Todos los capítulos de 冷夏と大飢饉で文明が終わる日、俺は家族と生き残る: Capítulo 1 - Capítulo 10

14 Capítulos

第1話 六月なのに、息が白かった

第1話 六月なのに、息が白かった 六月三日の朝、神崎冬真は自宅マンションを出た瞬間、自分が季節を一か月か二か月ほど間違えたのではないかと思った。 玄関を出るまでは、テレビで何度も「季節外れの冷え込み」という言葉を聞いていた。それでも六月は六月だし、いくら冷えたところで薄手の上着があれば十分だろうと考えていたのだが、エントランスの自動ドアが開いた途端、頬を刺した空気は春先のものですらなかった。「寒っ……なんだよ、これ」 思わず声が漏れた。 吐いた息が、白かった。 冬真はマンションの入口で足を止め、もう一度ゆっくり息を吐いてみた。やはり白い。風に流されながら、薄い霧のようになって消えていく。 六月である。 しかも東京都内だ。 これが北海道の山奥ならまだ分かるが、東京の住宅街で六月の朝に息が白くなるというのは、どう考えても普通ではなかった。 スマートフォンを取り出して気温を確認すると、画面には「現在気温 7℃」と表示されていた。「七度って……冬じゃないか」 自分で言ってから、さすがに大げさかと思ったが、駅へ向かう人々の服装を見る限り、大げさとも言えなかった。 ダウンジャケットを着ている老人がいる。厚手のコートを羽織った会社員もいる。制服姿の高校生たちは、ブレザーの上からマフラーまで巻いていた。 駅前のコンビニでは、入口近くに急ごしらえの棚が置かれ、その上に使い捨てカイロが並べられていたが、残っているのはほんの数個だった。「申し訳ありません、カイロはお一人様二個まででお願いします」 店員が言うと、レジに並んでいた中年男性が呆れたように笑った。「六月にカイロを買う羽目になるとは思わなかったよ。地球温暖化って、いったい何だったんだろうね」「本当ですよね。僕も昨日、冬物を押し入れから出しました」 店員も苦笑いしている。 誰も深刻そうではなかった。 寒いこと自体は確かに異常だが、まだ笑い話の範囲だった。 冬真も同じだった。 そのときはまだ、この寒さが人生を根こそぎ変えるとは考えていなかった。 電車はいつも通り混んでいた。 会社員たちはスマートフォンを眺め、高校生たちは眠そうな顔で吊り革につかまり、駅に着くたびに押し込まれる乗客へ小さな苛立ちを向けていた。 日常は正常だった。 少なくとも見た目には。 冬真が勤めているのは、物流
last updateÚltima actualización : 2026-09-02
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第2話 スーパーから野菜が消えた

