第21話 これはデートじゃない。たぶん 待ち合わせ場所に現れた陽菜を見て、俺は一瞬だけ言葉を失った。 普段の陽菜は、大学なら動きやすそうな服が多い。陸上部の練習がある日はジャージ姿も珍しくないし、髪もだいたい高い位置でまとめている。 でも今日は違った。 白い薄手のブラウスに、淡い色のロングスカート。足元はスニーカーだから完全に着飾っているわけではないが、それでも大学で見る姿とは明らかに雰囲気が違う。髪も下ろしていて、肩のあたりで自然に揺れていた。 何より。 普通に可愛い。 かなり。「おはよう、悠真」「……おはよう」「何、その間」「別に」「今、絶対何か思ったでしょ」「朝から面倒だな」「まだ何もしてないんだけど」 陽菜は俺の前まで来ると、少しだけ自分の服を見下ろした。「変?」「いや」「似合ってない?」「そうじゃない」「じゃあ何」 ここで普通なら、「似合ってる」と言えばいい。 分かっている。 だが、それができるなら俺はもっと楽に生きている。「大学と違うなって」「それだけ?」「それだけじゃないけど」「じゃあ続き」「嫌だ」「何で!」 陽菜が笑いながらこちらを見る。「今日くらい言ってよ」「今日くらいって何」「せっかく休日に二人で出かけるんだから」 休日。 二人で出かける。 その言葉だけで、また少し意識する。「買い物だろ」「うん」「それだけ」「まだ言うんだ」「何が」「昨日玲奈先輩に『それデートじゃない?』って言われた」「俺も言われた」「白石先輩にも?」「言われた」「やっぱり」 陽菜は少し笑う。「で、悠真は何て答えたの」「買い物ですって」「私も」「ほら」「でも」「何」 陽菜は少しだけ目を逸らした。「デートって言われて、そんなに嫌じゃなかった」 朝から強い。「……そう」「悠真は?」「聞くなよ」「気になる」「俺も別に嫌ではない」 陽菜がぱっとこちらを見る。「ほんと?」「何でそんな嬉しそうなんだよ」「嬉しいから」「最近本当に隠さないな」「悠真も前より隠さなくなったじゃん」「お前ほどじゃない」「そうかな」「そうだよ」 そこで俺はようやく、陽菜の服をもう一度見た。 やっぱり似合っている。 もう逃げても仕方ない。「あと」「何?」「今日、似合っ
Last Updated : 2026-09-22 Read more