アクストンは足早に執務室を出た。顔は険しく、廊下の隅々まで何か大切なものを探すように目を走らせている。息も荒かった。「ここで私の祖母を見かけなかったか?」書類を抱えて歩いていた二人のスタッフに、鋭い口調で尋ねた。二人は一瞬顔を見合わせたが、すぐにそのうちの一人が丁寧に頭を下げ、答えた。「申し訳ございません、アクストン様。お祖母様のお姿はお見かけしておりません」アクストンは小さく鼻を鳴らし、顎を引き締めた。「なら、探せ! 全フロアをくまなく確認しろ!」その声に、近くにいた数人の社員が思わず背筋を伸ばした。社長があのような口調で命じるときは、何かただならぬ事態が起きているのだと、彼らは知っていた。時間を無駄にするつもりはなかった。アクストンは足早に警備室へ向かった。「君」警備員の一人を指さして言った。「監視カメラを使って、ハナ祖母の居場所を探せ。建物の隅々まで確認するんだ」「かしこまりました、アクストン様!」警備員はすぐさま返事をした。アクストンはしばらく監視カメラの映像を見つめたが、何も見つけられなかった。とうとう彼は建物を出て、自分の車に乗り込むと、アクセルを強く踏み込んだ。外にはまだ片づけなければならない重要な用事があった。それでも、彼の頭の中ではハナの顔が何度も浮かんでは消えていた。二十分後、車は再びオフィスの前に停まった。アクストンは車を降りると、待ちきれない様子で警備員のもとへ向かった。「ハナ祖母は見つかったのか?」警備員は緊張した面持ちで首を横に振った。「申し訳ございません、アクストン様。七階まで探しましたが、ハナ様は見つかりませんでした」アクストンは小さく悪態をつき、苛立たしげにこめかみを揉んだ。それから足早に自分の執務室へ戻った。ドアを開けた瞬間、彼の足がぴたりと止まった。そこには、黒い革張りのソファに腰掛け、何事もなかったかのように雑誌を読んでいるハナの姿があった。「ハナ……」アクストンの声は重かった。表情からは何を考えているのか読み取れない。彼はゆっくりと近づいた。「どこへ行っていたんだ?」老婦人はゆっくりと顔を上げ、柔らかな笑みを浮かべた。「どこって、アクストン。雑誌を探しに行っただけよ。あなたが会議でいつまでも戻ってこないから、退屈してしまってね」アクストンは深く息を吸い、怒りと安堵が入
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-21 Mehr lesen