第2話 スーパーから野菜が消えた 翌朝、神崎冬真は目覚まし時計が鳴るより先に目を覚ました。 寒かったからだ。 掛け布団の中にいるのに、頬に触れる空気が冷たい。寝ぼけたまま枕元のスマートフォンを手探りで取り、時刻を確認すると午前五時四十八分だった。 六月四日。 画面の天気表示には「東京都心 現在気温5.8℃」と出ている。「本当に六月かよ……」 冬真は布団の中で呟いた。 昨夜は暖房をつけずに寝た。六月に暖房を入れるという行為に、どうしても妙な抵抗があったからだ。 結果として寒さで目が覚めたのだから、意地を張った意味はほとんどない。 ベッドから出ると、裸足の足裏に床の冷たさが伝わってくる。 カーテンを開けると、空は鉛色だった。 昨夜の霰は積もってはいない。ただ、ベランダの手すりには薄く水滴が残り、それがところどころ白く凍っていた。 冬真はしばらく手すりを眺めた。 六月の東京。 早朝とはいえ、屋外に氷が残っている。「……いや、やっぱりおかしいだろ」 昨日も同じことを思ったが、一晩寝たところで状況は改善していなかった。 テレビをつける。 朝の情報番組では、司会者が厚手のジャケットを着ていた。『さて、全国的に季節外れの寒さが続いています。東京都心では今朝、六月としては観測史上最低水準となる気温を記録しました』 気象予報士が画面脇に立ち、日本列島を覆う青い色を指している。『上空に非常に強い寒気が流れ込んでいる影響ですが、今回の特徴は寒気がなかなか抜けないことです。ただし現時点では、週明け以降、徐々に平年並みへ戻る予想となっています』「また週明けか」 冬真は苦笑した。 昨日は「来週には戻る」と言っていた。 今日は「週明け以降」。 大した違いではない。けれど微妙に言い方が変わっているのが気になった。 コーヒーを淹れようとして、冷蔵庫を開ける。 牛乳が少ない。 卵も残り三つ。 野菜室を見ると、キャベツが半玉と、しなびかけたニンジン一本、玉ねぎが二個。 母親に昨日頼まれた白菜のことを思い出した。「帰りに買うか」 自分用の牛乳と卵もついでに買えばいい。 そんな、いつもと変わらない買い物のつもりだった。 会社では前日以上に海外からの連絡が増えていた。 午前中だけで北米支社から三件、ヨーロッパの取引先から二件。 冬真
last updateÚltima actualización : 2026-09-02
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第3話 今年だけだろ

第3話 今年だけだろ 六月五日の朝、神崎冬真が会社へ着くと、事務所の空気は昨日までとは少し違っていた。 別に誰かが青ざめているわけではないし、電話が鳴りっぱなしになっているわけでもない。いつも通りコーヒーを飲んでいる社員がいて、朝から営業成績について上司に小言を言われている若手もいる。コピー機の前では紙詰まりに苛立っている社員がおり、給湯室からは誰かが電子レンジで温めている弁当の匂いが漂っていた。 それでも、冬真には妙な違和感があった。 原因は大型モニターだった。 普段なら社内連絡や営業数字が映っている画面に、今日は海外ニュースが表示されていた。 アメリカ中西部。 フランス。 ドイツ。 カナダ。 中国東北部。 地図の上に、低温被害が確認された地域を示す青い印がいくつも並んでいる。「何ですか、これ」 鞄を机に置きながら冬真が尋ねると、隣の席にいた柴田が椅子を回した。「海外事業部から回ってきた資料ですよ。うちの顧客だけでも、農産物関係の倉庫が何か所も止まってるみたいです」「設備が?」「いや、それが設備じゃないんですよ。入れる物が来ないんです」 柴田は苦笑いした。「倉庫は元気なんです。機械も動くし、電気も来てる。でも農場から荷物が来ない。だから稼働率を落としたいって話ばっかりで」「どのくらい被害が出てるんだ」「まだ分かんないみたいです。現地も把握できてないらしくて。ただ、アメリカの担当者が言うには、霜で苗がやられた地域がかなり広いとか」 冬真はモニターを見上げた。 アメリカは世界でも有数の農業国だ。 日本に住んでいると、大都市や軍事、IT企業の印象の方が強いが、中西部には地平線まで続く農地がある。トウモロコシ、大豆
last updateÚltima actualización : 2026-09-12
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第4話 母の畑

