悪役令嬢の私、神獣拾っちゃいました의 모든 챕터: 챕터 41 - 챕터 49

49 챕터

第41話 元婚約者との決別

   赤みがかった金髪に、王家特有の、強気な紫の瞳がぎらっと輝く。「第二王子殿下……」 突然ユロメア邸へと押しかけてきたのは、聖女アリサの婚約者である、第二王子のヴォルシング・アーヴェルトそのひとだった。  いくら王族とはいえ、先触れすらない大変失礼な訪問だ。ひと足先に玄関ホールへと出迎えにきていたお母様も、扇子で口元を隠しながら、目元を険しくしているのがわかる。「釣れないなぁ、ジュリエッタ。俺と君の仲じゃないか。そんな他人行儀な呼び方はやめてほしい」 丁寧な所作ではあるが、なんとなく違和感を感じた。ぞわりと肌が粟立つような感覚がある。  ……何より。彼との婚約はとっくに解消されているというのに、こう何度も名を呼び、馴れ馴れしく笑みを向けられるのはとても不愉快だ。  玄関ホールへの階段、その中ほどに立つ私のところまで、歩み寄ろうとでもいうのか。ヴォルシングがこちらを見上げ、足を踏み出した。「――止まって」 即座にぴしゃり、と強い口調を投げ、彼の歩みを止める。  人の姿でついて来ていたロロが、一瞬で有翼の大きな黒ヒョウの姿に変化すると、私の腰周りに擦り寄りながら、威嚇の唸り声を上げた。  滑らかなその背に触れると、手のひらに伝わる温もりが、心を奮い立たせてくれる。「貴方様との婚約は、とっくの昔に破棄されたはずです。私たちは今や他人同士。以前も申し上げましたが、その様に馴れ馴れしく名を呼ぶのはおやめください」 一瞬顔を歪めたヴォルシングだが、それでもめげることなく、ふっと笑みを浮かべてみせた。(私の知る彼は、こんな顔をする人ではなかったのに。一体何が……) 「それで、ご用件はなんでしょう?」 「君と話がしたいんだ。少し時間をくれないか?」 「わかりました。では、この場でお伺い致します」 「この場で……とは?玄関で?」 「ええ。この場所で、お話しください」 一度婚約破棄をした以上、2人きりになんてなる気は毛頭ない。礼を欠いた訪問をしたのはあちらなのだし、
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第42話 貴方の腕に囚われて

  第二王子ヴォルシングの急な訪問は、すぐに|ユロメア公爵《お父様》へと報告され、それを聞きつけたアルト兄様とウォルター兄様が激怒し、その日王城内はちょっとした騒ぎになったそうだ。  お兄様方が「ヴォルシング殿下を殴り飛ばす」と息巻いているのを、同僚の貴族たち、騎士たちが必死になって止めたが、少なくない怪我人も出たようだ。  王族への不敬罪に取られてもおかしくないこの一件について、第二王子の勝手な訪問が原因だからと、寛大な減罰をしてくれた国王陛下には頭があがらない。危うく国外追放されてもおかしくはない暴れっぷりだった兄2人だが、陛下の気遣いを含んだ判断により、2週間の自宅謹慎を言い渡されるだけで済んだ。  普段温厚なお父様はといえば、兄たちへの寛大な処罰に感謝しつつも、第二王子の礼に欠いた訪問については、しっかりと国王陛下へ異議を申し立てたらしい。  国王陛下から内密に、私への謝罪が綴られた私信を持ち帰ったお父様は、私をじっと見つめた後、「今回の件。周囲がなんと言おうと、お前の判断を尊重する」と言って、頭を撫でてくれた。  自分は本当に、家族の愛に恵まれているのだと、改めて感じて、ちょっぴり涙が滲んでしまった。  そんな騒動ばかりで忙しかった一日がやっと終わる、という夜も更けた時間帯――。  ベッドに横になろうかと思っていたその時に、突然……彼は現れた。  「リーエ。客が来ているようだぞ」 「え?」 ベッドの足元で、大きな豹のような獣姿で丸くなっていたロロが、ふと窓の方へと顔を向けた。(客……?え?どういう……) 混乱する私は、次いで聞こえたコツコツという音に、瞬きする。「窓の外に、誰かいるってこと?」 「そうだ。……はぁ。まったく。面倒臭いヤツだな」 大きな溜息をついたロロが、一瞬で人型に変身した。よいしょ、と立ち上がったと思えば、すたすたと寝室の扉へ向かって歩いていく。「ちょっとロロ」 「大丈夫だ。警戒しなきゃいけないような相手じゃない。俺は向こうに居るから、気が済んだら呼んでくれ」
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第43話 孤児と誘拐

