悪役令嬢の私、神獣拾っちゃいました의 모든 챕터: 챕터 31 - 챕터 40

49 챕터

第31話 第一王子の噂

  アリアド王妃のお茶会で起きたことは、参加していた夫人達によって瞬く間に噂として広がっていった。  その結果、聖女アリサへの不信感を口に出す者が現れたり、聖女に関する良くない噂も立ち始め……反対に、今まで悪女として嫌煙されていた私の元へは、次から次へと夜会やお茶会への招待状が届くようになっていた。(誰も彼も、態度があからさますぎるのよね) 小さく溜め息をつきながら、それを隠すため手に持ったグラスを傾けた。  燦々と日が差し込む、サロンでの、立食形式のティーパーティー。  ふわりとしたチュールフリルが、私にしては少し可愛らしすぎるような、そんなラベンダー色のデイドレスを着て、ジュリエッタはある伯爵家へと来ていた。(お母様のお友達からの招待で、断れもしなくて来たけど……) 窓際で日を浴びながら、足元で大きく欠伸をするのは、まるで黒豹のような姿のロロだ。  いつも護衛として何処へでもついてきてくれるミオだが、今日に限って外せない用事が出来てしまい、「ならば俺が護衛をしよう」と、ロロは人型ではなく、威圧感増し増しの獣姿でついてきたというわけだ。  最初、会場に入れてもらえないのでは、と心配したが、ロロが神獣だということは周知の事実だったので、どうぞどうぞと止められることもなくこの場にいる。  まあ……足下にこんな大きな獣を従えているせいか、周りに他の貴族や令嬢が寄り付かないので、誰とも話せず暇すぎるのだが。  時折、ちらちらと視線を感じはするが、実際に話しかけてくる猛者は居ない。アリアド王妃の茶会について、色々なことを根掘り葉掘り聞かれるよりは良かったのかもしれない、と、前むきに考えることにした。(さて。きちんと顔は出したんだし、そろそろ帰ろうかな……) 誰とも話さず、ロロとひなたぼっこをするだけなら、早く屋敷に帰りたい。(この飲み物が空になったら帰ろう) 手に持ったグラスには、まだ少し、薄い金色のシャンパンが残っている。  日差しをキラリ、と反射した輝きに、また彼のことを思い出してしまって、チクリと胸が痛んだ。  このところ
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第32話 聖女と第一王子

  レイからの思いがけない返事に、ジュリエッタが動揺しつつも、再会の日を待ち遠しく思い、そわそわと落ち着きなく過ごし始めた一方で――。  聖女アリサは、国王から、王家の人たちが揃う晩餐会へと招待されていた。 (はぁ……コルセット苦しい) いつもなら、肌触りの最高な高級部屋着を着て、自室でのんびり怠惰に食事の時間を過ごすのに。  今日は国王の前に出るのだからと、いつもより時間をかけて準備をされ、ぎゅうぎゅうとコルセットを絞められ……動きづらい、フリルのたくさん重なったドレスを着させられた。  綺麗なドレスで自分を着飾るのは大好きだが、こうも体調が悪い時だと、ただただ怠くて面倒だった。「聖女様が到着されました」 案内の侍女が、食事ホールへと告げる。「遅くなってすみませ……」 嫌々顔を上げて――ホールの中にいた、初めて見るその人に、視線が釘付けになった。(――え、誰?このイケメン) 凛とした立ち姿のその人は、動くたびさらりと揺れる、長いプラチナブロンドの髪を凛々しくひとつに括っていた。床へと伏せられた瞳が、ゆっくりとこちらを見ると、その深過ぎる紫の美しさに、息が止まるかと思った。その瞳は冷たく、会釈するように軽く動いただけで、すぐに背けられてしまう。(なんなの……ものすっごい綺麗な男じゃない……!) 一瞬で心を奪われる、そんな美しさに言葉を失っていると、ヴォルグ様がこちらまで歩いてきた。「アリサ、席に……」 ヴォルグが促すように私の手を取ろうとしたが、衝動的にそれを振り払う。今は、それどころではない。「陛下!今日は王家の晩餐会と聞きました!そこの方はどなたですか?」 (あの人が誰なのか、確かめなくちゃ!) 前のめりに尋ねると、国王はひとつ頷いて、美しい彼へと優しい視線を向けた。「ああ。今日聖女を呼んだのは、顔合わせのためだったんだよ。それはわしの息子――第一王子のレイナルドだ」 (第一王子、ですって……⁈) こんなに美しい男
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第33話 王国の異変

