「ふむ、やはり美味しいな」 「神獣様にお褒めいただくなんて、光栄です!」 その日の昼下がり。ロロに褒められたマーサが、嬉しそうに頬を紅く染めていた。 美味しい紅茶と軽食が並んだテーブルに、隣には紅茶を傾ける黒髪青眼のイケメン。 朝と変わらないような光景だが、場所だけが違っていた。 沢山咲き誇る色とりどりの花々と、瑞々しい緑の木々。ユロメア家の庭師が手がける、王宮にだって劣らない美しい庭園だ。 準備されたガーデンテーブルには、美味しそうなサンドイッチやスコーンが並ぶ。いつもだったらうきうきするところだが、私はまだ、大きく溜め息をついていた。「昼食くらい、気晴らしになればと思ったけど……。やっぱり気が重いわね」 「先ほどの招待状のせいですか?」 心配そうなマーサの問いかけに、私は静かに頷いた。 今日も退屈な一日になりそうだ――なんて思っていた矢先。 王宮から届いたのは、舞踏会の招待状だった。 名目は、第二王子の誕生祝い――そう、あのヴォルシングの誕生日だ。(そういえば、この時期だったわよね……) 元婚約者として、毎年この時期には豪奢に着飾り、ヴォルグのパートナーを務めていた。 婚約破棄したとはいえ、名門ユロメア家の娘として、王家主催の行事を欠席するわけにはいかない。……が。 (主役の元婚約者で、今は神獣使いだなんて……悪い意味で注目されるじゃない) どうにもならないことだから、仕方がないと割り切るしかない。……本当に、気が重いけれど。「あまり溜め息ばかり吐いていては、幸せが逃げるぞ」 ロロが他人事のようにそう言うのに、私はジト目を返すことくらいしかできなかった。 そんな妙な空気の立ちこめるお茶会にやってきたのは、本日も麗しく、日傘を差したお母様だった。「ご機嫌よう、神獣様。お寛ぎのところ、ごめんなさいね」 「母君か。いや、我に気遣いは無用だ」 娘を差し置いて、脳天気に挨拶を交わす二人。どうやらこの二人、とても馬が合うようで……気
Last Updated : 2026-09-13 Read more