 「ミオ!予備のお皿、出してもらえる?」 「はい、ジュリエッタ様!」 腕まくりをして次のスープを皿によそいながら、背後のミオへ指示を出す。お皿に入れられた野菜たっぷりのスープは、笑顔が眩しい子供達へとロロが渡してくれている。  今日の私たちは、どんよりとした曇り空の下、首都のはずれにある孤児院へと炊き出しに来ていた。  孤児院の子供達だけでなく、周辺の貧しい家庭へ向けての炊き出しも兼ねている。ユロメアの屋敷からついてきてくれたマーサや侍女たちが協力してくれ、スープにパン、お菓子なども配っていた。  どこで炊き出しをしても歓迎してもらえているのは、私が神獣使いだということも関係しているのかもしれないが…。(神獣使いと言っても、神聖力はロロに頼り切りだから、私1人では何もできないんだけど…。名前だけだとしても、自分にできることはしたい、と思う) 食事を配り終えた後は、孤児院の庭で、子供達とゆったり遊んで過ごす。  本を読んだり、追いかけっこをしたり。子供と一緒に遊ぶのはとても体力が必要で、初めの頃は大変だったけれど…。今では、夕暮れまで一緒に遊んでも、体力が保つようになっていた。  遊び疲れた子供達を前に、本の読み聞かせをしていた最中。「そろそろ夕ご飯だって!」 「お手伝いしてー!」 夕暮れで辺りが染まる中、建物から、年長の子供の呼ぶ声が聞こえてきた。「私たちも、そろそろお暇しないとね」 「そうだな」 大型の猫の姿で寛いでいたロロは、くああっと伸びをした。  屋敷の侍女たちは先に帰らせているので、残るはミオたち護衛の騎士数人と、私たちだけだ。「ええー、まだよんでもらいたいのに!」 「続きは夕食後にしましょう?ほら、お手伝いしにいかなくちゃ」 「うん…」 少しだけ不満そうにしながらも、ふざけあい、笑い声をあげながら建物へと駆けていく子供達。(今日も一日、何事もなくてよかったわ) 穏やかな気持ちで、彼らを追いかけようと歩き出す。  しかし数歩もいかない
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第44話 女神の気配

 「……アリサさん。やっぱり貴女だったのね」 縛られた両手をついて、上体を起こす。月明かりを背に、聖女アリサはにっこりと笑っていた。「こんばんは、ジュリエッタさん。気分はいかが?」 愛らしい声で歌うように言って、アリサは手に持っていたランプを床に置く。彼女の背後にある扉の向こうには、鬱蒼と茂る夜色の木々たちと、松明を持った体格のいい男たちの姿が垣間見えた。  相手がアリサひとりだったなら、私の聖属性魔法でも逃げ出すことができたかもしれないが…見える範囲だけでも3人の男たちが、それぞれに斧や剣などの獲物を腰に下げている。さすがにこの人数を相手に、正面突破は難しそうだ。「まったく。貴女ってほんっとうにお人好しよねぇ。暗殺者を片っ端から返り討ちにしていたくせに、子供を使った途端にあっさりと捕まってくれちゃうなんて。どこまでいい人ぶるつもりなのかしら?外面ばっかり良くて、ほんっとうにムカつく」 「あの暗殺者たちも、貴女が仕向けていたのね?」 「私がっていうかあ、神殿がね? 特別な部隊だかなんだか知らないけれど、どいつもこいつも役立たずだったわ」 かび臭い部屋に不釣り合いな、夜色にきらきらと光るドレスが揺れる。  綺麗な黒髪に、黒のドレスを纏ったアリサは、聖女というよりも魔女のような、邪悪な美しさを見せていた。  ドレスの裾が汚れるのも構わず、私の前にしゃがみ込んだアリサ。彼女はクスクスと笑いながら、私のあごに指をかけると、顔を上向かせた。  歪んだ笑顔を、キッと睨み返す。「私ねぇ、ジュリエッタさん。貴女に死んでもらいたいの」 「お断りするわ。聖女であろうがなかろうが、誰かの死を願うなんて、許されることじゃないもの」 「許し? そんなもの関係ないって。私は貴女が嫌いで、大嫌いで、死んで欲しいの。ただそれだけだよ?」 まるで、なんでもないことのようにきょとん、と首を傾げて見せるアリサから、ふわりと甘い香りが漂った。「……?」 (なんだろう、この匂い……香水じゃない、なんだか、胸が悪くなるような……) 少ない月明かりの
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第45話 女神の代行者

