赤みがかった金髪に、王家特有の、強気な紫の瞳がぎらっと輝く。「第二王子殿下……」 突然ユロメア邸へと押しかけてきたのは、聖女アリサの婚約者である、第二王子のヴォルシング・アーヴェルトそのひとだった。 いくら王族とはいえ、先触れすらない大変失礼な訪問だ。ひと足先に玄関ホールへと出迎えにきていたお母様も、扇子で口元を隠しながら、目元を険しくしているのがわかる。「釣れないなぁ、ジュリエッタ。俺と君の仲じゃないか。そんな他人行儀な呼び方はやめてほしい」 丁寧な所作ではあるが、なんとなく違和感を感じた。ぞわりと肌が粟立つような感覚がある。 ……何より。彼との婚約はとっくに解消されているというのに、こう何度も名を呼び、馴れ馴れしく笑みを向けられるのはとても不愉快だ。 玄関ホールへの階段、その中ほどに立つ私のところまで、歩み寄ろうとでもいうのか。ヴォルシングがこちらを見上げ、足を踏み出した。「――止まって」 即座にぴしゃり、と強い口調を投げ、彼の歩みを止める。 人の姿でついて来ていたロロが、一瞬で有翼の大きな黒ヒョウの姿に変化すると、私の腰周りに擦り寄りながら、威嚇の唸り声を上げた。 滑らかなその背に触れると、手のひらに伝わる温もりが、心を奮い立たせてくれる。「貴方様との婚約は、とっくの昔に破棄されたはずです。私たちは今や他人同士。以前も申し上げましたが、その様に馴れ馴れしく名を呼ぶのはおやめください」 一瞬顔を歪めたヴォルシングだが、それでもめげることなく、ふっと笑みを浮かべてみせた。(私の知る彼は、こんな顔をする人ではなかったのに。一体何が……) 「それで、ご用件はなんでしょう?」 「君と話がしたいんだ。少し時間をくれないか?」 「わかりました。では、この場でお伺い致します」 「この場で……とは?玄関で?」 「ええ。この場所で、お話しください」 一度婚約破棄をした以上、2人きりになんてなる気は毛頭ない。礼を欠いた訪問をしたのはあちらなのだし、
최신 업데이트 : 2026-09-28 더 보기