真っ白なシーツに、赤い血が散っていた。 (なんだよ、これ) ぽたり。 ぽたり、と。 真っ白なシーツは一面の銀世界のようで、その上に咲いた血は曼珠沙華を思わせた。 その赤が自分の身体から落ちているのだと気づくまで、少し時間がかかった。僕は震える掌を見つめ、指先から手首へ伝う生温かな感触に、遅れて息を呑んだ。 (……僕、死んだはずじゃ) 身体を起こそうと腕へ力を込めた瞬間、皮膚を引き裂くような痛みが走る。(痛っ……) 両腕には、何かに強く縛られていたような傷が残っていた。擦り切れた皮膚の間から鮮血が滲み、腕を動かすたび、新しい赤い血が白い寝具へ落ちていく。 痛みがある。(痛覚があるということは、もしかして生きているのか?) 肌へ張りつくシーツの感触も、荒く上下する胸の苦しさも、夢だと片づけるにはあまりに生々しかった。 僕は息を整えながら、見覚えのない部屋を見回した。 天井はやけに高く、淡い金色の装飾が複雑な蔓草模様を描いている。窓を覆う深紅のカーテンは、僕の部屋にある安物とは比べものにならないほど重厚で、壁際には天井へ届きそうな書棚が並んでいた。 病院ではない。 もちろん、僕の部屋でもない。 「ここ、どこだよ……」 呟いた途端、さっきまでぼんやりと見えていた景色が、いっきに鮮明に映る。 ――数分前、僕――妹尾晶は、車にはねられて死んだ、はずなのだ。 ———————————————————————————— 二十二歳。 四月からは県外の会社へ就職することが決まり、生まれてから一度も離れたことのない町とも、今日でしばらくお別れになる。 だから、今日だけは、どうしても伝えたかった。 物心がついた頃からずっと隣にいた、幼馴染の夏樹に。 ――好きだって。 返事なんて勿論期待していない。 付き合ってほしいなんて、最初から望んでいない。 そんなことあるわけがない。 ただ、一度だけ。 たった一度だけでいいから。 この胸の奥へ押し込め続けた想いを、自分の言葉で伝えたかった。 玉砕覚悟。 幼馴染以上の何物でもない。 とっかえひっかえ変える、セフレにすらなれない。 だから、今日を逃せば、きっと僕は一生言えない。 ――弱虫で、
Last Updated : 2026-09-02 Read more