第51話 嘘の第二保管庫 偽の保管庫を調べ終えた北辰統合区の雪上車は、恋たちの避難所へ向かわなかった。 監視画面の中で進路を変えた車両は、吹雪にかすむ街路を東へ進み、やがて旧消防署のある区画へ近づいていく。そこには病院との連絡を中継するために設置した無線設備があり、互いの電波が直接届かない時には、短い暗号通信を自動で転送する仕組みになっていた。 北辰の者たちが中継地点の存在を知っているとは考えにくい。だが、偶然で済ませるには、雪上車の進路が正確すぎた。「旧消防署まで、あと一・八キロです。このまま進めば、十分以内に外周へ入ります」 柏木が地図上へ車両の位置を重ねた。カメラから届く映像は雪の粒に乱されているが、熱源の輪郭までは失われていない。雪上車とは別に、少し離れた場所を進む二つの小さな熱源も確認できた。先行して周辺を調べる斥候だろう。 恋は監視卓の脇へ置かれた偽装資料を振り返った。偽の保管庫には、実在しない物資の一覧と、別の場所へ搬出したように見せかける伝票を残してある。ただし、搬出先として記したのは北側の廃冷凍倉庫であり、旧消防署へつながる記述は一つもない。「橋本さん、偽装資料に消防署を連想させるものはありませんね」「ありません。念のため、搬入元の会社名や車両番号まで確認しましたが、消防関係の記録は使っていません。物資の移動先も北側です。あの資料を信じたなら、東へ進む理由はないはずです」 橋本は自分の作った一覧を指で追いながら答えた。嘘を作るにも整合性がいると、彼は倉庫の入出庫記録を何日も調べ、現実にありそうな数量へ調整していた。雑な偽装なら水城拓斗でなくとも見破れる。だからこそ、北辰が偽情報とは無関係の方向へ動いた事実は重かった。「偽の保管庫から周囲を扇状に捜索している可能性はあります」 相馬が地図へ身を寄せ、雪上車の移動経路を確認した。「あいつらが第二保管庫を本気で信じたとは思えません。空だった時点で、近くに監視設備や別の拠点がないか調べるでしょう。旧消防署は建物が比較的残っていますし、高い通信塔もある。捜索対象に入っても不自然ではない」「病院との往
Huling Na-update : 2026-10-17 Magbasa pa