める予備の刀が必要だった。 三上家の家宝である金太刀『金胴鳳凰宝相華文兵庫鎖太刀』もあったが、こちらは朝廷の儀式や正装の際に佩くためのものである。華麗な装飾が施された貴重な太刀を、泥と血にまみれる戦場へ持ち出す気にはなれなかった。「童子切だけに頼るのは、やはり心許ないな。九州へ渡る前に実戦向きの刀を一本手に入れ、家臣たちの武具も見直しておいたほうがよいだろう」 龍之介が望めば、堺の商人たちを嵐山の屋敷へ呼びつけ、刀や武具を並べさせることもできた。正二位左大臣から声がかかったとなれば、商人たちは喜んで品物を積み、競うように京へ駆けつけるはずである。 それでも龍之介は、自ら堺へ足を運ぶことにした。 店に並ぶ品だけでなく、市場の賑わいや人々の暮らしを自分の目で確かめることにも意味がある。天下が平定へ向かいつつある今、武将や公家の屋敷だけを見ていては、これからの国をどのように豊かにすべきか分からないと考えたのである。 この頃には、龍之介の進言によって京と堺を結ぶ運河が整備され、両都市の間を船で往来できるようになっていた。人が歩いて運ぶよりも多くの荷を一度に運べるため、米や木材、反物などの流通も以前より盛んになっている。 龍之介は身分を示す華美な装束を避け、動きやすい小袖と袴に身を包み、護衛を兼ねた家臣二人だけを連れて船へ乗り込んだ。 衣の生地は悪くなかったが、装飾らしい装飾はなく、供回りの人数も少ない。その姿だけを見れば、左大臣どころか、暮らし向きのよくない公家が買い物へ出てきたようにも見えた。「殿、本当に先触れを出さなくてよろしいのでしょうか。堺へ到着してから左大臣様だと知られれば、町中が大騒ぎになります」 家臣の一人が心配そうに尋ねると、龍之介は船の縁から運河の流れを眺めながら答えた。「先
最終更新日 : 2026-09-14 続きを読む