Lahat ng Kabanata ng RE:RE:RE 離婚してください~都合のいい女、やめました~: Kabanata 11 - Kabanata 20

52 Kabanata

第11話  月曜日の送信ボタン

 月曜日の朝、六時半に目が覚めた。 達哉はまだ眠っている。規則的な寝息が、部屋の奥から聞こえてくる。 沙耶はそっとベッドを抜け出した。いつものように、キッチンへ向かった。いつものように、コーヒーを入れた。でも今朝は、コーヒーカップを持ったままソファに座る前に、一度スマートフォンを手に取った。 土曜日に書いた、あの文章がある。 送信ボタンの手前で止まったまま、下書きフォルダに入っている。 沙耶は画面を開かずに、スマートフォンをテーブルに置いた。 まず、コーヒーを飲もう。 それだけを決めた。 窓から入ってくる光は、土曜日より少し白かった。月曜日の朝の光は、なぜかいつも少し硬い気がする。今日から一週間が始まる、という緊張を、空気が知っているのかもしれない。 コーヒーを半分飲んだところで、沙耶はスマートフォンを取り上げた。 下書きフォルダを開いた。 土曜日に書いた文章が、そのまま残っている。 佐伯様 お世話になっております、岸谷です。 ご連絡ありがとうございます。 現在、他の案件が重なっており、 佐伯様のご要望に十分にお応えできる状況ではないと判断しました。 誠に申し訳ございませんが、今回は辞退させていただけますでしょうか。 ご不便をおかけして、大変申し訳ございません。 岸谷沙耶 読んだ。 土曜日に読んだときと、同じ文章のはずだった。でも今朝は、少し違って見えた。 謝りすぎている。 「誠に申し訳ございま
last updateHuling Na-update : 2026-09-04
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第12話  公開日

 水曜日の午前十時、彩乃からメッセージが来た。 「今日の十二時、サイト公開します。岸谷さんのおかげです。ありがとうございました」 沙耶はラップトップの画面から顔を上げて、スマートフォンを見た。 今日だったか、と思った。  彩乃のブランドサイトのリニューアル。公開日は先週のうちに決まっていた。でも今朝は神崎への返答資料の整理で頭がいっぱいで、失念していた。 「ありがとうございます。うまくいくといいですね」と返信しようとして、止まった。 うまくいくといいですね、は他人事みたいだ。 少し考えて、こう打った。  「公開、楽しみにしています。きっと届きます」 送信して、ラップトップに向き直った。 神崎からのフィードバック資料が届いたのは、その三十分後だった。 件名は「ブランドガイドラインについて」。 開くと、資料は十二ページあった。 沙耶が納品したデザインに対して、神崎が一つ一つコメントをつけている。修正依頼ではなく、確認と提案の形式だった。「ここはこういう意図で合っていますか」「この方向性でブランドブックに展開する場合、どう考えますか」。 問いかけの形で来ている。 答えを押し付けない。沙耶の判断を、先に聞いている。 沙耶はページをめくりながら、じわりと何かを感じた。 佐伯のやりとりとは、何もかもが違った。修正の意図を説明しない、プロならわかるはずという前提で来る、気に入らなければ「違う」の一言で戻ってくる──あの感覚と、今手元にある資料は、同じ「仕事のフィードバック」のはずなのに、まるで別の言語で書か
last updateHuling Na-update : 2026-09-05
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第13話  神崎って誰

