スカーレット/レイヴンの視点一歩足を踏み入れた瞬間、すべてがこれまでの世界とは異なっていた。真っ先に私の感覚を捉えたのは、香水の匂いだった。味覚で感じ取れそうなほど濃密に空気中に立ち込め、正体の判別がつかないより柔らかな香りの上に幾重にも重なり合っている。その香煙の下から、艶やかな笑い声や、磨かれた床板を打つ踵の軽快な音、そして建物の隅々に絡みつくような緩やかな調べが漂ってきた。深紅の豪奢なカーテンが廊下を縁取り、壮麗なシャンデリアの下でその金の縁飾りが怪しく煌めいている。温かみのある間接照明がすべてを柔らかく霞ませ、その空間を、人が実際に足を踏み入れる現実の場所というよりは、どこか夢想の産物のように見せていた。私は入り口の内側ですぐに足を止めた。アルファ・ディミトリは止まらなかった。宿を出た瞬間から、自らがどこへ向かうべきかを寸分の狂いもなく把握していたかのように、迷わず前へと進んでいく。私は信じていなかったのだ。アルファ・ディミトリが宿の女主人に一番近い娼館の場所を尋ねた時、私は彼があの女を黙らせるために口にしただけなのだと言い聞かせていた。悪趣味な冗談。ただ、それだけのことだと。車が本当にこのような建物の前で停車するなど、思いも寄らなかった。ましてや、二人でその中へ足を踏み入れることなど、天地が引っくり返ってもあり得ないはずだった。それなのに私たちは今、ここにいた。広々とした広間を行き交う女たちは、自らの身の置き所のなさを痛感させるほどの自然さで振る舞っており、その身に纏う薄布は、肉体の輪郭を隠す役目をほとんど果たしていなかった。剥き出しの肩には細い肩紐が頼りなく乗り、短すぎる裾は膝の遥か上で途切れ、胸元が大きく開いた衣服があらゆる男たちの彷徨う視線を惹きつけている。ビロードの椅子の背もたれに、さも当然の権利であるかのように気だるげにもたれかかる者もいれば、男の客の隣で肘掛けに腰をかけ、作り物とは思えないほど自然な仕草で甘い笑い声を漏らす者もいた。時折、階段を上がって姿を消していく男の姿があった。その手は、微笑む女によって優しく引かれている。自らがどこへ向かおうとしているのかを隠そうとする者など誰一人おらず、それを恥じる気配すら微塵も見当たらなかった。目の前に広がる光景に、思考が追いつかなかった。広間へと足を踏み入れるや否や、二人
Last Updated : 2026-10-18 Read more