少女が着た、色褪せたボロ布のような衣服はブラウスの前ボタン数個が不自然に着乱されており、まるで誰かから良からぬことをされそうになった気配を漂わせている。そんな彼女の姿を見るなり、ランディリックは瞬時に表情を変えてその身を翻した。「リリアンナ!」 その名を呼んで駆け寄ったランディリックの前で、少女――リリアンナ・オブ・ウールウォードは、全身の力が抜けたように膝から崩れ落ちそうになる。 咄嗟にランディリックが支えなかったらきっと、地べたへペタンと這いつくばってしまっていただろう。「助けて……。お願い……。助けて……!」 ランディリックの腕の中、か細い声でそう呟いたリリアンナが、堪え切れないみたいにポロポロと涙をこぼす。 ランディリックは無言でその小さな身体を抱きとめ、震える肩を優しく支えた。 その瞳には、燃えるような怒りが宿っていた。「よく、耐えてくれたな、リリアンナ。もう、誰にもお前を侮辱させない」 その言葉の端々に、ひた隠しにしていた情が滲む。 視線の先には今にも逃げようとしているダーレンの姿があった。 ランディリックの視線ですぐさま背後に控えた者たちがダーレンを取り押さえてエダとダフネの傍へつき飛ばす。 ややしてランディリックは怯えた女中たちと言葉を失ったダーレンとエダ、そうしてダフネの方をひたと見据えると、声を潜めるようにして告げた。「この瞬間をもって、ウールウォード伯爵家の継承権はリリアンナ嬢が正式に掌握する。……以後、この屋敷と領地は彼女の名のもとに置かれる。あなた方の居場所は、もうどこにもない!」 その言葉に、ダーレンたちの顔から血の気が引いた。 しばしの沈黙ののち、妻のエダにつつかれたダーレンが、ちらりと娘のダフネを見遣る。ダフネから泣きそうな目で訴えかけられたダーレンが震える手を挙げ、何かを訴えようと口を開くより早く、ランディリックの低く鋭い声が空気を裂く。「……せめてお嬢
Last Updated : 2026-09-18 Read more