荘厳な教会は、水を打ったように静まり返っていた。――「遺言」晴れやかだった征士郎の表情が、一瞬にして強張った。参列者たちの前で、朔弥は遺言書を取り出した。「これより私、近藤朔弥が、依頼人に代わり、彼女の遺言をこの場で読み上げます」そこでしばらく言葉を止めると、掠れた声で読み上げ始めた。「私は重い病を患い、残された時間もわずかとなりました……私は近藤朔弥に立ち会ってもらい、次のとおり遺言を残します。私名義のすべての不動産、預貯金、有価証券その他一切の財産を、夫である清野征士郎に相続させます……」まだ読み終わらないうちに、征士郎が壇上から駆け下りた。朔弥の胸ぐらを乱暴につかみ、低い声で問い詰める。「紗月はどこだ?」「君には永遠に見つけられない場所だ」次の瞬間、征士郎の拳が朔弥の顔に叩き込まれた。避ける暇もなかった朔弥は床へ倒れ込み、口元から血が滲んだ。会場が一気にざわめいた。征士郎は床に倒れた男を見下ろした。その瞳には荒々しい怒気が満ちていたが、口元には嘲るような笑みが浮かんでいる。「病人のふりをしても通用しないから、今度は死んだふりか?紗月に伝えろ。そんな芝居は俺には通用しないとな。今すぐここへ来させろ。さもなければ、俺が見つけ出したときには、生きていることを後悔させてやる――!」朔弥は口元の血を拭い、冷え切った目で征士郎を睨みつけた。そして次の瞬間、奥歯を強く噛みしめながら拳を振り上げる。「この人でなしが!」その拳は征士郎の体を掠めただけだった。征士郎の顔は険しくなり、教会の中は完全な混乱に陥った。誰も、紗月が亡くなったなど想像すらしていなかったのだ。やがて警備員たちが朔弥を連れていくと、琴葉が慌てて征士郎のそばへ駆け寄った。「征士郎さん、大丈夫?」征士郎は琴葉の美しい顔へ目を向けた。その瞬間、脳裏に浮かんだのは紗月の顔だった。数日前に見た彼女の顔は、あまりにも青白く、血の気などまるでなかった。紗月が死んだなど、信じられるはずがない。紗月が死ぬわけがない。あいつは今日、この結婚式に来るはずだった。そして自分に謝るはずだったのだ。あのとき卑劣な手を使って自分のベッドに入り込んだことも、自分に結婚を迫ったことも、すべて間違っていたと認めるはずだった。き
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