  レイとの再会を待ち遠しく思いながら、私は忙しい日々を送っていた。「ジュリエッタさま!次はこれよんで!」 「ずるい!わりこんでくるなよ!」 「つぎは!つぎはわたしー!」 わちゃわちゃと群れてくる子供達に囲まれて、なんとも癒される空間だ。「みんな、落ち着いて。順番に読んであげるから……」 宥めるように言うと、みんなは揃って嬉しそうな声を上げた。  今日は、城下町の東にある小さな孤児院に来ている。護衛のミオとロロを連れて、神獣使いとしての正式な慰問だ。  世間から私への評価が変わってきたことにより、宰相をしているお父様――ユロメア公爵の元へ、国中の孤児院から<神獣使い様に訪問頂きたい>という旨の懇願の手紙が山ほど送られてくるようになったのだ。  このアーヴェルト王国において、孤児院は、神殿に付属しているのが一般的だ。  <聖女から神獣を奪った!>という誤解の一件から、神殿、及びその管理下にある孤児院といった施設からは、私という存在が煙たがられているのだろうと思っていたのだが……どうやら、そうでもないらしく。  主に、小規模だったり、古い神殿だったりの管轄の孤児院から、是非来て欲しいという声が多く上がり始めたのだ。(お父様曰く、神殿が内部で揉めていて、聖女よりも神獣使いを支持する派閥からの要望だって……) お父様と相談の上、味方を作っておいて損はないだろう、という結論に至り。  最近では、2、3日に1箇所くらいのペースで、要望をもらった孤児院を慰問しているのだ。  笑顔の子供たちに囲まれて、一緒に食事をしたり、絵本を読んだり、遊び相手になったり。体力的にすごく疲れもするけれど、結果的には可愛い子供たちに癒されて、慰問自体は全く苦にならなかった。  日が暮れる前に、名残惜しそうな子供たちに別れを告げる。  正門まで見送りに来た神官は、私とロロに深く頭を下げた。「本日は、お越しいただきましてありがとうございました。神獣使い様。神獣様。子供たちも、とても楽しそうにしていて……是非またいらしてください」 「私のほうこそ
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第34話 王妃からの提案

  綺麗に晴れた昼下がり。清々しい天気とは裏腹に、私は難しい顔をしていた。「うーん……」 ベッドの上に広げた3着のドレスをじっとりと睨みながら、大きくため息を吐く。「青はちょっと、清楚すぎるかしら?赤は……街中で着て歩くのには派手すぎる?黄緑のドレスは良さそうだけど、もう少し可愛げがあったほうが……」 むう、と悩み続けるジュリエッタの背後、ずらりと並んだドレスハンガーから、マーサが新たに薄ピンク色のドレスを引き出す。「お嬢様!こちらなんていかがでしょう?」 「んー、ごめんなさいマーサ。それはちょっと狙いすぎてるというか……」 「では!こちらはいかがですか?」 今度は別のドレスハンガーの影から、ボブカットを揺らしたナナリーが顔を出した。彼女の手には、柔らかなレモンクリーム色のドレスがふわりと揺れている。「あら、良さそうかも……」 「でしたら一度、こちらのドレスに合うお靴やジュエリーを用意してみましょう!ジュリエッタ様!マーサさん!」 「承知しました!それであれば――」 決して狭くはない寝室を埋め尽くすようなドレスと、装飾品の山。  窓際に押しやられたロロは、珍しく子猫の姿で窓枠に飛び上がり、伸びをしながらげっそり呟いた。「お前たち……そのやりとり、まだ続けるのか?」 呆れたような声に反論したのは、活き活きと目を輝かせたナナリーだ。「当然ですよ!明日はジュリエッタ様の晴れ舞台……!いえ、待ちに待ったレイ様とのデートなんですから!」 力説するナナリーの横で、私はふぐっと変な音を立ててむせこむ。「ち、違うのよナナリー!デートなんかじゃないの!これは、勝手に連絡を断ったレイを問いただしに行くための、戦闘服を選んでいるだけで――」 「もう、ジュリエッタ様までそんなこと言って……」 やれやれ、と大袈裟に肩を竦めて首を振るナナリーは、ぐっとこちらに身を乗り出してくる。「明日、街中でレイ様とお会いするのですよね?」 「え、ええ……」 「待
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第35話 久しぶりの逢瀬