  それは不思議な感覚だった。  温かく優しい力が全身を包みこむ、心地良さ。先ほどまで痛んでいた身体のあちこちが、どんどんと治癒していく。(これが、女神様の神聖力……) たった一瞬だったけれど、女神の声が聞こえた。  次いで神聖力が身体に流れ込んできたと同時――女神の、強い願いも心へ届いていた。  頭がぼうっとする一方、私に宿った女神の意志が、私の身体を動かした。  持ち上げた腕を、さらりと横に払う。  自然な動作にも関わらず、神聖力がうねるように動き、たちまち私たちを閉じ込めていた小屋が豪快な音を立てて吹き飛んだ。「きゃあああああ!」 「なんだ⁈何が起きた……⁈」 頭を抱えて悲鳴を上げるアリサと、突然の事態にどよめく、小屋の周囲にいた男たち。「何、なになに!なんなの、何が起こってるのぉ…⁈」 「……アリサさん」 半泣きでうずくまる彼女へと一歩踏み出す。「女神様が、嘆いているわ。貴女が穢れてしまったと」 「は……?」 目を見開いたアリサさんは、突然ハッとしたように自身のうなじに手を当てた。じっとその部分を見つめると、先ほどから見えていた黒いもやは、そこが発生源だったのだとわかる。  どうすればいいのか、は、女神の意志が、直接身体へと伝えてくれた。  彼女のうなじへと伸ばした手は、アリサの手に叩き払われた。「触らないでよ!」 怯えたようにこちらを睨むアリサは、周囲の男たちへと喚く。「ちょっと!貴方たち、何突っ立ってるのよ……!早く!この女を止めて!近づけないで……ッ!」 小屋が弾け飛んだ衝撃で、あちこちに転がり呻いていた男達は、次々と起き上がりにじり寄ってこようとする。「――邪魔しないでくださる?」 睨みすえると、身体からぶわりと光の粒子が勢いよく広がり……その粒子の波に触れた大男たちは、波にのし掛かられるようにして、次々と地面へ押さえつけられていった。(これで、邪魔は入らない…) アリ
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第46話 出立の朝

