第50話 明智光秀討伐、そして秀吉は? 天下分け目の近江八幡合戦は、わずか四時間で三上龍之介正圀の勝利に終わった。 三上軍の受けた損害は、激戦の規模から考えれば決して大きなものではなかった。その理由は、新式兵器の圧倒的な性能だけでなく、足軽に至るまで南蛮胴を改良した西洋式甲冑をまとい、湾曲長盾を活用しながら銃撃する戦法を徹底していたことにある。 使用する銃も、もはや従来の火縄銃ではない。銃剣を装着した三八式歩兵銃であり、敵が接近するまでは遠距離から射撃し、乱戦となれば銃剣を槍のように用いて戦うことができた。 装備、射程、連射速度、兵の練度。そのすべてにおいて、三上軍は旧来の軍勢を大きく上回っていたのである。 それでも、戦死者や重傷者が皆無だったわけではない。さらに、捕虜となった信忠軍の監視、安土城や近江八幡城の守備、戦場に残された負傷兵の救護にも多くの兵を割かなければならなかった。 そのため、次の戦へ直ちに出陣できる兵は、四万五千まで減っていた。 近江八幡城の広間では、勝利の余韻に浸る間もなく、次の軍議が開かれていた。「信忠殿は討ち取った。安土城も我が軍が押さえた。されど、この戦はまだ終わっておらぬ」 龍之介は諸将を見渡し、絵図の上に置かれた嵐山城を示した。「明智光秀は、今なお五万に近い兵で嵐山城を包囲している。信忠殿が死んだと知れば、兵を退く可能性は高いが、光秀殿がこのまま姫路へ戻れば、再び兵を集めて抵抗を続けるやもしれぬ」「近江八幡合戦を終えたばかりでございます。兵を休ませるべきではありませんか」 家臣の一人が慎重に進言したが、龍之介は首を横に振った。「光秀殿が撤退を始めれば、捕捉できる機会は今しかない。ここで逃せば、中国地方を舞台に長い戦を続けることになる。負傷者と疲労の激しい者は近江へ残し、動ける四万五千をもって都へ向かう」「嵐山城の歩美様はいかがなされますか」「歩美は無事だ。城も持ちこたえている。だからこそ、これ以上一人で背負わせるわけにはいかぬ。明智光秀を討伐し、この戦を終わらせるぞ」 龍之介の命
最終更新日 : 2026-10-14 続きを読む