 (今からこんなに胸がドキドキして……。レイに会って、もし泣き出したりしちゃったらどうしよう)  屋敷を出てから馬車に揺られている間中、どきどきと早鐘を打つ鼓動と、胸を締め付けるような緊張感に、ずっとどうにかなってしまいそうだった。  というのに――。  「やあ!久しぶりだね、ジュリエッタ嬢。なんだか今日は、一段と美しく見えるね」 久しぶりにこの笑顔を見たら、そんなはち切れそうだった気持ちが、途端に何処かへ吹き飛んでしまった。  城下街の隅、貴族向けのお店が多く集まる地区。レイが指定してきたのは、その中で一番人気のあるカフェの、テラス席だった。  無駄なキラキラは、会えない間も健在だったようで……遠くからでも見間違えようのない、爽やかな笑顔とキラキラのシャワーに、一瞬、回れ右をして帰りたくなってしまった。 「ちょっと!ま、待って待って!」 焦ったレイに引き留められ、渋々椅子に座る。ケーキと紅茶をオーダーし終えると、レイの後ろに立っていたパーシーが、苦笑しながら私へぺこりと頭を下げた。「お久しぶりッス、ジュリエッタ様。その……なんだか、すみません」 「久しぶりね、パーシー卿。貴方が謝ることなんて何もないわ」 「そうだぞパーシー。何を言ってるんだ」 (……誰のせいでパーシー卿が謝ってると思ってるのよ。全く……) こんな状況では、帰りたくもなる。  レイは、どうしてか普段以上にキラキラをまき散らしているし、それに当てられてなのか、このテーブルには周囲の席に座る女性客からの熱い視線が、これでもかというほど突き刺さっている。  それに加えて、ここはテラス席。  店の利用客だけでなく、道行く女性たちまでもが、二度見ならず三度見、四度見をしてしまうほど、レイはキラキラとイケメンを発揮しまくっていた。  一応、町に溶け込もうという努力はしたのだろうか。服装は、下級の貴族が着ているようなシンプルなデザインの地味めなもの……なのだけど。(本人がこんなにもキラキラしてたんじゃ、服が地味だろうと意味がない
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第36話 守ってくれてありがとう

  甘いものを楽しんだ後、私たちはカフェを出て、のんびりと街歩きを始めた。  ショーケースに並んだドレスやアクセサリーを見て、広場で遊ぶ市民たちの姿を眺めて、ずっと他愛もないことを話して、笑っていたような気がする。  ――彼と一緒にいる、それだけで楽しかった。  会えなかったぶんを埋めるように、孤児院を訪問したことや、アリアド王妃とのお茶会、兄たちの過保護ぶりについて。さらには、ロロのお手入れのためのオイルなど、本当に取り留めもない話題ばかり話してしまって……それでもレイは、ずっと優しい笑顔で、楽しそうにしてくれていたから。  だから私は――ほんのちょっとだけ、浮かれすぎてしまっていたのかもしれない。  突然、隣で歩いていたレイが、すっと自然な動作で私の腰を抱き寄せてきた。「きゃっ……!ちょっと、レイ!」 突然のことに驚いて、ぐいとレイを押し退けようとするけれど、意外なことに、細身なレイの身体は、まったくと言っていいほどびくともしない。  意外な力強さに驚いていると、すぐに背後で、ミオが背の大剣に手を伸ばし、可愛らしい目をきっと釣り上げた。(ミオ?一体どうし……、!) ミオが見つめる先に視線をやって、私はようやく気付いた。これは――殺気だ。  ここは、上級階層向けのお店が立ち並ぶ大きな通り。今日も、行き交う人々でかなり混み合っている。  その中から1つ……いや、2つだろうか?殺気を含んだ視線がこちらに向けられているのがわかった。(こんな日にまで邪魔しにくるのね。あまりにも無粋すぎるんじゃないかしら?) とりあえず抵抗をやめて、レイの邪魔にならないよう、大人しくする。ピリピリとした空気の中、口を開いたのはミオだった。「……レイ様。行ってきてもよろしいでしょうか?」 ミオは、路地の一点から目を離さない。その先に、暗殺者が潜んでいるのだろうか。  ロロはずっと、小さい猫の姿でミオの肩に乗っていたが、身軽にジャンプすると、私の肩へと移ってきた。  レイはふむ、と少しだけ思案して、ミオと同じ方向へ向けた目を細めた。
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第37話 聖女の怨嗟、王子の気づき