 木曜日の夜、達哉が沙耶のラップトップを覗き込んだ。 沙耶は気づかなかった。神崎のブランドブック用のカラーパレットを調整していて、画面から目が離せなかった。テラコッタと深いネイビーの組み合わせ。彩度を少し落とすか、このままにするか。ほんの数パーセントの違いが、印象を大きく変える。 「それ、誰の仕事?」 達哉の声が、すぐ後ろから来た。 沙耶は肩が跳ねた。気配に気づいていなかった。 「神崎さんの案件」と答えた。自然に答えた。隠す理由はない。 「神崎って、男?」 「……IT企業の経営者の方で、ブランディングの依頼をいただいてる」 「男なんだ」 達哉はソファに戻りながら言った。それだけだった。 沙耶は画面に向き直った。カラーパレットの続きをやろうとした。でも指が、少し止まった。 何かが変わった気がした。部屋の空気が、数度下がったような。 金曜日の朝、達哉が出勤する前に言った。 「昨日のやつ、いつまでかかるの」  「来週中には」 「ふうん。最近そればっかりだな」 沙耶は味噌汁を椀に注ぎながら答えた。 「大きい案件だから」 「大きいって、金額が?」 一瞬、迷った。正直に言えば何か言われる気がした。でも嘘をつく理由もない。 「これまでで一番大きいかな」 達哉は卵焼きを箸でつまんで、口に入れた。  「へえ」
last updateHuling Na-update : 2026-09-06
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第14話  開かれた画面

 火曜日の夜、達哉が帰ってきたのは九時過ぎだった。 沙耶はその時間、ダイニングテーブルでブランドブックの作業をしていた。フォントの選定と、ページレイアウトの試作。集中していた。外が暗くなっていることにも、時間が経っていることにも、あまり気づいていなかった。 玄関の音がして、達哉が入ってきた。 「おかえり」 「ん」 達哉はスーツのまま、洗面所に向かった。沙耶は作業を続けた。夕飯は七時に食べ終えていた。達哉の分はラップをかけて冷蔵庫に入れてある。 しばらくして、達哉がリビングに来た。 「飯、温める」 「うん。二分くらいで」 沙耶はレイアウトの調整を続けた。今夜中にここまで終わらせたい、という感覚があった。 電子レンジの音が聞こえて、達哉がダイニングに座った。 沙耶はラップトップの画面を見ながら、作業を続けた。達哉が食べている気配がある。テレビもついていない。静かな夜だった。 十分ほど経って、達哉が言った。 「それ、さっきの仕事?」 「うん」 「神崎のやつ?」 「そう」 それだけのやりとりで、また沈黙が来た。 沙耶がトイレに立ったのは、それから二十分後だった。 作業の区切りがついたタイミングで、席を立った。ラップトップは開いたままにしていた。データを保存中で、閉じるタイミングではなかった。 トイレから戻ってきたとき、達哉がダイニングテーブルの前にいた。
last updateHuling Na-update : 2026-09-07
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第15話 いつも通りの薄さ

 水曜日の朝、六時に目が覚めた。 達哉はまだ眠っている。規則的な寝息。いつもと同じ朝だった。 沙耶はそっとベッドを抜け出して、キッチンへ向かった。冷蔵庫を開けて、今朝の朝食を考えた。卵がある。豆腐がある。昨日の残りの味噌汁のだしが取ってある。 いつも通りに、手が動いた。 味噌汁を火にかけながら、沙耶は昨夜のことを思った。 達哉がラップトップを開いた。沙耶は「見ていいとは言っていない」と言った。達哉は「悪かったな」と言って、「でも心配しているだけ」と続けた。沙耶は答えなかった。 それで、終わった。 今朝の達哉は、たぶんいつも通りだ。昨夜のことを引きずる人ではない。朝になれば、また「コーヒー、ある?」から始まる。 沙耶はそれを知っていた。 問題は、沙耶自身がいつも通りでいられるかどうかだった。 卵焼きを焼きながら、沙耶は考えた。 いつも通りにする、ということの意味を。 これまでの沙耶にとって「いつも通り」は、安全だった。達哉の機嫌を損ねない。波風を立てない。昨夜のことをなかったことにして、今朝も完璧な朝食を出す。そうすることで、一日が穏やかに始まる。 でも今朝は、その「いつも通り」が、少し違って見えた。 薄い、と思った。 張りぼてみたいだ、と思った。 昨夜、沙耶は言いたいことを言った。引かなかった。達哉の「でも心配している」を受け取らなかった。それだけのことで、今朝の「いつも通り」の朝食が、どこか虚ろに感じられた。 卵焼きを皿に盛った。 きれいに焼けていた。
last updateHuling Na-update : 2026-09-08
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第16話  対面