第4話 母の畑 日曜日の朝、神崎冬真はいつもより一時間早く目を覚ました。 目覚まし時計が鳴る前だった。寒さに起こされたわけではない。昨夜は六月とは思えないほど冷え込んだので、さすがに意地を張るのをやめ、暖房をつけたまま眠った。それでも朝になると部屋にはどこか冬のような静けさがあり、窓の向こうには低い雲が重く垂れ込めていた。 スマートフォンで気温を確認する。 午前六時十二分、東京都心六度。 予想最高気温は十一度。「これで六月の最初の日曜か」 冬真はベッドの縁に座りながら呟いた。 テレビをつけると、朝のニュース番組では相変わらず低温の話題を扱っていた。ただ、数日前まで「珍しい寒さ」と笑いながら紹介していた番組の空気は少し変わっている。画面の下には国内各地の農作物被害が字幕で流れていた。『長野県ではレタスや白菜に霜害が確認され、群馬県でもキャベツの生育に深刻な影響が出ています。また北海道の一部ではジャガイモや豆類への被害が報告されており、農林水産省が詳しい調査を進めています』 司会者が神妙な顔をする。『スーパーでは野菜価格の高騰が続いていますが、今後さらに値上がりする可能性はあるのでしょうか』 農業経済の専門家が答える。『国内だけを見るなら、別の産地からの出荷や輸入によってある程度補うことは可能です。ただ、今回の特徴は海外の主要農業地域でも同時に低温被害が出ている点です。ですから例年と同じように、足りない分を海外から買えばいい、と単純には言えません』 冬真は着替える手を止めた。 昨日まで、自分が考えていたことと同じだった。 国内でなければ輸入すればいい。 しかし輸入元にもないのならどうする。 画面が切り替わり、アメリカ中西部の農地が映る。 畑の端に雪が残っていた。 別の映像では、農家ら
last updateÚltima actualización : 2026-09-13
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第5話 輸出停止

第5話 輸出停止 月曜日の朝、神崎冬真はいつもより十分早く家を出た。 理由は単純だった。昨夜からSNSで「米がない」「パンが一人二袋までになった」「缶詰が急に売れている」といった投稿が増えていたからだ。 冬真自身、そうした書き込みを全面的に信用しているわけではない。目立つ写真だけが拡散されている可能性もあるし、一部の店で品切れが起きただけかもしれない。だが、母親の畑を実際に見て、斉藤の話を聞いた後では、以前のように「ネットが騒いでいるだけ」と簡単に切り捨てることができなくなっていた。 駅前へ向かう途中、まだ開店前のスーパーの前を通った。 人が並んでいた。 十人や二十人ではない。 ざっと見ただけでも五十人以上はいる。 大半は高齢者だったが、スーツ姿の会社員や、小さな子供を連れた女性も混ざっていた。 冬真は歩みを緩めた。「何の列だよ」 入口には紙が貼られている。『本日の米類の販売について。多くのお客様に商品をお求めいただけるよう、精米はお一人様一袋までとさせていただきます』 その下には、『小麦粉、乾麺、即席麺、缶詰の一部商品についても購入点数を制限する場合がございます』 と書かれていた。 冬真は数秒立ち止まった。 まだ開店前だというのに、列の中ではすでに会話が飛び交っている。「昨日来たら米なかったのよ」「うちは孫がいるから十キロじゃ全然足りないの」「来週になったらもっと上がるってテレビで言ってたでしょう」「テレビは買い占めるなって言ってたよ」「そう言われても、なくなってからじゃ遅いじゃない」 最後の言葉に、冬真は何となく引っかかった。 なくなってからでは遅い。 理屈
last updateÚltima actualización : 2026-09-14
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第6話 妹からの電話

第6話 妹からの電話 六月十日の朝、神崎冬真は会社へ向かう電車の中で、久しぶりに立ったまま眠りそうになった。 ここ数日、帰宅してからニュースを確認する時間が増えていた。海外の穀物市場、農作物被害、輸出規制、国内の小売価格、物流会社の動き。どれも自分の専門分野ではないのに、一度気になり始めると際限がなかった。 午前二時近くまで海外記事を読み、結局、何が正しいのか分からないまま寝た。 そして朝になると、また一つ状況が悪くなっている。 車内のモニターにはニュース速報が流れていた。『北米で異常低温続く。主要穀物地域で再び霜害の恐れ』 その下には、『政府、食料価格高騰対策の検討を開始』 と表示されている。 冬真は吊り革につかまりながら、小さく息を吐いた。「対策を検討、か」 最近、聞き慣れた言葉だった。 検討する。 注視する。 状況を確認する。 適切に対応する。 別に政府を馬鹿にするつもりはない。 実際、何が起きているか分からない段階で、軽々しく大きな政策を打つわけにもいかないのだろう。 けれど、スーパーの棚は政府の会見を待ってはくれなかった。 昨日の夜、冬真が立ち寄った店では米が完全に消えていた。 入荷予定は未定。 小麦粉もほとんどない。 パスタ、乾麺、カップ麺までかなり減っていた。 まだ肉も魚も野菜も買える。 それなのに、保存の利く物から先に消えていく。 人間というのは不安になると、食べ物を「今日食べるもの」ではなく「明日も残っているもの」として見るようになるらしい。 会社に着くと、柴田が自席でコンビニのおにぎりを食べてい
last updateÚltima actualización : 2026-09-15
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第7話 最初の暴動