  ――聖女として、これまで沢山頑張ってきた。  あの女がいつも小言を言ってくるから、貴族の令嬢たちを味方にして、取り巻きを増やした。  私が言うことこそが正しいのだと、わかってもらおうとした。  いるのかもわからない女神とやらに、毎日毎日、全身を痛めながら祈り続けた。  大神官が言う通りに、薄汚い孤児院を沢山回って、小汚い子供相手に笑顔を振りまいた。  なのに――。  「どうして、私の思い通りにならないの⁉︎」 ガシャーン!大きな音が、神殿の高い天井に、甲高く響き渡る。ぐわんぐわんと、耳を塞ぎたくなるような残響音すら気にする余裕もなく、肩で大きく呼吸をした。「――ッ!」 感情の昂ぶりが抑えきれず、続け様に、目の前の祭壇にあったものを全て薙ぎ払う。  またしてもすごい音を立てて、高価そうな燭台や教本、草花が飾られた銀の器が床へと転がった。「どっどうか、気をお静めください!聖女様!」 ひいい、と悲鳴を上げながら右往左往しているのは、大神官ラニエルだ。  この白髪の大神官は、最初の頃からずっと私の味方をしてはくれているが、言葉の端々に、私を小娘、と侮っている気持ちが見え隠れする。  対して役にも立たないこの男にも、どうにもならないほど怒りを感じていた。「ねぇ!どうしてあの女を殺してくれないの⁉︎神官を派遣してくれるって言ったじゃない!」 「派遣しましたとも……!ですが、派遣した神殿の暗殺部隊も、誰ひとり帰ってこないのです!」 「役立たず!その暗殺部隊ってやつに任せてれば、すぐに殺してくれるって言ってたのに!嘘つき!」 「も、もちろん!聖女様のために、あの者たちも真剣に任務に当たって――」 「言い訳なんて聞きたくないわ!私が欲しいのは、結果よ!」 あの女がいなければ、私はもっとちやほやされていた。  ヴォルグ様からも、もっと盲目的に愛してもらえただろうし、令嬢たちだって婦人たちだって、もっともっと、私を唯一の聖女だと持ち上げてくれたし。あのイケメンにな
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第38話 愛しいあなたが だいきらい

  再会した日以降、私とレイは、何度も待ち合わせては城下町を歩いて過ごした。  暗殺者に狙われることもしょっちゅうだったけれど、その度にレイやミオ、パーシーに、もちろんロロも、いっそ見事なほどにしっかりと守ってくれていたので、過保護な私の家族達も、私とレイが会うことを反対したりはしなかった。(まあ、アルト兄様やウォルター兄様は、レイの話題になる度に、ものすっごく渋い顔をするんだけど……。ことあるごとに「可愛い妹に悪い虫がー!」なんて騒いで…まったく) 考え事をしながら、ミオの手を借り馬車から降りる。  日が落ちた街は、数え切れないほどのランプと魔術の灯りで、きらきらと輝き出していた。  祭り本番、といった空気に、ワクワクと胸が高鳴る。  今夜は、豊穣の秋を祝うお祭りだ。  レイとの待ち合わせは、日暮れ前に街の広場、庶民の服が指定されていた。明らかに、祭りのお誘いである。  面白いくらい庶民服が似合わないレイの姿に、ひとしきり笑った後。私たちはいつものように取り留めもない話をしながら、屋台を巡って食べ歩き、孤児院のバザーを巡り……。お祭りを目一杯楽しんだ。   ――夜も更けてきた頃、私たちは、祭りの喧噪から少し離れた、小さな公園へやってきていた。  小さなガゼボの傍には、この時期に咲く薄紫の可愛らしい花が咲き乱れている。  風が吹くと、甘い中にほんのちょっぴり苦みがあるような、優しい花の香りが髪先に触れて…。胸が少しだけ、切なくなった。「ふう」 祭りが楽しくて火照っていた頬に、ひんやりした風が心地いい。レイはガゼボのベンチに腰掛けると、自分の上着を脱いで隣に敷き、「どうぞ」と手招きをした。(レイって、ちょっとした時に、ものすごく紳士なのよね……) ドキドキさせられるのが、ちょっと悔しい。それでも、大人しくその場所へ座らせてもらった。  他には誰もいない静かな公園に、遠くから、祭りを楽しむ人々の声と音楽が微かに届く。  子猫姿のロロを抱いたミオとパーシー卿は、気を利かせてくれているようだった。ガゼボから少し離れた場所で、
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第39話 わたしにできることを