 水曜日の朝、沙耶はいつもより早く起きた。 五時半。アラームより三十分早かった。 眠れなかったわけではない。ちゃんと眠れた。ただ、目が覚めたとき、今日が水曜日だということをすぐに思い出して、そのまま起きた。 達哉はまだ眠っている。 沙耶はそっとベッドを抜け出して、洗面所に向かった。顔を洗って、鏡を見た。 今日は、神崎と会う。 初めての対面の打ち合わせ。場所は神崎が指定してきた。都心のホテルのラウンジ。「静かな場所の方が話しやすいと思いまして」と添えてあった。 沙耶は鏡の中の自分を見た。 何を着ていこうか、昨日の夜から考えていた。仕事の打ち合わせだから、きちんとした格好がいい。でも気合いを入れすぎると、それはそれで違う気がした。 結局、紺のブラウスとグレーのスラックスに決めていた。クローゼットの中で、一番「仕事をしている自分」に近い服だと思った。 朝食を作りながら、沙耶は今日の打ち合わせのことを頭の中で整理した。 神崎が言っていたこと。ブランドディレクターとして、継続的なパートナーとして。詳細はお会いして、と書いてあった。詳細がまだわからない。条件も、具体的な仕事の範囲も。 わからないことを、今日聞く。 それだけのことだ。 でも「それだけのこと」が、沙耶にはまだ少し、練習が必要な行為だった。わからないことを「わかりません」と言う。確認したいことを「確認させてください」と言う。条件に納得できなければ「検討させてください」と言う。 仕事の場でそれをするのは、今の沙耶にはできる。神崎との打ち合わせで、
last updateHuling Na-update : 2026-09-09
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第17話  検討する、ということ

 木曜日の朝、沙耶は神崎からのメールをもう一度読んだ。 打ち合わせの翌日に、議事録として送られてきたメールだった。話した内容が、箇条書きではなく、文章でまとめてあった。条件、スケジュール、裁量の範囲。沙耶が確認したことへの回答も、補足として加えてあった。 丁寧だと思った。 打ち合わせの内容を、こうして形にして送ってくる人は、多くない。佐伯との仕事では、何を決めたかすら曖昧なまま進んでいた。 沙耶はメールを閉じて、コーヒーを一口飲んだ。 今日から一週間、検討する。 その「検討する」という行為を、沙耶はまだよくわかっていなかった。条件を確認した。仕事の範囲も聞いた。やりたいかどうかは、昨日の帰り道にもう答えが出ていた。 やりたい。 それは変わらない。 では何を、一週間かけて検討するのか。 沙耶はラップトップを開いて、新しいメモファイルを作った。タイトルを「検討」とだけ入力した。 しばらく、カーソルが点滅するのを見ていた。 最初に書いたのは、条件の整理だった。 月額の契約料。これまでの案件と比べると、大きい。安定している。フリーランスとして、これだけの額が毎月入ってくるなら、他の案件を整理できる。 次に、仕事の内容。コンセプトから作る。ブランドの言葉を一緒に考える。それは沙耶がずっとやりたかったことだ。 書いていて、気づいた。 これは「やる理由」しか書いていない。 「やらない理由」を、書いてみようとした。 指が、止まった。
last updateHuling Na-update : 2026-09-10
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第18話  返事を出す朝

 日曜日の朝、達哉が出かけた。 友人とゴルフだと言っていた。七時半に家を出て、玄関の音が閉じた。 沙耶はキッチンで一人、コーヒーを入れた。 静かな日曜日。こういう朝が、週に一度あるかないか。達哉のいない時間は、同じ家なのに空気の密度が違う。薄い、というより──広い。同じ部屋が、少し広くなる。 コーヒーカップを持って、新しい仕事部屋に入った。 まだデスクを入れたばかりで、殺風景だった。小さな窓から朝の光が入ってくる。段ボールの臭いが少し残っている。それでも、ここは沙耶の場所だった。 椅子に座って、ラップトップを開いた。 神崎へのメールの下書きが、まだある。 一週間、考えた。 検討メモを書いた。やらない理由を探した。でも出てきたのは達哉の顔色だけで、それは理由じゃないと気づいた。 やりたい。 その気持ちは、一週間かけて、むしろ強くなった。 沙耶はメールを開いた。先週書いた文章が残っている。 神崎さん 先日はお時間をいただきありがとうございました。 ご提案について、検討いたしました。 ぜひ、お受けしたいと思います。 コンセプトから一緒に作るという仕事を、 私もずっとやってみたかった。 そう気づいた一週間でした。 条件については、一点だけ確認させてください。 読み返した。 最後の「ずっとやってみたかった。そう気づいた一週間でした」という部分が、また少し恥ずかしかった。個人的すぎる。仕事のメールにしては、感情が出すぎている。
last updateHuling Na-update : 2026-09-11
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第19話  神崎のオフィス