  そよそよと心地良い風が、窓際のカーテンを揺らす。  静かな昼下がり。膝の上で丸くなった子猫姿のロロを撫でながら、ジュリエッタは青空を眺めていた。  小さなノックの音と共に、マーサが顔を出した。「あらお嬢様!もうお支度済まされてしまったんですか?本日はお身体の調子は悪くありませんか?ご気分は……」 「マーサったら大袈裟ね。もう2週間も経つのに、まだそうやって心配ばかりして」 「まだ2週間ですよ。……そうです。まだ、2週間なんです……」 ぐす、と涙ぐむ声に、私は困ってしまう。「マーサ……」 「それなのに……お嬢様、本気なんですか?」 「ええ。もう、決めたことだから」 その声に、迷いの色は全くなかった。  マーサも、それ以上は何も言わず、静かに頭を下げる。「……お嬢様がそう決められたなら、私は従うまでです。たとえそれが、遠く離れた地であろうとも」 「……ありがとう」 マーサの深い愛情に、ほんの少し、うるっときてしまった。「ナナリーは、先に向こうに行っているのよね?」 「はい。お嬢様のことをローザマリー様へお伝えした後、そのままあちらでお嬢様のお迎え準備をしております」 私が隣国に行くと聞いて、いち早く動いたのはナナリーだった。  叔母様の元へ私の願いを伝える役目も買って出てくれて、彼女はもう一週間前から隣国の叔母様の屋敷に滞在してくれているらしい。『私はジュリエッタ様の侍女です!絶対にお連れください!』 泣くでもなく、真っ直ぐな瞳でこちらを見上げてきた彼女の芯の強さは、眩しい程だった。  別の使用人が持ち帰った叔母様からの返事には、ナナリーを褒める言葉がずらりと並んでいた。「早く行かなくちゃ。ナナリーが寂しがってしまうわ」 「そうですわね。……では、参りましょうか」 涙をこらえて、マーサと一緒に荷物の確認をした。  がらんと整理された部屋。荷造りされた数個のトランクと、遠出用の、いつもより豪華なドレス。  最後
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第47話 言ってよ。好きだって

  すぐに通された謁見の間は、人払いがされていた。  すぅ、と息を吸いこみ、腹部に力を入れ口を開く。「ジュリエッタ・ユロメア。両陛下へ出立のご挨拶に参りました」 「待っていたぞ、ジュリエッタ。顔を上げなさい」 さらりと広げていたスカートを放して、姿勢を正す。玉座に座る国王陛下と王妃殿下は、寂しさが滲む瞳でこちらを見下ろしていた。「その外出着……。本当に、国を出るつもりなのですね」 「はい、王妃殿下」 「本当に寂しくなるわ。……貴女はいずれ、王室に嫁いできてくれるものだと、そう思っていたから……ごめんなさい」 「そう泣くな。ジュリエッタが、国を離れづらくなってしまうだろう」 話しながら、はらはらと溢れる涙を拭う王妃殿下に、玉座を立った国王陛下が寄り添い、肩を抱いた。「かくいうわしも、本心としては引き留めたい気持ちでいっぱいだがな。ジュリエッタ以上に、国を任せられると思える令嬢はいないゆえ」 「……申し訳ございません。そのように仰って頂いて、とても光栄です」 再び深く頭を下げた私に、国王陛下は優しく頷いてくれた。「良い。そなたの事情についても、聞いておる。何より、そなた自身の意思を尊重したい。……新しい土地でも、元気で過ごすのだぞ」 「ありがとうございます。国王陛下。王妃殿下」 最後にもう一度、丁寧に礼をして、その場を退室する。  謁見室の扉が閉まりきる最後まで、国王陛下と王妃殿下は、寄り添いながら手を振ってくれていた。「それじゃあ……挨拶も済んだし、私は行きますね」 ここまでずっと付き添ってくれていた父に、声を掛ける。いつも疲れたような顔で、困ったように眉間に皺を寄せてばかりいる父は……今、いつも以上に眉間の皺を深くして、くしゃりと歪めた顔で私を見ていた。「ああ……そうだな。いつ、レイナルド殿下に気づかれるかわからない。早く行った方がいいだろう」 涙ぐむような声に、こちらまで涙腺が緩んでしまいそうだ。ふるふると頭を振って、精一杯の笑顔を返した。  気遣いを嬉し
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第48話 庭園は祝福に照らされて