第7話 最初の暴動 六月十一日の朝、神崎冬真が目を覚ました時、テレビでは人が走っていた。 寝起きの頭では、最初それが何の映像なのか分からなかった。 薄暗い街。 割れたガラス。 道路へ倒れた自転車。 スーパーらしい建物の入口から、袋や箱を抱えた人間が次々に飛び出してくる。その向こうでは盾を構えた警察隊が列を作り、何かを叫びながら群衆を押し返していた。 冬真はベッドから起き上がり、音量を上げた。『食料価格の高騰に対する抗議デモは昨夜、大規模な暴動へ発展しました。当局の発表によりますと、これまでに十二人が死亡、百人以上が負傷しています』 画面が切り替わる。 泣いている女性。 路上に座り込む老人。 警察官に取り押さえられる若者。 地面には破れた小麦粉の袋が落ち、白い粉が雪のように散っていた。『暴動の直接のきっかけとなったのは、大手スーパーマーケットが小麦粉の販売を一世帯二袋までに制限したことだとみられています。食料価格はこの一週間で急騰しており、市民の不満が高まっていました』「小麦粉で十二人かよ……」 冬真は思わず呟いた。 人間が小麦粉のために死んだ。 もちろん、実際には小麦粉だけが原因ではないのだろう。 生活費。 失業。 食料価格。 政府への不満。 不安。 怒り。 長い間積もったものが、販売制限という小さなきっかけで爆発した。 だがニュース映像だけを見れば、そうとしか見えなかった。 食べ物を買えなかった人間が怒り、店へ押し入り、警察とぶつかって死者が出た。 冬真は冷蔵庫
last updateÚltima actualización : 2026-09-16
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第8話 ガソリン

第8話 ガソリン 翌朝、神崎冬真が自宅を出た時、最初に感じたのは寒さではなかった。 道路が詰まっている。 普段なら住宅街の細い道を抜け、駅前へ向かう車が途切れなく流れている時間だが、その日は妙に進みが遅かった。クラクションまで聞こえてくる。 何か事故でもあったのかと思いながら歩いていくと、原因はすぐに分かった。 大通り沿いのガソリンスタンドだった。 給油を待つ車が道路へはみ出し、その列が交差点を越えている。ざっと見ただけでも五十台以上は並んでいた。「朝から、こんなに?」 冬真は歩道で足を止めた。 スタンドの入口には店員が二人立ち、車を誘導している。電光掲示板には大きく「レギュラー 在庫あり」と表示され、その下に臨時の貼り紙が出ていた。『混雑のため、一台につき給油上限三十リットルとさせていただきます』 車列の中では運転席の窓を開け、苛立った顔で前を見ている人が多い。 冬真の横を、自転車に乗った老人が通り過ぎながら呆れたように言った。「みんな昨日のニュース見て来たんだろうなあ」 誰に話しかけたのか分からなかったが、冬真は思わず返した。「燃料不足になるって話ですか」「不足するとは言ってなかったけどね。値上がりするかもしれないって言われたら、みんな満タンにしたくなるだろう」「そうですね」「俺なんか車ほとんど乗らないから関係ないけどさ。昔のオイルショックみたいにならなきゃいいんだけどねえ」 老人はそう言って、自転車で去っていった。 冬真はしばらく列を眺めた。 昨日の夜、テレビではガソリンや灯油の卸売価格上昇を報じていた。 供給が止まるとは言っていなかった。 にもかかわらず、人は並ぶ。 米の時と同
last updateÚltima actualización : 2026-09-17
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第9話 東京、七月、雪