 木曜日の朝、沙耶はいつもより念入りに身支度をした。 といっても、特別なことはしていない。髪をいつもより丁寧に整えて、仕事用のジャケットを着た。それだけだ。でも鏡の前に立つ時間が、普段より少し長かった。 達哉はすでに出勤していた。 今朝は特に何も言わなかった。「行ってくる」と言って、ドアが閉まった。沙耶の今日の予定を聞かなかった。 聞かれなかったことに、少し安堵した自分がいた。 その安堵を感じた瞬間、沙耶は少しだけ立ち止まった。 夫の外出に、安堵している。 それが何を意味するか、今朝の沙耶はまだ言葉にしなかった。ただ、感じたことを感じたまま、胸の中に置いておいた。 神崎のオフィスは、都心から少し外れた場所にあった。 駅から歩いて八分。地図を見ながら歩くと、古いビルの三階に「KAN DESIGN LAB」という小さなプレートが見つかった。 想像より、ずっと小さかった。 エレベーターを降りると、すりガラスのドアがある。軽くノックしてから押すと、中から「どうぞ」という声が来た。 入った瞬間、沙耶は少し驚いた。 広くはない。でも、整っていた。 白い壁に、大きな窓。窓際にデスクが四つ並んでいる。奥に会議スペース。壁には何枚かのブランドボードが貼ってあって、沙耶が携わってきた仕事のものもあった。 自分の仕事が、ここにある。 そう思ったら、不思議と胸が落ち着いた。 神崎が立ち上がって迎えてくれた。 「来てくれてありがとうございます」
last updateHuling Na-update : 2026-09-12
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第20話  達哉の休日

 土曜日の朝、九時に目が覚めた。 隣を見ると、達哉はまだ眠っていた。 週末の朝はいつもそうだ。達哉は平日の疲れを取り戻すように、土日は昼近くまで眠る。その間の二、三時間が沙耶の静かな時間で、一週間で一番、息ができる時間だった。 以前はそれを「達哉が起きてくる前に家事を済ませる時間」として使っていた。洗濯を回して、掃除機をかけて、昼食の準備をして。達哉が起きてきたときに、全部整っているように。  今朝は──寝室のデスクに向かった。ラップトップを開いて、新ブランドのコンセプトワークの続きをやった。達哉が眠っている気配が後ろにある。できるだけ静かにキーを打った。 窓際の花瓶に、木曜日に買った花がある。スターチスはまだきれいで、ガーベラが少し頭を垂れ始めていた。水を替えてやった。 一時間、集中した。 達哉が起きてきたのは、十一時過ぎだった。 「コーヒー、ある?」 「入れるよ」 キッチンに立ちながら、沙耶は今日の予定を考えた。午後は彩乃と会う約束がある。先週、「今度ランチしませんか」とメッセージが来て、今日になった。 達哉に言おうかどうか、少し考えた。 言う必要はある。夕飯が遅くなるかもしれないから。でも言い方によっては、面倒なことになる気がした。 「今日の午後、出かけていい?」とコーヒーを出しながら言った。 「どこ」 「仕事関係の人とランチで。夕方には帰れると思う」 「ふうん」 達哉はスマートフォンを見たまま答えた。興味がないのか、何か考えているのか、読めない返
last updateHuling Na-update : 2026-09-13
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