All Chapters of ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する: Chapter 41

41 Chapters

9.揺らぐ日常⑦

「よかった……! 本当によかった……!」 カイルの手を強く握りしめるリリアンナの姿が遠目にも見える。 医務室戸口でそんなリリアンナの姿をちらりと認めたランディリックは、はやる気持ちをグッと抑えながら城主としての勤めを果たすべくセイレンと軽く話してから、彼を伴ってカイルのベッドサイドまでやって来た。 目の前まで来てみれば、カイルがリリアンナのことを「リリー嬢」と呼び掛けているのが聞こえてきた。そんな男の名を何度も何度も呼びながら涙目でカイルの手を握るリリアンナの姿は、さながら愛しい恋人とのひと時みたいに見えた。 それを目の当たりにしたランディリックは、胸の奥で説明しがたいざわめきが生まれるのを自覚した。だが当然のこと、態度に出すことは憚られる感情だ。「カイル、意識を取り戻せて何よりだ」 握った拳を外套の影に隠し、声は平然を装ったまま。内心の動揺を悟らせないよう細心の注意を払う。 そんなランディリックたちに向かって、セイレンがカイルの病状説明を始めた。「……ひとまず峠は越えました。しかしながら傷はまだ癒え切っておりません。しばらくの間、利き手は思うように動かせませんし、無理をし過ぎれば再び傷口が開き、熱に伏す可能性が高うございます」 その言葉に、リリアンナの瞳が大きく見開かれた。「利き手が……使えない……?」 彼女は一瞬だけ唇を噛み、それから勢いよく顔を上げた。「だったら、私が……!」 強く握り締めていたカイルの手を包み込み、潤んだ瞳で真っ直ぐに言い放つ。「私がカイルの手になるわ!」「リリー嬢……」 驚きと戸惑いを滲ませながらも、呼びかけるカイルの声音には、少しばかりの喜びが混じっているように思えた。 それに気付いた瞬間、ランディリックの胸にドロリとした感情が渦巻く。(…&he
last updateLast Updated : 2026-10-21
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