  つい先程まで、誰もが楽しそうにしていた祭り会場は――今や、悲鳴と怒号が飛び交う場所になっていた。  さっきまでいた公園を飛び出し、区画を2段ほど降りてきたところで、広場を見下ろせる石塀へと飛びつく。  広場の有様に私が息を呑む隣で、レイが背後へ振り返り指示を飛ばした。「いるな?お前たち!二手に分かれて、片方は魔獣の相手を。もう片方は、市民の避難を優先させろ!ここからなら、東の騎士の訓練場が近い。地下に市民達を誘導するんだ!」 「はっ!」 どこにこれだけの人数がいたのだろうか。30人ほどの騎士がレイの言葉に、一斉に行動を開始する。「レイ様!」 駆け寄ってきたパーシー卿から、剣帯と剣、そして少し重めの上等な上着を受け取ったレイは、それらを素早く身につけながら、こちらを振り返った。「ごめん、ジュリエッタ嬢!僕も行ってくる!君は、このまま神獣殿とミオと一緒に避難するんだ!いいね?」 「レイっ!」 呼び止めようとする私の手を、一度だけぎゅっと握り――一瞬だけ微笑んで、レイは踵を返した。  パーシー卿を連れて、ものすごい速さで大混乱の広場へと降りていく。  レイの指示を受けた騎士達が加わったことで、市民達の誘導が始まる。勇敢に立ち向かっていく騎士達を、翼のあるトカゲのような魔獣が、長い尾を振り回しながら、襲っていた。  いつの間にか人の姿になったロロが、背後から私の肩に手をかける。「リーエは、魔獣を見るのは初めてだったか」 うまく言葉が出なくて、こくりと頷く。  魔獣という生き物がいること、年に数度、国内で目撃されて、騎士達が討伐に向かう、ということは、知識として知ってはいた。レイから受けた、歴代聖女や神獣使いの授業でも、聞いたことがある。  でも…まさかこんな、城壁に囲まれた街中で、その姿を目にすることになるとは思ってもいなかった。(待って。そうよ。歴代の神獣使い達は、聖女と同じように、魔獣たちを討伐していたこともあった……) なら、私にも、何かできることがあるんじゃないだろうか?  
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第40話 月夜に想うだけならば

   あの夜、広場全体を包み込んだ青白い魔法陣は、一瞬にしてすべての魔獣を浄化し、消し去った。  規模の大きさから、ロロへと魔力を供給していた私もかなり消耗したようで、私はその後すぐに眠り込んでしまい、気がついたときには、見慣れた寝室にいた。  あとからミオに聞いたところによると、あれだけの魔獣の襲撃があったにも関わらず、奇跡的に死者はでなかったそうだ。  怪我人も軽傷ばかりで、すぐに治療を受けられたと聞き、ほっと胸を撫で下ろした。  一体どうして、あんな街中に突然、魔獣の群れが現れたのか――それについては、王室が中心となって調査が続けられているそうだが、進展がないそうで。  あの日を皮切りに、王都付近で魔獣の目撃情報が急増し、今では、騎士団もかなりの忙しさだという。「ジュリエッタ様のことは、引き続き僕がお側でお守りいたしますから、どうかご安心ください!」 大きな瞳を険しくして、ミオが気合いたっぷりにそう言ってくれのが、とても嬉しかった。   魔獣の襲撃から1週間もの間。「屋敷できっちり療養するように」、とのお母様の命により、私は、不本意ながら退屈な引きこもり生活を余儀なくされていた。(こんな軟禁生活も、これで何度目かしら……) せめて、と、これまた中庭にお茶の席をセッティングしてみたものの……空はどんよりとした雲に覆われていて、気分も重い。  そんな中でも、人型のロロは優雅に足を組み、紅茶を傾けながら新聞を広げていた。  ……あまりにも暇なので、ぼんやりとその容姿を観察してみることにする。  さらりと揺れる黒髪も、整い過ぎた顔面も、切れ長の青い瞳も。なんなら、持て余すように組まれた長い足までもが、絵になり過ぎていて、なんとなく憎たらしい。「ふむ。リーエ」 そんなロロが、新聞をこちらへ差し出してきた。何があったんだろう、とのろのろ動きながら覗き込む。ロロの長い指が指す先に、大きな教会を背にしたアリサさんの写真があった。「え?アリサさんがどうか……」 その記事には、先日の
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