  がばりと、私の方から腕を伸ばし、レイの身体をぎゅううと抱き締める。「――好きよ、レイ――貴方のことが、好きなの……!」 「リーエ……っ」 抱き締め返される力と、口にしてはいけない想いを口にした反動と……素直な気持ちをやっと口にできた安心感に、堰を切ったように涙が溢れた。  好きよ、と譫言のように呟きながら泣き続ける私を、レイはひたすらに抱き締めていてくれた。  ……どれくらい泣いていたのだろう。  ぐすぐすと微かに涙を引きずりながらもどうにか泣き止んだ私は、ぼんやりとした思考でレイの胸元に顔を寄せていた。  ガゼボの周囲、爽やかな風に揺れる、色とりどりの華々が眩しい。  黙ったままの私の髪を、レイが撫でてくれている。優しい手つきまでもが、私を好きだと言ってくれているようで、嬉しい反面、胸の痛みはまだ、続いていた。「……君が素直になってくれて、本当によかったよ」 レイが心底安堵したような溜め息を吐く。「君を迎え入れる為だけに、この数ヶ月苦労してきたんだ。倒れた君にも会いに行けず、方々走り回っていたというのに……。隣国になんて逃げられていたら、全てが水の泡だったよ」 「会いに来てくれなかった理由はわかりましたけど。迎え入れるためって、どういう意味なの?」 「言葉通りの意味さ。第一王子である僕の妃として、ジュリエッタ、君を王室に迎え入れる準備をしていたんだ」 「……レイ。貴方、大切なことを忘れているんじゃない? 私、貴方の弟に婚約破棄されてるのよ」 「そうだね」 なんでもないことのように相づちを打つ彼に、少しだけむっとする。(私がどれだけ悩んだか、わかってるのかしら?) 「弟の元婚約者を妃にするだなんて、民にも貴族にも反対されるわ。陛下たちだって……」 「そこは問題ないよ。父上も王妃殿下も、君のことをあんなにも気に入っているんだ。君が了承さえしてくれたら、反対する人なんていない」 「そんな簡単な話じゃないでしょう? 貴族や国民達にはどう説明するつもり?」 「それも、抜かりない
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終話 祝福の光 

  ガゼボでの婚約宣言直後、私は大忙しになった。  宰相である父と、あの場に集まっていた皆全員で謁見の間へと戻り、国王陛下と王妃殿下へと報告をしたのだが……お二人はあまりにも喜んで泣き出してしまい、もの凄く焦った。  叔母様の元へ永住するつもりで荷造りしていた私の荷物は、謁見の間であたふたしている内に、ちゃっかりと第一王子の宮殿へと運び込まれていて、この日からもう、私は王宮で暮らすことになった。  レイからの強い希望なのが一番だったが……嬉し涙が止まらなくなってしまった王妃殿下に縋られたら、さすがの父も否とは言えなかったようだ。  急遽開かれた王室の晩餐会には、屋敷に残ったままだった母も招待された。  母は微かに目を潤ませながらも、私の手を取って微笑んでくれた。「殿下を大切にするのよ。貴女のために、こうして貴女が幸せになれる選択ができるようにしてくれた、彼の愛に感謝する気持ちを、忘れないようにね」 「はい、お母様」 「まぁ……もしも万が一、貴女を悲しませるようなことを彼がするようだったら。いつでも私に相談しにいらっしゃい。王妃殿下と私は、いつでも貴女の味方ですからね」 扇で隠した口元で、優雅にさらりと頼もしいことを言う母に、つい笑ってしまった。  マーサは侍女として一緒に王城に残ることになり、寂しがって私から離れようとしない、困った兄ふたりは、母に引きずられて屋敷へと帰っていった。  私に用意されたのは、調度品も華やかで、公爵家よりも豪華な、王子妃のための部屋だ。  隣にはレイの部屋があり、廊下に出ずとも行き来できるように、内扉がついている。「正式な婚約発表をするまでは、絶対に使わないから安心して」 レイはそう言って、扉の鍵を私に預けてくれたので、この夜は、大きな豹くらいのサイズのロロを抱き枕にして、ぐっすりと眠ることが出来た。  翌日には、叔母様の屋敷にいるはずのナナリーが私の下へとやってきて、とても驚いた。  なんとレイが、前もって呼び戻していたらしい。彼の用意周到ぶりに呆れながらも、ナナリーと再会できたことは嬉しかった。  私とレイの婚約
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