第9話 東京、七月、雪 六月十二日の朝、神崎冬真はカーテンを開けたまま、しばらく窓の前から動けなかった。 昨夜の天気予報では、早朝に霙が混じる可能性があるとは言っていた。 それでも積もるとは聞いていない。 向かいのマンションの屋根が白い。 歩道の植え込みにも薄く雪が乗り、道路脇に停められている車の屋根は、まるで冬の朝のように白くなっていた。 さすがに路面までは積もっていない。アスファルトに落ちた雪は水に変わり、排水溝へ流れている。 それでも六月十二日だった。 冬真はスマートフォンを手に取り、外を一枚撮った。 撮ってから、自分が何のために写真を残したのか分からなくなった。「陽菜にでも送るか」 メッセージアプリを開くより先に、陽菜から写真が送られてきた。『こっちも白い。笑えないんだけど』 冬真は自分の写真も送った。『同じだ』 すぐ電話がかかってくる。『お兄ちゃん、今日会社行く?』「行くよ」『普通に?』「電車動いてるからな」『テレビ、不要不急の外出控えろって言ってるよ』「それ、大雪の地域だろ。東京はこの程度なら問題ない」『この程度って、六月に雪積もってるんだけど』「季節の話と交通の話は別だろ」『会社員って怖いね』「お前は?」『うち、午前中在宅になった。午後は状況見て判断だって』「いい会社じゃないか」『こういう時だけね。普段は編集修正、夜中でも飛んでくるけど』「在宅でも仕事は仕事だろ」『そういう正論、朝からいらない』 冬真は少し
last updateÚltima actualización : 2026-09-18
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第10話 政府緊急会見

第10話 政府緊急会見 七月二日の朝、東京の雪はまだ完全には消えていなかった。 大通りでは除雪車が走り、駅前には踏み固められた雪が黒く汚れて残っている。道路の中央こそ車が通れる程度には回復していたが、歩道には凍結した箇所が多く、転倒して救急搬送される人が相次いでいると朝のニュースが伝えていた。 神崎冬真は窓辺に立ち、昨夜より少し薄くなった雪景色を眺めながらコーヒーを飲んでいた。 テレビでは、午前九時から政府が緊急記者会見を開くと繰り返し告知している。『政府は昨日から関係省庁による対策会議を続けており、食料供給、電力、燃料、交通網、農業被害などについて総合的な対応方針を発表する予定です』 冬真はカップを置いた。 午前九時。 いつもなら会社にいる時間だ。 だが今日は、高木課長から「午前中は自宅待機」と連絡が来ていた。鉄道は一部復旧したものの、運行本数が少なく、会社側も現場対応要員以外の出勤を抑えている。 昨日まで「通常勤務」を維持しようとしていた会社が、一日で方針を変えた。 それだけでも事態の深刻さが伝わってきた。 スマートフォンが震える。 柴田から社内チャットだった。『神崎さん、生きてます?』『生きてる』『うち子供大喜びです。庭で雪だるま作ってます』『元気だな』『嫁は泣きそうな顔してますけどね』 冬真は少し眉をひそめた。『何かあった?』『スーパー昨日から閉まってるんですよ。道路凍って配送来てないみたいで』『食料あるのか』『今のところは。親父が送ってきた米十五キロが神に見えます』『大事に食え』『そうします』 少しして、柴田からもう一通来た。
last updateÚltima actualización : 2026-09-19
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